温度計プローブ

温度計プローブとは温度計プローブ

温度計プローブとは、温度計の部品である金属製のセンサーです。

プローブの先端を測定させたい物質(液体など)に接触させることで、温度を測ります。

温度計のセンサーにはいくつか種類が存在しており、一番大きな分類としては接触式か非接触式かになります。
非接触式のものとしては、赤外線を放射した量より温度を計測する放射温度計があり、さらにその測定原理によって熱型と量子型に分かれます。
接触式のものには、サーミスタ測温抵抗体、熱電対のほか、水銀・アルコール温度計もこのカテゴリに含まれます。

温度計プローブの使用用途

温度計プローブは、通常温度計本体に接続して使用します。その種類によって、測定可能幅が異なり、用途に応じて選択されます。

サーミスタは-50℃から300℃と測定幅が狭く、測温抵抗体は-200℃から800℃の測定幅に、熱電対だと更に-200℃から2000℃と幅広い測定幅へ対応することが可能です。

プローブは細長い形状をしているので、食品工場などで液状の製品の温度を測ったり、冷凍肉に刺して内部の温度測定を行ったりなど、HACCPによる衛生管理にも対応しやすくなります。

温度計プローブの原理

温度計プローブの原理は、その種類によって異なります。 サーミスタは、半導体が持つ温度変化に対して抵抗値の変化が大きくなるという特性を利用して測定を行います。低温では抵抗値が大きく、高温で抵抗値は小さくなりますが、温度と抵抗の変化特性は非線形です。その他、測定精度が悪い、衝撃に弱いなどの弱点もありますが、白金抵抗体より感度が約10倍優れているというメリットがあり、広く実用されています。感温素子の種類として、NTC・PTCの2種類が存在し、NTCは温度測定に、PTCは定温の温度センサ等に使用されています。

測温抵抗体で用いられる金属の条件の一つに、金属の抵抗値と温度との直線性が良いことが求められ、それに該当するのが白金です。JISでも白金のみ規定されています。 白金はさらに安定性も高く、幅広い温度範囲でも使用できますが、高価でありかつ熱応答が遅いなどのデメリットがあります。高純度白金の電気抵抗と温度との直線性を利用して温度測定を行います。

熱電対では、ゼーベック効果を利用します。これは、2種類の金属を接合させた際に、2点の接合点をそれぞれ異なる温度に保つことで熱起電力が発生する仕組みのことです。比較的安価で熱応答も早いうえに精度も高く、高温の測定も可能であるなどの特徴があります。 使用される金属の種類は、ニッケル・クロム合金とニッケル・アルミニウム合金の組合せや、白金・ロジウムと白金の組合せなどがあります。

参考文献

https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/temperature_sensor_tg_j_5_2.pdf
https://www.line.co.jp/product/tec/thermo/
https://www.marutsu.co.jp/contents/shop/marutsu/datasheet/custom01_17.pdf

水分計

水分計とは

水分計

水分計とは物質に含まれる水分量を測定する機器のことです。

気体・液体・固体いずれの状態に対しても、それぞれ測定可能な装置があります。水分計の種類としては乾燥法、カール・フィッシャー法、赤外線吸収法、誘電率法などが挙げられ、研究室で使われるものとしては乾燥法、もしくはカール・フィッシャー法の水分計が代表的です。

水分計は用途によっても分類されており、食品や土壌、コンクリートなどの水分測定で用いられています。食品中の水分量の測定はISOやJASなどの公定法で測定手法が定められているものもあり、水分計の中には規格に対応している装置もあります。

水分計の使用用途

物質中の水分を測定する業界は多岐にわたっており、食品から工業製品、木材など様々な測定対象に対して水分計は使われています。特に食品は形状や水分量、管理値などが製品によって異なるため、用いる水分計と測定手順も製品に合わせて都度最適化しなければなりません。

米や小麦などの食品業界では、天秤と乾燥機も備えられた乾燥法による水分計が使われています。一方、味噌や油などの食品業界や有機溶媒に溶解する素材を扱う材料メーカーなどで使用される水分計はカール・フィッシャー法が一般的です。

その他、土壌の水分を測定するテンシオメーター法による水分計、コンクリートの水分量を測定する高周波容量式水分計なども使われています。

水分計の原理

水分計は手法によって測定法が大きく異なり、質量変化から水分量を見積もる乾燥法、水と定量的に化学反応を起こすことで水分量を求めるカール・フィッシャー法、サンプルの静電容量の変化から求めるキャパシタンス法などが挙げられます。

1. 乾燥法

乾燥法の原理

図1. 乾燥法の原理

乾燥法は非常に単純な手法で、乾燥前のサンプルの質量を測った後に100℃前後まで加熱した恒温槽に3時間程度放置させて水分を蒸発させたあとの質量を測定し、差分から水分量を求める方法です。

乾燥機と精密天秤が組み合わされた水分計も販売されており、温度と時間を管理しながら測定することができます。乾燥法は穀物などの食品における公定試験法として定められていることが多いです。

2. カール・フィッシャー法

カール・フィッシャー法の反応式

図2. カール・フィッシャー法の反応式

カール・フィッシャー法の水分計ではメタノールなど炭素数が少ないアルコールとピリジンなどの有機塩基の存在下で二酸化硫黄、ヨウ素と定量的に反応した水の量を求めます。

水分の定量は陽極でヨウ化物イオンから生成したヨウ素の消費量から求める電量滴定法が用いられることが多いです。なお、アスコルビン酸などの還元性を示す化合物は別の化学反応によってヨウ素を消費してしまうためカール・フィッシャー法による水分測定を行うことができません。

3. テンシオメーター

テンシオメーターの仕組み

図3. テンシオメーターの仕組み

テンシオメーターは土壌の水分を測定する手法の一つです。

多孔性の素焼きカップをパイプに接着させて中に水を充填させ、カップを土壌に挿した状態で圧力変化を測定して、水分がどれだけ土壌へ染み出したか測定する方法です。なお、テンシオメーターは乾燥した土壌では隙間が生じやすいため高精度な測定を行うことができません。

4. キャパシタンス法

土壌やコンクリートなど、比誘電率が水に対して十分小さい物質の中に含まれる水を測定する際に用いる方法です。

2つの電極の間にサンプルを挟み、電圧をかけることで静電容量を測定し、変化量から水分量を求めます。以前は比較的精度が悪いという欠点がありましたが、最近は精度が向上しており、測定も容易であるため施工現場などで用いられることが多いです。

水分計のその他情報

水分計使用時の注意点

水分は大気やサンプル以外の物質にも含まれているため、水分計を使用する際には測定環境にも注意が必要です。特に微量の水分を測定する際は実験室の湿度、サンプルが大気と接触する時間が変化すると測定値が変化する可能性があります。

また、カール・フィッシャー法では配管の継手などの隙間から水分が混入しないように継手を確実に締める必要があるほか、測定時に流している窒素などの不活性ガスに含まれる水分もシリカゲルなどの乾燥剤で予め除去しなければなりません。

参考文献
https://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/93/06-01.pdf
https://www.aichi-inst.jp/other/up_docs/no194_02.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/structcivil/59A/0/59A_1112/_pdf

メスピペット

メスピペットとは

メスピペット

メスピペットはガラス製体積計の一種です。側面に複数の目盛りが刻まれており、様々な容量の液体を採取、滴下することができます。メスピペットは全量に応じた許容誤差がJIS規格で定められており、許容誤差の大きさによってクラスA、クラスBの2種類に分けられています。

なお、メスピペットの精度はホールピペットに比べると劣るため、精確な体積の液体を採取、滴下したい場合はホールピペットを用います。一方で、厳密な精度が求められていない実験において、採取、滴下量を任意に変えたい場合にはメスピペットが便利です。

メスピペットの使用用途

メスピペットは理化学実験で使用される器具で、液体の体積を測る体積計の一種です。ホールピペットに比べると精度は劣りますが、メスピペットは容量を示す目盛りが側面に細かく刻まれているため、様々な容量の液体を採取、滴下する際に便利な器具です。

上記の特徴から、メスピペットは溶液調製、採取時に許容される誤差がある程度大きい場合、試料に加える溶液量を任意に変えて作業したい場合に用いられています。一方、濃度測定用の標準液調製など、精確に溶液を量り取る必要がある場合はメスピペットではなく、ホールピペットが用いられます。

メスピペットのその他情報

1. メスピペットの精度

メスピペットなどのガラス体積計の許容誤差はJIS規格で定められています(JIS R3505 ガラス製体積計)。メスピペットはJIS規格で「クラスA」、「クラスB」という二つのクラスに分類されており、クラスAのほうが許容される体積誤差が小さい、すなわち高い精度を要求されています。

メスピペットの精度

図1. メスピペットの精度

クラスA、クラスBともに全量に応じた許容誤差が定められており、全量が大きいほど誤差の相対値は小さくなります。クラスAの許容誤差は最大でも全量の±0.5%、クラスBでは±1.0%です。ただし、この許容誤差は20℃の水を測定したときの体積であるため、実際の誤差は実験室の気温や採取する溶媒によって更に大きくなります。

2. メスピペットとホールピペット、駒込ピペットの違い

実験作業において液体を採取する際にはメスピペット以外にもホールピペット、駒込ピペットを使うこともあります。これらのピペットの大きな違いは精度です。

駒込ピペットは上記3種の中では最も精度が低いですが、一定量の液体を簡単に素早く採取できます。メスピペットはホールピペットよりは精度が低めですが、駒込ピペットに比べると十分精度が高く、側面に細かく目盛りが書かれているため、ある程度の精度で採取量を任意に変えて実験したいときに便利です。ホールピペットは最も精度が高く、精確に液量を測る必要がある場合に用いられます。

ホットメルト

ホットメルトとは

ホットメルト

ホットメルトは接着方法の一種です。室温では固体状態の樹脂を加熱により液化した状態で用いて、冷却して再度固化することにより接着する方法をホットメルトと言います。

ホットメルトは樹脂に揮発溶剤を使用していないため、「引火性が無い」、「環境にも優しい」などが特徴です。その上、「迅速な接着が可能であるため作業効率が高い」、「適用できる材料幅が広い」、「室温保管が可能である」、「接着時の仕上げが綺麗である」などのメリットを有します。

ホットメルトの使用用途

ホットメルトは、適応材料が広い、迅速な接着が可能、安全性が高いなどの特性より様々な場面で使用されています。 主な用途としては、包装、電子部品、建築、家具、ホビー・小物類、自動車、食品などが挙げられます。

包装では、ダンボールの接着に用いられることが多く、製造業の包装ライン上の封緘機等で使用されています。 ホビー・小物類では、家庭規模でもグルーガンの接着剤として使用されています。 食品においては、その安全性故に食品包装の中で使用される乾燥剤の接着に使用されています。

ホットメルトの特徴

ホットメルトの最大の特徴は、接着速度が秒単位と、とても迅速なことです。一般の接着剤は、接着剤中の溶剤や水が揮発したり、化学反応を起こして固化したりすることで接着します。それに対して、ホットメルトはホットメルト接着剤の「加熱溶融−冷却固化」のサイクルによって接着します。

このとき、ホットメルト接着剤の冷却固化の速度が一般の接着剤の化学反応よりも速く、ホットメルトでは一般の接着剤と比べて迅速な接着が可能です。

ホットメルトの種類

ホットメルトの種類は、ベース樹脂の接着性によって大きく2種類に分かれます。

1. 配合系ホットメルト

ベース樹脂が接着性を有しない配合系ホットメルトには、ポリオレフィン系、合成ゴム系、EVAなどがあります。配合系ホットメルトの構成成分は、ベース樹脂、粘着付与剤、ワックスなどのほか、必要に応じて可塑剤、フィラー、酸化防止剤などの安定剤が含まれます。

2. 接着ポリマー系ホットメルト

ベース樹脂が接着性を有する接着ポリマー系ホットメルトにおいては、ポリエステル系、ポリアミド系、ウレタン系などが代表的です。

ホットメルトに類似した熱溶融型の接着剤としては、にかわが挙げられます。にかわとは、ゼラチンを主成分とする接着剤です。主に食品や医薬品に用いられる純度の高いものをゼラチン、工芸品や日本画の画材などに用いられる純度の低いものをにかわといいます。熱することでゾル化し、冷やすことでゲルとなって固定化する性質をもっています。

ホットメルトのメリットとデメリット

最後にホットメルトの特徴の基本的なメリットとデメリットをまとめます。メリットとデメリットは以下の通りです。

1. メリット

  • 短時間で接着可能
  • 接着する材料として各種に適用可能
  • 無溶剤なので安全性が高い
  • 再加熱により溶融再利用可能
  • 容易に保存や保管ができる/li>
  • 接着工程を容易に自動化可能

2. デメリット

  • 接着の耐熱性に限界がある。
  • 一般的な硬化型接着剤と比べ接着強度が低くなる。
  • 過熱溶融を行うため耐熱性の低い材料には不向き。
  • 気温によって接着性が変動する。
  • 使用に専用のアプリケーターが必要。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/adhesion/42/11/42_11-5/_pdf/-char/ja
https://www.jaia.gr.jp/statistics/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/adhesion/42/11/42_11-5/_pdf/-char/ja

ピペットチップ

ピペットチップとは

図1. ピペットチップのイメージ図

ピペットチップとは、マイクロピペットに取り付けて使用する、プラスチック製で円錐状の管です。

化学や生物分野をはじめとする研究・開発や品質管理の現場などで、μLからmLオーダーで溶液を量り取る際に用いられます。なお、ピペットの吸引・吐出によって溶液を量り取るこの動作をピペッティングと言います。

ピペット本体のサイズ毎に異なったサイズのものが存在し、またサイズによって色が異なる場合があります。コンタミネーションを防ぐため、専用のラックに入れて保管しておき、一度使用したものは廃棄します。

ピペットチップの使用用途

ピペットチップはマイクロピペットに取り付け、化学・生物に関連する分野全般において使用されます。

具体的な使用用途は、生化学分野の研究室における実験や、医薬品メーカーでの品質管理、臨床検査での検体採取などです。マイクロピペットは、μLから数mLの微量の液体を取り扱う際に使用されます。

ボタンを押すだけで迅速に定量の液体の採取が可能ですが、ガラス体積計と比較すると容量が変化しやすいため、操作上注意が必要です。

ピペットチップの原理

図2. ピペットチップの使用方法

ピペットチップは、ピペットチップの専用ラックに充填し、マイクロピペットの先端を直接差し込んで装着します。

マイクロピペットのプッシュボタンを1段目までゆっくり押し離すことにより液の吸引を行い、吐出の際は2段目まで押し込むことによって全吐出を行います。使用後のピペットチップの廃棄方法はイジェクターボタンを押すだけです。ピペットチップを手で触る必要がないため、試料の汚染や作業者への薬品の付着を防ぐことができます。

ピペットチップの種類

図3. 様々なピペットチップ

主に用いられているピペットチップの容量は、10μL、200μL、1000μLです。それ以外にも、250μL、30μLなどがあり、大きなものでは5mLや10mLのピペットチップがあります。

ピペットチップには複数のサイズがあるため、量り取りたい液量に応じて、適切なサイズのマイクロピペットと、ピペットチップとを選択することが大切です。具体的には、マイクロピペットが量り取ることのできる最大量が、量り取りたい液量に近いものを選択しなくてはなりません。液量の誤差を小さくするために重要です。

ピペットチップのその他情報

ピペットチップを使用する際の注意点

ピペットチップによる正確な計量のためには、下記の点に注意する必要があります。

1. プレリンス
ピペットチップはその素材ゆえに、内壁へ溶液成分が吸着される場合があります。量り取りたい液体を予め2回以上吸引・全吐出し、共洗い (プレリンス) してから使用することが有効であるとされています。

2. チップの浸入角度
チップの浸入角度は、液面に対してできる限り90度に近づける必要があります。垂直な状態から20度以内を維持することが適切です。ピペットを持つ角度が水平に近い場合、液体が過剰量吸引される恐れがあります。

3. チップの浸入深度
チップを深く浸しすぎると、チップ内の気体が圧縮され、液体の吸引量が多くなりすぎることが知られています。微量容量のピペットの場合は1~2mm、通常容量のピペットの場合は最大で3~6mmの深さでチップを浸すことが適切です。

4. 正しいピペッティング動作
まずは、液を吸い上げるときは、指をボタンから急に離さずに、ゆっくり上げるように注意することが必要です。液の粘性の差によ る吸引速度の差を小さくする目的と、急激に吸い込まれた液がピペッターの機械部分に入ってピペットが壊れるのを防ぐ目的があります。また、吐出の際は、最後に残った液滴まで完全に吐出し、チップの先端に付着しないようにします。特に、チップの先端を容器の壁面に沿わせて吐出することが推奨されます。

また、有機溶媒などの表面張力が低い液体を量り取る場合は、外壁部に液体が付着したまま残る可能性があることに注意が必要です。先端がニードル状になったマイクロニードルを使用するほうが適切な場合もあります。

参考文献

https://www.monotaro.com/s/c-68512/
http://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2008/200801nyuumon.PDF
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/67/1/67_17-80/_pdf/-char/ja
https://www.mt.com/jp/ja/home/products/pipettes/pipette/pipetting-techniques.html

ビュレット

ビュレットとは

ビュレット

ビュレットとは、コックで操作しながら液体を少量ずつ滴下することで、滴下した液体の体積をはかることができるガラス器具です。

目盛りが刻まれた細い筒状のガラス管下部に取り外し可能なコックが付いており、そのコックを回すことで分量を調整しながらガラス管の中へ入れた液体を滴下し、ビュレットの前後の目盛りの変化量を読み取って使用します。

ピペットも同様に滴下した液体の体積を測ることができる道具ですが、ビュレットは垂直に立てて使用できるため、目盛りをより精密に読み取ることが出来ますし、コックで細かく液量を調整することができます。さらに、コックを用いて正確に滴下量を制御する事ができるため、中和滴定のような正確な液量測定が必要とされる実験に適しています。

ビュレットの模式図

図1. ビュレットの模式図

ビュレットの使用用途

ビュレットは、主に中和滴定などに用いられます。 中和滴定とは容量分析の一種であり、濃度が分かっている標準溶液と、濃度が不明であるが標準溶液の濃度に比例して反応する溶液を用いて、濃度不明の溶液の濃度を求めます。

中和反応の判断、所謂終点は滴下後の混合液の呈色変化によって決まります。コックの操作にはある程度の熟練が必要ですが、オートビュレットという自動操作が可能なものもあり、食品や医薬品、化学メーカーの品質管理に使用されています。

ビュレットの特徴

ビュレットには、白色と褐色のものが存在します。これは他のガラス器具と同様、光によって反応を起こす物質があるため、標準溶液に溶解した物質の種類によって選択する必要があります。例えば、硝酸銀は感光性を有するため遮光下で使用する必要があり、これを滴定液として用いる場合は褐色のビュレットを用いる必要があります。

また、前述のとおり、ビュレットはコック操作に慣れることが大切です。ビュレットから液体を滴下するスピードが早いと、終点より多めに標準溶液を入れてしまう恐れがあるため、適当なスピードで滴下できるようにコック操作を行うことが重要です。 なお、コック部分にグリスを塗ってメンテナンスをする必要があり、メンテナンスが不十分だと液体が漏れる等の注意点があります。

さらに、先端が欠けてしまうと正確な体積を測ることができないため、丁重に取り扱わなくてはなりません。先端に傷が付くだけでも1滴あたりの体積が変化することが実験により知られています。その他にも、ビュレット内の残液の体積によって残着量が変化することも分かっているため、必ず目盛りの一番上である0点から使用するのが望ましいです。

ビュレットはガラス器具であるため、加熱・冷却を繰り返すと変形し、その測定量の正確性が損なわれます。そのため、洗浄後の加熱乾燥は避け、室温で乾燥する必要があります。同様の理由から、ビュレット内に入れる滴定液についても、一般的には室温程度の一定温度の液体を用います。なお、滴定液の温度については、ビュレットの膨張と変形の原因となるだけではなく、滴定液の体積が温度依存的である事にも注意が必要です。このような理由からも、正確な液量測定のためは、滴定液は一定温度のものを用いる必要があります。

ビュレットのその他情報

1. ビュレットを共洗いする理由

共洗いとは、量りたい溶液(中に入れる溶液)を用いて、ビュレットやホールピペットなどの側容器具(液体の体積を量る器具)を洗うことです。

側容器具は、器具の変形による体積の変化を避けるために、通常、乾燥機などによる加熱乾燥を行いません。水道水で洗った後、蒸留水で洗浄し、使用直前に量りたい溶液を用いて洗います。

共洗いをするのは、器具の内面が水で濡れていると、試料溶液の濃度が低下するからです。一方、試料となる溶液自体で濡れている場合は、溶液を入れても濃度は変化しません。

ビュレットは、滴定の際、濃度が不明な溶液を入れるので、ビュレット内で溶液の濃度が変わってしまうと、正確な濃度を求めることができなくなります。

また、一度使った器具をもう一度使用するときに共洗いをすると、乾燥させることなく、続けて使うことができます。

まず、1/5程度の溶液を入れ、ビュレットを横にして回しながら、内壁を洗います。次に、コック(活栓)を回して溶液を先端から出し、コックより下の部分の内壁を洗って、残りの液を上部から捨てます。この操作を、数回繰り返します。 

2. ビュレットの使い方

ビュレットをビュレット台に垂直に固定して、活栓が閉まっていることを確認します。

漏斗を使って、ガラス管の上部から溶液を注ぎこみます。この時、漏斗の上部から溶液が溢れないように、空気を逃すための隙間を漏斗とビュレットの上部の間に開けておきます。また、溶液が目に入る危険があるため、目より下の位置で注ぎます。溶液を注ぎ終えたら、漏斗を取り外します。

下にビーカーなどを置いて活栓を開き、溶液を勢いよく流して、活栓より下の部分の空気を完全に追い出します。活栓より上の部分に気泡がある場合には、これも取り除きます。

空気を追い出した後、目盛を読み、記録します。この時、視線とビュレットが垂直になるようにして、”メニスカス“の底(下端)を読みます。メニスカスとは、細い管に入れた液体の表面が、表面張力によって曲面になることを指し、液体が管壁を濡らす場合はへこみます。また、目盛は、最小目盛の1/10まで、目測で読みます。

ビュレットの目盛りの読み方

図2. ビュレットの目盛りの読み方

活栓を回して、滴下を始めます。片手でビュレットを持ち、活栓が抜けないようにビュレット本体の方にひきつけながら操作します。

滴定を終えたら、目盛を読み、滴下量を出します。

バイオリアクタ

バイオリアクタとは

バイオリアクタの概要

図1. バイオリアクタの概要

バイオリアクタとは、酵素や細胞、微生物などによって起こされる生体内の化学反応機構を利用し、有用物質の生産や分析を行うシステムやその反応容器のことです。

生体内反応を利用する機構は、化学反応に比べると速度が遅いというデメリットがあります。しかし、副産物が少ない、触媒活性が低下しないなどの点で優れている手法です。

また、高温・ 高圧等の条件下に置かずとも進行するため、耐圧・耐熱の設備を準備する必要がなく、コスト面でも優れています。なお、広義の意味では、細胞を培養する装置などをバイオリアクタと呼んでいる場合があります。

バイオリアクタの使用用途

1. 産業

バイオリアクタは、食品、農業、畜産業、水産業、化学工業 (化成品) などの幅広い産業で利用されています。医療、診断サービス、分析などの分野でも活用されている他、資源エネルギーやバイオエレクトロニクスなどの分野にも用途のある装置です。

例えば、食品製造において、大豆や米、果汁に麹菌や酵母を反応させて味噌や醤油、日本酒やワインなどを製造する手法もバイオリアクタの1つと言えます。工業的な代表例には、 酵素の固定化 (反復利用が可能な状態とすること) によって、アミノ酸や糖類などを大量生産することがあります。

また、研究や医療の分野では、細胞培養により機能物質を細胞内に産生させ薬効物質として取り出す利用方法もあります。

2. 物理化学

バイオリアクタは、物理化学的な物質の検出・定量にも用いられている手法です。オートアナライザーは、固定化酵素を用いて化学反応を光学的に追跡し、多くの試料を連続的に分析することができます。

バイオセンサーは、反応を電気的に追跡する方法です。具体的な例として、酵素センサー、微生物センサー、半導体バイオセンサーなどがあります。

バイオリアクタの原理

バイオリアクタは、温度・pH・圧力などを制御・管理した反応容器内で、固定化された酵素などの反応素子に原料となる反応物質を反応させるという仕組みです。合成・分解・変換・除去を経て、目的物となる生成物質が得られます。

1. 反応素子

主な反応素子は、精製された酵素のほか、細胞や微生物が用いられます。酵素は生体における触媒であり、古典的に最もよく用いられる反応素子です。

広義では、植物細胞、肝細胞や血液細胞などの動物細胞、ミトコンドリアや色素体などの細胞内小器官、 ホルモン受容体や抗体等によって起こる反応も利用されています。

2. 反応素子の固定化

反応素子の固定化は、不溶性の担体に結合させる担体結合法が主流です。その他、反応素子同士を架橋させる架橋法、包括剤を利用した包括法などの方法があります。

反応素子が固定化されることで、反応素子と生成物質とを分離しやすくなります。また、反応素子は固定化させずに浮遊させて用いる方法もあります。

バイオリアクタの種類

研究用途のバイオリアクタのイメージ

図2. 研究用途のバイオリアクタのイメージ (左: 細胞培養用、右: マイクロバイオリアクタ)

バイオリアクタには様々な種類があります。酵素を用いて目的物質を得る古典的典型例のものから、細胞や微生物を培養して目的物質の産生を図るものなど、用途に合わせて形状は多種多様です。バイオ医薬品製造用の細胞培養及び菌体培養設備などが、バイオリアクタと呼ばれている場合もあります。

原料が液状である液体用バイオリアクターが最も一般的です。これに対して製麹、酵素工業などでは、原料が固体であるために固体用バイオリアクターが用いられます。また、植物細胞や藻類、光合成細菌など光合成を行う反応素子を用いる場合は、光の供給を 工夫した光合成用バイオリアクターが開発され、使用されています。

産業用途のバイオリアクタが比較的大型である一方、分析用途のバイオリアクタは比較的小型です。特に、マイクロバイオリアクターは反応生成物を回収せずに検出することが目的であり、数 mLからμLの液体を分析するものが開発されています。

バイオリアクタのその他情報

1. 反応場の状態

バイオリアクタは、液体状態もしくは固体状態のどちらで反応を行うかによって通気・撹拌混合・反応温度制御の方法が大きく異なります。 例えば、反応素子が好気性生物の場合は通気が必要なため、容器内で攪拌させる通気撹拌方式や、容器内のドラフトチューブから気泡を上昇させるエアリフト方式などを用います。

光合成生物の場合は、液体に溶解させた有機物や窒素・リン等の無機塩類、ビタミン等の生理活性物質や、光を供給させることが必要です。また、分析に利用するマイクロバイオリアクタの場合は、数μlオーダーの容器を用いることもあり、測定誤差を出さないようにより高度に温度や液量を制御できるようにしなければいけません。

2. バイオリアクタによる光学活性体の合成

バイオリアクタは、光学活性体の合成にもよく利用される手法です。光学活性体の合成に生体触媒を使用するメリットとしては、以下のような特徴が挙げられます。

  • 常温、常圧、中性付近のpHという、扱いやすい環境において優れた触媒作用を示すものが多い
  • 特定の化合物の特定の部位にのみ選択的な反応を起こすため、一般的に副生成物は少なく、収率が高い

3. バイオリアクタの再生医療への応用

幹細胞培養用のバイオリアクタのイメージ

図3. 幹細胞培養用のバイオリアクタのイメージ

iPS細胞などの多能性幹細胞を再生医療の分野で利用するためには、10億~100億個程度の細胞が安定的に供給される必要があります。バイオリアクタを用いた3次元浮遊培養システムは、再生医療に大量の細胞を供給する方法として注目されている手法です。

細胞にとって低ストレスで均一な撹拌を維持し、培養効率を高めるため、水車型攪拌翼などの撹拌機構が開発されています。

参考文献
http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/bioreact.htm
https://www.inpit.go.jp/blob/katsuyo/pdf/chart/fkagaku23.pdf
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9209/9209_tokushu_4.pdf

バイオフィルタ

バイオフィルタとは

バイオフィルタとは、排水処理などの水処理や臭気処理に使用されるフィルタです。

水処理や臭気処理などに使用されますが、用途によって構造や原理が異なります。

バイオフィルタの使用用途

バイオフィルタは、水処理や臭気処理などに使用されます。

1. 水処理用バイオフィルタ

バイオフィルタは、水処理に使用されています。生活排水や工業排水、農畜産業の排水処理が主な用途です。

そのため、排水ろ過施設に設置されています。また、水生生物の水槽への使用も多く見られます。魚の養殖場や家庭用水槽のフィルタとしても好適です。

2. 臭気処理用バイオフィルタ

バイオフィルタは、臭気処理にも使用されています。例えば養豚場などの家畜による臭気の除去などに利用されています。

バイオフィルタの原理

バイオフィルタは、その用途に応じて構造や原理が異なります。

1. 濁水処理用バイオフィルタ

建設工事などにより生じる濁水を処理する濁水用バイオフィルタは、天然のヤシ繊維などを用いた濁水濾過フィルタです。植生基盤となる上、設置後、自然分解するのが特徴です。バイオフィルタは、微生物を含む濾過層に排水や臭気が送り込まれることによって、浄化されます。

2. 排水処理用バイオフィルタ

排水処理施設に使用されるバイオフィルタは、フィルタを構成する充填材の表面や充填材同士のすき間に微生物を薄い膜状として保持した構造です。これで排水をろ過して処理をおこない、この方式は生物膜式活性汚泥法と呼ばれます。

生活排水や工場排水などの処理に一般的に利用される活性汚泥法と比較すると、装置単位体積あたりのBOD除去速度が大きいのが特徴です。そのため、装置を小さくでき、温度の変動にも耐性があるので、維持管理しやすいなどのメリットがあります。

3. 水生生物用バイオフィルタ

水生生物用バイオフィルタは、魚の養殖場などに多く使用されています。このようなバイオフィルタは、ガラスなどを使用した多孔質の焼成物を用いたフィルタです。多

孔質のフィルタ素材は微生物の付着基材として優れており、硝化作用をもつ硝酸還元細菌、脱窒細菌などが増殖して、アンモニアを酸化して水質を保持します。

4. 臭気処理用バイオフィルタ

臭気処理用バイオフィルタとしては、ヤシガラハスクやウッドチップに有機物を加えたフィルタなどがあります。このフィルタに散水しながら臭気を含む空気を通し、臭気を脱臭する仕組みです。

また、臭気処理用バイオフィルタとしては、土壌脱臭法を利用したものもあります。フィルタとして機能する土壌部分は、粒子が大きい砕石層と砂層、微生物を含む土壌層で構成されています。

臭気を含んだ気体を送風機によって土壌層下部へ送り込み、砕石層から砂層、土壌層をゆっくり通過させて、微生物により臭気物質を無臭物質に分解する仕組みです。土壌が乾燥しそうな場合は、スプリンクラーを用いて土壌へ散水し、微生物を死滅させないようにして使用します。

5. アクアリウム用バイオフィルタ

バイオフィルタとして私たちの生活で最も身近なものとしては、アクアリウム用の底面フィルタが挙げられます。この底面フィルタは、生物濾過に重点を置いたフィルタです。底面フィルタを使用する際には、生物濾過機能をいかに働かせるかが重要なポイントとなります。

生物濾過機能を働かせるための注意点は、以下の3つです。

  1. バクテリアが定着できる濾材であること
  2. 酸素の供給が十分される環境であること
  3. 水流がしっかりあること

アクアリウム用バイオフィルタの設置には、まず底面フィルタにエアチューブを接続して水槽の底に設置します。その上から砂利などの底床材を敷き詰めて完成です。

エアポンプなどを使って底面フィルタ上の底砂に水を通し、底砂にバクテリアを定着させることで、底砂を濾材として使用します。

バイオフィルタのその他情報

底面フィルタの注意点

底面フィルタの注意点としては、以下の点が挙げられます。

1. 使用できる底床材に限りがある
細かい砂や粒は底面フィルタ内に落ちてしまい、水の循環を阻害してしまいます。また、栄養が多く含まれているような底床材も栄養が水槽内に拡散してしまうため、不向きです。

2. 水草水槽との相性が悪い
底面フィルタでは、糞などのゴミも底床に溜まることになりますが、底床の汚れはろ過機能の効率に影響を与えるため、定期的な掃除が必要です。根を張るタイプの水草を使用する場合、フィルタの水流を阻害するだけでなく、底床の掃除が困難となってしまい、不向きです。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jswe/16/4/16_4_270/_pdf/-char/ja
https://www.kobelco-eco.co.jp/product/pdf/industrial_water_treatment/bcf.pdf
http://qube-aquarium.com/undergravel-filter/

バイアル

バイアルとは

バイアル

バイアルとは、ガラスまたはプラスチック製の透明容器で、注射針を刺して中の液体を吸い出せるように蓋にゴム製の部分を持つ瓶のことです。

注射剤や高速液体クロマトグラフィーで分析試料などを入れる容器として使用されており、日本薬局法では密封容器に分類されます。開口部はゴム栓により蓋をされますが、ネジ口のバイアルも存在しています。

バイアルの使用用途

1. 注射剤の保管容器

注射剤を入れるための容器として使用する場合は、無菌状態で薬剤を充填した後に開口部へゴム栓を打栓し、アルミニウムキャップ等でゴム栓と開口部を巻締めます。なお、ゴム栓は複数回の刺針が可能なため、薬液を複数回採取することができます。

しかし、汚染した注射針で薬液を採取する等の操作が原因で感染事故も起こりうるので、無菌状態で操作を行う必要があります。

2. 化学・分析試験用サンプルの保管容器

高速液体クロマトグラフィーで、オートサンプラへ分析試料を入れるためにバイアルが使用されます。ガラスバイアル中の成分が溶出するおそれがある場合は、合成樹脂製バイアルを用います。

その他、塩基性物質がバイアルの内壁に付着する可能性もあるため、その場合も同様に合成樹脂製バイアルを用います。

バイアルの特徴

バイアルは、ホウ珪酸ガラスを原料としています。ホウ珪酸ガラスは、二酸化ケイ素と無水ホウ酸から作られます。熱膨張率が小さく、硬く、耐水性が高い点が特徴です。

また、ソーダガラスや鉛ガラスに比べて、耐熱性・耐冷性があり、化学薬品に対する耐腐食性にも優れています。 その他、酸素等のガスが透過せずに酸化を防げる点も特徴の1つです。

バイアルは、金型を用いずにホウ珪酸ガラスを火で加工して作られます。ソーダ石灰ガラスよりも低温で製造可能なため、アルカリ成分の溶出が比較的少なくなります。近年では、耐薬品性向上のためにバイアルからの溶出物が減る低アルカリ処理バイアルや、薬剤の吸着量を減らせる低吸着バイアルのニーズが増えました。

また、合成樹脂製のバイアルも存在し、ガラス製に比べて割れにくく軽い他に、無機物の溶解がありません。一方で、酸素の透過性はガラス製に比べて劣るのが欠点です。

バイアルのその他情報

1. バイアルの表面処理

バイアルは、脱アルカリ処理やコーティング等のガラス内表面の性質を改質させる表面処理を行っています。脱アルカリ処理とは、ガラス転移点付近の温度まで上昇させた状態で、ガラス表面と硫黄化合物を反応させることによって、表面層のアルカリ成分を中和させたり選択的に抽出除去する操作です。

この操作によって、シリカ成分を多く含む表面が露出し、アルカリ成分の溶出を減少させることができます。コーティングには,シリカやシリコーン樹脂、フッ素樹脂などを用いて行う方法があります。

これらの処理を行うことにより、薬液をガラス内表面へ直接接触させることを避けられるため、ガラス成分が溶出し難くなる等の効果が得られます。

シリカ加工
ガラス内表面にシリカを高温で溶融させて、内表面へシリカの薄膜を形成させる方法です。

シリコーン加工
ジメチルポリシロキサン溶液へ浸漬・焼付け処理を行い、ガラス表面へシリコーン樹脂の薄膜を形成させる方法です。

フッ素樹脂加工
カップリング剤によりフッ素樹脂を塗布・焼付け処理を行って、ガラス内表面へフッ素樹脂の薄膜を形成させる方法です。 

2. バイアルとアンプルの違い

バイアルが開口部をゴム栓により蓋をするのに対して、アンプルは薬液を充填した後、容器の先端を熱で溶閉して保管します。薬液を使用する際には、容器の頭部をカットして、開口部から注射針を差し込んで薬液を吸い出します。

アンプルのカットの際は、容器の種類に応じて対応が異なります。カット位置にポイントマークやラインの入った容器では、そのまま手でアンプル頭部を折って開封しますが、マークやラインがないアンプルの場合には、アンプルカッターややすりでアンプル頸部に傷をつけたあとにアンプル頭部を折るのが一般的です。

比較的量の少ない注射剤では、アンプルを使用する場合が多いです。アンプルはバイアルと同様に、ホウ珪酸ガラスが原料であるため、ガラス成分が溶け出すことはほとんどありません。また、酸素等のガス透過性もないため、バイアルと比較してより安価に密閉性の高い容器にできることがメリットです。

3. ゴム栓付きバイアルの取扱い方

ゴム栓付きバイアルを使用する際の注意事項として、コアリングがあります。コアリングとは、注射針を刺すときに針によってゴム栓が削れ、この削れたゴム片 (コア) が薬液内に混入する現象のことです。コアリングの発生は、ゴム栓の形状や材質、注射針の径や形状、穿刺方法などに影響を受けます。

例えば、プラスチック製の鈍針と18Gの金属針では、プラスチック製の鈍針の方がコアリングの発生率が高いことが報告されています。また、針を刺す際のスピードが速いほど、コアリングの発生率が高くなる報告もあります。

コアリングを防止するためには、以下のような方法が有効です。ゴム栓付きバイアルを取り扱う際は、これらの方法を熟知したうえで、コアリングの発生に細心の注意を払う必要があります。

刺す場所
ゴム栓の指定位置 (刻印部) に穿刺します。刻印部がない場合にはゴム栓の中央部分とし、注射針を複数回刺す場合には同じ場所を避けます。

針の種類
針はなるべく細いもので、刃面の長さが短いものを選択します。

刺し方
ゆっくりと垂直に刺します。途中で針を回転させないよう注意が必要です。

参考文献
http://www.iwataglass.com/products/vial/
https://www.toseiyoki.co.jp/material/glass/324
https://www.fpa.or.jp/
https://www.an.shimadzu.co.jp/hplc/support/lib/lctalk/100/100intro.htm
https://answers.ten-navi.com/dictionary/cat04/3362/
https://answers.ten-navi.com/dictionary/cat04/3356/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdsa/46/1/46_52/_pdf/-char/ja

スタンドパウチ

スタンドパウチとはスタンドパウチ

スタンドパウチとは、自立が可能であり、底部にひだが付いている袋のことです。

日本には1960年代にフランスより技術が導入され、1980年代より徐々に広まりました。特徴として、商品の陳列性に優れ、魅力的なディスプレイを可能にする点が挙げられます。

また、充填する内容物やその使用方法に応じて、ノッチ開封やチャック・口栓の取り付けを選択が可能です。これにより、食品やトイレタリー製品など、多様な用途での使用が見られます。近年、環境への意識が高まる中、詰め替え用の製品としても採用されています。

スタンドパウチの原理

スタンドパウチの基本的な原理は、底部に特定の形状の折り目 (ひだ) を設けることで、袋が自立するようにすることです。この折り目が広がることで底面が広がり、安定した自立が可能になります。

また、この折り目はパウチが製造される際に形成され、使用時に容易に広がって袋を開くことができます。

スタンドパウチの使用用途

スタンドパウチは現在、調味料、味噌、清涼飲料水、スープ、レトルト食品、ドレッシングなど、多岐にわたる用途で使用されています。

最初に市場に登場したスタンドパウチは、水産加工品や農産加工品を缶やビンではなく、より便利に包装する目的で開発されました。技術の進化により、防湿性、透明性、真空包装の適性、耐低温性、耐衝撃性、耐磨耗性、ガスバリア性、遮光性、耐油性など、多様な特性を持たせることが可能です。

使用される範囲も広がり、口栓付きのパウチはゼリー飲料や詰め替え用の食用油にも適用されるようになりました。

スタンドパウチの特徴

スタンドパウチは製造方法によって、胴部と底部から構成される2ピースタイプと一体型の1ピースタイプの2種類に分類できます。使用される材質には、二軸延伸ポリエステルフィルム、セロファン、アルミフィルム等があります。

内容物を保護する上でバリア材の選択が重要であり、技術の進化とともにPVDCコートフィルムやアルミ箔からEVOH樹脂へと変わっています。1970年代には、レトルト対応のラミネートフィルムを開発するために高性能ウレタン接着剤が利用されるようになり、スタンドパウチの適用範囲が拡大しています。

1982年の食品衛生法の改正以降、ポリエステルやナイロンが飲料用パウチに広く用いられるようになり、包装材料とのフレーバーマッチングに注目が集まっています。低pHや高糖度に対応する技術、ボイル殺菌法とEVOHを含むラミネートフィルムを組み合わせることで、デザート用パウチが市場に出ています。

近年では、シングルサイト系ポリエチレンの採用により、ピンホールや破裂のリスクを軽減しており、O-PETやO-NYにシリカアルミナを蒸着した透明蒸着フィルムが使用されています。

スタンドパウチの選び方

スタンドパウチを選ぶ際に考慮すべきポイントは、用途、内容物の特性、包装の目的、そして消費者の利便性です。

  1. 内容物に適した材質の選択
    液体製品の場合は防漏性とバリア性が高い材質、乾燥食品には湿気を避けるための高い防湿性を持つ材質、そして粉末製品では静電気が帯びにくく、粉末が付着しにくい内面を持つ材質が適しています。
  2. 開封と再封の機能
    消費者が容易に開けられ、開封後も内容物の鮮度を保つことができるチャック付きのパウチは、開封後の保存が必要な製品に適しています。また、簡単に手で開けられるようにするためのノッチ付きのパウチもあります。
  3. バリア性能の考慮
    内容物が酸化や湿気に敏感であれば、それらを遮断できる高バリア性能を持つパウチを選ぶ必要があります。また、光に敏感な製品の場合は、光から保護できる遮光性能を持つ材質のパウチが求められます。

参考文献
http://www.spstj.jp/publication/archive/vol21/Vol21_No3_1.pdf
https://www.fujiimpulse.co.jp/docs/clmn/pbk081_083/pbk083.html