OCR

OCRとは

OCR

OCRとは、光学文字認識 (Optical Character Recognition / Reader) の略語で、カメラやスキャナで取り込んだ画像の文字部分を認識し、コンピューターが認識できるテキストデータに変換する技術です。

手書き文字でもOCRによってテキストデータ化されるため、一旦取り込んでしまえば、後から検索をかけることによって、目的の文書にすぐにアクセスすることができます。製品としては、物理的なOCRスキャナや自前で用意した画像に対して、クラウド上でOCRを行うサービスが販売されています。

OCRの使用用途

OCRは、特に手書き文書の電子化のために用いられる場合が多く、ペーパーレス化や文書へのアクセシビリティの向上を目的として導入されています。現在は、様々な手続きがオンラインで行われますが、手書きの書類による手続きが主流のものもあります。

例えば、学校の入学願書、イベントや街頭などで行われるアンケート調査などです。紙の文書はかさばるだけでなく、目的の文書を探すのに時間がかかってしまいます。これまでは、手書きの文字を人の手で再度データ化するということが行われてきました。

しかし、OCRの導入により、スキャンするだけで検索・編集可能なデータに変換できるため、伝票や領収書などを電子化することによって、業務の効率化に大きく貢献します。

OCRの原理

OCRは画像を取り込んだ後、文字認識を行うために大きく分けて3つの処理を行っています。

  1. 文字が書かれている部分を抽出するために、レイアウト解析と呼ばれる処理で、文字部分とそうでない部分を大まかに分けます。
  2. レイアウト解析で抽出した文字列のかたまりから、列や行を決定します。
  3. 列や行の中から一文字一文字を切り出して、文字認識を行います。

こうして抽出された文字を同定するために、さらに3つの処理を行います。

  1. 文字サイズの正規化を行い、均等なサイズの文字として扱います。
  2. 1つの文字を線分の集合と考えて、それぞれを方向成分に分解することで文字の特徴を数値化します。
  3. 予め登録してあるテンプレートと比較して、パターンマッチングを行い文字を特定します。

3の工程で判断する際の指標は、ユークリッド距離の計算によって算出します。ユークリッド距離とは、人が定規で測るような二点間の距離のことで、ピタゴラスの公式 (三平方の定理) で得られる距離です。

最近では、最後のマッチングに機械学習を取り入れることによって、識字率を向上させる取り組みが盛んに行われています。

OCRソフトの種類

近年では従来型のOCR以外にも、様々な形態でOCRが提供されています。例えば、クラウドサービスとして提供されているOCRでは、ソフトのインストールが不要で、画像ファイルをクラウドサービス側に送信することによって、テキストデータを得ることができるようになりました。

また、スマートフォンアプリとして提供されているOCRでは、スマートフォンのカメラで撮影した画像をリアルタイムでテキスト化することが可能です。また、翻訳ソフトや家計簿ソフトなどにOCRが組み込まれているケースも多く、OCRでテキストを読み取ったうえで翻訳を行ったり、レシートを読み取り、自動で家計簿を作成したりできるサービスも登場しました。

これらのOCRソフトは、一定規模以下の利用であれば無料で利用できるケースも多くあり、OCRを試験的に導入することもできます。

OCRのその他情報

AIを用いたOCR

近年では、AIを用いたOCRが普及しつつあります。AIを用いたOCRはAI-OCRと呼ばれ、増えすぎた書類のデジタル化などを目的として、企業で導入されるケースも増えてきています。

従来のOCRと比較して、機械学習の手法を用いることでより高精度に文字認識ができることが特徴です。印刷された文字のように読み取りが容易な場合であれば、ほぼ100%に近い精度で読み取りが可能となります。

また、従来型のOCRでは、読み取りの前に読み取り位置や項目の定義を行う必要がありました。しかし、AI-OCRであれば、読み取り位置や読み取り項目をAIが自動で判別するため、事前の設計作業は不要です。これによって、多種多様な書類を、簡便に読み取ることができるようになりました。

最近では、RPAと呼ばれる業務の自動化ツールが普及しつつあります。RPAとはロボティックプロセスオートメーション (Robotic Process AUtomation) の略語です。AI-OCRで書類を自動読み取りしたうえで、RPAを用いて処理を自動化するような使い方が注目されています。これにより、単純作業の自動化が実現されます。

参考文献
https://mediadrive.jp/technology/techocr05.html
https://www.ricoh.co.jp/service/cloud-ocr/column/aiocr/

画像処理システム

画像処理システムとは

画像処理システムとは、2次元・3次元の画像やデータを加工・合成したり特性を読み取ったりする一連のシステム構成のことです。

画像処理システムは人の目に代わり、様々な判定や測定を可能にするため、自動機や産業用ロボットには欠かせない技術となっています。

画像処理システムの使用用途

現代において下記のような画像処理は極めて広い領域で活用されています。

1. 医療分野

医療分野における代表的な画像処理がCT検査とMRI検査です。CTは従来のX線検査の画像を2次元から3次元に拡張することで体内を全体的に観察できるようになりました。MRIでは強磁場と電磁波により放射線を使うことなく診断が可能です。どちらの検査も画像処理技術を用いて体内を色々な角度から観察できます。

2. 産業分野

産業分野では製造ラインで多くの画像処理システムが用いられています。組立工程における部品の認識、ピックアップ、アライメントや、検査工程における個数検査、外観検査、寸法検査や、出荷工程における選別、梱包などだけでなく、危険監視に至るまで広い範囲で用いられており、工程の自動化に大きく貢献しています。

3. 交通分野

交通分野における代表的な利用用途は自動車の運転支援や運転自動化があります。前方だけでなく360°全体のカメラ画像を処理することにより、歩行者や障害物、他の車両の検知などを行い、運転者への注意喚起や回避行動を行います。

自動車以外にも鉄道システムにおいて設備監視や保安監視に適用され、屋外という明るさの変化する環境下と鉄道沿線という広い領域を人に代わって監視するのに役立っています。

4. セキュリティ分野

セキュリティ分野での代表的な利用例が顔認証システムです。スマートフォンで広く使われている他、建物内での入退室のセキュリティ強化にも役立っています。

画像処理システムの原理

画像処理システムは下記の流れで動作します。

1. 画像入力

主にCCDセンサを用いて光の分布を電気信号に変換します。

2. 平滑化

前処理のひとつである平滑化は、ピンボケのようになめらかな濃淡変化を与える処理です。平滑化はフィルタに覆われる領域内画素の平均値を計算し、その値を新しい画素数と定義するため平均化フィルタとも呼ばれます。画像を平滑化してノイズを除去する空間フィルタとして使用されます。

3. 特徴抽出

特徴画像のひとつに二値画像が挙げられます。二値化とは、濃さが数段階ある状態から、白と黒の2段階のみにすることで、濃さが白か黒のどちらかだけになった画像を2値画像と言われます。

階調値を用いて画像の性質を知る方法のひとつにヒストグラムがあります。横軸に画素数を、縦軸に画素数の頻度をとり、その情報をグラフにしたものです。その上で、ヒストグラムの横軸の階調数をどこかで2つに分け、階調数がそれより大きければ画素データは1、小さければ0のように分割する処理方法です。

4. 評価

特徴抽出で得られた特徴画像を目的に応じて評価します。

画像処理システムのその他情報

1. 画像処理システムのカメラ選定

画像処理する上でカメラ選びは非常に重要です。カメラは画像処理システムの中では、画像の入力プロセスでのワークの画像データを取得するために使用します。

生産現場などでは、製品のキズや状態を検査するために目の機能を果たすカメラを用いて基板などの検査対象物を撮影しますが、撮影する条件が異なると検査精度にバラつきが生じる原因となります。

撮影条件をなるべく同じにするために、レンズや照明などとともに適切にカメラを選ぶ必要があります。画像処理システムの方式は大きく分けて下記の2つです。

エリアセンサカメラ方式
この方式は最も一般的に用いられる撮像方式で、2次元の画像を得ることが可能です。取得できる画像のサイズはカメラによって決定します。

ラインセンサカメラ方式
この方式は1次元の画像を連続的に取得し、2次元の画像を得ることが可能です。画像を取得する際は、カメラもしくはワークが一定方向に動いている必要があります。比較的大きなワークの撮像に有効な方式です。要件を十分に把握した上で適切なカメラの選定を行うことが必要です。

2. 画像処理システムのリアルタイム処理

画像処理システムの中での計算処理やソフトウェアまたはハードウェアで行われます。ソフトウェアによる処理はプログラム変更で様々な変更に対応できるため柔軟性が高いのですが、危険回避などに関わるリアルタイム性が要求される場面ではハードウェアによる処理が必要となります。

例えば、自動車での駐車時の衝突回避に用いられるアラウンドビューモニターは本来カメラが存在していない自動車上空からの画像をリアルタイムで映し出していますが、ここではASICなどの専用ハードウェアにより、車載カメラからの画像データを合成処理して画像をリアルタイムに生成しています。

参考文献
https://it-mint.com/2018/10/08/binarization-and-feature-measurement-for-image-processings-1570.html
https://www.visco-tech.com/newspaper/column/detail11/
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2004/09/news052.html

高電圧プローブ

高電圧プローブとは

高電圧プローブとは、高い電圧を測定することができる受動プローブです。

数百Vを超えるような高電圧測定では、標準の電圧プローブを用いると壊れてしまい、測定ができません。汎用プローブは高周波・高電圧の対応が困難です。それに対して、高電圧プローブは、数千~数万Vの高い電圧まで測定することが可能であり、高電圧専用の受動プローブです。

高電圧プローブは、オシロスコープや専用の計測器に接続して、電圧波形を測定する場合などに使用されます。高い周波数の大きな電圧を測定すると、プローブはすぐに発熱するため、火傷や感電事故に十分注意する必要があります。

高電圧プローブの使用用途

高電圧プローブは、数百V以上の高い電圧の波形測定用です。IGBT (絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ) などのパワーデバイスを使用したモータードライバスイッチング電源、インバータ、コンバータなどの信号測定に多く使われます。

また、直流回路などの高い電圧負荷が考えられる場合に使用されることが多く、ブラウン管のアノード電圧測定用も用途の1つです。系統を遮断せずにメガソーラーなどの太陽光発電設備の安全点検やハイブリッド車や電気自動車に使用される高電圧電気システムの測定などの用途もあります。

プローブを選択する際は、周波数帯域、入力抵抗、入力容量、動作電圧範囲、及び対応するオシロスコープの機種などを考慮します。

高電圧プローブの原理

高電圧プローブは、オシロスコープなどの計測器の内部抵抗と、プローブの倍率抵抗との比で分割して、高電圧を測定する方式です。高電圧を測定する場合、100:1、もしくは、1,000:1などの減衰比を持つ高電圧プローブを使用します。

プローブを使用して、テストポイント、すなわち信号源とオシロスコープを物理的かつ電気的に接続します。また、電圧プローブの最大許容電圧は周波数が高くなるほど減少する性質があることから、定格の確認が必要です。

具体的には、入力端子とオシロスコープ入力部の間にプローブが設置されており、そこを通過する波形を測定します。高周波の信号を測定する時には入力容量が負荷となり、信号に影響を及ぼしますが、高減衰比を持つプローブを介して接続することにより、より正確な波形が測定可能です。

高電圧プローブの構造

高電圧プローブの中でも測定する電圧範囲により、構造は異なります。オシロスコープメーカから販売されているDC25KV程度の製品は、一般的なプローブと同様に手持ちで扱えます。

高電圧プローブの構成は、プローブ本体とマッチングボックス、及びそれらを繋ぐケーブルです。プローブの内部に絶縁オイルやガスを充填し、耐電圧性能を高める構造になっています。プローブ本体の入力抵抗は、アッテネータの減衰量によりますが、100~1,500MΩ程度の大きな値のものが使われます。

マッチングボックスは位相補償を行うもので、アッテネータの減衰量が大きいことや、長いケーブルを使うことから、調整手順は通常の受動プローブより複雑です。高電圧プローブのメーカーが調整して出荷し、ユーザーによる調整を禁じている場合もあります。

高電圧プローブのその他情報

1. 高電圧プローブの安全対策

高電圧プローブは高電圧を取り扱うので、種々の安全対策が行われます。

  • 被測定系が高電圧なので離れた位置から測定できる様に、ケーブルは長いもの (3mから10m程度) が用意されています。
  • 手持ちでの操作を前提としたプローブでは、人体への放電を防ぐために設けられるのが、大きなガードリングです。また、固定前提のプローブ本体には、プローブ自体を接地するためのターミナルを設けます。
  • 取り扱いの注意も重要です。例えば、高周波の電圧を測定する場合、高周波ほどプローブの許容電圧は低下するので、メーカーの特性図を十分把握する必要があります。また、プローブの接地端子が外れると、入力端子や筐体に高電圧がかかり、危険です。

2. 絶縁プローブ

絶縁プローブとは、プロー ブだけをフローティング状態にしたものです。オシロスコープ本体とは電気的に絶縁されています。

プローブを絶縁させるには、トランスを用いてプローブの先端部とオシロスコープとを分離する方法と、プローブ先端部で受けた電気信号を光電変換して光ファイバーで伝送し、受信機側で元の信号に戻す方法があります。何れもプローブとオシロスコープ間に電気的な導通はなく、互いに絶縁された状態ですが、プローブが検出した信号はオシロスコープ側に伝えられます。

このような構成なので、オシロスコープ本体は適切に接地された状態でも、絶縁プローブのチップと グランド・リード間に加わる被測定回路の信号には影響しません。従って、被測定回路に非常に高いコモンモード電圧が乗っている場合でも、絶縁プローブを利用すればチップとグランド・リード間の差動電圧だけを測定することができます。

参考文献
https://www.techeyesonline.com/tech-column/detail/Reference-DigitalOscilloscope-03/
http://www.rf-world.jp/bn/RFW29/samples/p030-031.pdf
https://jp.tek.com/datasheet/isolated-measurement-systems-tivp1-tivp05-tivp02-datasheet

X線検査装置

X線検査装置とは

X線検査装置

X線検査装置とは、対象物にX線を照射し、透過したX線を測定・解析することで、対象物を破壊することなく内部の異物や破損を検出可能な装置です。

元素の特定や有害物質の含有率を正確に計測することも可能です。

X線検査装置の使用用途

X線検査装置は、医療分野や食品・電子部品の製造加工のみならず、建設業界や航空業界などあらゆる場面で利用されています。下記のような使用用途が代表的です。

  • 医療分野: レントゲン撮影、CTスキャンなど
  • 製造業 : 異物の検出、製品の検品など
  • 建設業 : コンクリートなどの非破壊検査
  • 航空業 : 空港での荷物検査など

図3-X線撮影の造影イメージ

図1. X線撮影の造影イメージ

医療分野におけるX線検査装置による造影は、透過X線の強度が大きい部分ほど白く映り、逆に照射X線が減衰した部分は黒く映ります。透過X線の強さは、対象物質の原子番号と密度、厚さなどの要素により決まります。 原子番号が大きいほど、密度が大きいほど、厚いものほど照射X線が遮蔽され、透過X線の強度が小さくなります。

例えば、人体を対象にしたレントゲン撮影の場合は下記のように造影されます。

  • 透過度が高い (黒色) : 空気 (肺、消化管ガス) や脂肪
  • 透過度が中程度 (灰色) : 水 (胸水、腹水、尿) 、軟部組織 (脳、腹部臓器、筋肉など)
  • 透過度が低い (白色) : 骨、石灰化 (胆石、腎結石など) 、金属 (人工関節など)

このことを利用して、CT撮影した画像を3次元カラー画像にする技術も開発されています。

X線検査装置の原理

図1-X線の透過性

図2. X線の透過性

X線は、波長が10-3 nm – 10 nm程度の電磁波で、放射線の1種です。放射線には、α線、β線、γ線、X線、中性子線などの種類があります。X線は、α線などの粒子線とは異なり、波長が短い電磁波であるため、物質の透過性が高く、ほとんどの物質を透過することができます。

X線を物質に照射すると、X線の一部が物質中の電子と 衝突し相互作用することで、吸収や散乱現象が起こります。照射したX線のうち、このような現象が起きなかったX線が物質を透過した透過X線です。

X線検査装置の構造

図2-X線検査装置の構造

図3. X線検査装置の構造

X線検査装置は、X線照射装置とX線感光部で構成されており、照射対象を挟んで使用し、透過X線の強度分布をフィルムで造影します。従来のX線感光部は、感光フィルムを蛍光増感紙ではさみ、カセッテと呼ばれるケースに入れて使用します。現在では、ほとんどのX線検査装置がデジタル化されており、感光フィルムの代わりに、イメージングプレート (IP) やフラットパネルディテクター (FPD) が使用されています。

X線検査装置の種類

X線検査装置は主に下記のような種類に分けられ、進歩してきました。

1. X線TV装置

動画像としてリアルタイムに身体内部の状況を捉え、TV画像上で観察できる装置です。造影剤を臓器や血管内に注入し、これらが造影される様子を確認しながら撮影することができます。また、X線TV装置で透視観察をしながら内視鏡などを用いて観察、治療を行うことも可能です。

2. CT型荷物検査

空港での荷物検査は、上下方向にX線を照射し、内部を観察する方法が一般的ですが、医療分野で利用されるCTの原理を用いることで、荷物の3次元画像を造影可能な装置が開発されています。これにより、手荷物を開けずに検査することができるため、空港での手荷物検査場の混雑を緩和することが期待されています。国内外の一部の空港に導入されています。

3. X線検査装置の小型化

携帯型X線源の開発と感光部のデジタル化によって、現代では様々な可搬式のX線検査装置が開発販売されています。主に工場や建設現場などで非破壊検査装置として利用されています。検査対象を破壊せずに、内部の割れ・亀裂・腐食等の異常などが確認できます。工場や建設現場の完成や定期検査によく用いられている他、水中での検査や自走式ロボットに装着など、小型化によってX線検査装置の用途が広がっています。

X線検査装置のその他情報

X線検査装置の資格

X線検査装置を使用するには、「エックス線作業主任者免許」の取得者を責任者として選任することが必須です。この資格の保有者は、X線に関する保全業務の責任者として業務に携わることができ、放射線障害防止の為の立ち入り禁止区域の確認や装置検査、X線照射調整や管理などを職務とします。

資格取得には、次の4科目の試験を受け、合計で60% (各科目40%) 以上の得点で合格する必要があります。

  1. X線の管理知識
  2. X線の測定知識
  3. X線の生体に与える影響
  4. 関係法令

この免許は更新等はなく、一度合格すれば永久に保持出来る資格です。

参考文献
https://www.matsusada.co.jp/column/words-xray3.html
http://www.shikakude.com/sikakupaje/xsen.html
https://toreck.co.jp/industrial/question.html
https://www.matsusada.co.jp/support/faq/xm_xins/x-ray-license.html

照度センサー

照度センサーとは

照度センサー

照度センサーとは、周囲の明暗を感知するための人感センサーの1種です。

周囲が暗くなると自動的に点灯、明るくなると自動的に消灯する機能や、ディスプレイの輝度を人間がちょうどよいと感じる程度に調整する機能を有しています。照度センサーの種類は、大きくフォトトランジスタを用いる品種、フォトダイオードを用いる品種、フォトダイオードにアンプ回路を追加した品種の計3種類に分類することが可能です。

照度センサーは、電子機器の消費電力の削減や表示画面の画質改善に貢献できる技術といえます

照度センサーの使用用途

照度センサーは、ディスプレイや液晶画面の明るさの検出、照明のON/OFFを自動化するための周囲の照度測定などに広く用いられています。

例えば、携帯電話やスマートフォン機器において、周囲の明るさに応じた液晶バックライトの輝度コントロールが可能になることを利用して、液晶画面表示の視認性向上や低消費電力化に寄与しています。ディスプレイに搭載されると、自動的に視認性を調整することが可能です。

また、カメラや光通信など、幅広い分野で採用される、需要が伸びてきている技術の1つです。

照度センサーの原理

照度センサーは、受光部分に入射された光の照度を電流に変換するフォトダイオードやフォトトランジスタを用い、その出力電流をセンサー機能として使用可能な電流値まで増幅する回路により実際の光の明るさを電気的な値に変換することで、センシングしています。

すなわち、明るさによってフォトトランジスタに流れる電流が変化し、そのことにより回路内に設置されている抵抗の両端では明るさに応じた電圧が現れ、光を検出しますが、一般のフォトダイオードの出力電流は微弱であることから、通常はトランジスタで増幅してから出力します。

また、受光素子は人間の目が感じることができる波長と同範囲の分感度特性を有することが必要です。しかし、一般的に受光部に使用されているフォトダイオードは、人の目には見えない赤外線領域外にも感度があるため補正が必要です。

赤外線領域に分光感度のピークをもつサブのフォトダイオードを搭載することで、メインのフォトダイオードからサブのフォトダイオードを引き算します。それによって、人間の目が感じることのできる視感度に近い分光感特性を得られるような仕組みです。

照度センサーのその他情報

1. 照度センサーの出力構成

照度センサーにもさまざまな構成の商品があり、受光部のフォトダイオードやフォトトランジスタからの出力電流をアナログ回路で電圧値に変換し出力する非常にシンプルなものから、アナログ-デジタル変換部とその先のデジタル制御部、およびSPI等のシリアルインターフェイスを有する高機能なタイプまで、市場の用途に応じて多種多様な照度センサーが存在します。

SPIインターフェイスがあれば、マイコン等からの制御が比較的容易にソフトウエアで対応可能で、きめ細かいアプリケーションの制御に追従できます。通常、このような場合はセンサーASIC化された小型の専用ICを用いることで、小型高機能な照度センサー製品を実現しています。

2. 照度センサースイッチ

照度センサーを使用した応用製品として、照度センサースイッチがあります。このスイッチを使用すると、部屋の照明を外部の明るさに合わせて自動的にON/OFFすることが可能です。例えば、大規模なオフィスでは通常、各エリア毎に照明のスイッチがあり、そのスイッチより照明のON/OFFを行っているため、照明センサーを取り付けることでこれらの作業の自動化を実現できます。

照明センサースイッチを取り付けるメリットは、外部の明るさに合わせて照明を自動的にON/OFFできるようになるだけではありません。高機能の照度センサースイッチでは、照度によって照明を間引いて点灯させることも可能です。これらの機能の設定は、照度センサーとは別に設置するコントローラーから設定することができます。

コントローラーからはどの程度の照度でどの位置の照明をON/OFFするか、どの曜日及び時間帯で機能を有効にするかなどを設定可能です。また、季節によっても設定照度を変更可能な照度センサーも存在します。

このように照度センサーをオフィス等に取り付けることで、時間や季節、外の天気の状況によって屋内の各部の照明の照度を適切にコントロールすることが可能になります。このような取り組みは、結果として節電にもつながります。

参考文献
https://xtech.nikkei.com/dm/article/WORD/20060306/114191/
https://cgi.jp.sharp/corporate/rd/36/pdf/101_08.pdf
https://www.sensor-sk.com/hikari/hika01_hikari.html#n8

レーザースキャナー

レーザースキャナーとは

レーザースキャナー

レーザースキャナーとは、対象物の位置情報を3次元的に取得する計測装置です。

スキャナーから発射したレーザー光を対象物に当て、反射した光から距離や角度といった位置情報を計測します。非接触でノンプリズムな測定が可能なため、安全に計測できる点が特徴です。

また、3次元的な情報を大量の点群データとして取得できます。レーザースキャナーには大きく分けて、地上型3DレーザーとUAVレーザー、航空レーザー、 (モービルマッピングシステム) の4種類があります。

レーザースキャナーの使用用途

レーザースキャナーの主な用途は、設備設計やプラントメンテナンス、工事現場等での測量です。現況図のドキュメント化や、CADモデル作成にも役立ちます。

この他にも、地形の計測や土木・維持補修などのトンネル内や既存構造物の変位調査、また犯罪調査における事故現場や犯罪現場の正確な記録などで使用されています。

さらには、3Dプロジェクションマッピングで投影される面形状測定にも用いられており、様々な場面で使用可能です。

レーザースキャナーの原理

レーザースキャナーはレーザー光を対象物に照射し、反射した光を検出することで位置情報を計測します。測定対象物に直接触れずに位置情報を計測可能です。

なお、主な計測方法として、以下の2つが挙げられます。

1. タイムオブフライト方式

レーザー光を対象物に照射し、反射したレーザー光が戻ってくるまでの時間とレーザー照射角を測定します。測定時間から距離を算出し、さらに測定角度とXYZ座標を用いて、座標位置を算出します。

これにより3次元座標のデータを取得することができるほか、RGBカラー座標や反射強度、反射率、さらには角度情報など、各点ごとに多くの情報を得ることが可能です。

タイムオブフライト方式は、多くの情報を得るために測定時間が長くなりますが、精度の高い測定が可能です。

2. フェイズシフト方式

複数の変調させたレーザー光を対象物に照射し、対象物から反射した光と出射光の位相差を測定することで、対象物までの距離を求めます。フェイズシフト方式はタイムオブフライト方式に比べて、測定にノイズが入りやすく、測定距離も短いです。しかし、測定時間はかなり短くなります。

 

高精度の測定を求めるならタイムオブフライト方式、測定時間を優先するならフェイズシフト方式が適しています。また、レーザースキャナーで取得したデータは専用のソフトで読み込みます。

画面上に座標データが点 (ドット) で表現されており、この情報に基づいて、測定した現地の状況をパソコン上で再現します。検出範囲内のデータを網羅的に取得するため、状況を再現することが可能です。

レーザースキャナーのその他情報

車とレーザースキャナー

最近の自動車にはADAS (英: Advanced Driver Assistance Systems、先進運転支援システム) と呼ばれる安全運転をサポートする機能が搭載されてます。ADASの構成品は、カメラや超音波センサーミリ波レーダー等の各センサーです。

ここ数年では自動運転技術の進歩により、新たにLIDAR (英: Light Detection And Ranging) と呼ばれるレーザースキャナーをベースにしたセンサーが加わりました。LIDARは従来のレーダーに比べて、対象物を近距離で高精度に検知できるセンサーです。

自動運転において、対象物までの距離をより高精度に測定する必要があるため用いられています。とはいえ、ミリ波レーダー等の各センサーをレーザースキャナーで代替できるわけではありません。それぞれに利点と欠点があり、補う形で使用されています。

レーザースキャナーは近距離の対象物の高精度検知に優れますが、雨や霧などの悪天候に検知性能が影響されやすいという欠点があります。一方、ミリ波レーダーは天候の影響を受けにくく、遠距離の対象物に対する検知性能はレーザースキャナーよりも高いです。しかし、近距離の対象物や電波の反射率が悪い対象物に対しての検知性能はレーザースキャナーに劣ります。

参考文献
http://www.riegl-japan.co.jp/about/
https://www.oura.co.jp/service/3d/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsprs/52/6/52_285/_pdf/-char/ja
https://www.artec3d.com/ja/learning-center/laser-3d-scanning
https://keishin-survey.co.jp/technology/survey-measurement/3d-laserscanner-measurement/

人感センサー

人感センサーとは

人感センサー

人感センサーとは、人間の所在に反応するセンサーの総称です。

人や動物など温度を持つものが感知範囲内で動いたときに発する赤外線などを感知して信号を送り、スイッチのオンオフなどを行います。

家庭用には赤外線を利用したものが多く使用されています。一方、業務用では赤外線と超音波を組み合わせることもあり、多くの種類とタイプがあります。

人感センサーの使用用途

人感センサーの代表的な使用用途は、照明の自動点灯・消灯です。人体を感知して照明を点灯し、タイマーによって消灯します。照明のつけっぱなしや切れ忘れを防止しつつスイッチを押す手間を省きます。

また、防犯用途での利用も増加傾向です。家屋の玄関に設置して、不審者に反応してカメラで録画したりします。工事現場や生産現場などでも使用され、一般人が通った際のアナウンス用途で用いられる場合もあります。

過去は施設や商業ビル用途が主流でしたが、現在は自宅での使用も多いです。ほとんどの場合、他の電化製品と組み合わせて使用します。

人感センサーの原理

人感センサーは赤外線や静電気、音などを利用して人の所在を検知します。信号に応じて人感センサーには種類が多くありますが、赤外線センサーが最多です。

赤外線とは人の目には見えない波長の長い光を指します。赤外線センサーは赤外線を感知して電気接点などとして出力します。発熱する物体からは赤外線が発せられますが、その量は熱量により異なります。赤外線人感センサーはこの性質を活かし、人や動物の赤外線量を感知する仕組みです。

この他に、超音波の反射を利用した超音波人感センサーや微弱な静電気を利用したタッチセンサなども市販されています。

人感センサーのその他情報

1. 防犯用人感センサー

防犯用人感センサーは種類が多く、防犯カメラや警報が付属する製品もあります。威嚇効果を期待する場合は、フラッシュ機能が備えた製品が推奨されます。

フラッシュ機能は、侵入者へライトをフラッシュさせて威嚇を行う機能です。眩しく点滅するため、夜間の防犯効果が非常に高いことが特徴です。フラッシュ機能と警報音を同時に出力する製品もあり、さらに防犯効果を高めることができます。

また、防犯カメラを付属する製品は、侵入者の顔などを映像に残すことができます。音声も記録できる製品も販売されています。

2. 後付け人感センサー

照明に人感センサーを後付けすることも可能です。以下は後付人感センサー実装例です。

  • 人感センサー付属の照明へ交換する。
  • 照明をシェードで覆っている場合、延長ソケットを取り付けて人感センサーを後付する。

人感センサーを後付けする方法は上記以外にもさまざまで、実装済み照明の仕様の確認する必要があります。

3. 熱線センサー機能

人感センサーには、熱線センサーを使用する製品も販売されています。このセンサーでは、人の動きと周囲温度差の両方を検知して照明のON/OFFを自動で実施します。

高感度センサーを複数搭載し、約1cmの小さな動きを検知することも可能です。また、AIによる環境学習機能で、退出後に熱源ノイズが発生しても誤動作を防止できます。

参考文献
https://kurashi-no.jp/I0014623
https://www.logrenove.jp/housing/equipment/4119/
https://www2.lighting-daiko.co.jp/support/function/
https://4-share.net/2020/03/09/entrance-sensor-light/
https://www2.panasonic.biz/ls/densetsu/haisen/switch_concent/sensor_switch/facility/advanced/

電波暗室

電波暗室とは

電波暗室

電波暗室とは、電波無響室とも呼ばれ、外部に電磁波を漏らさず、内部でも電磁波が反射しない実験室や研究施設のことです。

シールドルーム室内に電波吸収体を取り付けることにより、電磁波の反射を抑制します。外部に漏らすことがないだけではなく、外部からの電磁波の影響も受けないのが特徴です。シールドルームの場合、内部空間における電磁波の乱反射を防げないことがデメリットですが、電波暗室であれば電磁波の乱反射を防ぎ、自由空間 (オープンサイト) に近い環境にすることができます。

近年、私たちの身の回りでは電気・電子機器や無線機器、情報システムなど多くの電磁波発生源であふれていますが、それらから発生する電磁波による周辺機器への悪影響が懸念されています。周囲の影響を遮断した電波暗室は、スマートフォンや無線LANなどの無線機器・電子機器の製品性能確認やノイズ試験に使用され、大きな役割を担っています。

電波暗室の使用用途

電波暗室の使用用途は、スマートフォンや無線LANなどの高周波通信用電子機器の電気的特性の試験や、車載部品のノイズ試験、アンテナそのものの放射特性試験などです。

一般には、電気・電子機器が外部からの電磁波にどのような影響を受けるかを知るために使用されます。また、外部へどのように影響を及ぼすかを測定する目的でも活用されています。

電波暗室の原理

電波暗室は、外部と内部それぞれの電磁波を遮断するため、電波暗室の外側では試験中の誤作動防止のために外部の電波が入らないように遮蔽し、電波暗室の内側には壁面内側に電波吸収体を取り付け、室内で電波が反射するのを防いでいます。

検査機器が室内で反射した電波をキャッチしないようにするために、壁面の電波吸収体が内部で発生した電波を吸収しています。この電波暗室のベースとなっているのは、シールドルームです。材料内での吸収のみならず、その表面での反射を利用するシールド材料を用い、電波を完全に反射することにより大きなシールド効果が得られます。

この室内に電磁波吸収体が取り付けられているのが電波暗室です。吸収体の材料では磁性、誘電性、抵抗性という3種類の特性が重要になります。実現したい吸収帯域などの条件と照らし合わせて、これらの特性を適切に判断する必要があります。

これらを満たす材料として主流となっているのがフェライトです。フェライトは、高周波の交流磁界に対して自然共鳴や磁壁共鳴といった磁気損失を起こす性質を利用したものであり、吸収した電波エネルギーを吸収体内部で熱エネルギーに変換することで電波の反射を抑制しているという特徴があります。

電波暗室のその他情報

1. 電波暗室の面数

電波暗室は、構成面の構造上で大きく2つに分類することができます。1つは上下前後左右の6面すべてに吸収体を取り付けた6面電波暗室です。

もう1つは、床以外の計5面に吸収体を取り付けた5面電波暗室です。5面電波暗室は、大地  (アース) での電波反射を想定し、床に吸収体をつけていないという特徴があります。

2. 電波暗室の性能指標

電波暗室の性能指標を左右する暗室の大きさは、様々な要素によって決定されます。例えば、電波を計測したい対象物の大きさや、電波を遮蔽したい周波数帯、試験の規格 (10m法なのか3m法なのかなど) です。これらの要素によって、既存の建屋に入れるか、新しく建屋を建設するかが決まります。安価ではないため、十分な検討が必要です。

電波暗室の性能指標で重要な項目は、正規化サイトアッテネーション(NSA Normalized Site Attenuation)と呼ばれる特性です。「CISPR16-1-4」で規定されていますが、送信アンテナと受信アンテナを対向させて配置し、受信アンテナの高さを1mから4mの間で動かし、かつ送信アンテナも規定範囲内で動かした場合の最大の伝搬損失を求め、その値が理論値(オープンサイトでの値)と比較して+/-4dB内に収まっている必要があります。

また、SVSWR (Site Voltage Standing Wave Ratio) と呼ばれる試験もあります。6面すべてに電波吸収体がある電波暗室で、送信アンテナの位置を規定範囲で変化させた場合の受信レベル変化の変化幅の最大値が、6dB未満でなければなりません。

参考文献
https://www.jp.tdk.com/tech-mag/noise/11
http://www.rf-world.jp/bn/RFW07/samples/p107-108.pdf
https://www.telec.or.jp/services/equipment/price.htm
https://www.telec.or.jp/services/equipment/price.html

ノイズフィルタ

ノイズフィルタとは

ノイズフィルタ

ノイズフィルタとは、電源や信号からノイズを取り除くための電子部品です。

電気回路や電子回路の多く使用されます。通信をしているケーブル内の電流値が変化すると、周囲に磁場が発生します。この磁場は周囲のケーブルへノイズ (異常な信号) を発生させます。

ノイズフィルタを取り付けることで、ノイズの発生を防げます。ノイズを処理せず機器を使用すると、誤作動や故障の原因となるため注意が必要です。

ノイズフィルタの使用用途

ノイズフィルタは、音響機器や産業機器に広く使用されます。以下は、ノイズフィルタの使用用途一例です。

  • スピーカーの雑音防止
  • 無線機内部の雑音防止
  • PLCやパソコン・サーバーの電源ライン
  • インバータ電源回路やサイリスタ電源回路

主に雑音を避けたい受信機器とノイズを発生させる出力機器に使用されます。スピーカーや無線機はノイズの影響を排除したい機器であり、通信線にノイズフィルタを装着します。この場合、ノイズは雑音の原因となります。

PLCなどのコンピュータでもノイズによる誤作動を回避したいため、電源ラインなどにノイズフィルタを取り付けることがあります。一方、インバータやサイリスタはノイズを発生させる機器です。

二次側回路の電流・電圧変化が急峻となる場合があるため、ノイズフィルタで平滑化することで発生ノイズを除去します。発生する電流を平滑化させる場合、一般的にはリアクトルを使用することが多いです。

ノイズフィルタの原理

ノイズの伝わり方は主に次の2種類です。1つは電子機器の内部から直接空間に放射される輻射ノイズ、もう1つは電源線や電子回路の配線を伝わって他の電子機器に妨害を与える伝導性ノイズです。さまざまな波長をもつ電波に、異なる波長の電波が入り込むことで雑音などとして発生します。

このノイズを防ぐためには、ノイズの主要因が高周波であれば高周波数信号をカットするフィルタ (ローパスフィルタ) を使用します。一方、低周波であれば低周波をカットするフィルタ (ハイパスフィルタ) を使用します。

ローパスフィルタとして働くのは、インダクタとコンデンサが主流です。インダクタは低周波信号に対してはインピーダンスが低くなり、高周波信号に対しては高くなります。したがって、インダクタを回路に直列挿入すると周波数の低い信号成分を通りやすく、周波数の高い成分は通しにくくすることが可能です。

一方、コンデンサはインダクタと逆の性質を持っています。コンデンサとインダクタを組み合わせることで、低周波や高周波をカットするノイズフィルタとなります。

ノイズフィルタの選び方

ノイズフィルタの選定で重要となるのは、定格電圧と定格電流の2項目です。

1. 定格電圧

各製品で定められた定格電圧 (使用最大電圧) より低い電圧で使用します。メーカーによっては電圧変動も加味し、定格電圧以上の電圧でも使用できる場合もあります。

2. 定格電流

電圧と同様に、電流値にも各製品ごとに上限があります。特に電流の場合は周囲の温度によって特性が変化する傾向があるため、使用する環境についても事前の確認が必要です。

周囲の温度が上がると、許容できる負荷電流は徐々に低下します。短時間であれば許容以上の電流が流れても深刻な問題にはなりませんが、繰り返し流れた場合は故障の原因となります。また、直流電源などは突入電流が発生する場合があり、電流値や継続時間を検討してノイズフィルタを選定します。

ノイズフィルタのその他情報

ノイズフィルタの使用の注意点

ノイズフィルタには、アース配線も重要です。アース配線はできるだけ太く短く配線します。アース線が長いとインダクタンス成分が作用し、減衰特性を低下させる恐れがあります。

また、入出力配線は結束したり近づけて配線しないようにするのも重要です。入出力配線が近いと高周波ノイズ成分がフィルタを迂回してしまうため、目的のフィルタリング効果が得られなくなります。

参考文献
https://www.sanwa.co.jp/product/ex/noisefilter.html
https://article.murata.com/ja-jp/article/basics-of-noise-countermeasures-lesson-1
https://article.murata.com/ja-jp/article/basics-of-noise-countermeasures-lesson-3
http://energy-kanrishi.com/noise-filter/

フォトカプラ

フォトカプラとは

フォトカプラ

フォトカプラ(英: Photo Coupler) は、信号を入力側から出力側に伝達する際に、入力側の回路と出力側の回路を電気的に絶縁した状態で伝達することができる素子です。

オプトアイソレータ (英: Opto Isolator)、光アイソレータなどとも呼ばれています。フォトカプラでは、入力電気信号を発光素子を使って一旦光信号に変換し、その光信号を受光素子で電気信号に戻して出力信号とします。

これは、出力側の回路と入力側の回路が電気的に接続されていない状態でも信号を伝達できることを示しており、この絶縁性の高さがフォトカプラを利用する最大の理由です。また、信号伝達手段としては比較的長寿命であることも特徴の一つです。

フォトカプラの使用用途

フォトカプラは、絶縁性や長寿命という特徴から、高い信頼性が求められる機器に使用されています。具体的には、医療用電子機器などです。

ローノイズが求められる音響機器や通信機器では、デジタル回路からアナログ回路への信号伝達の際にフォトカプラを介することで、アナログ回路へのノイズの廻り込みを防げるようになります。

また、モーターを駆動する機器にも使用されています。最近は、インバータ制御のモーターが広く使われていますが、回転速度制御においてノイズの発生が避けられません。このノイズが機器に回り込んで誤動作を起こす恐れがあることから、フォトカプラを介して信号を伝達することで、モーターのノイズを遮断します。

さらに、互いに独立した電源で動作している機器間の信号伝達にも利用されます。特にフローティング状態の機器と接続している場合は感電する恐れがありますが、フォトカプラ経由で接続すれば、フローティング状態の機器からは絶縁されているので安全性の確保が可能です。

フォトカプラの原理

フォトカプラは、前述した通り、発光ダイオードなどの発光素子とフォトトランジスタなどの受光素子とを組み合わせたユニットで、外部からの光を遮断するパッケージにこれらの素子を封じ込めた構造にとなっています。発光素子と受光素子は近接して取り付けられ、発光素子を点灯させると受光素子はOFF状態からON状態に変化しますが、これがフォトカプラによる信号伝達の原理です。

信号を出力する機器はフォトカプラの入力端子に接続し、発光素子を点灯/消灯します。信号を受信する機器はフォトカプラの出力端子に数kΩのプルアップ抵抗を介して電源と接続します。この構成によりフォトカプラの出力端子は、発光素子が消灯時は電源電圧と等しくなり、発光素子が点灯している間は0.1V~0.3程度になります。

即ち、信号を出力する機器による発光素子の点灯/消灯に応じたパルスが現れるので、受信側の機器はこのパルスを受けて信号処理を進めます。このようにフォトカプラは、入力側および出力側の回路間を光を介して結合しますが、両者の間には電気的な接続はなく、絶縁状態となっています。

フォトカプラの種類

フォトカプラも用途により、様々な素子があります。代表的な素子は以下の通りです。

1. トランジスタ出力フォトカプラ

フォトカプラの基本的な構成です。現在でも価格が安いこと、汎用性が高いこと等より市場で最も多く使われています。高変換効率、高耐圧、低入力駆動等いろいろな特徴を備えた製品があります。機能的にも幅広く、主な用途としては信号絶縁、フィードバック検出、絶縁スイッチがあります。

2. IC出力フォトカプラ

高速性や特定の機能を実現するため、受光素子を集積回路としたものです。トランジスタ出力タイプがせいぜい数kHz~十数kHzの信号伝送しかできないのに対し、1~50MHz程度の高速信号伝送ができます。IC出力フォトカプラは、更に次の3つに分類することができます。

  • ロジック信号の高速伝送を目的とした製品群
  • 外付けのパワー素子のドライバー機能を有する製品群
  • 電流/電圧のフィードバック機能を有する製品群

3. トライアック出力フォトカプラ

家庭やオフィス、工場などで使われる100Vまたは200Vの商用電源に直結するモーターやソレノイドなどのAC負荷を直接制御する絶縁スイッチとして使われます。素子耐圧が大きいトライアックを利用し、電気的に絶縁しながら十数mA程度の微小電流でAC負荷をON/OFF制御することが可能です。

素子単体では100mA程度のAC電流しか制御できませんが、外付けのトライアックのドライバーとして使うことにより、数A程度までのAC電流を制御できます。

4. MOSFET出力フォトカプラ

出力段にソースコモンで接続した2個のMOSFETを備え、メカニカルリレーと同等の機能を持たせた素子です。MOSFETが電圧-電流特性でリニアな出力特性を有しているので、単純なスイッチとしての機能のみならず、アナログ信号の切り替えスイッチとしての動作も可能なことが特徴となります。

フォトカプラのその他情報

フォトカプラの出力変動と寿命

フォトカプラの特性パラメータに電流伝達率 (CRT) があります。電流伝達率はトランジスタの直流電流増幅率 (hFE) に相当するもので、入力順電流 (IF) に対する出力電流 (IC) の比率ですが、次のような特徴があります。

  • IFによって値が変化する
  • 周囲の温度に影響される
  • 経年により徐々に小さくなる

回路設計時にはこれらのことを考慮しなければなりません。つまり、環境変化や経時により電流伝達率が変動すると、出力電流が変化しますので、回路が誤動作を起こす恐れがあります。従って、信号レベルの変動が影響しない様、IFの値やプルアップ抵抗の抵抗値等を吟味することが大切です。

また、長期間使い続けると電流伝達率が徐々に低下して十分な信号出力が得られなくなります。その時がフォトカプラの寿命となりますが、電流伝達率が低下する主な原因は、LEDの劣化が進行し発光効率が低下することです。

フォトカプラの寿命に関しては素子メーカーの資料に明記されていますので、それを参考に機種や使用条件を決定する必要があります。

参考文献
https://contents.zaikostore.com/semiconductor/4225/
http://gurochoro.blogspot.com/2017/08/debounce-in-a-microcomputer.html
https://www.renesas.com/us/ja/products/interface-connectivity/optoelectronics/noise-phenomena-photocouplers-optocouplers
https://ednjapan.com/edn/articles/1603/22/news028.html