静電靴とは
人は歩行などの動作を行う際に、衣服などが摩擦することから起こる静電誘導によって帯電します。
この現象はなんらかの措置を取らなければ、人は常に可燃性物質の着火や電撃などを誘発する危険な帯電状態にあることを意味します。これを回避するためには、発生した静電気が人体に蓄積しないように靴底から床へ逃がす静電靴を装着することが簡単かつ効果的です。
静電靴を取り扱う上での注意点として、靴底が磨り減ったり塗れていたりすると本来の性能維持が困難ですので、使用前の目視確認が安全の第一歩となります。
静電靴の使用用途
静電靴は、日本では大きく分けて3通りの使い方があります。
1つ目は静電気によって爆発・火災・電撃のような事故・災害が起きる可能性のある場所での使用になります。
例:石油、化学、塗装、印刷などの可燃性物質を取り扱う各種工場。
2つ目は静電気に起因する電子素子の破損、汚れなどのような生産障害が発生する可能性のある場所での使用です。
例:電子機器製造工場(通常はクリーンルーム)。
3つ目は高圧電線の点検など、高電圧下での使用です。
高圧電線の点検は冬季でも欠かさず行う必要があるため、安全靴は0℃環境下での使用も考慮されて設計されています。
静電靴の原理
人体の帯電を安全なレベルに保持するには、発生した静電気を数100ms以内に床へ逃がし、人体の帯電電位を数10V以下に抑制することが必要とされています。
この条件を満たすためには靴の電気抵抗値を1.0×10^9Ω以下にしておくことと定めた上で、静電靴には電気抵抗値に基づいた3種類の規格が存在します。(JIS T8103規格)
一般静電靴:1.0×10^5≦R≦1.0×10^8 (1.0×10^5≦R≦1.0×10^9)
特種静電靴:1.0×10^5≦R≦1.0×10^7 (1.0×10^5≦R≦1.0×10^8)
導電靴:R<1.0×10^5 (R<1.0×10^5)
*測定温度23℃±2℃、()内は0℃環境下での基準値
さらに、静電気の発生は湿度も重要な要因となりますので、湿度12±2%、25±3%,50±5%の3段階で、より数値の低い乾燥した状態で使用基準を満たした製品ほど安定性の高い静電靴とされています。
数値を持ち出すと難しいですが、簡単に記載すれば「人体に生じた静電気を靴のインソール⇒中底⇒本底の導電路⇒靴底⇒地面と瞬時に逃がす」非常にコストパフォーマンスの良い安全靴と表現できます。
参考文献
https://www.midori-esd.jp/performance/
https://www.simon.co.jp/knowledge_shoes/antistatic