銀ペースト

銀ペーストとは

銀ペースト (英: silver paste) とは、樹脂に銀の粒子を分散させた導電性の接着剤です。

導電接合の方法として、はんだが用いられますが、はんだの場合、250℃近くまで昇温する必要があり、接合したい樹脂部品が加熱によりダメージを受ける可能性が高いです。

一方、銀ペーストの場合、100℃程度の温度でも焼結できるため、材料への損傷が抑えられます。キャパシタなどの電子部品と下地の基板を導通させ、固定することを目的に多く使われます。

銀ペーストの使用用途

銀ペーストは、低温での焼結が可能であり、電子デバイスの回路基板やディスプレイの電極、圧電部品など幅広く使用されます。近年では、折り曲げ自在の回路基板 (フレキシブルプリント配線板) の需要が増大し、樹脂フィルム上に配線を作成する際に、銀ペーストが用いられます。銅箔を貼り合わせるよりも低コストで、配線板の作成が可能です。

また、次世代太陽電池として注目される色素増感太陽電池では、透明な導電ガラスが持つ導電性をさらに高めるために、ガラス上に銀ペーストで配線加工が行われます。

銀ペーストの原理

銀ペーストは、樹脂の加熱による硬化反応を利用し、含有される銀の微粒子同士を接触させて導電性を得る方式です。

1. 樹脂

銀ペーストに使用する樹脂は、エポキシ系が主に用いられ、その構造と特性の関係について解析が進み、硬化剤についても開発が進んでいます。エポキシ樹脂の硬化反応は、エポキシと硬化剤との重合反応により進行し、強固な3次元的な結合構造の作成が可能です。

アミンを硬化剤とした場合には、アミンとエポキシ基の反応、あるいはアミノ基と水酸基との反応により、ポリマー化が進行します。始めは液状だったものが、加熱とともにゲル状へと変化し、ある時間後にはゴム状、最終的にはガラス状へと転移していきます。

ガラスへの転移が終了した所で、一連の硬化反応は終了です。なお、ガラス形状に転移する温度は、ガラス転移温度と呼ばれます。

2. 銀粒子

導電機構として、マイクロメートルサイズの銀の粒子がお互いに接触して電気が流れます。粒子間の電気接続を良好なものとするため、球状の粒子ではなく、平べったいフレーク状の銀微粒子が一般的です。

銀微粒子は、加熱によりエポキシ樹脂の3次元的な分子構造変化の中に取り込まれます。また、加熱すると、硬化する際に全体が収縮し、銀の粒子同士が接触することで、導電性の獲得が可能です。銀微粒子の他、金ペーストやニッケルペーストなどもあります。

銀ペーストの種類

接着剤となる樹脂及び配合する導電粒子には、各々多くの種類があり、市場では非常に多種類の導電性接着剤が、開発・販売されています。性能、用途、コスト、使い方などを考慮した選択が必要です。

使用される樹脂は、エポキシ系、フェノール系、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系などがあります。電子部品の接続用途としては、加熱反応硬化型エポキシ系が主流です。

エポキシ系接着剤の特徴として、金属に対する接着力が優れており、耐熱性が高く、硬化時の体積収縮が少ないことが挙げられます。一方、導電粒子は、銀の導電粒子が広く使用されています。銀は導電性が安定している、酸化しにくい、貯蔵安定性が良い、熱伝導性が高いなどの特徴があり、電子材料では一般的です。

銀の導電粒子には、球状やフレーク状の粒子が使われ、性能によって粒子の大きさや配合量による種類があります。

銀ペーストのその他情報

銀ペーストの熱伝導率

銀単体の熱伝導率は429W/mKと非常に高いですが、使用される樹脂は1W/mKと低いので、エポキシ系銀ペースト全体の熱伝導率は、30~50W/mK程度です。この熱伝導率を大きくするためには、銀粒子の含有量を多くする必要があります。しかし、その分樹脂の含有量が減少するため、接着強度が大きく低下し、製造コストも懸念事項です。

さらに、銀粒子の平均粒子径が小さすぎると、熱伝導経路が確保できない課題や銀粒子の平均粒子径が大きすぎると、焼結しにくいなどの課題が出てきます。そこで近年では、銀ナノ粒子を導入した高熱伝導銀ペーストが開発されています。

これは、銀ナノ粒子により銀粒子同士を接着し、熱伝導の経路を数多く生成したことが要因です。熱伝導率が240W/mK程度の製品が出ています。

参考文献
https://www.noritake.co.jp/products/ceramic/middles/detail/125/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mes/25/0/25_181/_pdf
https://www.monotaro.com

酸素計

酸素計とは

酸素計

酸素計は、空気中の酸素濃度を測定するための計測器です。

酸素センサー酸素モニタと呼ばれることもあります。酸素は人間の生命活動に必須の物質であるため、環境中の酸素濃度をモニターすることは極めて重要です。

また、種々の科学・産業分野において正確な酸素濃度管理が必要となるケースも多く、用途に合わせた機器が製造されています。

酸素計の概要

酸素計の使用用途

酸素計の使用用途は、下記の2種類に大別されます。

  • 酸欠防止を目的とする酸素濃度のモニタリング (検知・監視)
  • 工業プロセスなどにおける酸素濃度管理

酸欠防止では、トンネルなどの密閉空間における生命維持を目的とし、酸素濃度の監視を行います。酸素濃度が15%以下になると人間は呼吸困難になり、7%以下になると脳機能への障害が起こり、さらに4%以下になると死に至ると言われているためです。機器の形状には、携行型・壁掛け型があります。

また、化学工業、セラミックス、金属、などの工業熱処理プロセスの中には、酸素濃度を低く保たなければいけないケースもあります。工業炉の燃焼工程でも、燃焼効率と酸化還元プロセスの最適化のため、酸素濃度の監視制御が必要です。これら工業目的の酸素計は、高温の化学反応場などの過酷環境に対する耐久性を要します。

酸素計の原理

酸素計の主な動作原理は、「ガルバニ電池式」と「ジルコニア固体電解質方式」の2つです。その他にも、「磁気式」「波長可変半導体レーザ分光式」などが挙げられます。

1. ガルバニ電池式

ガルバニ電池式酸素計の模式図

図2. ガルバニ電池式酸素計の模式図

外界からの酸素を通過させる樹脂隔膜、金 (Au) 電極と鉛 (Pb) 電極、および電解液 (水酸化カリウム水溶液)から構成されます。各電極では下記の反応が起こります。

  • 陽極: Pb + 2OH → Pb2+ +H2O + 2e
  • 陰極: O2 + 2H2O + 4e → 4H2O

陽極で放出された電子が陰極に達し、陰極では空気中から取り込まれた酸素が、陽極で放出された電子を取り込みます。この電子の流れ (電流) が酸素濃度に比例するため、電流を測定することで酸素濃度が測定できるという仕組みです。この反応は、自発的に起るため、センサ駆動用の電源は必要ありません。

2. ジルコニア固体電解質方式

ジルコニア固体電解質方式酸素計の模式図

図3. ジルコニア固体電解質方式酸素計の模式図

ジルコニアが500℃以上の高温状態において固体電解質の性質を示すことを利用し、ジルコニアセルを用いた手法です。

ジルコニアは固体の中で酸素負イオン (O2) を伝導できる性質があり、酸素濃度の高いガス (大気中) から酸素濃度の低い雰囲気 (工業炉内など) へとイオンが伝導します。

このイオンの伝導によって電位差が発生しますが、O2高濃度側とO2低濃度側にはそれぞれ電極が設置されており、起電力が生じます。ちょうど電池の正極と負極のような関係です。

  • O2高濃度側: O2 + 4e → 2O2
  • O2低濃度側: 2O2 → O2 + 4e

電極間に発生した起電力はネルンストの式 (下記参照)に従うため、それぞれの電極における酸素分圧を求めることができます。

  • E=(RT/4F)·ln(PA/PB)
  • (R: 気体定数、T: 温度、F: ファラデー定数、PA: 高濃度側(大気中)酸素分圧、PB: 低濃度側酸素分圧)

なお、温度はジルコニアに備え付けた熱電対により計測されます。

なお、概ね400℃以下の雰囲気下では、対象ガスをサンプリングチューブで装置内に導入し、白金ヒータなどでジルコニアセルを所定の温度まで加熱します (サンプリング方式)。ジルコニアが固体電解質として機能するためには500℃以上の温度が必要となるためです。

酸素計の選び方

酸欠防止を目的とした酸素計と工業プロセスにおける低酸素濃度維持を目的とした酸素計では、異なった製品を使用する必要があります。

酸欠防止を目的とした携行・定置タイプの酸素系では、ガルバニ電池式が採用されており、このタイプではセンサ駆動用の電源も必要がありません。センサの寿命は、凡そ2~3年とされています。ただし、使用可能な環境は一般環境に近い雰囲気下に限定され、精度は±0.5%O2程度です。防爆仕様になっている製品もあります。

一方、工業炉などをはじめとする、高温の工業プロセスにおける酸素濃度の計測では、ジルコニア式の製品が使用されます。700℃以上の雰囲気下では、直接その雰囲気にセンサー部分を挿入する直挿式が利用されますが、400℃以下ではサンプリングチューブなどで炉内雰囲気ガスを引き込み、別途ジルコニアセルを加熱するサンプリング方式の製品が適切です。

参考文献
https://www.motoyama.co.jp/engineer/engO201.htm
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/56/9/56_9_507/_pdf/-char/ja

酸素モニタ

酸素モニタとは

酸素モニタ

酸素モニタとは、空気中の酸素濃度を測定するための計測器のことです。

酸素センサー酸素計と呼ばれることもあります。酸素モニタが必要である理由として、酸素が人間の生命活動に必須の物質であることが挙げられます。

特に酸欠になりやすい閉塞環境の作業弁場において、酸素濃度をモニタリングすることは極めて重要です。また、多くの科学・産業分野において、プロセス管理や機器保守の観点で正確な酸素濃度管理が必要です。科学・産業分野の要請に応じて、様々な測定条件における測定システムが提供されています。

代表的にはジルコニアセンサーがあり、半導体製造における製品管理や、自動車等における省エネ、排ガス浄化にも利用されています。酸素モニタの詳細は、下記の図を参照してください。

酸素モニタの使用用途

酸素モニタの使用用途は、「酸欠防止用」と「酸素濃度管理用」の2つに大別されます。

1. 酸欠防止を目的とする酸素濃度のモニタリング (検知・監視)

密閉空間で生命活動を維持する上で極めて重要な役割を担います。これは、酸素濃度が15%以下になると人間は呼吸困難になり、7%以下になると脳機能への障害が起こり、さらに4%以下になると死に至ると言われているためです。機器の形状には、携行型・壁掛け型があります。

2. 工業プロセスなどにおける酸素濃度管理

化学工業、セラミックス、金属、などの工業熱処理プロセスの中には、酸素濃度を低く保たなければならないケースもあります。工業炉の燃焼工程でも、燃焼効率と酸化還元プロセスの最適化のため、酸素濃度の監視制御が必要です。

このような工業用途の酸素モニタは、高温環境下で激しい化学反応にさらされる可能性があります。過酷環境に対して耐性を持った製品が必要です。

酸素モニタの原理

酸素モニタの主な動作原理は、「ガルバニ電池式」と「ジルコニア固体電解質方式」の2つです。その他にも、「磁気式」「波長可変半導体レーザ分光式」等が挙げられます。

1. ガルバニ電池式

外界からの酸素を通過させる樹脂隔膜、金 (Au) 電極と鉛 (Pb) 電極、および電解液 (水酸化カリウム水溶液) から構成されます。各電極では下記の反応が起こります。

  • 陽極: Pb + 2OH → Pb2+ +H2O + 2e
  • 陰極: O2 + 2H2O + 4e → 4H2O

陽極で放出された電子が陰極に達し、陰極では空気中から取り込まれた酸素が、陽極で放出された電子を取り込みます。この電子の流れ (電流) が酸素濃度に比例するため、電流を測定することで酸素濃度が測定できるという仕組みです。この反応は、自発的に起るため、センサ駆動用の電源は必要ありません。

2. ジルコニア固体電解質方式

ジルコニアが500℃以上の高温状態において固体電解質の性質を示すことを利用し、ジルコニアセルを用いた手法です。ジルコニアは固体の中で酸素負イオン (O2) を伝導できる性質があり、酸素濃度の高いガス (大気中) から酸素濃度の低い雰囲気 (工業炉内など) へとイオンが伝導します。

このイオンの伝導によって電位差が発生しますが、O2高濃度側とO2低濃度側にはそれぞれ電極が設置されており、起電力が生じます。ちょうど電池の正極と負極のような関係です。

  • O2高濃度側: O2 + 4e → 2O2
  • O2低濃度側: 2O2 → O2 + 4e

電極間に発生した起電力はネルンストの式 (下記参照) に従うため、それぞれの電極における酸素分圧を求めることができます。

  • E= (RT/4F) ·ln (PA/PB)
  • (R: 気体定数、T: 温度、F: ファラデー定数、PA: 高濃度側 (大気中) 酸素分圧、PB: 低濃度側酸素分圧)

温度はジルコニアに備え付けた熱電対により計測されます。なお、概ね400℃以下の雰囲気下では、対象ガスをサンプリングチューブで装置内に導入し、白金ヒータなどでジルコニアセルを所定の温度まで加熱します (サンプリング方式) 。ジルコニアが固体電解質として機能するためには、500℃以上の温度が必要になるからです。

酸素モニタの種類

酸欠防止を目的とした酸素計と、工業プロセスにおける低酸素濃度維持を目的とした酸素計では、異なった製品を使用する必要があります。

1. 酸欠防止を目的とした酸素モニタ

酸欠防止を目的とした携行・定置タイプの酸素系では、ガルバニ電池式が採用されます。このタイプではセンサ駆動用の電源も必要がありません。

センサの寿命は、凡そ2~3年です。ただし、使用可能な環境は一般環境に近い雰囲気下に限定され、精度は±0.5%O2程度です。機器の形状には、携行型・壁掛け型があり、防爆仕様になっている製品もあります。

2. 工業用途の酸素モニタ

工業炉などをはじめとする、高温の工業プロセスにおける酸素濃度の計測では、ジルコニア式の製品が適切です。700℃以上の雰囲気下では、直接その雰囲気にセンサー部分を挿入する直挿式が利用されます。

一方、400℃以下ではサンプリングチューブなどで炉内雰囲気ガスを引き込み、別途ジルコニアセルを加熱するサンプリング方式の製品が適切です。用途に応じて正しく選択する必要があります。

参考文献
https://www.motoyama.co.jp/engineer/engO201.htm
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/56/9/56_9_507/_pdf/-char/ja

酸素センサー

酸素センサーとは

酸素センサー

酸素センサーとは、測定空間の大気中における酸素濃度を計測するためのセンサーです。

隔離された密閉空間において、生命活動を維持するために酸素濃度を計測することは極めて重要です。この酸素濃度計測で酸素センサーは、大きな役割を担います。

酸素濃度が15%以下になると、人間は呼吸困難になり、7%以下になると、脳機能への障害、さらに4%以下になると死に至るといわれています。さまざまな科学・産業分野において、酸素センサーが必要とされ、その分野の要請に応じて酸素濃度の測定条件やシステムが多岐に渡って開発されています。

代表的なセンサーは、ジルコニアセンサーです。ジルコニアセンサーは半導体製造における製品管理や自動車等における省エネ、排ガス浄化にも利用されています。

酸素センサーの使用用途

酸素濃度の計測は、大きく2つの役割として行われます。1つ目は、人の命を守る酸欠防止としての検知や監視です。2つ目は、工業製品の生産過程などにおける酸素濃度の管理です。

1. 酸欠防止

酸欠防止としての使用例は、トンネルや地下工事などの土木作業現場での安全管理、医療分野では酸素吸入管理や高圧蘇生などです。これらの用途で用いる製品には、携行できたり壁掛け型で使えたりするものがあります。

2. 酸素濃度の管理

工業製品製造の工程管理としては、化学工業、セラミックス、金属の分野で用いられます。工業製品製造においては、熱処理工程の高温環境下で使用されることが多いのも特徴の1つです。

私たちの生活に身近な例では、自動車やオートバイのエンジンに使用されています。排気ガス中の酸素濃度を検知することによって、燃料の濃さを調整する役割を担っています。

酸素センサーの原理

酸素センサーの測定原理にはガルバニ電池式、ジルコニア個体電解質方式、磁気式、波長可変半導体レーザ分光式などがあります。

1. ガルバニ電池式

ガルバニ電池式は構造が簡便で、携行タイプの酸素計で使われている方式です。金と鉛の電極、樹脂隔膜と電解液で構成され、隔膜を通過した酸素が電解液に溶ける際に酸素濃度に応じた電流が流れる仕組みを利用しています。

2. ジルコニア個体電解質方式

ジルコニア個体電解質方式は、固体電解質であるジルコニアを用いる方式です。ジルコニアは固体の中で酸素負イオン  (O2-) を伝導できる性質があり、酸素濃度の高いガス (O2高圧側) から酸素濃度の低い雰囲気 (O2低圧側) へとイオンが伝導します。

ジルコニア個体電解質方式の酸素センサーでは、O2高圧側とO2低圧側にはそれぞれ電極が設置され、これらは電気的に接続された状態です。O2は、負イオンとしてジルコニア内部を透過しようとするため、O2高圧側の電極において電子を捕獲し、負イオンとなる一方で、O2低圧側では、透過してきたO2-から電子を受け取ります。

ちょうど電池の正極と負極のような関係であり、O2低圧側 (負極) で解放された電子は、再びO2高圧側 (正極) へと流れ込むという仕組みです。電極間に発生した起電力は、次のようなネルンストの式と呼ばれる関係を用い、それぞれの電極における酸素分圧を求められます。

 E= (RT/4F) · 1n (PA/PB)

ここでRは気体定数、Tは温度、Fはファラデー定数、PA・PBは、それぞれO2高圧側とO2低圧側の酸素分圧を示しています。なお、温度はジルコニアに備え付けた熱電対により計測し、PAは通常大気中の酸素分圧を基準としています。

酸素センサーのその他情報

酸素センサーの劣化

工業製品の製造工程で使用されるジルコニア式酸素センサーは、劣化に注意が必要です。高温環境下で使用され、さまざまなガスもジルコニアセルを劣化させたり影響を与えたりすることがあります。ハロゲンといった還元ガスも、劣化となる因子です。

自動車用では酸素センサーが劣化や故障すると、排気ガス中の有害物質が増加してしまいます。また、必要以上に燃料が濃くなると、燃費が悪化することもあります。O2センサーが劣化した際には、ディーラーやサービス工場で部品交換が必要です。

参考文献
https://www.motoyama.co.jp/engineer/engO201.htm
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/56/9/56_9_507/_pdf/-char/ja

超音波発生装置

超音波発生装置とは

超音波発生装置

超音波発生装置とは、人の耳に聞こえない、概ね周波数が2okHz以上の音を発生する装置のことです。

超音波発生装置は装置単体としては超音波発生源であり、これにつながったプローブの先端や水槽の壁等から、任意の周波数の振動を所定の出力で発生させるような仕組みになっています。

超音波が空気中を伝わる仕組みは、物理的には可聴域の音と同じです。しかし、超音波は指向性が高く、高分解能の探知に利用できます。さらに超音波は、動力源や洗浄装置にも応用が可能です。したがって、超音波発生装置は様々な応用機器に組み込まれる形で利用されています。

超音波発生装置の使用用途

超音波発生装置は、検査装置や加工装置、洗浄装置などに組み込まれて使用されています。

1. 検査装置

検査装置では、医療分野において内蔵の状態を調べるエコー検査装置が広く知られています。また、産業分野では、超音波探傷検査装置が材料の欠陥やクラックを検出するために使用されています。さらに、海中の魚を探す魚群探知機も超音波を使用しています。超音波を使った検査では、被検査物に悪影響を与えず非破壊で検査できることが大きな利点です。

2. 加工装置

加工装置では、食品加工分野でマヨネーズや油の混合に用いられているほか、超音波振動を利用した切削装置なども製造されています。

3. 洗浄装置

超音波を利用した洗浄装置も様々な物があり、眼鏡の洗浄を始め、半導体や電子部品の洗浄などに私用されています。超音波洗浄では、洗浄槽の中に水や純水を入れ、洗剤を使用せずに製品や部品の汚れを落とせることが特徴です。

超音波発生装置の原理

超音波発生装置は、圧電素子 (圧電セラミックス) に高い周波数の電圧をかけて振動させ、物体周辺の空気を振動させて超音波を作り出します。超音波発生装置で用いられる圧電素子には、セラミックスの一種で酸化チタンや酸化バリウム等を高温で焼き固めた材料が用いられています。

圧電素子は、外部から圧力を加えると素子に電圧が発生します。その反対に、素子に電圧を加えると素子が伸び縮みします。

素子に圧力を加えると電圧が発生する理由は、素子に圧力を加えることで、固体中の結晶構造が歪められたことに起因します。固体中には、プラス・マイナスのイオンが配置されており、外部からの力によって、これらのイオンの位置がゆがめられ、固体内で電荷の偏りが生じます。その結果、電気的な分極が発生し、固体内に電圧が発生します。

反対に、電圧の印加によって素子が伸縮するのは、その電場によって、イオンの位置が動くことで結晶構造が変わり、固体が持つ厚みが変化するためと理解されています。

超音波発生機の構造

超音波発生機は、大きく分けて発振器、共振器、変換器の3つの構成要素からできています。

発振器は前述のように、圧電素子を用いて高周波の電圧から超音波を発生する部分です。共振器は、発振器で発進させた振動を金属の棒や板に伝えて、これらを共振させて増幅します。変換器は、増幅させた超音波を、使用する媒体に伝搬させるために変換する部品です。つまり、超音波は空気中で音として使う場合や、洗浄槽で水の振動として使う場合、検査装置でプローブを介して検査対象に振動を与えるために使う場合など、様々な形の振動に変換されます。

さらに、超音波発生装置には、発振器の周波数や出力レベルを調整するための制御回路や、発生した超音波を測定するためのセンサーなどが備わっています。

超音波発生装置は材料試験などで単独で使用される場合もありますが、多くの場合には何らかの応用機器の中に組み込まれて使用されます。具体的には医療用の超音波診断装置や産業用の超音波洗浄装置や粉砕装置、海中で使用するソナーや魚群探知機などが良く知られています。

参考文献
https://www.honda-el.co.jp/hb/1_1.html
https://senjyou.jp/ultrasonic-cleansing/

超音波レベル計

超音波レベル計とは

超音波レベル計

超音波レベル計 (英: Ultrasonic Level Meter) とは、液体や固体のレベルを超音波の反射によって測定する装置です。

超音波の発生器が送信側から超音波パルスを発射し、反射して受信器に戻ってくる時間を計測します。超音波レベル計は非接触で液位を測定できるため、さまざまな物質の液位測定に適用可能です。特に有害物質や高温液体など、人が直接触れることが難しい場所で使用されます。

密度や導電率にも左右されないため、非常に高精度な測定ができる点が特徴です。また、超音波の伝播速度が早く、測定結果の精度が高いです。また、一部の超音波レベル計には信号処理技術を使用して測定誤差を補正する機能も備わっています。

超音波レベル計は堅牢な構造を持ち、長期間にわたって安定して使用可能です。また、非接触測定のため、センサ部分が摩耗や汚れなどが発生しづらい傾向にあります。したがって、メンテナンスが比較的容易です。

超音波レベル計の使用用途

超音波レベル計はさまざまな分野・用途に使用されます。特に、容器やタンクの液位測定の目的で使用されることが多いです。

エネルギー産業では、石油やガスの貯蔵タンクのレベル監視に使用されます。在庫管理や補給計画を最適化可能です。化学プラントでは硫酸などの化学物質タンク液位を測定し、生産プロセスの制御や安全性確保に役立ちます。

せき式流量計のセンサーとして使用し、流量測定を目的に使用されることもあります。せき式流量計は流体の導線に堰板を設け、その上流液位を測定することで流量を割り出す装置です。構造が簡単なため、開放流路に広く使用される流量計です。

また、液体のみではなく、粉体のレベル測定に使用されることがあります。鉱業において鉱石タンクや鉱滓容器のレベル測定によって貯蔵管理する場合も多いです。

超音波レベル計の原理

超音波レベル計は、超音波の原理を利用して液体や固体のレベルを測定する装置です。装置内には超音波を発生させる超音波発生器を有します。超音波発生器は、振動子や圧電素子などのデバイスを使用して超音波パルスを発生します。

発射された超音波パルスは、空気や液体などの媒体を伝播します。音波の周波数が人間の聴覚範囲 (20Hzから20kHz) を超える高周波数の音波です。超音波は対象物表面に到達すると一部は反射され、音波レベル計の超音波受信器へ導入されます。

受信機では反射された超音波の到達時間を計測します。計測された時間は超音波が送信器から対象物まで往復した時間であり、これにより対象物までの距離を推定することが可能です。

超音波レベル計の種類

超音波レベル計には分離型と一体型の2種類があります。

1. 分離型

分離型は、コントローラ部とセンサー部が別々のユニットとして設計された超音波レベル計です。ユニット同士をケーブルで接続し、センサー部品の信号を演算処理部へ送信します。

分離型は演算処理部品をタンクから離れた位置に配置できるため、センサの設置場所に制約が少ない点が特徴です。適切な制御部分が遠隔地に配置されている場合に適しています。また、センサ部分が液体や固体による影響を受けにくく、高温や腐食性のある環境で使用することができます。

全長が高いタンクであれば、下部にコントローラ部を設置することが多いです。これにより、タンク上へ登らなくともコントローラ部で液位表示を確認することが可能です。

2. 一体型

一体型は、センサ部分と制御部分が一体化した超音波レベル計です。センサ部分と制御部分が統合されているため、コンパクトで取り付けが簡単です。通常は液体や固体のタンクに直接取り付けられ、測定と制御が同じ装置で行われます。

センサと制御部分が統合されているため、配線や接続の煩雑さが少ない点が特徴です。また、センサと制御部分が連携しており、通信や設定が容易で操作もシンプルです。

参考文献
https://www.yokogawa.co.jp/solutions/products-platforms/field-instruments/level-meters/sun-ultrasonic-level-meter/
http://www.nohken.com/japan/product/level_sensor/ultrasonic/
https://www.keyence.co.jp/ss/products/process/levelsensor/type/reflection.jsp

記録温度計

記録温度計とは

記録温度計

記録温度計または自記温度計とは、気温の時間的な変化を自動的に測定し記録する装置です。

記録温度計には、主に2つのタイプがあります。1つ目のタイプは金属の熱膨張を利用したもので、バイメタルブルドン管が使用されます。これらの部品が熱膨張することによって、自記装置のペンが動かされ、温度の変化が記録可能です。

もう1つのタイプは、温度による電気抵抗の変化を利用するものです。この方式ではサーミスタを使用し、その抵抗値の変化を電流の変化に変換して、記録電流計を用いて温度を記録します。

これらの記録温度計は、それぞれ異なる原理に基づいており、用途に応じて適切なタイプを選択することが可能です。

記録温度計の使用用途

記録温度計は、感度にやや遅れがあるものの、気温の変化を追跡し、その時の最高温度や最低温度が発生した時刻を知ることができます。この特性から、一般的な気象観測や学校の百葉箱などで広く使用されています。

空調管理が求められる病院や倉庫、さらには温度管理が極めて重要な博物館や美術館で展示品を保護する目的で設置されることもあります。これらの施設では、温度変動が展示品に悪影響を及ぼす可能性があるため、記録温度計による温度監視が不可欠です。

また、薬品保管庫や食品庫といった倉庫、農業分野での気温監視、半導体やLSIなどの精密機械を生産する工場、環境実験室などでも記録温度計は利用されています。これらの用途では、温度の正確な監視が製品品質の保持や適切な環境管理に直結するため、記録温度計の役割は極めて重要です。

記録温度計の原理

記録温度計には主にバイメタル式とブルドン管式、そしてサーミスタを使用したタイプがあります。

1. バイメタル式

バイメタル式温度計では、熱膨張係数の異なる二枚の金属を貼り合わせたバイメタルをセンサーとして使用します。温度の変化により、バイメタルが反り、この反り具合を測定して温度の検出が可能です。

2. ブルドン管式

ブルドン管式温度計は、平たい楕円形の断面を持つ金属管をほぼ円形に巻き、一端を固定して他端を閉じる形で構成されています。管内に封入されたアルコールやエーテルが温度の上昇とともに膨張し、固定されていない管の端が変位することで温度変化を測定します。

これらバイメタルやブルドン管を利用した記録温度計では、温度によるバイメタルの反りやブルドン管の変位をテコの原理で増幅し、記録装置のペンに伝えて、回転するドラムに巻かれたチャート紙 (記録紙) に記録を行います。

3. サーミスタ式

サーミスタは温度変化に応じて抵抗値が変わる電子部品を使用します。サーミスタ式温度計は、センサー部に微量の電流を流して抵抗値を測定し、これを温度値に変換します。この方法は電気的な計測を行うため、デジタル表示やデータロガーによる記録が可能です。

これらの記録温度計はそれぞれの特性によって異なる用途に適しており、使用環境や測定の必要性に応じて選ばれます。

記録温度計の選び方

記録温度計を選ぶ際には、以下の点を考慮します。

1. 温度範囲と精度

測定対象の温度範囲と精度を確認することは、最も重要な点です。用途に応じて、耐高温能力や低温での正確な測定が可能なモデルを選ぶ必要があります。また、食品産業や医療関連の場所では高精度が要求されることが多いため、より精密なセンサーを持つ温度計が適切です。

2. 記録方式

アナログ式温度計は直感的で読み取りが容易ですが、長期間のデータ蓄積や後処理が難しいことがあります。一方、デジタル式温度計はデータの自動記録やコンピュータへの直接的なデータ転送が可能で、詳細な分析が容易です。

3. 設置と交換

設置の容易さやメンテナンスの手間も選定基準に含めるべきです。特に交換が頻繁に必要となる環境では、取り付けや交換が簡単なモデルが有利です。

4. その他

その他の点として、使用環境が製造現場や屋外である場合、耐久性や耐環境性に優れたモデルが求められます。

また、最近ではIoT技術を活用した温度計も登場しており、リアルタイムでのモニタリングや遠隔操作が可能な製品もあるため、こうした機能の付属も選定基準の1つとなります。

参考文献
https://www.murata.com/ja-jp/products/thermistor/ntc/basic/thermistor
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0079.html

解砕機

解砕機とは

解砕機とは、粒状やかたまり状の凝集した材料を砕いて粒のサイズを小さくする装置のことです。

粉砕機と機能が似ているものの、役割は大きく異なります。粉砕機は材料を粉状になるまで砕くため、粉体や粉粒体が得られますが、解砕機はある程度の粒のサイズになったら吐出されるので、粒体の材料を得ることが可能です。

解砕機の特徴を活かして、パンやビスケット、スナック菓子などの食品をフレーク状に分解する工程や粒状に固めた材料を必要な粒のサイズに整える工程に利用可能です。そのため、解砕機は食品加工業界だけでなく、建築や鉱業など幅広い分野で活躍しています。

解砕機は、さまざまな種類の材料を効率的に処理可能です。経済的で環境にも配慮した選択肢として注目されており、解砕機の技術が進化し続けることで、より多くの産業での利用が期待されます。

解砕機の使用用途

解砕機は、かたまり状の対象物を一定の大きさまで砕いたり、粉体の凝集を解消したりするために使用されています。特に食品分野と製造分野の用途が多いです。

1. 食品分野

食品分野では、パンや麺、ビスケット、スナック菓子などを一定の大きさまで分解する目的で活用されています。例えば、フレーク状のカレールーやチョコレートチップ、ドッグフードの製造において、解砕機は重要な役割を担っています。

2. 製造分野

製造分野では、粒状にした材料を必要な粒のサイズまで砕いてフレーク状にしたり、意図せず発生してしまったダマを解消したりするために使用されます。解砕機は一般的に造粒工程の下流に設置され、ふるい機などの粒のサイズを選別する装置と組み合わせることで、一定範囲内の粒サイズの材料を得ることが可能です。

解砕機の原理

解砕機は主に内部で回転する刃と網目状のメッシュによって構成されており、これらが協力して材料を砕くことで成り立ちます。解砕機内に投入された材料は、刃に衝突することで繰り返し砕かれながら下流に送られ、メッシュの隙間よりも粒のサイズが小さくなると通過して吐出されます。

大きいサイズの材料を一定の粒のサイズまで小さくすることが可能です。得られる材料の粒サイズは、メッシュの網目の細かさによって決定されます。しかし、解砕機内で繰り返し刃と衝突することで、必要とする粒のサイズよりも小さな粒体材料になることがあります。

そのため、解砕機の下流ではふるい機などの粒サイズを選別する装置が使用されることが多く、粒のサイズが小さい材料は吐出され、前工程に戻されます。投入する材料の大きさや必要とする粒のサイズ、処理能力などによって刃やメッシュのサイズが異なり、装置自体はオーダーメイドになることが多い点が特徴です。

生産ラインの工程や生産能力に合わせた仕様が確定できます。解砕機の原理を理解することで、適切な装置選びや効率的な運用が可能になります。

解砕機の種類

解砕機には、主にジョークラッシャー、コーンクラッシャー、インパクトクラッシャーの3種類があります。

1. ジョークラッシャー

ジョークラッシャーは、一般的な石炭や鉱石の破砕に用いられる解砕機で、2つの顎の間で材料を圧縮して砕く原理に基づいています。初期破砕に適しており、比較的大きな石や鉱石をある程度のサイズまで砕くことが可能です。

2. コーンクラッシャー

コーンクラッシャーは、円錐形の破砕部と外側の壁の間で材料を圧縮して砕くことで、より細かい粒状の材料を得ることが可能です。中間破砕や細砕に適しており、建築材料や化学製品の製造などに利用されています。

3. インパクトクラッシャー

インパクトクラッシャーは、高速回転するローターに取り付けられたハンマーが材料に衝突することで、破砕力を発揮します。破砕効率が高く、さまざまな硬度の材料に対応できるため、建築廃材のリサイクルや道路建設など幅広い分野で使用されています。

参考文献
https://www.econmw.co.jp/122/
https://www.tsukasa-ind.co.jp/product/milling/

表面抵抗計

表面抵抗計とは

表面抵抗計とは、対象物表面の電気抵抗値を測定するための機器です。

表面抵抗計は、電気絶縁材料や導電性材料の表面における電気的な抵抗を測定します。静電気の発生や防止、静電気による損傷を評価するために重要な指標です。静電気対策品の抵抗値を測定する場合などに使用されます。

電気の絶縁体は静電気を帯びる場合があり、これによって劣化を引き起こす場合があります。絶縁体が劣化すると地絡や感電などの事故につながります。表面抵抗を測定し、絶縁抵抗値を測定することで、対象物の経年劣化具合を予測することが可能です。

また、水性塗料やコンクリートなどに対しても使用される場合があります。これらは水を含んでおり、乾燥することで硬化するため、表面抵抗の測定によって水分含有量を確認します。特に水溶媒が揮発して成膜化する製品は、水分管理が大きな課題になることが多いです。

表面抵抗計の使用用途

表面抵抗計は以下のような用途で使用されます。

1. クリーンルーム

クリーンルームでは微粒子の混入を回避することが重要です。表面抵抗計によってクリーンルーム内設備の表面抵抗を測定し、静電気による微粒子の付着を評価します。作業環境測定として、表面抵抗の値を定期的にモニタリングすることが一般的です。

2. 建設現場

表面抵抗計はコンクリートの腐食具合を評価するために使用されることがあります。コンクリートの腐食は主に鉄筋の錆によって引き起こされます。鉄筋が腐食すると周囲コンクリートが剥がれたりして、コンクリートの表面抵抗が低下するのが一般的な傾向です。

したがって、表面抵抗計を使用してコンクリートの腐食具合や強度を確認することが可能です。また、同様に塗料の表面抵抗を測定することで、塗膜の品質や耐久性を確保するための情報を得ることもできます。

3. 製品開発室

製品開発室では、静電気が製品品質や信頼性に影響を与える可能性があります。特に電子機器や半導体デバイスの製品開発では、静電気による損傷を防ぐことが重要です。表面抵抗計は製品や材料の静電気特性を評価し、静電気による損傷のリスクを最小限に抑えるための対策を検討するのに役立ちます。

表面抵抗計の原理

表面抵抗計の原理は電気回路に由来します。抵抗計から電圧を印加し、対象物に流れた電流値を測定することで計算する仕組みです。測定の目的によって、様々な方法で結果を計算します。

なお、空気中の湿度が60%を超えると、空気中の水分で測定値が異なってしまうことがあります。したがって、暫定的に温度や湿度を測定する表面抵抗計もあります。表面抵抗計は抵抗値を示すだけでなく、導電体であるか絶縁体であるかを文字で表記する製品も販売されています。

表面抵抗計はプローブやワニクリップで対象物を捉えて測定する場合が多いです。また、装置にリング電極が付属し、置くだけでも測定できる機器も販売されています。リング電極を使用することで表面に流れる電流のみを検知することができるため、表面抵抗値を測ることができる仕組みです。

ただし、プローブや裏面リング電極にホコリが付くと正確な測定ができなくなります。測定前にアルコールで拭いて洗浄する測定方法が一般的です。

表面抵抗計の選び方

表面抵抗計を選ぶ際は、以下の選定要素を考慮することが重要です。

1. 測定方法

表面抵抗計には直接接触式や非接触式などの測定方法があります。直接接触式はプローブを材料の表面に接触させて測定を行う方法で、非接触式はセンサーを使用して材料の近傍で測定を行う方法です。測定対象や状況に適した測定方法を選択する必要があります。

2. 測定レンジ

使用する材料や用途によって必要な測定レンジが異なります。適切な測定レンジを選択することで、正確な測定が可能です。一般的には広い範囲の表面抵抗値を測定できるモデルが好まれます。

3. 精度

測定精度は表面抵抗計の重要な要素です。高い精度の表面抵抗計を選択することで、より正確な測定結果を得ることができます。特に品質管理や研究開発などの用途では非常に重要です。

4. 外形寸法・重量

外形寸法や重量は携帯性や取り扱いの容易さに影響を与えます。建設現場などの屋外での使用や、移動が頻繁に必要な場合には、コンパクトで軽量な表面抵抗計が好まれます。

参考文献
https://vessel.co.jp/userfiles/staticelectric/SRC01_im.pdf

血流スコープ

監修: あっと株式会社

毛細血管スコープとは

毛細血管スコープ

毛細血管スコープとは、採血をすることなく、指先にオイルを塗り、高輝度な光源を照射し、皮下を拡大する事で、簡単に指先、肌などの毛細血管の状態と毛細血管の中を流れる赤血球・白血球・血小板などを観察することができるマイクロスコープのことを指します。

皮膚毛細血管研究は、20世紀初頭Mullerらの先駆的研究にはじまり、日本国内でも戦前から小川三郎などの研究が残されています。1979年発行の生涯教育シリーズ6『微小循環』では武見太郎・沖中重雄・山村雄一が総監修の下、浅野牧茂が皮膚の微小循環観察に生体の窓として爪床および唇紅部皮膚の毛細血管係蹄の観察を一つのモニターとして重視していることが記されています。ただ、当時は顕微鏡を覗き込んで観察し、模写や写真で記録するという形をとっていました。これらの研究は科学技術の進歩にともない、21世紀に入りモニターで確認し、動画として記録できるところに新たなる可能性が開け、毛細血管血流観察装置と呼ばれていました。

2010年少し前くらいから毛細血管観察装置は小型化が進み、大阪大学医学系研究科はあっと社との共同研究成果により、反応拡散方程式を用いて毛細血管像を抽出する事に成功し、定量化できる様になった事で、NHKガッテンなどテレビ番組の露出が増えた事で認知が高まり毛細血管スコープと呼ばれる様になりました。

使用される幅は、医療業界の研究にとどまらず、健康業界や美容業界などでも、毛細血管を観察して、施術の効果を測る目的で幅広く利用されています。

毛細血管スコープの使用用途

ここで、毛細血管スコープの使用用途について説明します。

毛細血管スコープは、手指の先端や、肌など様々な体表の毛細血管の形状や血流を確認することができるため、大学や研究機関などにおける臨床試験や実証機器として用いられたり、病院で抹消や皮下の毛細血管形状や血流を観察する治療の効果検証を行う機器として使用されるなど、医療に関わる業界で幅広く使用されています。以前は観察や毛細血管画像を保存し、目視や簡易的な描画システムを用いて数値化が行われておりましたが、前述の大阪大学の非属人的な定量化手法により大量解析が可能となり、2020年10月に日本緑内障学会にて前川ら(東北大学医学部眼科学教室)により緑内障診断における爪床毛細血管測定の有用性の発表があり、測定機器として医学界での認知が高まってきている事から大阪大学微生物病研究所情報伝達分野 高倉教授を委員長としてNPO近畿バイオインダストリー振興会議により毛細血管ラボ社会実装コンソーシアムが設立されました。
また、漢方やマッサージなどの血行促進の変化を観察したり、薬局などで生活習慣改善のための行動変容の為のカウンセリングにも使用されています。

医療業界の他にも、美容業界や健康業界でも使用されることもあり、施術後の毛細血管や血流改善などを観察するために用いられています。

毛細血管スコープの原理

続いて、毛細血管スコープの原理について説明します。

毛細血管スコープは、表皮や真皮部分などに高輝度な光源を照射し、体表面にある毛細血管を拡大しカメラで映すことで、採血などをしなくても毛細血管に流れる赤血球・白血球・血小板などのようすを投影し観察することができます。

毛細血管スコープは、高倍率なレンズとカメラで構成されている場合が多く、用途に合ったモニターに接続して投影したり、解析ソフトと組み合わせて定量化したりすることによって、活用の幅を広げることが出来ます。

毛細血管スコープを導入した結果

毛細血管スコープは、被検者の血液を採取することなく、リアルタイムで毛細血管・血流を観察できることが最大のメリットです。毛細血管形状や血流からその変化が確認でき、非常に便利な検査機器といえます。

簡単に毛細血管の状態がわかる理由として、観察するポイントが「指先爪床部(爪の甘皮の下あたり)」の毛細血管を観察することに特化しているのは、皮膚と爪の間の毛細血管はヘアピン状に走行していることにあります。操作が非常に簡単で、専門的な知識や難しい操作技術が必要ありません。さらに、シンプルなUIであるため、誰にでも操作ができ、簡単に観察することができます。

毛細血管形状や血流から簡単に自身の微細な変化がわかることは、被検者にもメリットがあります。被検者がすることといえば、痛みに耐えることでも、長い待ち時間でもなく、ただ指先にオイルを塗るだけです。たったそれだけで、その場で簡単に自身の状態がわかります。被検者の負担がほとんど無いことも、人気の理由です。さらに、リアルタイムに毛細血管形状や血流の状態を確認できるため、将来的には生活習慣病などの病気の改善対策に強い納得をもたせることができる可能性があります。

以上のように、毛細血管スコープは導入することで、ユーザーと被検者のどちらにもメリットのある検査機器です。現在でもなお、その人気は増加しています。今後、さらに幅広い分野で扱われるようになり、多くの場面で測定される様になることが期待されております。

毛細血管スコープの価格

毛細血管スコープの価格は20万円から50万円ほどです。レンズやセンサー性能の違いにより高いものになればなるほど高機能ですが、最近では毛細血管専用ではないものの印刷物・電子部品・皮膚を観察するものの転用で安価なレンズとセンサーを使用し機能性をシンプルにすることで薄っすらと毛細血管を観察することができる低価格なものも出てきております。

レンズ・センサー性能の高いものを使用した毛細血管スコープは具体的には、卓上とハンディ兼用タイプで、ピント調節が手動で調整できる毛細血管スコープがあります。自由度が高く、手動で調整できる機能性の高さから40万円ほどかかります。

安いものでは、ハンディタイプで、印刷物や電子部品の品質をみるために作られたものの転用でピント調整が確率的には半分程度オートフォーカスできる機能のスコープがあります。こちらでは、手動で調整がほとんどできないものの、液晶モニタがスマートフォンやパソコンで映し出せるので、18万円ほどで購入できます。

毛細血管スコープは低価格から高価格までさまざまです。しかし、高機能のまま低価格を実現したものもあり、必要な機能に合わせて購入できます。また、レンタルといった方法でも毛細血管スコープを導入できます。

本記事は毛細血管スコープを製造・販売するあっと株式会社様に監修を頂きました。

参考文献
https://3r-beauty.com/comparison/blood