断路端子台

断路端子台とは

断路端子台とは、回路を断路する機能を有した端子台です。

通常の端子台と同様に、ケーブル同士を電気的に接続する機能を有します。さらに、端子台上で配線を断路する機能も有している点が特徴です。機構部を手で引っ張るなどの動作を行うだけで、簡単に電気的に縁を切ることのできる端子台です。

断路端子台は電路の切断を容易に行えるため、電気系統の安全性を向上させます。保守作業などの際に電源を簡単に遮断し、事故や危険を防ぐのに役立ちます。また、定期的な保守作業や修理が容易になり、システムの可用性を維持するのに有利です。

断路端子台の使用用途

断路端子台は電子回路や電気配線において、接続と切断を容易に行うための特殊な端子台です。以下はその主な使用用途です。

1. 制御システム

工業用制御システムや自動化プロセスにおいて、断路端子台は制御信号の接続と切断を管理するために使用されます。これにより、特定の機器や部品を選択的に制御し、プロセスの動作を調整することが可能です。例えば、製造工程において機械のON/OFF信号を管理するのに使用されます。

2. 保守作業

問題の特定やトラブルシューティングの際、断路端子台は特定の回路を切断して問題を分離し、診断するのに役立ちます。電子回路や制御システムにおいて、特定の部分を遮断することで、どの部分が問題を引き起こしているかを特定しやすくなることが多いです。これにより、迅速な修理やメンテナンスが可能です。

3. 有線電話

有線電話配線においても、断路端子台が使用されることがあります。企業や大規模な組織の通信システムでは、複雑な配線が必要となることも多いです。このような場合、断路端子台が電話回線の配線と接続管理に使用されることがあります。

4. 建物

オフィスビルなどの建物において、断路端子台が使用されることがあります。建築物内の照明制御は、照明のON/OFFなどを管理するために断路端子台が使用される場合も多いです。これにより、照明システムの効率性を向上させ、電力の節約が可能となります。

断路端子台の原理

断路端子台は電子回路や電気配線システムで使用され、電線やケーブルの接続と切断を管理するための装置です。電線を確実に接続するための端子が備わっており、通常はねじやクランプ、バネ圧着などの方法を使用して電線を確実に保持します。電線の導体部分を端子に挿入し、しっかりと保持することで信号や電力の伝達を確実に行えるようになります。

電線が端子に接続されると、電気的な接触が確立されます。この接触により、電流が電線から端子、そして他の電線や部品に伝導される仕組みです。電気信号が断路端子台内で適切に伝達され、配線系統内の他のデバイスに供給されます。

断路端子台の特徴的な部分は、接続と切断を簡単に行えるようにする機能です。断路端子台には手動のスイッチやレバーが取り付けられており、これを操作することで電路を切断することができます。これにより、電源を遮断し、安全性や保守性を向上させることが可能です。

断路端子台の選び方

断路端子台を選ぶ際には、いくつかの重要な要因を考慮する必要があります。以下は断路端子台の選定要素一例です。

1. 定格電流

定格電流は、端子台が安全に送電できる最大電流を示す重要な仕様です。選択する断路端子台の定格電流は、接続する電線や回路の電流要件と一致する必要があります。電流が定格電流を超えると端子台が過熱し、故障や危険が生じるため注意が必要です。

2. 結線方式

断路端子台はさまざまな結線方式で提供されます。一般的な結線方式はねじ締め式やバネ圧着式などです。結線方式は電線の取り付けや取り外しの容易さ、電気的接触の品質に影響を与えます。

3. 取付方式

断路端子台の取り付け方法も考慮すべき要素です。取り付け方法には、DINレール取り付けやパネル取り付けなどがあります。設計仕様に応じて、適切な取付方法を選択することが重要です。

4. 定格電圧

定格電圧は端子台が耐えられる最大電圧を示す指標です。電線や回路の定格電圧と一致させる必要があります。定格電圧を超えると、絶縁破壊や漏電などの問題が発生する可能性があります。

参考文献
https://www.toho.yoshida-elec.com/products/78

リニアブッシュ

リニアブッシュとは

リニアブシュ

リニアブッシュとは、内蔵されたボールの転がりを利用してリニアシャフト上を直線運動させる転がり軸受です。メーカーによってはスライドブッシュとも呼ばれます。

リニアブッシュの移動にボールの転がりを使うのは、ボールがリニアシャフトと点で接触させながら少ない摩擦で転がり運動をさせるためです。このため、リニアブッシュは小さい力で滑らかに移動ができます。

リニアブッシュ自体では推進力を持っていないため、リニアシャフト上で任意の方向を動かすためにシリンダタイミングベルトボールネジなどの機構と組み合わせて使用されます。

リニアブッシュの使用用途

リニアブッシュはリニアシャフトと組み合わせて精密機器や産業機械、医療機器、OA機器など、様々な機器内部において軽荷重で振動・衝撃等の作用しないスライド機構に使用されています。

リニアブッシュ単体では動力を持たないため、シリンダやモータなどと併用させることで直線運動が可能です。

リニアシャフトとの間は低摩擦かつ高精度での直線運動が可能です。負荷を掛けながら使用する場合はリニアシャフトのたわみや使用環境に注意が必要です。

リニアブッシュの原理

リニアブッシュは外筒・ボール・保持器で構成されています。リニアシャフトと組み合わせて使用され、ボールの転がりを利用して直線運動します。

外筒には耐摩耗性と靭性に富んだ軸受鋼を使用し、熱処理後は内径・外形を研削加工し仕上げています。直線運動上で高精度な位置決めが可能です。

保持器(リテーナ)にはボールが転がるための案内溝が設けられております。ボールは案内溝と外筒の内面に沿って転がり、外筒の軌道部とシャフトの間の距離を一定間隔に保ちながら移動できるようになっています。ボールとリニアシャフトの間は点接触のため、許容荷重は小さいが少ない摩擦で転がり運動し、高精度で滑らかに移動できます。

リニアブッシュには、取付姿勢や移動速度、使用頻度などにより選定します。水平方向の案内で負荷を掛けながら使用する場合、リニアシャフトのたわみ量が問題になります。使用の際は荷重計算を行い、定格寿命や使用環境を考慮した上で使用することが求められます。

参考文献
http://www.hephaist.co.jp/ir/image_ir/20150210.pdf
https://jp.misumi-ec.com/special/linearbushing/support/notes/

マッフル炉

マッフル炉とは

マッフル炉

マッフル炉とは、高温域での加熱に使用される電気炉の一種で、熱源でアルミナなどでできた耐熱性のある板を遮蔽し、この板により高温で加熱する機械です。

マッフル炉の使用用途

マッフル炉は雰囲気の変化が少なく、比較的温度ムラが少なく加熱できるため、多用途に使われます。

  • セラミックス (タイルガラス、がいし) の焼成・脱脂
  • 厚膜焼成 (貴金属導体・抵抗体・誘導体) 
  • 電極乾燥
  • ガラス封止
  • 金属の焼きなまし
  • 重金属、ヒ素、強熱残分などの高温での過熱を必要とする医薬品や食品、化粧品などの品質試験
  • 高温測定用センサ試験

マッフル炉の原理

マッフルは「包む」という意味で、アルミナ磁器などの耐火材を指します。従来るつぼの加熱などではバーナーの火力が低くても高温になるように、マッフルでできた容器にるつぼを入れ、直接バーナーで加熱する方法がとられていました。また、セラミック焼成はヒーターが露出した電気炉が使用されていましたが、使用温度制御の点で問題がありました。

これを電気炉に応用したものが、マッフル炉です。マッフル炉では、炉内は耐火物で覆われており、熱源は露出していません。炉体の外側から間接加熱する構造のため、断熱保温性があり温度の変動が少なく安定した雰囲気を維持できます。温度の均一性が高く、温度のひずみが製品の品質に影響を及ぼしたり、実験器具が割れたりする場合にも使えます。

また、重金属やヒ素、強熱残分などは強酸を使用してサンプルを処理する必要があるため、少なからず炉内の雰囲気に酸が混入していました。マッフル炉であれば、ヒーターが守られるためリスク回避が可能です。

マッフル炉の種類

1. 卓上型

実験室で使われるのが卓上型です。より精度を向上させるために、ガス置換が可能で窒素を通せるタイプや真空タイプも販売されています。またダクトへ有害ガスを排気する仕様も可能です。扉の開閉方式もレバーで上下するタイプや扉を開けるタイプがあります。

2. ベルト搬送式

大量生産に合致した方式では、マッフル炉内をメッシュベルトが動き、マッフル炉を入ってから出るまでの間に焼成が完了するように設定します。

マッフル炉の構造

1. 熱源

熱源は上下左右4面に配置されており、高速な昇温が可能です。熱源には鉄ークロム線 (常用温度850℃) や、より高温の使用範囲を持つ製品 (1,600℃) では、二硅化モリブデンなどが用いられます。

熱の発生には、抵抗加熱で電流を流す方法がとられています。これは、電気エネルギーが100%熱に変換される非常に効率的な方法です。そのうえ、熱量=電力量なので温度の管理が簡単に行えるメリットがあります。

2. 温度センサ

温度センサには、異なる2種類の金属導体で構成された温度センサである熱電対が使用されています。JIS規格では、熱電対はR、K、Bなど規定されており、それぞれ使用範囲によって使い分けられています。

炉内のマッフルとなる断熱材にはアルミナシリカを主成分とした無機繊維のセラミックファイバーが耐火物として用いられます。これらは、急熱、急冷に強く化学的に安定した素材です。機種によっては温度の昇降をプログラム制御したり、徐冷機能がついた製品もあります。

3. 安全装置

マッフル炉内は高熱であり、加熱時には大変危険です。過加熱を防ぐため、過電流ブレーカーやマイコン異常検知装置がついていたり、扉を開けると電流が流れなくなる装置など安全面で配慮されています。

4. 扉

扉と炉体 (本体) の間には隙間があり、それぞれ熱による膨張率が異なるため、破損防止のための仕様となっています。

参考文献
https://www.yamato-net.co.jp/word/40
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/thermometry/thermocouple.jsp
https://www.hakko.co.jp/qa/qa_0_01.htm
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000641289.pdf

湿度ロガー

湿度ロガーとは

湿度ロガーとは、湿度をユーザー指定の一定間隔で記録し、その測定データの分析をするための機器です。

相対湿度 (relative humidity) の単位は%RHと表されます。相対湿度とはある温度中の空気中に含まれる最大限の水分量(飽和水蒸気量)と比較した場合の水分調を示します。

相対湿度 (%RH) =水蒸気量/飽和水蒸気量×100で表されます。通常温度と湿度はセットで測定され、これは温度と湿度の密接な関係性があることが理由として挙げられます。

具体的には、温度が低いほど空気中に含むことが出来る水蒸気の量が少なくなり、逆に温度が高いほどより多くの水蒸気を含むことが出来るためです。 

湿度ロガーの使用用途

品質管理においては重要な項目です。ISO9001の品質マネジメントシステムにおいての規格要求のひとつである湿度管理に対応するため使用します。

美術館、博物館での温度・湿度管理に用いられていて、高温多湿によるカビの発生や、乾燥による美術品の破損を防ぐために用いられています。倉庫や物流、病院環境、土木建築、ビニールハウスなどの温湿度管理に適しています。

機器の種類はセンサー分離型、センサー一体型、紙に常時記録されるアナログ式、多点測定用のマルチロガー等多岐にわたります。

湿度ロガーの原理

電気抵抗式と静電容量式の2種類に分類されます。電気抵抗式も静電容量式も質分を吸湿、脱湿する感湿材を使用し、電極で挟んでいる構造で、水分を電気抵抗として捉えるか、静電容量で捉えるかの違いです。

主流は静電容量式で、湿度20%以下でも測定出来、応答速度も早いのがメリットです。電気抵抗式はノイズに強いため、センサー部分が小型化出来ます。

湿度ロガーの登場で、ユーザー指定の間隔で長期間の測定が可能となり、機器によっては多点同時測定や、無線により広範囲の同時測定が可能となりました。記録した湿度や温度、機器によっては衝撃度まで同時測定し、パソコンのアプリケーション上で誰でも簡単に測定、データ解析が出来るようになりました。

特に美術品の保存や環境の最適化には、無線による常時モニタリングが最適です。高温多湿は美術品の破損・劣化を招くため、環境管理はとても重要ですが、以前はアナログ式の湿度ロガーを使用していたものが、無線の湿度ロガーへ置き換わったことで、データ回収のために展示ケースを開ける時間と手間と、何よりケース内の環境変化が無くなりました。

参考文献
https://www.jqa.jp/service_list/management/management_system/

耐熱手袋

耐熱手袋とは

耐熱手袋

耐熱手袋とは、作業者の手や腕が高温または低温に晒される危険性から守る保護具の一つです。

高温・低温の環境を扱う研究機関や樹脂、金属、ガラス類などの材料を溶融させて用いる作業現場において、特に重要な保護具であり、作業者を火傷や凍傷から保護するために用いられます。

材質は綿、シリコン、アラミド繊維、アルミ被膜、ポリウレタン等と多岐に渡り、使用環境に応じて材料の耐熱温度や作業性を考えて選択します。

耐熱手袋の使用用途

高温での主な使用環境は、食品加工工場やガラス加工工場、製鉄所、研究室などです。低温での使用環境は冷凍庫内作業、漁業、液体窒素の取り扱い作業で使用されます。

食品加工現場では、下準備に使用する炊事用手袋や、火傷防止のために耐油性のシリコンゴムの手袋を用います。シリコン素材の手袋はゴミが付きにくいため、食品を扱う現場で使用される場合が多いです。

ただし、断熱効果に乏しく、インナー手袋との併用が推奨されます。ガラス加工現場や製鉄所で用いる手袋には、500℃から1,000℃近い温度まで高い耐熱温度が要求されます。アルミ蒸着加工による耐熱・耐炎対策がされた高機能耐熱手袋が選ばれます。

漁業などでは、氷詰めや寒冷地での作業に適した-60℃でも樹脂が硬化しないポリウレタン製の耐熱手袋が一般的です。液体窒素に代表される超低温液体ガスの取り扱いには、超低温耐久性 (-196℃) を備えた手袋を使用します。主に研究室や、バイオテクノロジー分野において使用されています。

耐熱手袋の特徴

耐熱手袋は材質によって、特徴が異なります。それぞれの特徴は以下の通りです。

1. 綿素材

綿素材は軍手に用いられる材質であり、綿100%でできた純綿軍手は吸汗性に優れています。熱にも強く、使用用途は幅広いです。

ポリエステルレーヨンと綿を合わせた混紡軍手は、シワ防止や速乾性といった綿以外の繊維が持つ特徴があります。

2. シリコン素材

シリコン素材は200℃以上の高温にも耐えられる上、撥水性を有するためホコリ等がつきにくい点が特徴です。食品を扱う業界やクリーンルームでの用途が多いです。

3. アラミド繊維

アラミド繊維は耐熱温度370℃と優れた難燃性をもつ一方で、紫外線、酸、アルカリ等で劣化します。

4. ポリウレタン素材

ポリウレタン素材の耐熱温度は150℃程度であり、伸縮性に優れているのが特徴です。そのほか、耐寒性に優れる点も特徴として挙げられます。

5. シリカ繊維 (無機繊維)

シリカ繊維 (無機繊維) の耐熱温度は600℃~800℃であり、有機繊維では対応できない温度帯のものに対応できる点が特徴です。

耐熱手袋のその他情報

1. 耐熱手袋の点検

耐熱手袋を適切に使用する上で、使用前の点検は非常に重要です。保護具は継続的に使用することで劣化し、使用環境に耐えられなくなる可能性があります。

例えば、アラミド繊維はアミド結合によるポリマーで、ナイロンの脂肪族ポリアミドと化学構造が異なり、芳香族ポリアミドです。耐熱手袋の他にも、タイヤの補強材や防弾チョッキなどに使用されています。アラミド繊維は、紫外線や酸アルカリによって劣化するため、使用前の確認が必要です。

どんなハイテク繊維を使用していても劣化を防ぐことはできません。炭化した部分があるものや油分や洗濯による洗剤残りは防炎性を損なうため、使用前の点検と適切な管理が事故を防止するには不可欠です。

2. 火傷に関する災害事例

耐熱手袋は、作業者の安全を守る上で最も一般的な保護具ですが、耐熱手袋を着用していれば必ず事故が防げるという訳ではありません。事故が起きる主な原因は、以下の3つだと言われています。

  1. 危険を認識していない
  2. 作業手順が定められていない
  3. 危険性・有害性について教育がされていない

重大な事故を防ぐためには、適切な保護具の着用とともに日々の安全活動が重要です。耐熱手袋という防具があったとしても、作業者や管理者が危険を認識していなければ事故は防げないので、安全教育指導の徹底を心がけましょう。

参考文献
https://ec.midori-anzen.com/shop/c/cHAMA/
http://www.fibex.co.jp/about-Aramid.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo24_1.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_FND.aspx

真空チャンバー

真空チャンバーとは

真空チャンバ

真空チャンバーとは、内部の気圧を極めて低く保つために設計された密閉された容器です。

一般的には金属製の箱状の構造をしており、内部から気体を取り除くことによって真空状態を作り出します。真空チャンバーや真空容器とも呼ばれます。

真空状態では酸素や水分がほとんど存在しないため、金属やプラスチックなどの材料を酸化や腐食から保護することが可能です。真空チャンバーを使用して材料を処理することで、耐久性や品質を向上させることができます。

ただし、極低気圧や突然の気圧変化は危険を引き起こす可能性があるため、適切な訓練や指導のもとで操作する必要があります。また、チャンバーの構造や封閉性を確保し、事故や漏れのリスクを最小限に抑えるための注意が必要です。

真空チャンバーの使用用途

真空チャンバーは、さまざまな用途で使用される装置です。以下は真空チャンバーの使用用途一例です。

1. 材料研究

真空チャンバーを使用することで、材料物性を調査するのに使用されます。真空状態では気体や水分の影響を受けずに、材料の物理的な特性を調査可能です。熱伝導性、電気伝導性、弾性特性などを評価するために真空チャンバーを使用します。

また、真空チャンバーを使用して材料の表面処理や酸化防止の研究を行います。表面の腐食防止やコーティング技術の開発に利用されることが多いです。また、真空状態下で材料の劣化や酸化の挙動を観察し、耐久性や寿命を評価する場合もあります。

2. 表面処理

真空チャンバーを使用することで、物質の表面処理を実施する場合があります。中でも蒸着は、真空チャンバー内で金属や他の物質を蒸発させて基板や素材の表面に均一な薄膜を形成するプロセスです。光学コーティングや半導体製造などで広く使用されます。

3. 半導体製造

半導体製造プロセスには、真空が必要となる場合も多いです。デポジッションやエッチングは、真空下で行われることもあります。

デポジションは真空状態でガスや蒸気を導入し、半導体基板上に薄膜を成長させるプロセスです。半導体素子の製造や集積回路の形成に利用されます。

エッチングは真空中で化学的または物理的な方法で半導体表面を削除するプロセスです。微細なパターン形成や回路構造の形成に用いられます。

真空チャンバーの原理

真空チャンバーは、内部の気圧を低下させ、気体や気体分子の存在を極力排除することによって真空状態を作り出します。真空状態の維持には、真空ポンプ、シールによる気密向上、気体の除去などが重要です。

真空チャンバーではガスを除去するために、真空ポンプが使用されます。ポンプはチャンバー内のガスを吸引し、外気へ排気する場合が多いです。一般的なポンプの種類には、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ、吸引ポンプなどがあります。また、真空チャンバーは気密性が重要です。

チャンバーの閉じる部分や窓などの接合部分は、ゴム、Oリング、金属ガスケットなどのシール材料によって気密性が確保されます。適切なシール設計とシールの密閉性の確認が必要です。

ガスや揮発性物質を除去するために、真空チャンバー内にガス導入や排気装置が設置されます。これにより、チャンバー内の気体を制御し、真空度を維持することが可能です。

真空チャンバーの選び方

真空チャンバーを選ぶ際には、以下の要素を考慮することが重要です。

1. 使用目的

最初に真空チャンバーを使用する目的を明確にします。材料研究や宇宙環境シミュレーションなど、具体的な用途に合わせたチャンバーを選ぶことが重要です。

2. 必要な真空度

使用するプロセスや実験に応じて必要な真空度を決定します。一般的な真空度の範囲は、大気圧から高真空 (約10^-3 Pa) や、超高真空 (約10^-7 Pa) までさまざまです。必要な真空度に応じて適切なポンプシステムやチャンバーの設計を選びます。

3. 容積と寸法

使用する試料や装置のサイズに応じて、チャンバーの容積と寸法を選びます。十分なスペースが確保されているか、試料のサイズや形状が収容可能かを確認することが必要です。

4. 材料と気密性

チャンバーの材料と気密性は重要な要素です。耐久性と気密性の高い材料を選び、シールや接合部の気密性を確保するための適切なシール材料を選ぶ必要があります。真空チャンバーの材質は、一般的にはステンレス鋼が使用されます。

参考文献
https://www.shinku-kogaku.co.jp/vacuumchamber/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1989/48/11/48_11_1043/_pdf/-char/ja
https://www.samco.co.jp/company/primer/2018/05/necessity.php

化学防護服

化学防護服とは化学防護服の概要

図1. 化学防護服の概要

化学防護服とは、有害な化学物質を取り扱う際に作業者の安全を確保し、健康を損なわないようにする目的で着用する防護服です。

JIS規格 T8115では、「酸,アルカリ,有機薬品,その他の気体及び液体並びに粒子状の化学物質 (以下,化学物質という。) を取り扱う作業に従事するときに着用し,化学物質の透過及び/又は浸透の防止を目的として使用する防護服」と定義されています。

通常の服とは異なり、表面の隙間が非常に小さく、滑らかに作られているのが特徴です。用いられている素材も、有機溶剤の透過性が極めて低いです。本来、化学物質を対象に製造されていますが、微粒子を防ぐ効果が高いことから、生体物質、放射性物質からの防護として用いられることもあります。

化学防護服の使用用途

化学物質を取り扱う事業場、及び、核・生体物質・化学物質による災害時や、人体にとって有害なものを処理しないとならない現場での使用が主な用途です。

過去の大規模災害などにて使用された例には次のようなものがあります。

  • オウム真理教によるサリン事件の際の救護活動・捜査活動
  • 福島第一原子力発電所の事故において粒子状の放射性物質によるばく露を防護
  • 海外で起こった薬品による襲撃事件の捜査活動
  • アスベスト処理作業
  • ダイオキシンやPCB処理作業
  • 鳥インフルエンザで汚染された鶏舎の消毒、解体

また、通常化学防護服は人体に有害なものから守る目的で使用されますが、汚れから作業者を守る目的で使用されることもあります。例えば、グリースや煤汚れが多い金属加工業や、ペンキ、インクを扱う塗装・印刷業などです。

その他の用途として、再生医療の研究などにおけるクリーンルーム内では、作業者の人体に付着しているバクテリア (細菌) から、試料である細胞や製剤を守るという目的で使用されることがあります。

化学防護服の原理

防護服に用いられる様々な素材

図2. 防護服に用いられる様々な素材

化学防護服の繊維素材として、「不織布一層タイプ」「SMS」「FS」「タイベック®」などが挙げられます。使用にあたっては目的とする事象に適した規格の防護服を着ることが非常に重要です。

1. 不織布一層タイプ

スパンボンド・ポリプロピレンの素材を使用した製品です。スパンボンドの単層構造であるため、繊維間の空隙が多数あります。バリア性は多少劣るものの安価であり、コストを重視する場合に適当です。軽度の汚れなどには十分対応可能です。

2. SMS

SMSポリプロピレンを素材に用いた製品です。スパンボンド、メルトブロー、スパンボンドの3層構造となっています。強固な耐摩擦性と、布のような手触り感が特長です。比較的安価でであるものの、擦れや軽度の汚れに強く、粉じんや飛沫などに対して高いバリア効果があります。

3. FS

フィルムラミネートが使用されている製品です。ポリプロピレン、スパンボンド不織布などの表面に薄いフィルム素材を貼り付けた構造をしています。汚れ、粉じんに対するバリア性が高く、優れた防水性があるため、水場作業に適しています。

4. タイベック®

タイベックとは、デュポン社独自の特殊素材であり、0.5~10ミクロンの高密度ポリエチレンの連続極細繊維に熱と圧力を加えて結合させたものです。1ミクロン以下の微粒子に対しても優れたバリア性を発揮します。ポリマーコーティングを施した2層構造の防護服もあります。

化学防護服の種類

全身化学防護服と部分化学防護服

図3. 全身化学防護服と部分化学防護服

分類として全身や身体の大部分を防護する全身化学防護服と、身体の一部を防護する部分化学防護服の2つがあります。

全身化学防護服では自給式呼吸器を服内に装着する気密服や、液体・ミスト状の化学物質から密閉する全身防護服まで種類は様々です。部分化学防護服にはエプロンや、フットウェアカバー、実験衣、腕カバー、スモッグなどがあります。

JIS規格では具体的な形状として、「全身カプセル形防護服,液体又はスプレー防護用密閉服,続服,ジャケット,ズボン,エプロン,スモック,フード,スリーブ,フットウエアカバーなど」が指定されています。

参考文献
https://kikakurui.com/t8/T8030-2015-01.html
https://www.tyvek.co.jp/pap/knowledge/

パーティクルカウンター

パーティクルカウンターとは

パーティクルカウンター

パーティクルカウンターとは、空気中や水中に浮遊する微粒子の数を測定する装置です。

なお、パーティクルカウンターは、微粒子計測器とも呼ばれています。ある程度の清浄度が必要とされ、かつ確保されている空間、例えばクリーンルームなどの空間環境管理を目的として使用されます。

パーティクルカウンターの使用用途

パーティクルカウンターは、高い清浄度を求められる様々な産業の製造現場の空気清浄度の測定に使用されています。例えば、半導体や精密機械、食品および医薬品などの製造現場です。

空気中のほこりやカビなどの粒子は、製造歩留まりや品質および安全性に大きく影響を及ぼします。そのため、これら産業の製造現場においては、クリーンルームやエアカーテンなどを導入して空気中の清浄度を確保しており、このクリーンルームなどの内部の清浄度を管理するべく空気中の粒子を測定するのがパーティクルカウンターです。

パーティクルカウンターは、上記の産業のほか、宇宙・原子力分野などにも使用されています。

パーティクルカウンターの原理

パーティクルカンターは粒子に光を照射し、粒子により散乱された光を検知することで、粒径と個数を検出しています。パーティクルカウンターは、大まかに試料粒子を収集して検出部に供給回収する「試料供給部」と、試料粒子に光を照射する「光照射部」、試料粒子に照射された光が散乱した散乱光を検出する「検出部」で構成されています。

パーティクルカウンターの原理は以下の通りです。

  1. 試料供給部から供給された試料粒子に、光照射部からレーザー光などを照射すると、試料粒子が光を散乱します。
  2. この散乱光を検出部のレンズが捉え、フォトダイオードへ集光してから電気信号に変換し、粒子からの信号を電圧として検知します。

このとき、検知した信号はパルス状です。パルスの大きさ (波高値) は粒子による散乱強度に比例するため、粒子の大きさ (粒径) が測定できます。なお、粒径は、あらかじめ粒径が分かっている基準となる粒子の散乱強度との比較により算出しています。

また、パルスの数から粒子の数を測定することも可能です。この2つの要素から、粒径と粒子濃度 (個数) の両方を測定できます。

パーティクルカウンターの選び方

パーティクルカウンターを選ぶ際には、装置が測定できる粒子の濃度 (可測粒子濃度) と測定できる粒径 (可測粒径) および試料収集能力が重要です。

1. 可測粒子濃度

パーティクルカウンターは、1つ1つの粒子を測定するため、ある程度の濃度 (粒子の数) までは試料の単位時間当たりの流量が大きいほど測定精度は高くなります。しかし、あまりにも濃度が高い (粒子の数が多すぎる) と、一度の測定ですべての粒子を測定することはできません。

すなわち、測定可能な濃度 (可測粒子濃度) の上限値付近での測定においては不正確な測定結果や誤差が大きくなります。このことから、結果の信頼性を考えて、予測される試料の粒子濃度の5~10倍の最大可測粒子濃度の機種を選ぶ必要があります

2. 可測粒径

測定する粒子の径が、管理するクリーンルームの仕様よりも小さいパーティクルカウンターを用いると、浮遊している粒子の中で可測粒径よりも大きい粒子を測定できず、測定結果に大きな誤差が生じます。

3. 試料収集能力

粒子がパーティクルカウンターから遠く離れている、もしくは径が大きく重量が大きいため収集できないといった状況下においては、正確な測定ができない場合があります。すなわち、パーティクルカウンターでゼロの表示であっても、大きな粒径の粒子の存在を考慮して、他のツールで対策する必要があります。

クリーンルームの仕様をよく確認して、粒子の径や濃度の上限、試料収集能力がクリーンルームに合っているか検討することが大切です。

パーティクルカウンターのその他情報

1. パーティクルカウンターと粉塵計の違い

空気中の粉塵に光を当てて測定する装置には、パーティクルカウンター以外に、光学式の粉塵計 (以下、粉塵計と称します) や光学式のダストモニタ (以下、ダストモニタと称します) もあります。粉塵計とダストモニタの使用用途と測定方法は以下の通りです。

  • 粉塵計・ダストモニタの使用用途
    通常の部屋や大気、またはそれ以上の粉塵濃度の工場やトンネル内の現場で使用されます。
  • 粉塵計・ダストモニタの測定方法
    粒子を含む気体に光を照射し、散乱光を検出しますが、粒子1つ1つを測定するのではなく、まとまった状態で測定し、あらかじめ濃度が分かっている基準となる気体からの散乱光と比較して、濃度を算出しています。粒子が多い環境での使用に適しており、高い濃度まで測定が可能です。

パーティクルカウンターは前述のように、光を1つ1つの粒子に当てて測定する方法です。このような測定方法の違いから、粉塵計・ダストモニタはより多くの粒子を質量濃度 (単位〇〇mg/m3) として検出するのに対し、パーティクルカウンターは粒子の個数 (単位〇〇個/m3) と粒径を検出します。

また、粉塵計・ダストモニタは使用する環境の粉塵の濃度が高いので、吸引速度は毎分数Lで十分です。これに対し、パーティクルカウンターでは測定するもともとの粒子が少ないので、なるべく多く吸引することで測定結果の信頼性を高くできます。よって粉塵計・ダストモニタよりも速い毎分100Lの吸引速度のものもあります。

2. パーティクルカウンターの使用目的

空気中に存在する粒子は、いずれは物体表面に付着しようとします。この粒子が小さければ小さいほど後工程での除去が困難です。そのため、あらかじめ粒子の数を極力抑え、管理することが重要になります。そこで、パーティクルカウンターを用い、どの位の粒径のものがどのくらいの個数で浮遊しているのかを把握し、空気中の清浄度を必要とされるレベルに保っています。

参考文献
https://www.rion.co.jp/product/docs/10.pdf
https://www.transtech.co.jp/product/particle-qa
https://nitta-monitoring.com/particle/particle-selection/
https://www.transtech.co.jp/product/particle-qa
https://www.transtech.co.jp/product/metoneparticle

ニトリル手袋

ニトリル手袋とは

ニトリル手袋

ニトリル手袋とは、ニトリルゴムつまり合成ゴムを使用した手袋です。

ニトリルゴムとはブタジエンとアクロニトリルを結合した共重合体を指します。他のゴム製品と比べて耐油性・耐摩耗性があり、耐薬品性も高く、耐熱性に優れているのが特徴です。

ニトリルゴムの製品は、長く貯蔵できるメリットを兼ね備えています。天然ゴムと異なり、アレルギーの心配が少ない点もメリットの一つです。

ニトリル手袋の使用用途

ニトリル手袋は、様々な場所で保護具として使用されます。具体的には、耐油性を生かし、機械油を用いる機械メンテナンスや食品油脂分がある食品工場などです。また、耐薬品性があるので医療や介護など使用されることも多いです。

ニトリル手袋はポリエチレン手袋などとは異なり、フィット性があるので指先を用いた細かい作業に向いています。その特性を生かし、様々な場面で使用されています。

ニトリル手袋の原理

原料のニトリルゴムに含まれているアクロニトリルの性質によって、耐油性が高くなっています。アクロニトリルの量を増やすと、耐寒性が下がるデメリットがあります。多くの場所で使用されているのは、バランス良く配合された中高ニトリルと呼ばれるものです。耐油性に優れたニトリル手袋は、保護具としての用途に適しています。

さらに、ニトリル手袋は高い損傷耐性があります。耐摩耗性だけなく、突き刺しや引き裂きに対する強度もあります。仮に損傷しても、損傷部が大きく広がるため気づきやすく、すばやく汚染を避けられる点がメリットです。したがって、危険な物質を扱う際も安全に扱うことができます。

ニトリル手袋のその他情報

1. ニトリル手袋と食品衛生法

ニトリル手袋は、原料にフタル酸エステル類を含んでいないので、食品衛生法における食品・添加物等の規格基準に適合した製品です。フタル酸エステル類は生殖毒性などの人体への有害性が指摘されている物質で、日本だけでなく諸外国でも使用が制限されています。

食品衛生法において、フタル酸エステル類を含むポリ塩化ビニルを主成分とする合成樹脂は、食品用途の器具や容器包装への使用に規制がかかっています。厚生労働省が定めたフタル酸エステル類については、その使用が規制されています。具体的には、以下の物質が挙げられます。

  • フタル酸ジ-n-ブチル (DBP)
  • フタル酸ビス (2-エチルヘキシル) (DEHP)
  • フタル酸ベンジルブチル(BBP)
  • 及びフタル酸ジイソデシル(DIDP)
  • フタル酸ジイソノニル(DINP)
  • フタル酸ジ-n-オクチル(DNOP)

2. パウダーフリーのニトリル手袋

ニトリル手袋をはじめとする手袋製品の中には、着脱を円滑に行うためのパウダーが塗布されているものがあります。このパウダーの成分には、タルクと呼ばれる含水ケイ酸マグネシウムの粉が用いられている場合が多いです。

医療用のニトリル手袋では、以前はコーンスターチ (とうもろこしなどから得られるデンプン) を原料とする粉末が使用されていました。この手袋を使用すると、皮膚に付着したパウダーにより、稀に皮膚炎やアレルギー炎を誘発する恐れがあるとして、パウダーフリー手袋への移行が進められています。

パウダー付きの医療用の手袋の取り扱い方法について、2016年12月に厚生労働省が通知を公開しています。安全性確保の観点から、医療用途に使用しているパウダー付き手袋を、2017年3月までにパウダーフリー手袋に切り替えを行うように促す内容です。

また、切り替えの間に使用するニトリル手袋のような非天然ゴム製の手袋でパウダー付きのものは、肉芽腫や術後の癒着を形成するリスクがあります。これを考慮したうえで、使用を検討するよう記載されています。

参考文献
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11125000-Iyakushokuhinkyoku-Anzentaisakuka/0000147464.pdf
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/02/dl/s0222-6i.pdf
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/100812-1_1.pdf
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/zanryu/591228-1.html

デジタル照度計

デジタル照度計とは

デジタル照度計

デジタル式照度計とは、人間の視覚によって知覚される光の明るさを測定して数値化する測定器です。

国際単位系 (SI: International System of Units) における照度の単位であるルクス (Lx: Lux0)を用いて測定します。また、デジタル式照度計には連続的に変化する照度を段階的な数値データとして扱えるように、表示板が取り付けられているのが特徴です。

一方でアナログ式照度計には、連続的に変化する照度を連続的な変化を示す針等によって認知できる目盛板が取り付けられています。

デジタル照度計の使用用途

デジタル照度計は、光の明るさを測定する際に使用されます。表示される値が比較的読み取りやすいため、測定の初心者には扱いやすいです。

デジタル照度計には、センサー部と表示部が繋がった一体型、ケーブル等で離しているセパレート型があり、移動に従う場合や屋外にて簡易に照度を調べる場合は一体型、実験や試験などで人工気象室内の値をとる場合はセパレート型が適しています。

一体型は、携帯性が良いので持ち運びに便利なものが多いです。手軽に測定できる安価なものから、特殊環境やデータロガー機能を有する高価なものまであります。セパレート型は、光源の種類や測定環境に合わせた受光部を選択して変更することができたり、多点を同時に測定してデータを記録できたりするものがあります。

また、労働安全衛生規則第604条において、作業面の照度基準ですが、精密な作業は300Lx以上、普通の作業は150Lx以上、粗な作業は70Lx以上となっています。JIS Z9110において、営業室、設計室、玄関ホール等は 750-1,500Lx、役員室、会議室、電算機室等は300-750Lxです。そのため、労働衛生環境を維持する必要のある学校、工場、家、ビル等の施設でも使用されます。

デジタル照度計の原理

照度計の受光部には光の照射によって、電気抵抗が低下するフォトレジスタ、または電流や電圧を発生させるフォトダイオードを組み込んだものが多いです。これらの電子部品を用いると、光の強度を電流値や電圧値にアナログ変換できることから、照度を認知できるようになります。

さらに、アナログ変換された照度の値をデジタル変換するために、A/Dコンバーター (英: Analog-to-digital converter) を回路に組み込み、表示板で数値化します。光の強度を目の感度に合致させるための光学フィルタを受光部の上に設置して、標準光源としてフィラメント型電球を用いて検量線を引き、デジタル照度計の値を校正します。

そのため、標準電球と異なる波長特性を有する蛍光灯、LED照明、異なる天候時の太陽光などの照度は、構造や部品の異なる照度計を用いて測定した場合、異なる照度になることがあります。照度データを取得後に比較する際には、同じ構造や部品で構成された同じ型番のデジタル照度計を用いるような工夫が必要です。

デジタル照度計の選び方

デジタル照度計を選ぶ際には、以下の点を考慮する必要があります。

1. 測定範囲

デジタル照度計を選ぶ上で最も重要なことは、測定をしたい照度範囲に対応しているかどうかです。範囲に加え、精度を重要視する場合は高精度な測定ができる照度計を選ぶ必要があります。

2. 単位と表示

使用する国や業界の標準に合った照度単位を表示できるか確認が必要です。また、デジタル表示が明瞭で読み取りやすいものの方が読み取り間違いを防止できます。

3. 操作性と使いやすさ

ボタンの配置やメニュー構造が分かりやすく、直感的な操作が可能な照度計がポイントです。使いやすいインターフェースがあり、設定やデータの読み取りが簡単なものがおすすめです。

4. 応答時間

照度変化を素早く検知し表示する時間なので、瞬時の変動や高速な動作環境で使用する場合には、短い応答時間を持つ照度計を選ぶことが重要です。必要に応じてアラートや早急な対応を要することもあります。

5. 電源とバッテリー寿命

デジタル照度計は電源を必要としますが、使用する環境に合わせて電池駆動やACアダプター対応などの電源オプションの状況を確認しておきます。また、バッテリー寿命が長く、充電時間が短い製品を選ぶことも重要です。