デュワー瓶

デュワー瓶とは

デュワー瓶

デュワー瓶とは、1982年にJames Dewarにより実用化された断熱容器のことです。

日本語ではデュアー瓶やジュワー瓶と表記されることもあります。日常でよく耳にする「魔法瓶」や「サーモスの水筒」の先駆けでもあり、構造は類似しています。

デュワー瓶は3つの特徴的な構造により、長1時間の保冷や保温を可能にしています。

  1. 容器を構成する2枚の壁
  2. 2枚の壁の間に設けられる真空層
  3. 真空層に面した壁の反射による熱放射を遮断

デュワー瓶の使用用途

デュワー瓶は、低温や高温いずれの断熱にも優れているため、マイナス200℃程の液体窒素から、300℃近いオイルバスのオイルを入れる容器として利用されます。主に、化学実験や一時的に冷媒の保存、運搬に用いられます。

具体的には、BAM (ドイツ連邦材料試験研究所) 蓄熱貯蔵試験です。保温性を利用して、自己反応性を有する物質を保管する際の危険性を測定します。この試験にも、デュワー瓶を用いるようプロトコルが盛り込まれています。

デュワー瓶はステンレス製であることが多いですが、容器内を観察できるように透明のガラス製のデュワー瓶も近年開発されています。デュワー瓶内での作業がしやすいように口が広くなったタイプや、可能な限り内容物の蒸発を防ぐために口が小さくなったタイプなど種類が豊富です。

デュワー瓶の原理

デュワー瓶には、真空層が設けられており、熱の移動を遮断することで、断熱性能を示します。熱の移動には、「熱移動の3原則」と呼ばれる3つの要素があります。

1. 熱伝導

分子は常に分子運動をしており、この分子運動は高温ほど激しく運動します。高温で激しく振動する分子運動は次々に隣の分子へと伝わり、平衡を保とうとすることを熱伝導と言います。

2. 対流

気体や液体はあたためられることで分子運動が激しくなり、密度が低くなります。密度の平衡を保とうとして、気体や液体が循環し動くことを対流と言います。

3. 熱放射

熱放射は分子運動を介してではなく、電磁波が伝わることで熱が移動します。

真空では分子が存在しない (厳密には微量の分子は存在しますが無視できる程度) ため、熱伝導と対流がデュワー瓶の2つの壁に挟まれた真空層によって妨げられています。しかし、熱放射は真空であっても生じます。

熱放射を容器の外に伝えないように、真空を挟む2枚の壁の内側は鏡面仕上げになっており、鏡面で電磁波が反射することで、容器内の温度が保たれます。

デュワー瓶のその他情報

デュワー瓶を使用する際の注意点

デュワー瓶などの液体窒素を保冷する容器での事故は過去に多くあるため、十分注意して使用する必要があります。

  • デュワー瓶に蓋をしない
    液体窒素などを使用する際、デュワー瓶に蓋をしてしまうと、空気中の水がその蓋の隙間で凍結し、大爆発を起こす危険があります。
  • 革手袋を使用する
    デュワー瓶に液体窒素を入れたり、出したりする作業中は、革手袋の使用が推奨されています。他の手袋だと、液体窒素が手にかかった場合に手袋と手がくっついて取れなくなる恐れがあります。
  • 喚起を徹底する
    液体窒素が入っているデュワー瓶を誤って転倒させ、液体窒素を床にまいてしまった場合、液体窒素が急激に気化し、室内の空気の大半を占めて、窒息死する危険性があります。デュワー瓶を転倒させてしまった場合は、直ちに部屋から退出または、換気を徹底することが重要です。また、中が空でも転倒させた際にデュワー瓶の内側が損傷し、亀裂が起きている場合もあり、メンテナンスを受ける必要があります。

参考文献
https://www.jsrae.or.jp/annai/yougo/138.html
http://mahobin.org/episode.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsj1966/28/8/28_8_427/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/35/3/35_196/_pdf/-char/ja

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