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SAWフィルタについての概要、用途、原理などをご説明します。また、SAWフィルタのメーカー16社一覧や企業ランキングも掲載しております。SAWフィルタ関連企業の2025年2月注目ランキングは1位:アスニクス株式会社、2位:太陽誘電モバイルテクノロジー株式会社、3位:日本電波工業株式会社となっています。
SAWフィルタとは、特定の周波数を持った電気信号を選択的に取り出すことができるフィルタです。
表面弾性波フィルタを意味する「Surface Acoustic Wave Filter」の頭文字をとっています。圧電素子を伝わる表面波を用いて、機械的振動をフィルタリングすることで、急峻な周波数依存特性の作成が可能であり、特定の周波数成分を通過、あるいは遮断することができます。表面波とは、媒体の表面を伝わる波で、表面から内部にかけて急激に振幅が減衰するのが特徴です。
SAWフィルタでは電気信号を入力すると、圧電素子によって機械的振動に変換され特定の振動数のみを選択し、再び電気信号に戻して出力します。
SAWフィルタは、ロスが少なく、優れたカットオフ特性を持っていることからスマートフォン等の携帯端末、テレビチューナー、無線LANなどの無線通信機器での送信 (Tx) 受信 (Rx) の切り替え用フィルタであるデュプレクサ用途向けなどに非常によく用いられています。
急峻な共振特性を活用して、不要な周波数帯のノイズを低減する目的で使用されており、携帯電話で通話する際の音質向上などに貢献しています。SAWフィルタは、低コストなうえ、容易に小型化薄型化することができるため、携帯端末の高機能化になくてはならない存在です。
また、携帯端末で用いる通信周波数の端末一台あたりのバンド数も年々増加していることから、SAWフィルタを用いた周波数帯域 (Band) のふるいわけは、無線通信技術のコアであると言えます。
SAWフィルタは、タンタル酸リチウムなどの圧電基板上に形成した櫛形電極において、弾性表面波のある振動モードを共振子として活用することにより、必要な周波数成分以外の信号を急峻にフィルタリングして減衰させる電気的なフィルタ特性を有しています。
実際のSAWフィルタは、圧電基板上に電極を櫛形に配置した構造をしています。これに駆動用の電極を持っており、入力した高周波の電気信号によって電圧が発生すると、櫛形に並んだ電極同士の間隔に応じた振動が発生するという仕組みです。
この振動は、複数の櫛形電極によって共振を起こすため、どんどん増幅されます。このときの振動が表面波となり、最終的に検出用の電極に伝播します。そこで、機械的振動を再び電気信号に変換することで、フィルタ機能を有するデバイスとなります。
どれくらいの周波数を透過させるかなどを表すフィルタ特性は、圧電体の物性値と電極構造次第です。表面波の伝播速度は材質ごとに異なるので、どのような圧電素材を使用するかで、フィルタの性能は大きく左右されます。
昨今のスマートフォンにおいては、増加の一途をたどる通信伝送容量に対応するため、変調帯域幅を拡大させるための様々な方式もさることながら、CA (キャリアアグリゲーション) やMIMOと呼ばれるマルチバンド化への対応がますます顕著になっています。中でも4G (LTE) や5Gに代表されるFDD変調方式では、時間分割多重でのTDD方式と異なり、送信と受信を同時に実施します。
よってTx (送信) Rx (受信) 周波数の振り分けに欠かせないフィルタは、その搭載数が増加の一途をたどっています。特にハイエンド機種においては、その端末はグローバルに世界各地で利用可能である必要があるため、モジュール化による小型化要求が顕著です。
一つの通信モジュールに複数のバンド対応フィルタが搭載され、その通信モジュールがさらに周波数カテゴリ毎に複数搭載されるため、SAWフィルタのマーケット (市場) は拡大し続けています。ローエンド機種では、モジュール化ではなく、ディスクリート商品を端末に搭載する場合も多いですが、ここでも周波数の拡大の波は続いており、数量、売り上げ規模共に増加傾向です。
SAWフィルタ-は取り扱うメーカーも非常に多く、日系の電子部品メーカーがその存在感を放っています。
SAWフィルタは、圧電体の基板上の弾性表面波を活用するフィルタ素子ですが、BAWフィルタはそれとは異なる原理を有しています。BAWフィルタにはFBAR型 (Film Bulk Acoustic Resonator) やSMR (Solid Mounted Resonator) 型と呼ばれる構造があります。
FBARは、共振器の下部に空洞 (キャビティ) を設けることで、圧電膜を自由に振動させる構成です。もう一つのSMRは、音響多層膜を共振器の下に設けることで、弾性波を反射させる構成をとっています。
SAWフィルタはコスト面で非常に優れているために、600MHz帯から2GHz近傍の主にLow Bandと呼ばれる周波数バンドで広く用いられるフィルタです。一方でBAWフィルタは工程が複雑でコストも高くなりがちですが、SAWフィルタと比較しての高Qと急峻なフィルタ特性を得やすい利点を有し、一部の1,800MHz帯のUS向けBandと2GHz以上の高い周波数領域で主に使われています。
なお、SAWフィルタには、温度特性を制御補償するTC-SAWフィルタと呼ばれるフィルタがあり、低コストの他に温度制御による周波数管理が必要なアプリケーションで用いられています。
5Gの市場においては、UHB (Ultra High Band) やSub6GHzといった3~6GHz帯の対応が多く、この市場ではWiFiとの共存や高い周波数での損失増加への補填を見据えて、より急峻な高いQ値のフィルタ特性が要求されるためにBAWフィルタの存在が大きいです。特に、USメーカー (BroadcomやQorvo) がBAWフィルタのシェアを獲得している状況です。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiep1985/3/4/3_4_11/_pdf
http://www.asnics.com/case/2018/10/16/3
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/08809/
*一部商社などの取扱い企業なども含みます。
順位 | 会社名 | クリックシェア |
---|---|---|
1 | アスニクス株式会社 |
38.2%
|
2 | 太陽誘電モバイルテクノロジー株式会社 |
17.1%
|
3 | 日本電波工業株式会社 |
10.5%
|
4 | 日清紡マイクロデバイス株式会社 |
9.2%
|
5 | 株式会社村田製作所 |
6.6%
|
6 | Walsin Technology Corporation |
3.9%
|
7 | 京セラ株式会社 |
3.9%
|
8 | Yuechung International Corp(YIC) |
2.6%
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9 | クロニクス株式会社 |
1.3%
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10 | Qorvo, Inc. |
1.3%
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