マッフル炉

マッフル炉とは

マッフル炉

マッフル炉とは、高温域での加熱に使用される電気炉の一種で、熱源でアルミナなどでできた耐熱性のある板を遮蔽し、この板により高温で加熱する機械です。

マッフル炉の使用用途

マッフル炉は雰囲気の変化が少なく、比較的温度ムラが少なく加熱できるため、多用途に使われます。

  • セラミックス (タイルガラス、がいし) の焼成・脱脂
  • 厚膜焼成 (貴金属導体・抵抗体・誘導体) 
  • 電極乾燥
  • ガラス封止
  • 金属の焼きなまし
  • 重金属、ヒ素、強熱残分などの高温での過熱を必要とする医薬品や食品、化粧品などの品質試験
  • 高温測定用センサ試験

マッフル炉の原理

マッフルは「包む」という意味で、アルミナ磁器などの耐火材を指します。従来るつぼの加熱などではバーナーの火力が低くても高温になるように、マッフルでできた容器にるつぼを入れ、直接バーナーで加熱する方法がとられていました。また、セラミック焼成はヒーターが露出した電気炉が使用されていましたが、使用温度制御の点で問題がありました。

これを電気炉に応用したものが、マッフル炉です。マッフル炉では、炉内は耐火物で覆われており、熱源は露出していません。炉体の外側から間接加熱する構造のため、断熱保温性があり温度の変動が少なく安定した雰囲気を維持できます。温度の均一性が高く、温度のひずみが製品の品質に影響を及ぼしたり、実験器具が割れたりする場合にも使えます。

また、重金属やヒ素、強熱残分などは強酸を使用してサンプルを処理する必要があるため、少なからず炉内の雰囲気に酸が混入していました。マッフル炉であれば、ヒーターが守られるためリスク回避が可能です。

マッフル炉の種類

1. 卓上型

実験室で使われるのが卓上型です。より精度を向上させるために、ガス置換が可能で窒素を通せるタイプや真空タイプも販売されています。またダクトへ有害ガスを排気する仕様も可能です。扉の開閉方式もレバーで上下するタイプや扉を開けるタイプがあります。

2. ベルト搬送式

大量生産に合致した方式では、マッフル炉内をメッシュベルトが動き、マッフル炉を入ってから出るまでの間に焼成が完了するように設定します。

マッフル炉の構造

1. 熱源

熱源は上下左右4面に配置されており、高速な昇温が可能です。熱源には鉄ークロム線 (常用温度850℃) や、より高温の使用範囲を持つ製品 (1,600℃) では、二硅化モリブデンなどが用いられます。

熱の発生には、抵抗加熱で電流を流す方法がとられています。これは、電気エネルギーが100%熱に変換される非常に効率的な方法です。そのうえ、熱量=電力量なので温度の管理が簡単に行えるメリットがあります。

2. 温度センサ

温度センサには、異なる2種類の金属導体で構成された温度センサである熱電対が使用されています。JIS規格では、熱電対はR、K、Bなど規定されており、それぞれ使用範囲によって使い分けられています。

炉内のマッフルとなる断熱材にはアルミナシリカを主成分とした無機繊維のセラミックファイバーが耐火物として用いられます。これらは、急熱、急冷に強く化学的に安定した素材です。機種によっては温度の昇降をプログラム制御したり、徐冷機能がついた製品もあります。

3. 安全装置

マッフル炉内は高熱であり、加熱時には大変危険です。過加熱を防ぐため、過電流ブレーカーやマイコン異常検知装置がついていたり、扉を開けると電流が流れなくなる装置など安全面で配慮されています。

4. 扉

扉と炉体 (本体) の間には隙間があり、それぞれ熱による膨張率が異なるため、破損防止のための仕様となっています。

参考文献
https://www.yamato-net.co.jp/word/40
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/thermometry/thermocouple.jsp
https://www.hakko.co.jp/qa/qa_0_01.htm
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000641289.pdf

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