銀ペーストとは
銀ペースト (英: silver paste) とは、樹脂に銀の粒子を分散させた導電性の接着剤です。
導電接合の方法として、はんだが用いられますが、はんだの場合、250℃近くまで昇温する必要があり、接合したい樹脂部品が加熱によりダメージを受ける可能性が高いです。
一方、銀ペーストの場合、100℃程度の温度でも焼結できるため、材料への損傷が抑えられます。キャパシタなどの電子部品と下地の基板を導通させ、固定することを目的に多く使われます。
銀ペーストの使用用途
銀ペーストは、低温での焼結が可能であり、電子デバイスの回路基板やディスプレイの電極、圧電部品など幅広く使用されます。近年では、折り曲げ自在の回路基板 (フレキシブルプリント配線板) の需要が増大し、樹脂フィルム上に配線を作成する際に、銀ペーストが用いられます。銅箔を貼り合わせるよりも低コストで、配線板の作成が可能です。
また、次世代太陽電池として注目される色素増感太陽電池では、透明な導電ガラスが持つ導電性をさらに高めるために、ガラス上に銀ペーストで配線加工が行われます。
銀ペーストの原理
銀ペーストは、樹脂の加熱による硬化反応を利用し、含有される銀の微粒子同士を接触させて導電性を得る方式です。
1. 樹脂
銀ペーストに使用する樹脂は、エポキシ系が主に用いられ、その構造と特性の関係について解析が進み、硬化剤についても開発が進んでいます。エポキシ樹脂の硬化反応は、エポキシと硬化剤との重合反応により進行し、強固な3次元的な結合構造の作成が可能です。
アミンを硬化剤とした場合には、アミンとエポキシ基の反応、あるいはアミノ基と水酸基との反応により、ポリマー化が進行します。始めは液状だったものが、加熱とともにゲル状へと変化し、ある時間後にはゴム状、最終的にはガラス状へと転移していきます。
ガラスへの転移が終了した所で、一連の硬化反応は終了です。なお、ガラス形状に転移する温度は、ガラス転移温度と呼ばれます。
2. 銀粒子
導電機構として、マイクロメートルサイズの銀の粒子がお互いに接触して電気が流れます。粒子間の電気接続を良好なものとするため、球状の粒子ではなく、平べったいフレーク状の銀微粒子が一般的です。
銀微粒子は、加熱によりエポキシ樹脂の3次元的な分子構造変化の中に取り込まれます。また、加熱すると、硬化する際に全体が収縮し、銀の粒子同士が接触することで、導電性の獲得が可能です。銀微粒子の他、金ペーストやニッケルペーストなどもあります。
銀ペーストの種類
接着剤となる樹脂及び配合する導電粒子には、各々多くの種類があり、市場では非常に多種類の導電性接着剤が、開発・販売されています。性能、用途、コスト、使い方などを考慮した選択が必要です。
使用される樹脂は、エポキシ系、フェノール系、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系などがあります。電子部品の接続用途としては、加熱反応硬化型エポキシ系が主流です。
エポキシ系接着剤の特徴として、金属に対する接着力が優れており、耐熱性が高く、硬化時の体積収縮が少ないことが挙げられます。一方、導電粒子は、銀の導電粒子が広く使用されています。銀は導電性が安定している、酸化しにくい、貯蔵安定性が良い、熱伝導性が高いなどの特徴があり、電子材料では一般的です。
銀の導電粒子には、球状やフレーク状の粒子が使われ、性能によって粒子の大きさや配合量による種類があります。
銀ペーストのその他情報
銀ペーストの熱伝導率
銀単体の熱伝導率は429W/mKと非常に高いですが、使用される樹脂は1W/mKと低いので、エポキシ系銀ペースト全体の熱伝導率は、30~50W/mK程度です。この熱伝導率を大きくするためには、銀粒子の含有量を多くする必要があります。しかし、その分樹脂の含有量が減少するため、接着強度が大きく低下し、製造コストも懸念事項です。
さらに、銀粒子の平均粒子径が小さすぎると、熱伝導経路が確保できない課題や銀粒子の平均粒子径が大きすぎると、焼結しにくいなどの課題が出てきます。そこで近年では、銀ナノ粒子を導入した高熱伝導銀ペーストが開発されています。
これは、銀ナノ粒子により銀粒子同士を接着し、熱伝導の経路を数多く生成したことが要因です。熱伝導率が240W/mK程度の製品が出ています。
参考文献
https://www.noritake.co.jp/products/ceramic/middles/detail/125/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mes/25/0/25_181/_pdf
https://www.monotaro.com