水分計とは
水分計とは物質に含まれる水分量を測定する機器のことです。
気体・液体・固体いずれの状態に対しても、それぞれ測定可能な装置があります。水分計の種類としては乾燥法、カール・フィッシャー法、赤外線吸収法、誘電率法などが挙げられ、研究室で使われるものとしては乾燥法、もしくはカール・フィッシャー法の水分計が代表的です。
水分計は用途によっても分類されており、食品や土壌、コンクリートなどの水分測定で用いられています。食品中の水分量の測定はISOやJASなどの公定法で測定手法が定められているものもあり、水分計の中には規格に対応している装置もあります。
水分計の使用用途
物質中の水分を測定する業界は多岐にわたっており、食品から工業製品、木材など様々な測定対象に対して水分計は使われています。特に食品は形状や水分量、管理値などが製品によって異なるため、用いる水分計と測定手順も製品に合わせて都度最適化しなければなりません。
米や小麦などの食品業界では、天秤と乾燥機も備えられた乾燥法による水分計が使われています。一方、味噌や油などの食品業界や有機溶媒に溶解する素材を扱う材料メーカーなどで使用される水分計はカール・フィッシャー法が一般的です。
その他、土壌の水分を測定するテンシオメーター法による水分計、コンクリートの水分量を測定する高周波容量式水分計なども使われています。
水分計の原理
水分計は手法によって測定法が大きく異なり、質量変化から水分量を見積もる乾燥法、水と定量的に化学反応を起こすことで水分量を求めるカール・フィッシャー法、サンプルの静電容量の変化から求めるキャパシタンス法などが挙げられます。
1. 乾燥法
図1. 乾燥法の原理
乾燥法は非常に単純な手法で、乾燥前のサンプルの質量を測った後に100℃前後まで加熱した恒温槽に3時間程度放置させて水分を蒸発させたあとの質量を測定し、差分から水分量を求める方法です。
乾燥機と精密天秤が組み合わされた水分計も販売されており、温度と時間を管理しながら測定することができます。乾燥法は穀物などの食品における公定試験法として定められていることが多いです。
2. カール・フィッシャー法
図2. カール・フィッシャー法の反応式
カール・フィッシャー法の水分計ではメタノールなど炭素数が少ないアルコールとピリジンなどの有機塩基の存在下で二酸化硫黄、ヨウ素と定量的に反応した水の量を求めます。
水分の定量は陽極でヨウ化物イオンから生成したヨウ素の消費量から求める電量滴定法が用いられることが多いです。なお、アスコルビン酸などの還元性を示す化合物は別の化学反応によってヨウ素を消費してしまうためカール・フィッシャー法による水分測定を行うことができません。
3. テンシオメーター
図3. テンシオメーターの仕組み
テンシオメーターは土壌の水分を測定する手法の一つです。
多孔性の素焼きカップをパイプに接着させて中に水を充填させ、カップを土壌に挿した状態で圧力変化を測定して、水分がどれだけ土壌へ染み出したか測定する方法です。なお、テンシオメーターは乾燥した土壌では隙間が生じやすいため高精度な測定を行うことができません。
4. キャパシタンス法
土壌やコンクリートなど、比誘電率が水に対して十分小さい物質の中に含まれる水を測定する際に用いる方法です。
2つの電極の間にサンプルを挟み、電圧をかけることで静電容量を測定し、変化量から水分量を求めます。以前は比較的精度が悪いという欠点がありましたが、最近は精度が向上しており、測定も容易であるため施工現場などで用いられることが多いです。
水分計のその他情報
水分計使用時の注意点
水分は大気やサンプル以外の物質にも含まれているため、水分計を使用する際には測定環境にも注意が必要です。特に微量の水分を測定する際は実験室の湿度、サンプルが大気と接触する時間が変化すると測定値が変化する可能性があります。
また、カール・フィッシャー法では配管の継手などの隙間から水分が混入しないように継手を確実に締める必要があるほか、測定時に流している窒素などの不活性ガスに含まれる水分もシリカゲルなどの乾燥剤で予め除去しなければなりません。
参考文献
https://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/m/93/06-01.pdf
https://www.aichi-inst.jp/other/up_docs/no194_02.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/structcivil/59A/0/59A_1112/_pdf