化学防護服

化学防護服とは化学防護服の概要

図1. 化学防護服の概要

化学防護服とは、有害な化学物質を取り扱う際に作業者の安全を確保し、健康を損なわないようにする目的で着用する防護服です。

JIS規格 T8115では、「酸,アルカリ,有機薬品,その他の気体及び液体並びに粒子状の化学物質 (以下,化学物質という。) を取り扱う作業に従事するときに着用し,化学物質の透過及び/又は浸透の防止を目的として使用する防護服」と定義されています。

通常の服とは異なり、表面の隙間が非常に小さく、滑らかに作られているのが特徴です。用いられている素材も、有機溶剤の透過性が極めて低いです。本来、化学物質を対象に製造されていますが、微粒子を防ぐ効果が高いことから、生体物質、放射性物質からの防護として用いられることもあります。

化学防護服の使用用途

化学物質を取り扱う事業場、及び、核・生体物質・化学物質による災害時や、人体にとって有害なものを処理しないとならない現場での使用が主な用途です。

過去の大規模災害などにて使用された例には次のようなものがあります。

  • オウム真理教によるサリン事件の際の救護活動・捜査活動
  • 福島第一原子力発電所の事故において粒子状の放射性物質によるばく露を防護
  • 海外で起こった薬品による襲撃事件の捜査活動
  • アスベスト処理作業
  • ダイオキシンやPCB処理作業
  • 鳥インフルエンザで汚染された鶏舎の消毒、解体

また、通常化学防護服は人体に有害なものから守る目的で使用されますが、汚れから作業者を守る目的で使用されることもあります。例えば、グリースや煤汚れが多い金属加工業や、ペンキ、インクを扱う塗装・印刷業などです。

その他の用途として、再生医療の研究などにおけるクリーンルーム内では、作業者の人体に付着しているバクテリア (細菌) から、試料である細胞や製剤を守るという目的で使用されることがあります。

化学防護服の原理

防護服に用いられる様々な素材

図2. 防護服に用いられる様々な素材

化学防護服の繊維素材として、「不織布一層タイプ」「SMS」「FS」「タイベック®」などが挙げられます。使用にあたっては目的とする事象に適した規格の防護服を着ることが非常に重要です。

1. 不織布一層タイプ

スパンボンド・ポリプロピレンの素材を使用した製品です。スパンボンドの単層構造であるため、繊維間の空隙が多数あります。バリア性は多少劣るものの安価であり、コストを重視する場合に適当です。軽度の汚れなどには十分対応可能です。

2. SMS

SMSポリプロピレンを素材に用いた製品です。スパンボンド、メルトブロー、スパンボンドの3層構造となっています。強固な耐摩擦性と、布のような手触り感が特長です。比較的安価でであるものの、擦れや軽度の汚れに強く、粉じんや飛沫などに対して高いバリア効果があります。

3. FS

フィルムラミネートが使用されている製品です。ポリプロピレン、スパンボンド不織布などの表面に薄いフィルム素材を貼り付けた構造をしています。汚れ、粉じんに対するバリア性が高く、優れた防水性があるため、水場作業に適しています。

4. タイベック®

タイベックとは、デュポン社独自の特殊素材であり、0.5~10ミクロンの高密度ポリエチレンの連続極細繊維に熱と圧力を加えて結合させたものです。1ミクロン以下の微粒子に対しても優れたバリア性を発揮します。ポリマーコーティングを施した2層構造の防護服もあります。

化学防護服の種類

全身化学防護服と部分化学防護服

図3. 全身化学防護服と部分化学防護服

分類として全身や身体の大部分を防護する全身化学防護服と、身体の一部を防護する部分化学防護服の2つがあります。

全身化学防護服では自給式呼吸器を服内に装着する気密服や、液体・ミスト状の化学物質から密閉する全身防護服まで種類は様々です。部分化学防護服にはエプロンや、フットウェアカバー、実験衣、腕カバー、スモッグなどがあります。

JIS規格では具体的な形状として、「全身カプセル形防護服,液体又はスプレー防護用密閉服,続服,ジャケット,ズボン,エプロン,スモック,フード,スリーブ,フットウエアカバーなど」が指定されています。

参考文献
https://kikakurui.com/t8/T8030-2015-01.html
https://www.tyvek.co.jp/pap/knowledge/

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