非常電源とは
非常電源とは、通常の電力供給が使用できない環境下で電力を供給するためのバックアップシステムのことです。
停電や災害、電力系統の障害など、通常の電力供給が利用できない状況において重要な役割を果たします。非常電源の場合はJIS、消防法及び建築基準法で明確にどのような非常電源が必要かが定められています。
一例として、エレベーターや消防用スプリンクラー電源などに導入されます。
非常電源の使用用途
非常電源はさまざまな設備において使用されます。以下は非常電源の使用用途一例です。
1. 病院・医療施設
災害などによって停電が発生しても、電気を使用し続けなければならない代表的な施設が病院です。医療機器の中には人工心臓など、生命維持に直結する製品も多く存在しています。そのため、各病院には必ず非常用電源が確保されています。
停電などの非常時に必要な機器にだけ電力を供給することを目的に、病院のコンセントには色分けされていることが多いです。JIS規格として定義されています。
赤いコンセントは一般非常電源と呼ばれ、電力遮断後に自家用発電設備を介して40秒以内に起動し、10時間以上連続稼働可能です。特別非常電源と表示されている場合は10秒以内に起動し、10時間以上連続稼働可能です。緑色のコンセントは無停電非常電源と呼ばれ、無停電電源装置 (UPS) などによって即時起動します。
2. 一般家庭
災害への備えとして、一般家庭に非常電源が設置される場合もあります。リチウムイオン電池やディーゼル燃料発電機、ガス発電機などが使用されることが多いです。
台風などによる架空電線の断線停電には、プロパンガス発電機が有効です。家庭用の50kgプロパンガスを用いて発電すると、74時間程度の電力を作り出すことが可能です。暖房やスマートフォンの充電など災害時の生活に役立ちます。
3. 商業施設やオフィスビル
商業施設やオフィスビルでは、非常電源がビジネスの継続性に重要です。停電時や緊急事態時でも、エレベーターやセキュリティシステムなどの重要な機能を維持するために非常電源が利用されます。
非常電源の原理
非常電源は通常、蓄電池や発電機などの装置を使用して電力を供給します。
1. 蓄電池
蓄電池は、電気エネルギーを化学エネルギーとして保存し、必要な時にそれを電力として供給する装置です。常用電源運用時は蓄電池が充電されており、停電時には電力を供給します。これにより、一時的な停電や電力障害が発生しても重要な機能やシステムを維持することが可能です。
2. 発電機
発電機は燃料を燃焼させて回転エネルギーを生み出し、それを電力に変換する装置です。停電時に発電機が自動的に作動して電力を供給します。発電機は、長時間の電力供給が必要な場合や大規模な施設で使用されることが多いです。
3. 自動切替装置
常用電源と非常用電源を切り替えるために、自動切替装置と呼ばれる制御装置が使用されます。常用電源が喪失した場合、自動切り替え装置が非常電源に切り替えて電力供給を維持します。また、常用電源が回復した場合には再び常用電源に切り替える製品も多いです。
非常電源の選び方
非常電源を選ぶ際は、電力要件、連続運転時間、切替速度などから検討します。これらを検討した上で、予算の範囲内で最適な選択を行う必要があります。
1. 電力要件
非常電源が電力供給能力を評価することが必要です。使用機器やシステムの電力消費量を把握し、非常時に動作させるための必要電力容量を計算します。供給電圧も常用電源と一致するように選定します。
2. 連続運転時間
連続運転時間も検討することが必要です。想定される連続運転時間を確認し、燃料タンクや蓄電池の容量を決定します。長時間の停電を想定する場合は、別置の燃料タンクを準備する場合もあります。
3. 切替速度
切替速度も検討すべき要素です。通信機器がバックアップ対象の場合は、切り替えが迅速に行われることが重要なケースもあります。蓄電池と直流電源を使用することで、停電時間をほとんど無くすことも可能です。
参考文献
https://www.egm-service.biz/emergency_generator.html
https://www.fujielectric.co.jp/products/power_supply/ups/aboutups/
https://www.honda.co.jp/generator/lineup/lpg-generator/eu15igp.html