プラズマエッチング装置とは
プラズマエッチング装置とは、半導体のLSI製造などの微細加工分野において、プラズマ化したガスを用いたエッチング装置です。
LSI (大規模集積回路) やその原版となるフォトマスク、スマートフォンのディスプレイなどは、基板上に非常に微細なパターンの形成を経て出来上がります。この工程で、現像工程に続くのがエッチング工程です。エッチングでは、現像されたレジストパターンに沿ってその下にあるシリコンやシリコンの酸化膜、金属膜等を削っていきます。
LSIの高集積化やディスプレイの高精細化が進むにつれて、パターンの微細化が進行しました。プラズマエッチング装置は、微細なパターンの形成に必要不可欠な装置です。
プラズマエッチング装置の使用用途
プラズマエッチング装置は、半導体デバイスの中でもメモリーやCPUなどの微細化と高集積化が進んだデバイス、フラットパネルディスプレイの中でもスマートフォンのような高詳細化が進んだディスプレイの製造工程で使用されます。これらのデバイスの製造においては、露光、現像、エッチング、レジスト剥離の工程を何回も繰り返します。フォトマスク上のパターンを光 (レーザー光) を使ってレジスト上に転写するのが露光工程です。
それに続く現像工程では、レジストの露光された部分 (あるいは露光されていない部分) を薬液によって除去します。その後に、レジストが除去された部分に露出したシリコンや金属膜を削るのがエッチング工程です。最後に、剥離工程においてレジストを除去することで、目的のパターンが基板上に形成されます。
エッチングには、薬液を使ってシリコンや金属膜を溶解するウエットエッチングと、プラズマ化した気体中のイオン粒子を使って削り取るドライエッチングがあります。ウエットエッチングでは、薬液がレジストの下部まで回り込み、エッチングが垂直方向以外にも進行するのが欠点です。
これに対してドライエッチングでは、エッチングがレジストパターンに沿って綺麗に垂直方向に進みます。プラズマ化したガスを使用することから、その装置をプラズマエッチング装置と言います。
プラズマエッチング装置の原理
プラズマエッチング装置は、真空チャンバーの中に、現像工程が終了したウエハーなどの被加工材料を置きます (以降、加工材料をウエハーで代表します) 。真空チャンバー内では、ウエハーを挟むように電極板が配置されています。すなわち、ウエハーを水平に置いた場合には、その上部と下部にあるのが電極板です。
チャンバーの中を真空にした後に、チャンバー内に加工用のガスを注入します。シリコンやシリコン酸化膜のエッチングには、フルオロカーボン系ガス(CF4, CHF3, C4F8など)やSF6ガスが使われます。金属膜のエッチングに使われるガスは、ハロゲン系ガス (Cl2, BCl3, HBrなど) です。有機系材料のエッチングには、酸素ガスや水素ガスが使われます。
チャンバーに高周波の電界をかけたり、磁界をかけたりすると、エッチングガスは電子とイオンが分離したプラズマ状態となります。そこに電極間に電圧をかけると電界が生じ、イオンがウエハーに叩きつけられる仕組みです。ウエハーにイオンが叩きつけられると、上部をレジストで守られていない、下地が露出した部分では、その部分の原子が弾き飛ばされて徐々に削られていきます。
プラズマエッチング装置の種類
プラズマエッチング装置はプラズマの発生方法によって、容量結合プラズマ (英: CCP, Capacitively Coupled Plasma) 方式、誘導結合プラズマ (英: ICP, Inductively Coupled Plasma) 方式、マイクロ波ECRプラズマ (英: ECR, Electron Cyclotron Resonance) 方式などがあります。容量結合プラズマ方式は、上下に配置された2枚の円盤状の電極板の間で、高周波の電界をかけてプラズマを発生させると同時に、下側の電極板の上に置いた加工物に電解で加速したイオンをぶつけることでエッチングが進行します。
他の2種類はプラズマの生成方法は複雑になりますが、加速したイオンでエッチングを行う原理は3種類とも同じです。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/77/2/77_2_162/_pdf
http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2007_04/jspf2007_04-319.pdf
https://www.semijapanwfd.org/manufacturing_process.html