真空チャンバーとは
真空チャンバーとは、内部の気圧を極めて低く保つために設計された密閉された容器です。
一般的には金属製の箱状の構造をしており、内部から気体を取り除くことによって真空状態を作り出します。真空チャンバーや真空容器とも呼ばれます。
真空状態では酸素や水分がほとんど存在しないため、金属やプラスチックなどの材料を酸化や腐食から保護することが可能です。真空チャンバーを使用して材料を処理することで、耐久性や品質を向上させることができます。
ただし、極低気圧や突然の気圧変化は危険を引き起こす可能性があるため、適切な訓練や指導のもとで操作する必要があります。また、チャンバーの構造や封閉性を確保し、事故や漏れのリスクを最小限に抑えるための注意が必要です。
真空チャンバーの使用用途
真空チャンバーは、さまざまな用途で使用される装置です。以下は真空チャンバーの使用用途一例です。
1. 材料研究
真空チャンバーを使用することで、材料物性を調査するのに使用されます。真空状態では気体や水分の影響を受けずに、材料の物理的な特性を調査可能です。熱伝導性、電気伝導性、弾性特性などを評価するために真空チャンバーを使用します。
また、真空チャンバーを使用して材料の表面処理や酸化防止の研究を行います。表面の腐食防止やコーティング技術の開発に利用されることが多いです。また、真空状態下で材料の劣化や酸化の挙動を観察し、耐久性や寿命を評価する場合もあります。
2. 表面処理
真空チャンバーを使用することで、物質の表面処理を実施する場合があります。中でも蒸着は、真空チャンバー内で金属や他の物質を蒸発させて基板や素材の表面に均一な薄膜を形成するプロセスです。光学コーティングや半導体製造などで広く使用されます。
3. 半導体製造
半導体製造プロセスには、真空が必要となる場合も多いです。デポジッションやエッチングは、真空下で行われることもあります。
デポジションは真空状態でガスや蒸気を導入し、半導体基板上に薄膜を成長させるプロセスです。半導体素子の製造や集積回路の形成に利用されます。
エッチングは真空中で化学的または物理的な方法で半導体表面を削除するプロセスです。微細なパターン形成や回路構造の形成に用いられます。
真空チャンバーの原理
真空チャンバーは、内部の気圧を低下させ、気体や気体分子の存在を極力排除することによって真空状態を作り出します。真空状態の維持には、真空ポンプ、シールによる気密向上、気体の除去などが重要です。
真空チャンバーではガスを除去するために、真空ポンプが使用されます。ポンプはチャンバー内のガスを吸引し、外気へ排気する場合が多いです。一般的なポンプの種類には、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ、吸引ポンプなどがあります。また、真空チャンバーは気密性が重要です。
チャンバーの閉じる部分や窓などの接合部分は、ゴム、Oリング、金属ガスケットなどのシール材料によって気密性が確保されます。適切なシール設計とシールの密閉性の確認が必要です。
ガスや揮発性物質を除去するために、真空チャンバー内にガス導入や排気装置が設置されます。これにより、チャンバー内の気体を制御し、真空度を維持することが可能です。
真空チャンバーの選び方
真空チャンバーを選ぶ際には、以下の要素を考慮することが重要です。
1. 使用目的
最初に真空チャンバーを使用する目的を明確にします。材料研究や宇宙環境シミュレーションなど、具体的な用途に合わせたチャンバーを選ぶことが重要です。
2. 必要な真空度
使用するプロセスや実験に応じて必要な真空度を決定します。一般的な真空度の範囲は、大気圧から高真空 (約10^-3 Pa) や、超高真空 (約10^-7 Pa) までさまざまです。必要な真空度に応じて適切なポンプシステムやチャンバーの設計を選びます。
3. 容積と寸法
使用する試料や装置のサイズに応じて、チャンバーの容積と寸法を選びます。十分なスペースが確保されているか、試料のサイズや形状が収容可能かを確認することが必要です。
4. 材料と気密性
チャンバーの材料と気密性は重要な要素です。耐久性と気密性の高い材料を選び、シールや接合部の気密性を確保するための適切なシール材料を選ぶ必要があります。真空チャンバーの材質は、一般的にはステンレス鋼が使用されます。
参考文献
https://www.shinku-kogaku.co.jp/vacuumchamber/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1989/48/11/48_11_1043/_pdf/-char/ja
https://www.samco.co.jp/company/primer/2018/05/necessity.php