ピラニ真空計

ピラニ真空計とは

ピラニ真空計

ピラニ真空計とは、電気抵抗を利用した、真空度を測定するためのセンサーです。

ピラニ真空計の装置は小型のため持ち運びが容易で、操作も簡便なため、真空度を測定するための多くの場面で使用されています。ピラニ真空計は、ピラニゲージや単にピラニとも呼ばれています。

ピラニ真空計はシンプルな構成と安価が特徴で、測定子を測定環境に設置すると、真空度によって測定子への電流が変わり、真空度の測定が可能です。一般的に、ピラニ真空計は、コントローラと測定子で構成されており、測定範囲は約0.5Paから2KPa程度となっています。

原理上、測定範囲の下限付近では、精度が悪くなるので、圧力値が重要な測定では他の真空計が必要です。中には、測定子とコントローラが分離できるのピラニ真空計もあります。真空計の中には測定範囲でしか使用できず、範囲外で使用すると壊れてしまうものもありますが、ピラニ真空計はそのような心配はなく、大気圧から動作できることが魅力です。

ピラニ真空計の使用用途

ピラニ真空計は、真空到達度管理が必要なチャンバーや石英管などに接続された流体回路中や表面清浄度が求められる場所で使用されています。具体的には、中真空領域の測定によく使用されています。

中真空領域とは、油回転真空ポンプを使用して到達できる真空状態であり、フロンガス吸引等の測定時の計測などが一例です。ピラニ真空計は、高真空~超高真空排気系の粗引きラインや、高真空ポンプの背圧ラインに使用されることが多いです。

しかし、気体の種類や組成によって表示値が異なるので、絶対圧力を測定するためには事前に充分な較正が必要になります。また、ピラニ真空計は、理化学実験で真空状態を作る際や真空蒸着、凍結乾燥、医療用機器、分析機、レーザー応用装置、真空排気装置、半導体製造装置のプラズマエッチング空間、電子顕微鏡の真空パック等の測定にも使用されています。

ピラニ真空計の原理

ピラニ真空計は、電気抵抗型の真空計であり、電流を流したプラチナ (白金) 線へ気体が衝突する際に消失する熱エネルギーから電流を算出します。その電流値から圧力に逆算するということです。この微小圧力が、そのまま真空度に相当します。

ピラニ真空計の測定子内にはプラチナ製の極細の線が張ってあり、このプラチナ線に電力を加え温度を200度程度に加熱します。このプラチナ線に空気がぶつかるとプラチナ線から熱を奪い、プラチナ線の温度を200度に保つためにコントローラはより多くの電力をプラチナ線へ与えるのです。

逆にプラチナ線にぶつかる気体分子がなければ、プラチナ線の温度は少ない電力でも200度を保持することが可能です。プラチナ線へ供給する電力量の変化を測定することにより、測定環境内の真空度が計測できるようになります。

また、ピラニ真空管の精度を保つためにはプラチナ線の管理が重要です。プラチナ線は通電を繰り返すことにより消耗し、新品時に比べ、200度にするためにより多くの電力を必要にするようになるため、定期的な交換が必要になります。また、プラチナ線へのゴミの付着なども測定精度に影響を及ぼすため、定期的な清掃も欠かせません。

真空計のその他情報

真空度の定義

圧力は、低真空、中真空、高真空、超高真空などの真空度で分けられており、ピラニ真空計では低真空から中真空まで測定できます。真空度はJIS (日本工業規格) により、以下のように圧力の範囲によって5つに分類されています。

  • 低真空 (low vacuum): 105Pa~102Pa
  • 中真空 (medium vacuum): 102Pa~10-1Pa
  • 高真空 (high vacuum): 10-1Pa~10-5Pa
  • 超高真空 (ultra high vacuum): 10-5Pa~10-8Pa
  • 極高真空 (extremely high vacuum): 10-8Pa以下

参考文献

http://www.nucleng.kyoto-u.ac.jp/people/ikuji/edu/vac/chap3/pirani.html

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