ハンドグラインダー

ハンドグラインダーとは

ハンドグラインダー

ハンドグラインダーとは、高速回転する砥石を使用している研削工具です。

回転数を調整できるモーターやスピードコントローラーが付いている場合が多く、研削の精度を向上できます。様々な砥石や研磨材を使用でき、切れ味や仕上がりに応じて選択できます。

刃物や工具の刃の研ぎ直しや溶接面の研磨、金属の切断面の仕上げなどに使用されます。電動式のハンドグラインダーは電源が必要です。

ハンドグラインダーの使用用途

1. 刃物や工具の研磨

包丁やハサミ、ドリルビットなどの切れ味を回復させること、金属製品やプラスチック、ガラス製品、陶器の表面研磨などに使用されます。

2. バリ取りや仕上げ

鋼板、アルミニウムステンレス鋼などの金属の溶接面や切断面のバリの除去、仕上げ研磨などに使用されます。

3. サビの除去

金属部品の錆の除去や塗装の下地処理などに使用されます。

ハンドグラインダーの使い方

ハンドグラインダーは以下のような流れで使用します。

1. 準備

加工する素材を準備し、必要に応じて素材を固定します。ハンドグラインダーには種類や作業内容に応じて異なるタイプの砥石が使用されます。作業に適した砥石を選択し、ハンドグラインダーに取り付けます。

2. 切削加工開始

ハンドグラインダーを回転させながら素材の表面に接触させ、切削加工を開始します。切削方向を素材の強度や形状に合わせて調整します。

3. 切削継続

ハンドグラインダーを素材に沿って進めながら必要に応じて切削条件を調整します。切削面に対して垂直に、かつ均一な圧力をかけるように注意しながら素材を切削します。

4. 仕上げ

切削加工が完了したら切削面を仕上げます。仕上げに使用する砥石の種類や研磨剤の粒度によって、切削面の仕上がりや表面の粗さが異なります。

5. 粉塵や切削屑の処理

切削加工によって生じた粉塵や切削屑を処理します。切削屑が素材に残留している場合は除去します。

ハンドグランダーの特徴

長所

電動のハンドグラインダーは高速回転する砥石を使用するため、手作業に比べて研削作業が速く作業効率が高くなります。また研削作業中の回転数が一定に保たれるため、手作業に比べて研削作業の精度が高く仕上がりの品質が良くなることが利点です。

さらに電動のハンドグラインダーでは機械自体が回転するため、手作業に比べて研削作業の難易度が低く、初心者でも簡単に操作できるという利点もあります。

また砥石を交換することで砥石の種類や粒度を変えられるため、様々な目的に応じた研削作業をできるので便利です。例えば粗砥粒の砥石を使って表面の傷を取り除いた後、細かい砥粒の砥石を使ってきれいに仕上げられます。

一般的にハンドサイズで比較的軽量であるため、電動のハンドグラインダーは持ち運びや収納が容易であり、利用範囲が広くなります。

短所

ハンドグラインダーは高速回転する砥石を使用するため、騒音や振動が問題です。

またハンドグラインダーを使用すると、素材の表面が削られて粉塵や切削屑が発生します。この粉塵や切削屑は有害物質を含む場合があり、適切な保護対策が必要です。

人の手で操作するため、素材の表面に均一に圧力をかけられない場合があり、切削面の仕上がりにばらつきが生じることがあります。切削精度には限界があり、微細な切削加工や高精度の研削作業には向かない場合があります。

ハンドグランダーのその他情報

1. 動力による分類

ハンドグラインダーには、電動式と手動式の2種類があります。電動式は高速回転する砥石を使用するため、手動式に比べて作業効率や精度が高くなりますが、騒音や振動が問題となる場合があります。手動式は比較的低速で、より細かい作業に向いています。

電動式のハンドグラインダーは電源が必要です。そのため屋内や工場などの電源がある場所でしか使用できません。また屋外で使用する場合は、発電機などの別の電源が必要になる場合があります。

電源にコンセントが必要なタイプのハンドグラインダーに加え、バッテリー式の製品もあり、これらの製品は充電式のバッテリーを内蔵しているため電源コードが不要で屋外や場所を選ばずに使用できます。

2. 砥石の種類

ハンドグラインダーの砥石には、シリコンカーバイドアルミナ、ダイヤモンドなどがあります。それぞれの砥石には特徴があり、使用する素材や作業内容に応じて選択する必要があります。

3. 研磨剤の種類

ハンドグラインダーの研磨剤には、ダイヤモンド研磨剤、シリコンカーバイド研磨剤、アルミナ研磨剤などがあります。砥石と同様に、それぞれの研磨剤には特徴があり、使用する素材や作業内容に応じて選択する必要があります。

プラズマ加工機

プラズマ加工機とは

プラズマ加工機

プラズマ加工機とは、アーク放電によるプラズマを用いて主に切断などを行うための工作機械です。

切断する工作機械にはプラズマ加工機以外には、レーザーやガスによる切断方法があります。プラズマ加工機は他の切断法と比べると切断時間が短く、効率がいいのが特徴です。

また、プラズマ加工機は数mm~100mm程度の厚さまで十分に切断することが可能で、コストも低く抑えられます。昔から使われてきたガス切断などは、酸化しにくいステンレス鋼などの加工は不可能でしたが、プラズマ加工機を使用すれば、通電するものは何でも切断することができます。直線だけでなく複雑な曲線を行うこともできるため、様々な製品の製造に役立っています。

プラズマ加工機の使用用途

プラズマ加工機の主な用途は、金属の切断です。具体的には造船所や鉄骨橋梁メーカーなどで使用されています。特にステンレスやアルミニウム合金など、酸化しにくい材料はガス切断では切断できないため、プラズマ加工機が使われます。

基本的に通電するものならば切断が可能で、処理速度も比較的速いのが特徴です。また、切断できる厚みを比較的広く、ドライプラズマでは150mm程度の厚さにまで対応しています。したがって、レーザーでは切断が難しかった厚みのある素材の切断に適しています。

プラズマ加工機の原理

プラズマ加工機は電気の力で切断する材料と切断機の電極との間でアーク放電を起こし、発生したアーク熱で材料を溶かして切断するものです。さらに、電極周辺を保護する冷却によってアークを緊縮させ、エネルギーを集中させることによって、切断作業の効率を高めます。

溶けた材料はアークと共に発生するプラズマ気流によって、周囲に吹き飛ばされます。プラズマ加工機の電極で用いられるのは、タングステンなどの非摩耗性の材料です。

プラズマ加工機の種類

プラズマ加工機は、使用するプラズマガスの種類よって分類することができます。

1. アルゴン・水素を使うプラズマ加工機

プラズマガスとして、アルゴンガスや水素ガスに窒素ガスを混入したものです。ステンレス鋼や非鉄金属の加工に使われます。水素ガスには還元作用があり、加工する際の酸化が抑制されるため、切断面に光沢があるのが特徴です。

2. 酸素を使うプラズマ加工機

プラズマガスとして酸素を使う場合には、金属の酸化反応によって燃焼エネルギーが増幅されます。効率的な加工をしたい場合に向いており、炭素鋼などの加工に向いた加工機です。

3. 圧縮空気を使うプラズマ加工機

圧縮空気を使うプラズマ加工機は、ランニングコストを抑えることができます。小型のプラズマ加工機にも使われます。

4. 窒素を使うプラズマ加工機

最も古いプラズマ加工機で使われたものであり、近年はNOxの発生源となるため、使われなくなりました。

プラズマ加工機の特徴

プラズマ加工機のメリットは、幅広い厚みに対応していること、曲線の加工も可能であることなどです。切断速度は1~6mm程度切断であれば、レーザー切断の方が優れていますが、厚くなってくるとプラズマ加工機が有利です。しかし、切断できる厚さは150mm程度が限界となります。

また、ガス切断では不可能だったステンレスなど切断が可能で導電性のある材料のほとんどを加工することができます。一方で、高電圧の電源が必要となるため、屋外での使用には適していません。

プラズマ加工機のその他情報

プラズマとは

プラズマとは、高温になった気体に起こる現象によって生まれるものであり、固体、液体、気体に次いで物質の第4の状態と呼ばれます。気体が加熱されると分子は解離して原子になり、さらに原子核のまわりを回っていた電子は原子から離れて電子と正イオンとに分かれます。これは電離といい、電離によって生まれた荷電粒子を含む気体がプラズマです。

プラズマには光や電磁波を出すこと、電流が流れること、物質と反応し、相手の性質を変えるという性質があります。プラズマ加工機では、これらプラズマの性質を利用して金属を加工しています。

参考文献
http://kobe-stainless.co.jp/business/plasma/
http://wwwb.pikara.ne.jp/ogawa-giken/uw_cut/uc71.html

ユニバーサルモーター

ユニバーサルモーターとは

ユニバーサルモーターとは、直流 (DC) または交流 (AC) 電源で使用できるモーターです。

交流で動作させることが多いため、交流整流子モーターとも呼ばれます。さまざまな電源環境で使用することができます。特に、家庭や工業現場など、異なる電源環境が存在する場所で便利です。

また、ユニバーサルモーターは比較的小型でありながら、高い出力と回転速度を実現することができます。そのため、パワフルな動力が必要な機械や装置に最適です。一般的にコンパクトな設計であり、設置スペースが制約されている場所や携帯性が求められる機器にも適しています。

ただし、ユニバーサルモーターは摩耗部品であるブラシを使用するため、定期的な点検や交換が必要です。長時間の連続使用や過負荷の状態では、ブラシの寿命が短くなる可能性があります。

ユニバーサルモーターの使用用途

ユニバーサルモーターは広い用途で使用されるモーターです。以下はユニバーサルモーターの使用用途一例です。

1. 家庭用電化製品

家庭でよく使われる電化製品にユニバーサルモーターが使用されています。強力な吸引力と高速回転が必要な掃除機などに使用されます。小型でコンパクトな設計が可能であり、異なる床面や表面に適応することが可能です。

また、ヘアドライヤーは、高速な風量と温風を提供する必要があります。ユニバーサルモーターはその要件を満たし、強力な風力と短時間での髪の乾燥を実現することが可能です。その他、ミキサーやブレンダーなどにも使用されることがあります。

2. 工具

電動工具にもユニバーサルモーターが利用されます。コンセントが近い場合は交流で電源を供給し、遠い場合はバッテリーで電源を供給することが可能です。

高い回転速度とトルクを提供するため、電動ドリルなどに使用されます。木工や金属加工などの作業において、効率的でパワフルな穴あけが可能です。同様に、インパクトレンチや電動ドライバーにも使用されます。

これらの工具はさまざまな作業に使用され、高い出力と回転速度が求められるため、ユニバーサルモーターが最適です。

ユニバーサルモーターの原理

ユニバーサルモーターは回転子、固定子、ブラシ・整流子などで構成されます。

1. 回転子

回転子はユニバーサルモーターの中心部であり、回転運動を行う部品です。通常、複数の巻線が巻かれた鉄心から構成されています。鉄心は珪素鋼板による絶縁成層構造を採用していることが多く、発熱しにくくなっています。

2. 固定子

固定子は回転子の周囲に配置され、磁性を与える部品です。固定子のコイルに電流を流すことで磁場を生成し、回転子と相互作用することで回転運動を引き起こします。

動作中に流れる渦電流を最小限にするために、ラミネート加工が行われていることも多いです。

3. 整流子

整流子とブラシは、回転子巻線に電気を供給する部品です。整流子とブラシの接触によって回転子巻線に電気を供給します。ブラシと整流子は複数に分かれており、電源の極性を変化させるために使用されます。

ユニバーサルモーターの選び方

ユニバーサルモーターを選ぶ際は、出力容量、回転速度、電源電圧などを考慮することが必要です。

1. 出力容量

出力容量は、モーターが実現可能な出力の最大値です。一般にモーターの仕様書や製品情報で表され、ワット (W) や馬力 (HP) などの単位で示されます。

駆動する負荷に対して十分なパワーを提供する必要があるため、負荷の性質などに応じて適切な出力を選ぶことが大切です。

2. 回転速度

回転速度はモーターが回転する速度です。通常は1分当たりの回転数 (RPM) で表され、製品仕様に記載されます。

作業のスピードや運転効率に直接影響を与えるため、要求される回転速度を適切に選ぶことが重要です。

3. 電源電圧

電源電圧は電源として、使用可能な電圧の種類を指します。DC電源は24Vや18Vなどの規格が使用され、AC電源は100Vや200Vを使用することが一般的です。使用する環境の電圧範囲に合致している必要があります。

参考文献
https://www.nidec.com/jp/technology/motor/basic/00025/

レーザーミラー

レーザーミラーとは

レーザーミラー

レーザーミラーとは、レーザー光を反射するために設計された特殊なミラーです。

高い反射率と熱耐性を持つことが特徴であり、レーザー光のエネルギーを最大限に利用するために使用されます。レーザーデバイスや光学系においてさまざまな目的で使用されていますが、主な用途はレーザー光をビームの形で集光または伝播させることです。

レーザーデバイスから出力されるレーザー光はミラーによって反射され、所望の方向にビームを誘導することが可能です。また、レーザーミラーはレーザーの反射鏡としても使用されます。レーザー光は特定の波長やパワー範囲で生成されるため、通常のミラーでは熱による損傷が起きる可能性があります。

レーザーミラーは特定の波長や出力に対して高い反射率を持ち、さらに熱によるダメージを最小限に抑える特殊なコーティングや材料で製造されることが多いです。

レーザーミラーの使用用途

レーザーミラーはさまざまな分野・用途で使用される部品です。以下はレーザーミラーの使用用途一例です。

1. 製造業

レーザーカッティングやレーザーマーキングなどの加工プロセスで、重要な役割を果たしています。レーザーミラーは高い反射率と熱耐性を持つことが特徴であり、レーザービームを正確に誘導することが可能です。

レーザーカッターではミラーがレーザービームを素材上に集光し、切断を行います。レーザーマーキング装置ではレーザービームを焦光することで、マーキングや彫刻が可能です。また、レーザー溶接では素材上に集光して溶接プロセスを制御します。

2. 医療用途

レーザーミラーは医療分野でも広く活用されている部品です。レーザー手術においては、ミラーを使用してレーザービームを患者の体内に誘導します。

皮膚治療ではミラーを使用してレーザービームを正確に照射し、皮膚の病変や不要な組織を治療することも多いです。眼科手術では、ミラーがレーザービームを眼内に誘導し、眼の手術や治療を行います。

レーザーミラーは高い反射率と熱耐性を持つことから、レーザー光を効果的かつ安全に使用するために欠かせない要素です。

3. 通信

レーザーミラーは、光ファイバーや光通信の分野でも重要な要素です。光ファイバーは情報の高速伝送に使用され、その際にレーザーミラーは光信号の反射や誘導に使用されます。ミラーは光ファイバーの端部や分岐点で使用され、光信号を正確に制御することで高速・高品質の通信を実現します。

また、光通信ネットワークではミラーが光信号のルーティングや光スイッチングに使用され、信号の伝送や制御を助けることも多いです。

レーザーミラーの原理

レーザーミラーは反射層、基盤、保護コーティングなどで構成されます。

1. 反射層

反射層は、レーザービームを反射する役割を果たす部分です。一般的に、金属やダイオード蒸着などの高い反射率を持つ材料で覆われています。この層の厚さと材料の選択は、ミラーの特性や使用するレーザーの波長によって決まることが多いです。

2. 基盤

基盤は反射層を支持し、安定性を提供する役割を果たす部分です。一般的に、ガラスや金属などの剛性のある材料が使用されます。基盤の平坦性や耐熱性が重要であり、レーザービームの品質を保つために高い品質の基盤が選ばれることが多いです。

3. レーザーミラー

レーザーミラーは使用中に汚れや傷を受ける可能性があるため、保護コーティングが施される場合があります。このコーティングは、ミラーの表面を保護し、耐摩耗性や耐薬品性を向上させることが可能です。

レーザーミラーの種類

レーザーミラーはコーティングによっていくつかの種類が存在し、その特性や用途が変化します。以下は代表的なレーザーミラーの一例です。

1. 金属コーティング

金や銀、アルミニウムでコーティングされたミラーです。安価で広い波長帯域で使用することができます。

金は600nm以下、銀は400nm以下は透過させる特性があります。表面に傷が付きやすいのがデメリットです。

2. 広帯域誘多膜

広帯域で反射率の高いコーティングがされたミラーです。膜によって光が吸収されることがなく、多波長を用いたレーザー光源などに利用されます。

3. レーザー用誘多膜

特定の波長の反射率が高いコーティングがされたミラーです。短波長レーザーやハイパワーレーザーに用いられる最も一般的なレーザーミラーと言えます。また、膜が光を吸収しない点や膜が硬く傷つきにくい点もメリットです。

参考文献
https://www.geomatec.co.jp/products-and-solutions/optical-control/laser-optical-components/laser-mirrors/
https://www.global-optosigma.com/jp/category/opt/opt04.html
https://xn--wckwfybb4714bueo2su.com/

温度校正器

温度校正器とは

温度校正器

温度校正器は熱電対やサーミスタなどを校正する装置

温度校正器とは熱電対やサーミスタなど温度を測定する装置を校正するための機器です。熱電対などの温度を測定する装置も経年劣化やセンサーの汚れなどによって表示される温度と実際の温度が異なってしまうことがあります。このような誤った値を示さないために温度校正器による校正が行われます。

温度計の種類で用いる温度校正器は異なる

校正したい温度計の種類によって用いる温度校正器は異なります。熱電対やサーミスタの校正を行うときはドライウェル式の温度校正器を用いて、サーマルカメラなどの非接触型の温度計を用いるときは黒体炉を用います。

温度校正器の使用用途

現場で用いる温度計の点検で利用

温度計はものづくりの現場で日常的に使用される装置であるため、温度校正器も様々な業界で使用されます。温度の管理は製造プロセスにおいて非常に重要です。温度計の値が実際の温度と異なっていた場合、製品の品質やプロセスの安全性に悪影響を与える可能性があります。そのため、現場で用いる温度計は定期的に点検、校正されています。

セラミック、無機材料の製造で用いられる高温の温度計の校正でも利用

室温から100℃程度までの有機物の製造における温度計の校正から、1000℃を超えることもあるセラミックや無機物の製造、加工などの現場における温度の校正まで、様々な場面で温度領域に対応した温度校正器は使用されています。

温度校正器の特徴

温度校正器には熱源が備え付けられている

温度校正器には熱源と温度を表示する画面が取り付けられています。一定の温度に保たれた熱源に熱電対などの校正したい温度計を取り付け、温度校正器で表示される温度と温度計の温度を比較することによって温度校正を行います。温度計の種類によって温度校正器は異なっており、熱電対、サーミスタなどの接触式温度計ではドライウェル式の温度校正器を用い、サーマルカメラ、パイロメータなどの非接触型の温度計では赤外線黒体炉を用います。

小型の温度校正器もあるが設置環境には要注意

温度校正器は小型で持ち運ぶことができるものもあるため、現場で温度校正を行うこともあります。温度校正の際は熱源が一定の温度に保たれることが必須であるため、設置環境には注意が必要です。なお校正は複数回行い、どの程度の大きさの誤差が含まれているかを把握した上で温度校正を行うことが望ましいです。また、測定対象の温度や環境によって温度計の校正を行う頻度は異なるので、プロセスに応じて適切な頻度で温度校正を行うことが重要です。

参考文献
https://www.wika.co.jp/ctd9100_1100_ja_jp.WIKA?ProductGroup=85334
https://jp.flukecal.com/products/temperature-calibration
https://www.jp.omega.com/technical-learning/calibrating-temperature-measurement-devices.html

器具洗浄機

器具洗浄機とは超音波発振器

器具洗浄機は実験機器を自動で洗浄する装置

器具洗浄機は実験や製造で用いる機器を洗浄する機械です。研究開発において実験機器の汚れは実験結果に影響を及ぼす可能性がある一方で機器洗浄には時間を要します。そのため、器具洗浄機は業務効率化のために用いられます。また食品業界やバイオ業界のおいては用いる器具、機器の入念な殺菌が必要となることもあり、その際も器具洗浄機が用いられます。

器具洗浄機は蒸気、ジェット水、洗剤で汚れを除く

器具洗浄機にはノズルが取り付けられており、水を噴射させることで汚れを落とすタイプのものや高温の蒸気を充満させることで汚れを除去する機器などがあります。また、器具洗浄用の洗剤を用いることもあります。

器具洗浄機の使用用途

研究開発、食品業界で器具洗浄機は使われる

器具洗浄機は研究開発、製造における機器の洗浄に用います。研究開発においては業界や用いる試薬によって汚れの種類は異なるため、汚れに応じて器具洗浄機で用いる洗剤を変更します。また食品業界では製造で用いる器具の洗浄のために器具洗浄機を用います。食品業界で用いる器具洗浄機では殺菌水を使用することも可能であり、器具の殺菌のためにも洗浄機が用いられます。

その他、バイオ系の実験で頻繁に用いるマイクロチップなどの洗浄、殺菌を行う器具洗浄機も販売されています。

器具洗浄機の特徴

器具洗浄機は内部のノズル、ラックを回転させて洗浄する

器具洗浄機にはラックとノズルが取り付けられています。洗浄したい機器の形状、大きさに応じて適切なラックを選定します。また、オプションとして試験管など実験で頻繁に使用する器具専用のラックが販売されています。器具洗浄はノズルから水を噴射させて行います。ノズル、またはラックが回転することで全体に水を噴射させることができます。また、装置の型番によっては高温の水蒸気で内部を充満させて殺菌処理を行うこともできます。

器具洗浄機で洗剤を用いるときは保護手袋の着用を

器具洗浄機で使用する洗剤には様々な種類のものがあります。アルカリ性、酸性の強力な洗剤を使用することも可能であるため、固着した有機物の汚れを除去することもできます。なお、洗剤を取り扱う際は薬傷を防ぐために保護手袋を着用して作業することを推奨します。また、万が一洗剤が目に入った場合は直ちに十分な流水で洗浄する必要があります。

器具洗浄機を用いたときに粉体の洗剤を使用すると洗剤が器具に残存する場合もあります。そのような事態を防ぐためには洗浄時のすすぎの回数を増やすなど、十分な量の水で洗浄することが推奨されます。

参考文献
https://www.wakenyaku.co.jp/ctg/ls.php?i=160
https://bio.tomys.co.jp/products/washer/
https://www.yamato-net.co.jp/product/category/science/washer/
https://www.a-creo.co.jp/solution/cookware/

耐候性試験機

耐候性試験機とは

耐候性試験機とは、自然環境下における日射量、雨量、温度や湿度などの変動要因による製品の劣化を評価するための試験機です。

現在の工業製品に用いられるプラスチックや塗料、繊維や紙などの材料は、自然環境による劣化が避けられません。そこで、耐候性試験機を用いて加速試験を行うことによって、短期間で自然環境下による耐久性を確認します。

耐候性試験は国内ではJIS (Japanese Industrial Standards:日本産業規格) 、海外ではISO (International Organization for Standardization:国際標準化会議) で試験規格として取り決められています。対象となる機器や部材は、製品を発売する前に設計段階で確認するとともに、出荷前の最終確認が行われることもあります。 

耐候性試験機の使用用途

耐候性試験の対象となるのは、長期間に渡り自然環境下で使用される機器や部材です。塗料、プラスチック、ゴム、繊維、紙などの材料や、自動車、建造物、家電などの品質評価に用いられています。

耐候性の3大要因は光、温度および湿度です。耐候性試験機はこれらの環境条件によって劣化しやすい製品の品質を、特に短期間で評価するために用いられます。 

耐候性試験機の原理

耐候性試験機では耐候性の要因となる光、温度、湿度の3つの条件を疑似的に作り出して、試験対象物を加速度的に劣化させます。特に光については光源によって、キセノンウェザーメーターと、サンシャインウェザーメーターに分けられます。

キセノンランプは太陽光に最も近い波長帯域を持つことから、多くの耐候性試験機で使用されています。太陽光が持つ295~800nmの波長の光を再現できるため、紫外線、可視光、太陽光の領域をカバーできるのが特徴です。塗装の耐変色性などに用いられます。

サンシャインウェザーメーターの光源として用いられるのはカーボンアークです。正式名称はオープンフレームカーボンアークランプといいます。カーボンアークは太陽光と近いキセノンとは違い、UV領域に大きな出力が得られる光源であり、360nmおよび380nmを中心とする波長の光を強く発するのが特徴です。紫外線によって劣化しやすい樹脂製品の耐候性評価として、多く用いられています。

耐候性試験機ではこれら光源に加えて、温度と湿度を付加することによって、自然環境化における製品の耐久性を評価します。

耐候性試験機の種類

1. キセノンウェザーメーター

太陽光に近いキセノンアークランプを光源とする耐候性試験機です。近年の促進耐候性試験の主流になりつつあります。評価対象物はサンプルホルダーに固定され、回転しながらキセノンランプの光が照射されながら、温湿度管理と降雨を模擬する定期的なシャワーが噴射されます。

JISでは高分子系建築材料、アルミニウムやアルミニウム合金の着色陽極酸化被膜、塗料、プラスチック、加硫ゴムや熱可塑性ゴムの耐候性に関する試験方法が規定されています。

2. サンシャインウェザーメーター

サンシャインウェザーメーターは、キセノンウェザーーメーターよりも古くから用いられている試験装置です。特にプラスチック関係で規格化が進み、工業用塗料でも多くの評価実績があります。

光源のカーボンアークランプは紫外線部に高いエネルギーを持つ光で、太陽光との類似性で比較すればキセノンアークランプに劣ります。しかし、過去の評価実績が豊富であることから、現在でも多く用いられている試験装置です。サンシャインウェザーメーターもキセノンウェザーメーターと同様に、温度や湿度、降雨のシャワーを噴射し、促進耐候性評価を行います。

3. 紫外線蛍光灯ウェザーメーター

紫外線蛍光灯ウェザーメーターは、主に塗膜の耐候性評価に多くの実績がある試験装置です。紫外線蛍光灯を光源とする照射と暗黒結露を組み合わせたサイクル試験によって、塗膜のクラックやチョーキングと呼ばれる白亜化の評価に多く用いられています。

4. 紫外線フェードメーター

紫外線フェードメーターは主に、太陽光による退色や変色を評価するために用いられる試験装置です。自動車の内装材や衣類や靴などの繊維製品の評価に用いられます。光源はカーボンアークランプです。

参考文献
https://www.oeg.co.jp/Rel/weather.html
https://www.yamato-net.co.jp/word/24/
https://www.keisokuten.jp/static/sp_weatherability.html
https://www.ibieng.co.jp/analysis-solution/g0017/

耐電圧試験機

耐電圧試験機とは

耐電圧試験機とは、電気機器や電子部品の耐電圧性能を評価するために使用されるテスト装置です。

製品が定格電圧や設計仕様に基づいて安全に機能するかを確認するために使用されます。異物が混入した不良材料や打痕・傷が入った部品を使った電気機器は、絶縁耐力を失うことも多いです。

このような機器に高電圧を印加した際には、絶縁破壊を起こす危険があります。利用者が感電や火災などの災害が懸念されます。これらの災害を防止するために、機器ごとの耐圧基準が定められている法律が電気用品安全法です。

耐電圧試験はさまざまな規格や基準に基づいて実施されますが、電気用品安全法によって定められた耐圧基準を試験する場合にも使用されます。

耐電圧試験機の使用用途

耐電圧試験機は、さまざまな産業分野で使用されます。主に電気関係製品の試験に使用されることが多いですが、それ以外の製品に対しても適用される場合があります。

代表的な使用用途が、電気製品の耐電圧性能評価です。テレビや冷蔵庫などの家電製品の耐電圧試験は、過電圧や電圧変動に対して絶縁性能が十分かを確認するために実施します。また、インバータなどの電力変換装置において、高電圧や波形変動に対する絶縁耐力確認に使用されることも多いです。

耐電圧試験機は、コンデンサなどの電子部品における耐電圧性能を検査するためにも使用されます。コンデンサの耐電圧試験では、定格電圧を超える電圧を印加して絶縁構造の適切性を評価するために実施されることが多いです。トランジスタやダイオードに対しては、予想される動作条件で適切に絶縁されているかを確認するために実施します。

その他には、医療機器に使用されることもあります。患者や医療従事者の安全性を確保することが目的です。電気ショックの危険性がある機器には、定格電圧を超える条件での耐電圧性能が要求されます。

耐電圧試験機の原理

耐電圧試験機は、基本的には高電圧を生成し、試験対象に印加するための装置です。一般的な耐電圧試験機の原理には、高電圧発生、絶縁性能の評価、および試験信号の制御が含まれます。耐電圧試験機は、高電圧を発生するために高電圧電源や高電圧発生器を使用します。

一般的に変圧器または電力増幅回路を使用して、低電圧を高電圧に昇圧することが多いです。これにより、試験対象に所定の高電圧を印加することが可能です。耐電圧試験機には試験対象の絶縁性能を評価するための測定回路やセンサを備えています。一般的には、高電圧を試験対象に印加し、漏れ電流や絶縁抵抗などのパラメータを測定します。

これにより、試験対象の絶縁性能や耐電圧限界を確認することが可能です。耐電圧試験機は、試験対象に印加する電圧信号の波形や特性を制御する機能を備える場合も多いです。持続耐電圧試験では定格電圧を一定時間以上印加する必要があります。試験機は、試験時間や印加電圧の設定を可能にし、試験条件を正確に制御します。

耐電圧試験機の選び方

耐電圧試験機を選ぶ際はさまざまな要素が存在します。特に考慮すべきなのは、電圧レンジや試験規格、測定機能などです。これらを考慮したうえで、予算内の製品を選定します。

1. 最大耐圧

試験機の電圧レンジは、試験対象に必要な最大耐圧に合致している必要があります。また、電圧の制御精度や印可できる電圧種類 (AC/DC) なども重要です。要求される精度に基づいて試験機の仕様を確認します。

2. 試験規格・規制要件

試験対象の製品が準拠する必要がある試験規格や規制要件を確認することも大切です。IECなどの国際規格や業界標準に適合していることが望まれます。規格によって必要な耐電圧レベルや試験時間、試験条件が異なる場合があります。

3. 測定機能

耐電圧試験中に必要な測定機能が試験機に備わっていることを確認することも重要です。漏れ電流測定や絶縁抵抗測定などの項目があります。また、過電流遮断などの保護機能が適切に実装されているかも確認します。

参考文献
https://kesoku-blog.com/?p=1730
https://www.hioki.co.jp/jp/products/listUse/?category=35
https://www.kikusui.co.jp/knowledgeplaza/?d=safetytest 

表面検査装置

表面検査装置とは

表面検査装置とは、工場の生産ラインなどで製品検査に用いられる装置です。

主に、不良品の判定や欠陥のある部分の検出に利用されています。

表面検査装置の使用用途

表面検査装置は、様々な分野の製品検査で使用されています。例えば、フィルムやガラス、金属板など連続して生産される製品の検査などです。

表面検査装置を使用すれば、各製品の表面画像を撮影して取得した画像データから製品の欠陥を検出し、不良品の出荷の防止が可能です。ただし、表面検査装置による検査の項目は、製品によって異なります。

フィルムやガラスなど平滑さが重要な製品では凹凸を検出し、金属板では細かい傷が検出対象です。

表面検査装置の原理

表面検査装置は、カメラを通じて得られた画像データを元に欠陥を検出しています。そのため、表面検査装置は受光器や投光器からなる検査部と、コンピュータを含む画像処理のための制御部から成り立っています。検査部の受光器には、CCDカメラを採用するのが一般的です。

投光器は光源のことを指し、蛍光灯やLED、ハロゲンランプなどが用途に応じて使い分けられています。光源である投光器から照射された光は、検査対象物の表面において反射もしくは透過し、受光部のCCDカメラに取り込まれて電気的な信号に変換されます。

CCDカメラからの信号は制御部において画像処理され、画像データから欠陥の検出および判定が可能です。画像データから欠陥を検出する方法としては、得られたデータを異常のない製品と比べて、しきい値を超える変化が確認された場合に欠陥と判定する方法が用いられます。例えば、印刷原紙用の表面検査装置では、従来は画像データではなくアナログ波形を利用していました。

この方法では、しきい値の設定によっては薄い欠陥が検出できなかったり、地合いを欠陥と誤判定してしまったりする課題がありました。画像データを使用すれば、画素のサイズに応じて細かく判定できるため、このような課題が解決されます。

表面検査装置のその他情報

1. 表面検査装置の光学設計

表面検査装置では、光源である投光器から光を照射し、検査対象の表面で反射もしくは透過させます。この反射及び透過には、「正反射」と「乱反射」、「正透過」と「乱透過」および「散乱透過」の5種類があります。

方法ごとに特性が異なるため、表面検査で「キズ」を検出したいのか「凹凸」を検出したいのかなどに応じて方法を選択するのが重要です。

2. 表面検査装置のカメラと投光器について

表面検査装置において検査部のカメラの精度は、非常に重要な要素です。このカメラが精度通りに正常に動作していないと、異常部分があっても見逃してしまうため注意が必要です。

また、検査対象物に光を当てる投光器の性能もカメラの撮影性能に大きく影響します。検査対象の表面、すなわち検査面に対してまんべんなく光を当てるべく、投光器としては拡散版がついたバーライトなど、検査対象の広い面に対して均一に光を当てられる照明を使用しています。また、光源として格子光  (スリット光) を用いると、曲面の検査や、微細な異常を検出可能です。

3. 表面検査装置の画像処理

表面検査装置では、検査部のCCDカメラのレンズが取り込んだ光を、撮像素子上に画像データとして映し出し、制御部の画像処理をするコンピュータに伝送します。画像処理の一般的な工程は、前処理、計測処理、異常かどうかの判定、出力の工程です。

撮像素子で捉えた画像データはノイズを多く含むため、実際に計測処理に使用される画像データは、前処理により平滑化やエッジ抽出、収縮などの前処理を施してノイズを少なくした綺麗な画像を使用します。そして、画像データをもとに、異常かどうか入力された基準と照らし合わせて判定をコンピュータが下し、結果を出力します。

表面検査装置に使用されるカメラは高精度のものが多く、画素数が大きくなります。ただし画素数が大きいと前処理の量が膨大になるため、CPUが高性能なコンピュータが必要です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nig/42/6/42_6_342/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1986/53/8/53_8_1148/_pdf

摩擦撹拌接合

摩擦撹拌接合とは

摩擦攪拌接合とは、異なる2つの素材を接合させる技術のことです。

工具を高速で回転させ、摩擦熱と塑性流動を利用して素材を結合させます。軟化点が高い素材には適していませんが、完全な溶解を伴わないため、熱履歴を抑えることが可能です。

摩擦攪拌接合は、溶接と比較して熱変形が少ないのが特徴です。また、素材同士を接合できる点が評価されています。比較的新しい接合技術ではありますが、接合工具の形状最適化などにより問題点の解決が進んでいる状況です。

近年、摩擦攪拌接合技術は広く活用され始め、その優れた性能が注目されています。今後もさらなる研究開発が期待されており、さまざまな産業分野で応用される技術です。

摩擦撹拌接合の使用用途

摩擦撹拌接合は、主にアルミ合金をはじめとし、チタン合金やマグネシウム合金、銅、亜鉛などの金属の接合に用いられています。

具体的な使用用途は、鉄道のアルミ車両製造や自動車用フレーム、航空宇宙産業、船舶の軽量構造体、航空機の気体やエンジン部品の製造、橋梁などの建造構造物です。

異種金属を接合する際には、固有電位差から電蝕の恐れがあるため、接合箇所の防水や組み合わせる金属の選定に注意が必要です。近年では、軟化温度の高いステンレスや炭素鋼の接合技術が開発されており、YAGレーザ溶接と組み合わせたハイブリッド法などの進化も進んでいます。

摩擦撹拌接合の原理

摩擦撹拌接合において、ツールは円筒形をしており、プローブという突起があります。プローブの外側面にはネジが切られており、異なる材料を板厚方向で突き合わせ、高速回転するツールを押し当てます。摩擦熱で両素材が軟化し、プローブが押し入れられることで素材が混ぜ合わされ、接合することが可能です。

ツールには高い強度、耐熱性、耐摩耗性が求められるため、工具鋼で作られています。摩擦撹拌接合のメリットとデメリットを理解し、慎重に採用を検討することが重要です。

摩擦撹拌接合のメリットは、接合部の強度低下が少ないこと、変形が僅かであること、異種素材接合が可能であること、欠陥が生じにくいこと、前処理が不要であること、熟練技術が不要であることなどです。一方で、裏面側に接合不良が生じやすいこと、接合する素材の固定に剛性が必要であること、複雑な接合形状には向いていないことがデメリットとして挙げられます。

摩擦撹拌接合機のその他情報

摩擦撹拌接合機での異種金属接合

近年の世界的な環境保全や省資源の問題に対して、自動車業界では車体軽量化による燃費向上での貢献を進めています。車体の軽量化は単純に使用される金属構造材料を従来の比重の大きい鉄鋼から、比重の小さいアルミニウム合金に代替することで解決できる点が多いですが、強度が不足することと価格が高いことから現実的ではありません。

そこで、強度が必要な部分は従来通り鉄鋼材料でそれ以外の部分はアルミニウム合金と適材適所で素材を使い分けて、総合的に優れた特性を持つ部材を作る「マルチマテリアル」が有効な手段として広く使用されています。マルチマテリアルは鉄鋼とアルミニウム合金の組み合わせの割合が多い点が特徴です。この2つの異種金属の接合に摩擦撹拌接合機が使用されています。

接合方法には大きく2つあり、溶接のように熱的な高エネルギーを加えることで溶融して金属同士を接合する方法と、摩擦撹拌接合のように機械的に高エネルギーを加えることで溶融することなく塑性加工で接合する方法があります。溶接の場合、融点が大きく異なる鉄鋼とアルミニウム合金を溶融・接合させる制御が困難であり、さらに鉄とアルミニウムで構成される硬く脆い金属間化合物が形成されることも大きな課題です。

エネルギー密度が比較的低いアーク溶接では、金属間化合物の層が厚く形成されるため適用が困難ですが、指向性と密度の高いレーザーや電子ビーム溶接では層を薄くすることが可能で制御に難しさはありますが適用が可能です。一方課題としては、熱による変形が避けられないことが挙げられます。

参考文献
https://orist.jp/kenkyu-bu/kinzoku-zairyou/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspmee/4/2/4_64/_pdf