アルキド樹脂塗料

アルキド樹脂塗料とは

アルキド樹脂塗料

アルキド樹脂塗料は、無水フタル酸等の多塩基酸と、グリセリン等の多価アルコールのエステル化合物を基に、各種油や脂肪酸で変性させたアルキド樹脂を主原料とする、常温乾燥塗料です。

塗料の品質をより良くするために、シリコン樹脂・エポキシ樹脂・スチレンモノマー等でアルキド樹脂を変性させたものは、変性アルキド樹脂塗料と呼ばれます。また、変性しないものは、油変性アルキド樹脂塗料や純アルキド樹脂塗料と呼ばれています。

アルキド樹脂塗料は、塗膜の強度が高く、付着性や耐候性に優れています。また、顔料分散性が高いため、色や光沢が良く、保色性に優れているという特徴もあります。さらに、塗膜の耐水性・耐溶剤性・耐熱性も高く、安価で使用しやすいといった利点ももっています。 

アルキド樹脂塗料の使用用途

アルキド樹脂塗料は、速乾性・接着性・耐衝撃性・耐久性に優れており、製品の仕上げや保護コーティングを目的に広く使用されています。具体的には、「屋内外の塗装」「建材」「鋼構造物」「設備」などの建設関係の他、船舶用・車両用にも使用されています。また、さらに、「大型電気機器」「機械工具類」「農機具」などの金属塗装用や家庭用、木工用など、幅広い分野において利用されています。

アルキド樹脂塗料は、変性樹脂の種類によって用途が変わります。一般的に使用されているアルキド樹脂塗料は、長油性フタル酸樹脂を主成分としています。ロジン変性した樹脂を主成分としたアルキド樹脂塗料は、合成速乾ニスとして、天候に左右されず使用することが可能です。また、フェノール変性した樹脂の場合は、速乾性や研磨性に優れているため、下地塗料として利用されています。さらに、スチレン化した樹脂の場合は、プラスチック成形物と相性が良く、ポリスチロール版用の塗料として用いられています。

アルキド樹脂塗料の特徴

アルキド樹脂塗料に使用されているアルキド樹脂は、多価アルコールと多塩基酸との脱水縮合で進む共重縮合によるエステル化合物です。多価アルコール類としては、グリセリン・ペンタエリトリトールなどが使用され、多塩基酸としては、無水フタル酸・無水マレイン酸などが使用されています。

アルキド樹脂塗料には、不飽和脂肪酸を含む、亜麻仁油・大豆油・蓖麻子油などが配合されており、これらの脂肪酸の含有量により、「長油性」「中油性」「短油性」に分類されます。油含有量45%までの「短油性」のアルキド樹脂塗料は、光沢性に優れており、また、硬度が高く、塗装方法としては焼付型が多いことが特徴です。油含有量55%以上の「長油性」のものは、粘度性が低く、作業性に優れていますが、耐水性や耐薬品性に劣るといった特徴があります。油含有量45%~55%の「中油性」のものは、短油性と長油性の中間的な性質を持っています。

アルキド樹脂塗料を乾燥させる際には、酸化重合という化学反応が起こります。具体的には、樹脂の主成分の一種である不飽和脂肪酸を含む乾性油が、空気中の酸素を吸収することで酸化されます。そして、この反応に伴って重合が起こることによって、強靭な塗膜が作られます。なお、この反応中には、熱が発生します。 

変性エポキシ樹脂塗料

変性エポキシ樹脂塗料とは

変性エポキシ樹脂塗料

変性エポキシ樹脂塗料とは、エポキシ樹脂塗料の1種です。

エポキシ樹脂に対して変性樹脂を加えたり、エポキシ樹脂の樹脂骨格を変成させたりする方法で変性させた樹脂を用いた塗料を指します。変性方法として代表的なのが、ビスフェノールA骨格を持つエポキシ樹脂プレポリマー間を機能を持った他の変性剤で橋掛けすることで、エポキシ樹脂に変性剤の機能を付与する方法です。

変性エポキシ樹脂塗料の使用用途

変性エポキシ樹脂塗料は、サビ止め用の塗料として幅広く利用されています。変性エポキシ樹脂は、他の塗膜に対して、優れた付着性や浸透性をもつことが特徴です。そのため、既にサビが入ってしまった旧塗膜に対して、上塗りとして用いられることもあります。

特に、マンションなどの建築物の修繕工事現場などで使用されています。具体的には、扉・ドア・アンテナ支柱などの鉄部塗装です。

住宅用だけではなく、橋梁、電力・プラント、コンクリート構造物などの、鉄部以外の大型の建設物の塗装にも変性エポキシ樹脂塗料は利用可能です。変性技術によってさまざまな被着体に対し密着し、錆や表面に浸透する水などから被着体を保護します。

変性エポキシ樹脂塗料の原理

エポキシ樹脂は、複数のエポキシ基を残基として持つ高分子であるプレポリマーとエポキシ基と反応するアミンや酸無水物という官能基を複数持つ多官能の硬化剤を混ぜ合わせることで、プレポリマーを緻密に架橋させ硬化する熱硬化性樹脂です。強固なネットワーク構造を持ち、エンジニアリングプラスチックとして用いられます。しかし、これをそのまま塗料にすると、塗膜が固く脆くなったり、被着体への密着性が弱かったりします。

そこで、エポキシ樹脂の欠点を改質するために使用するのが変性エポキシ樹脂です。変性の目的は、エポキシ樹脂のプレポリマーに変性剤を組み込むことで、変性剤中の官能基の特性を発現させたり、架橋密度を調整して柔軟性を調整したり、ゴムやエラストマーと合わせることで弾性を持たせたりすることです。

このような変性エポキシ樹脂を変性することで、溶剤への親和性を高め、一液で使用できるようになります。また、サビ層への浸透性が向上するなどの効果を発揮し、塗料として優れた特徴を持つようになることも特徴の1つです。

その他、エポキシ樹脂塗膜の内部応力を緩和することによって、素地や旧塗膜への付着性が通常のエポキシ樹脂塗料と比べて向上する点も特徴として挙げられます。

変性エポキシ樹脂塗料の種類

変性エポキシ樹脂塗料に用いられる変性エポキシ樹脂は、どのような変性剤で変性されたかによって、その性質が大きく異なります。変性エポキシ樹脂の主な種類として、「ウレタン変性エポキシ樹脂」「ポリエステル変性エポキシ樹脂」「ゴム変性エポキシ樹脂」「キレート変性エポキシ樹脂」などが挙げられます。

1. ウレタン変性エポキシ樹脂

ウレタン変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂にウレタン構造を導入したもので、可とう性・高剥離強度・強靭性・柔軟性などに優れています。

2. ゴム変性エポキシ樹脂

ゴム変性エポキシ樹脂は、柔軟性・耐衝撃性・高剥離強度などに優れています。

3. キレート変性エポキシ樹脂

キレート変性エポキシ樹脂は、防食性と密着性などに優れています。

変性エポキシ樹脂塗料のその他情報

変性エポキシ樹脂塗料の長所と短所

1. 長所
変性エポキシ樹脂塗料の長所として、第一に高い防錆性が挙げられます。しかし、変性樹脂自体に金属の錆の進行を抑制するような防食性はありません。

内部応力の緩和や水蒸気透過性の低減などといった物理的な要因で、被着体の金属に錆の原因が近づくのを防ぎ、結果として高い防食性を発現可能です。また、変性樹脂には、被塗面への塗料の濡れ性を改善する働きがあるため、塗料の濡れ広がりや浸透を容易にする長所もあります。

2. 短所
変性エポキシ樹脂塗料の短所として、使用できる色彩の範囲が狭く、また塗膜内において変性樹脂の移動が起こることから、上塗り塗料として用いると変色や色むらが起きやすい点が挙げられます。そのため、外観を重視する構造物で、変性エポキシ樹脂塗料を使うケースはめったにありません。 

IoTソリューション

IoTソリューションとは

IoTソリューションのIoTとは「Internet of Things」の頭文字を略しており、直訳すると「物のインターネット」と訳せます。

これは、さまざまな物がインターネットにつながる状態を表しており、一例をあげると情報を得るための各種センサーがとらえた多様な情報を蓄積し、ある目的のためにコンピュータが、そのデータを解析し、分析した結果をインターネットを通じて、遠隔で処理するような状態がIoTといえます。

よって、IoTソリューションとは、IoTを活用して、ある目的や課題の解決を達成するためのアプリケーションシステムであり、業種や規模などに制限を受けずに、スマートフォンやPCだけではなく、家電品や各種産業用など、非常に多様な機器分野で用いられています。

IoTソリューションの使用用途

IoTソリューションが一番よく利用されるのは、企業の困りごとへのシステム対応の提案です。IoTソリューションのシステム構築は、システム構築力を有する企業が、各種センサーや端末、クラウドシステムやホストサーバーまでを一貫して請け負うケースが多いです。

使用用途として最もポピュラーなのが、製造現場の現場業務の効率化であり、その他にも交通システムの管理、各種防災対応、遠隔医療システムなど、従来では対応困難であった分野において、インターネットIT技術と5Gなどの高速通信システムの普及により、その対応が可能になっています。

IoTソリューションの原理

IoTで用いられる代表的な構成には、3つの要素があります。1つめに、ホストとなるクラウドサーバが挙げられます。2つめには、デバイスとホストを通信でつなぐゲートウェイがあります。3つめには、実際にインターネットにつなげるためのデバイスが挙げられます。デバイスとサーバーを直接接続する場合もありますが、デバイスが広範囲に及ぶ場合には、一度ゲートウェイを挟むほうが効率的なシステム構成が可能となります。これらをインターネットを介した通信で制御し、目的となる問題解決に向けたアプリケーションシステムを稼働させます。

先端のデバイスには各種センサーや通信用チップが用いられ、接続する通信にはNB-IoT(Narrow Band-IoT)が用いられるケースもあります。NB-IoTは、通信速度は遅いですが、安価かつ低消費電力での無線通信が可能なため、スマートメーターや防犯・災害などの異常検知用途での利用が想定されています。

レーザーカッター

監修: コムネット株式会社

レーザーカッターとは  

レーザーカッターは、レーザー光線を照射することで材料の切断、カット、彫刻などさまざまな加工ができるデジタル工作機械です。

レーザー加工機レーザー彫刻機、レーザー刻印機と呼ばれることもあります。

レーザーカッター=カット専用機というわけではなく、彫刻加工もできるものが多いです。レーザー加工がカットの用途で使われることが多いことから、「レーザーカッター」という呼び方が定着したと考えられます。

基本的にはレーザー加工機と変わりません。

レーザーカッターの使用用途

レーザーカッターは様々な材料に対応していることから、使用用途も多岐に渡ります。

レーザー加工の種類は、大きく「切る」加工(レーザーカット)と「彫る」加工(レーザー彫刻)の2つに分けられます。

1. レーザーカットの使用用途

  • 材料の切断・切り出し
  • 穴あけ
  • ハーフカット(キスカット)
  • ミシン目カット

2. レーザー彫刻・レーザー刻印の使用用途

  • 名入れ加工
  • ロゴ入れ加工
  • マーキング
  • ナンバリング
  • デザイン彫刻
  • 写真彫刻

レーザーカッターの原理

レーザーカッターは、手軽な操作感とランニングコストの低さが特徴として挙げられます。ランニングコストとしては、動力に必要な電気代のみが必ず必要です。そのほかには、機器に応じてアシストガスや消耗部品が必要になります。

基本的な操作に関しては、以下で解説します。

レーザーカッターの作業プロセスは、まず、モデリングツールなどのソフトウェアを使用して図面を作成することからはじめます。

そして、図面を加工面積に対して原寸で合わせます。このときに加工面積と図面情報のあいだに差異が生じると、加工した際に想定と違う製品が完成してしまうため、注意が必要です。

次に、レーザーカッターにデータを移行して図面情報を加工機が読み込めるデータに変換します。ここで加工する素材に合わせてレーザーのパワーと加工のスピードを調整します。加工素材の厚みなどを考慮することが大切です。

最後に、加工開始ボタンを押して加工を開始します。

ただし、加工を開始する前に作業エリアを設置して切削テストを行うことを推奨します。

また、そのほかの手順として排煙および脱臭装置を開放したり、安全装置または安全蓋の設定が必要な場合もあるため、メーカーの取り扱い説明書をよく確認するようにしましょう。

レーザーカッターの種類

1. 小型レーザーカッター

小型レーザーカッター

図1. 小型レーザーカッター

小型レーザーカッターは、デスクにのせて使えるコンパクトなレーザーカッターです。デスクトップ型とも呼ばれます。パワー (出力) が低いものが多いため、量産タイプではありません。

1点物のオリジナルグッズ、試作やサンプル制作、家庭用で活用されることが多いです。

2. 中型レーザーカッター

中型レーザーカッター

図2. 中型レーザーカッター

中型レーザーカッターは、業務用でもっとも多く普及しているタイプのレーザーカッターです。据え置き型とも呼ばれます。パワーも加工エリアも汎用性が高く、幅広い用途で活用できるのが特徴です。

3. 大型レーザーカッター

大型レーザーカッター

図3. 大型レーザーカッター

大型レーザーカッターは、2mを超えるような材料の加工や業界に特化したタイプのレーザーカッターです。看板業界や木工・家具製造など、大きな材料を加工する業界に導入されています。

4. ファイバーレーザーカッター

ファイバーレーザーカッター

図4. ファイバーレーザーカッター

ファイバーレーザーカッターは、金属加工を得意とするレーザーカッターです。レーザーカッターとして普及しているのは、「CO2レーザー」を使用しているものが多く、アクリル・木材といった材料の加工を得意としています。

金属加工をしたい方は、ファイバーレーザーがおすすめです。

5. ガルバノレーザーカッター

ガルバノレーザーカッター

図5. ガルバノレーザーカッター

ガルバノレーザーカッターは、固定されたレーザーヘッドから、ミラー制御でレーザーを照射するタイプのレーザーカッターです。

広く普及されているのは、フラットベッドタイプ   (XYタイプ) で、レーザーヘッドがプリンターのようにXY軸方向に動きます。

ガルバノレーザーは、フラットベッドタイプに比べると加工エリア、カットできる材料の厚みが限られますが、高速に加工できるのが特徴です。

レーザーカッターのその他情報

レーザーカッターで加工できる材料・素材

レーザーカッターは幅広い材料に対応できるのが特徴です。
代表的なものでは、下記のような材料に加工できます。

  • アクリル樹脂
  • 木材・木製品
  • 紙・ペーパー
  • 布地・繊維・テキスタイル
  • 革・皮革・レザー
  • 金属
  • プラスチック・樹脂
  • 石材

本記事はレーザーカッターを製造・販売するコムネット株式会社様に監修を頂きました。

カーボンパイプ

カーボンパイプとは

カーボンパイプ

カーボンパイプは、カーボン(元素記号:C)を活用した筒状のパイプです。このパイプは、材料にカーボンを使用しているため、カーボンの特性を有しています。

カーボンは、主に導電性や耐熱性、耐摩耗性、熱伸縮性、耐酸性を持ち合わせており、比重が小さく、強度が高いです。

カーボンから構成されている素材には、例えばグラファイトやカーボンファイバー、CFRPなどがあります。それぞれの特徴は、以下の通りです。

  • グラファイト

    グラファイトは、黒鉛とも呼ばれており、天然の黒鉛と人工的に生成する黒鉛があります。黒鉛の特徴としては、耐熱性があり、温度変化に強く、耐薬品性にも優れています。また、加工が容易で導電性があり、潤滑性も有しているため、摩耗などにも耐性があります。

    グラファイトを使用した製品には、主に鉛筆やカメラ、ヒーター、調理器、布団、モーターなどが挙げられます。

  • カーボンファイバー

    カーボンファイバーは、アクリル繊維を加熱し、炭化させたものです。カーボンファイバーを織り込むことで、布状に成形したものをカーボンクロスと呼び、クロスに樹脂を染み込ませて成形したものを炭素繊維強化プラスチック(CFRP)と呼びます。

    カーボンファイバーは、カーボンがもとになっているため、耐熱性や導電性、対薬品性、低熱膨張率、潤滑性などのカーボン特性を有しています。

    また、この材料は、主に複合材として活用され、自動車のシャーシやコンポーネント、ロケット、ドローン、支柱、建築材などに使用されています。

  • CFRP

    CFRPは、炭素繊維強化プラスチックと呼ばれ、FRPの一種です。素材を各種組み合わせており、複合材料として活用されます。母材に樹脂を使用し、繊維を加えることで軽量さを有しながら繊維の強さも兼ね備えています。

    CFRPは、主に航空機の翼やロケットのフェアリング、人工衛星のアンテナ、自動車、バイクなどに使用されています。

カーボンパイプの使用用途

カーボンパイプは、複合材料のさまざまな特性を活かして多くの分野で利用されています。

例えばFRPパイプは、サビに強いため、ウィンドサーフィン用のマストやスキー用のスティックとして使用することができます。

そのほかにもCFRPを複合材として使用したカーボンパイプでは、航空宇宙分野において、電波望遠鏡のアンテナやトラスなどに使用されています。

そして、自動車や車両分野では、レーシングカーやボディ骨格、鉄道車体に、スポーツ分野では、釣竿やゴルフシャフト、ラケット、野球バットなどに使用されています。

また、建築土木分野では、コンクリートの補強やロッドに、医療や介護分野では、車いすや杖、人工骨に活用されています。

カーボンパイプの原理

カーボンパイプには、FRPやCFRPなどの材料がよく使用されていますが、これらは異種素材と組み合わせることにより、コンポジット化が簡単に行えます。

コンポジットとは、複合材料を表し、2種類以上の素材を合わせることで、製品の高性能化を図る方法を指します。

組み合わせることが可能な異種材料には、CF(カーボン)やGF(ガラス)、AF(アラミド)などがあり、そのほかには、綿糸またはビニロン繊維、植物繊維、ボロン繊維、パルプなどがあります。

カーボンパイプの強度は、組み合わせる異種材料によって、その強度や特性が変化します。カーボンは、元来、耐候性や耐蝕性、難燃性、耐熱性、電気的な特性を有していますが、求める性能に合わせて異種材料を組み合わせることにより、製品性能の向上を図ることができます。

パイプへの異種材料の組み合わせは、例として内層にFRPなどを成形し、外層に天然素材を成形する方法などがあります。そのほかにも内層に金属パイプを成形し、外層にFRPや熱可塑性プラスチック、金属パイプを成形する方法があります。

カーボンパイプの種類

カーボンパイプは、しなやかで腐食しないため、とても利便性が高い製品です。そのほかにもさまざまなカーボンの特性を有しています。また、カーボンは、複合材としてよく利用されており、例えば下記のような製品が挙げられます。

  • 繊維強化プラスチックパイプ:Fiberglass Reinforced Plastics(FRP)

    FRPパイプは、とても軽量で変形がしにくく、ガラス繊維を織り混ぜてあるため、強度が汎用プラスチックよりも高くなっています。また、高い剛性もさることながら、耐候性にも優れています。

  • ガラス繊維強化プラスチックパイプ:Glass Fiber Reinforced Plastics(GFRP)

    GFRPパイプは、ガラス繊維を樹脂で固めた製品で、FRP関連の製品のなかでは価格が最も低いです。用いられる樹脂には、ポリエステルやビニルエステル、フェノール、エポキシなどが挙げられます。

  • カーボン繊維強化プラスチックパイプ:Carbon Fiber Reinforced Plastics(CFRP)

    CFRPパイプは、鉄などの金属に比べて軽量なのに同程度の強度と剛性を持ち合わせています。このパイプは、重量を軽減したいけれど、強度も保ちたい場合に選ばれます。また、カーボン特性も有していることから振動を抑えることも可能な製品です。

  • アラミド繊維強化プラスチックパイプ:Aramid Fiber Reinforced Plastics(AFRP)

    AFRPパイプは、主にアラミド繊維を補強材として活用しています。アラミド繊維は、高強度なうえに耐摩耗性と耐傷性にも優れています。また、衝撃を吸収する特性にも優れているため、過酷な環境でも選択しやすい製品です。ただし、アラミド繊維は、成形性が悪いといった特徴もあるため、複雑な形状には向いていません。

CFRPパイプ

CFRPパイプとは

CFRPパイプ

CFRPパイプは、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を活用した筒状のパイプです。CFRPは、Fiber Reinforced Plasticsの略称です。樹脂を炭素繊維で強化しており、比強度や非弾性率が高いです。

そのため、炭素繊維強化プラスチックは、宇宙開発や航空機部品などに使用されています。

強化プラスチックには、このほかにもFRP(繊維強化プラスチック)やGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)がありますが、炭素繊維の配合や含有率によって物性が異なります。

  • FRP

    FRPは、弾性率が低いプラスチックに弾性率が高いガラス繊維を加えることにより、強度を高めた複合材料です。

  • GFRP

    GFRPは、ガラス繊維をビニルエステルやエポキシなどの樹脂を用いて固めた複合材料です。ほかの強化プラスチックに比べて安価に販売されています。

CFRPパイプの使用用途

CFRPパイプは、アンテナやフェンス、支柱、シャフト、釣竿、義足用のパイプなどに利用されています。

CFRPは、一般的に熱膨張率が3ppm以下で熱膨張率が低いです。

そのため、天体望遠鏡や検査用ジグフレームとして利用されています。

そして、振動減衰性に優れており、鉄の約5倍の比剛性を有しています。このメリットを取り入れた製品として、液晶パネルの搬送ハンドやパラレルリンクロボットなどがあります。

また、高熱伝導率が2〜300W・m/℃と幅広いため、人工衛星の電池ケースにも使用されています。

さらに、非磁性や耐蝕性、導電性などを有しており、リニアモーターケースや耐震補強材、工業タンク、静電気対策部品などとして活用されています。

CFRPパイプの原理

CFRPパイプの製造方法には、大別して「フィラメントワインディング法:Filament Winding(FW)」と「シートワインディング法:Sheet Winding(SW)」があります。

  • FWとは

    FWは、ロービング(炭素繊維の束)を液状の樹脂に含浸させながら回転するマンドレル(金型)に巻き付けて、硬化後に脱型する方法です。

  • SWとは

    SWは、マンドレルにプリプレグ(樹脂で含浸した炭素繊維のシート)を巻き付け、さらに熱収縮テープを巻き付けた後にオーブンなどで加熱と硬化を行う方法です。

    CFRPは、一般的にFRPのような標準品性能や機能というものがありません。

    したがって、CFRPの素材には、標準品が存在せず、炭素繊維の性能や機能を活用して、素材を設計および製作に合わせて使用します。

    このことからCFRPは、金属やプラスチックとは異なり、製品を製造する際には材料設計が不可欠となります。

    また、CFRPは、主にミラー対称積層が基本の積層方法として使用されています。この方法で積層を行うことにより、硬化後の冷却で熱による歪みが生じません。

    CFRPパイプは、パイプ断面の中心を基準に高さや幅方向のそれぞれで対象とします。

CFRPの種類

CFRPは、炭素繊維を樹脂で成形した製品ですが、母材となる樹脂によって熱硬化性CFRP(CFRTS)と熱可塑性CFRP(CFRTP)の2種類に分けられます。

  • 熱硬化性CFRP

    熱硬化性CFRPは、エポキシ樹脂を含浸した炭素繊維のシート(プリプレグ)を必要な大きさに加工し、加熱することで硬化させ、密閉した金型に炭素繊維を置き、エポキシ樹脂を流し込むことで成形します。この方法をRTM(Resin Transfer Molding)成形と呼びます。

  • 熱可塑性CFRP

    熱可塑性CFRPは、母材にポリプロピレンなどが用いられており、プリプレグを加熱し、軟化させ、プレス加工によって成形します。また、そのほかの方法として射出成形による方法が選択される場合もあります。

    大量生産を行う場合には、短時間での成形が必要となるため、熱硬化性CFRPと熱可塑性CFRPの両方で技術の開発が進められています。

    また、CFRPの母材には、前述した以外にも多くの種類が検討されています。

    例えば熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂(PMMA)や6ナイロン(PA6)、ポリアミド(PA66)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などがあり、熱硬化性樹脂には、エポキシ樹脂(EP)などが使用されています。

CFRPの特徴

CFRPは、多くの特性を有しています。例えば耐薬品性や耐疲労性、耐摩耗性、耐熱性に優れており、比弾性率と比強度も高いです。そして、CFRPは、とても軽量な素材です。

いくつかの素材を比較すると、汎用プラスチックでは、比重が約1.0グラム毎立方センチメートルで、アルミニウムが約2.8グラム毎立方センチメートル、チタンが約4.5グラム毎立方センチメートル、鉄が約7.8グラム毎立方センチメートルです。

一方で、CFRPは、約1.8グラム毎立方センチメートルです。おおよそ汎用プラスチックとアルミニウムの中間の位置に区分されます。

そのため、これらの特徴を活かして宇宙開発や航空機分野だけではなく、スポーツや輸送機器関連でも活用されています。

また、CFRPは、X線の透過率が高いといった特性も持ち合わせているため、従来、使用されていたアルミニウムに変わり、レントゲン設備などにも使用されています。

騒音測定

騒音測定とは

騒音測定

騒音測定とは、環境基本法第16条第1項の規定に基づき、生活環境の保全と人の健康を保護するために行われる騒音の検出方法です。

騒音は、悪臭や振動と並んで感覚公害に位置付けられており、その騒音によって感覚的および心理的な負担を強いられます。騒音には、自動車による騒音や航空機による騒音、新幹線による騒音、在来鉄道線による騒音、低周波音、一般環境騒音などが挙げられます。

また、政府は、環境基本法の環境基準第3節に記載されている章における施策において、公害の防止に関係するものを第1項の基準が確保されるように努めなければならないとしています。

騒音測定の使用用途

騒音における環境基準は、主として3つの区分に分けられています。そして、そのほかの該当地域として2つの区分があり、特例として1つの基準値が定められています。

1つ目に、地域の類型として区分AAが挙げられます。AAには、療養施設、社会福祉施設などが集合している地域で静音が必要とされる地域が該当します。基準値は、昼間と夜間で分けられており、前者が50デシベル以下、後者が40デシベル以下に設定されています。

2つ目に、区分AおよびBが挙げられます。Aは、専ら住居の用に供される地域とされ、Bは、主として住居の用に供される地域が該当しています。基準値は、昼間で55デジベル以下、夜間で45デシベル以下に設定されています。

3つ目に、区分Cが挙げられます。Cは、相当数の住居とあわせて商業、工業などの用に供される地域が該当します。

そのほかの該当地域としては「A地域のうち2車線以上の車線を有する道路に面する地域」と「B地域のうち2車線以上の車線を有する道路に面する地域およびC地域のうち車線を有する道路に面する地域」が挙げられます。前者は、昼間で60デシベル以下、夜間で55デシベル以下です。後者は、昼間で65デシベル以下、夜間で60デシベル以下です。

特例としての基準値は、1縦列の自動車が安全かつ円滑に走行するために必要な一定の幅員を有する帯状の車道部分の場合において、幹線交通を担う道路に近接する空間については、基準値が昼間で70デシベル以下、夜間で65デシベル以下とされています。

ただし、個別の住居などにおいて騒音の影響を受けやすい面の窓を主として閉めた生活が営まれていると認められる場合は、屋内へ透過する騒音の基準が昼間で45デシベル以下、夜間で40デシベル以下とされています。

騒音測定の原理

2015年の10月に環境省から「騒音に係る環境基準の評価マニュアル」が公布されました。このマニュアルの一般地域編では、騒音の測定方法を以下の通りに定めています。

まず、測定機器ですが、騒音系は、計量法第71条の条件に適合した騒音計を使用することとされています。上記の法律に合格しており「JIS C1509-1」の使用に適合した騒音計を使用するものとし、検定証印などの有効期間内である必要があります。

ただし、留意する点として、レベルレコーダーを使用する場合は、突発音などを確認するために活用できるが、値から等価騒音レベルを求めてはならないと定めています。

次に、騒音の測定方法を解説します。

はじめにマイクロホンの位置を決定します。マイクロホンは、地域の広域的および全体的な騒音状況を把握する目的から堀や建物などによる局所的な遮蔽や反射の影響を避けうる位置に設置する必要があります。

次に、測定点の高さですが、マイクロホンの高さは、地域内の住居などの生活面の平均的な高さに設定する必要があります。

そして、騒音計の動特性の設定として、時間重み付け特性をF特性とし、等価騒音レベルのみを計測する場合は、F特性・S特性のいずれの設定でも良いとされています。

最後に、除外すべき音の処理として、分析時に実測時間を細かく区分して除外すべき音が生じた場合に時間区分のデータを除いて統計処理を行うこととしています。除外すべき音には、平常ではない自然音や通常は発生しない人工音、測定による付加的な音などが該当します。

臭気測定

臭気測定とは

臭気測定は、1971年に制定された悪臭防止法および1995年に導入された臭気指数規制に伴い、臭気の検出を行う方法です。しかし、臭気指数規制は、基準の整備が進んでいなかったため、1998年に臭気指数規制ガイドラインが環境省により作成され、基準の整備に必要な調査が行われました。その結果、2000年に排出水の臭気指数規制基準の設定方法が定められ、悪臭防止法の一部改正により臭気測定に従事する者について、法律に位置付けられました。

悪臭は、騒音や振動と並んで感覚公害に位置付けられており、その臭いによって感覚的および心理的な負担を強いられます。感覚公害は、地域住民からの声によって明らかとなり、汚染の蓄積などの不安はないものの、被害が広範囲に及んでいることも少なくありません。

臭気測定の使用用途

臭気測定は、臭気指数規制ガイドラインによると、測定方法に嗅覚測定法と機器測定法の2種類があります。嗅覚測定法では、人間の嗅覚によってにおいを把握する方法です。機器測定法は、アンモニア硫化水素などの悪臭の原因を機器で測定する方法です。

これらの測定方法には、それぞれに長所と短所があります。

嗅覚測定法では、長所として数十万もの物質に対応でき、複合臭の評価や人が感じるにおいの下限値が把握できることなどが挙げられます。一方、短所としては、標準臭がなく、精度管理に技術が必要な点や測定者の知識、経験および連続測定ができない点などが挙げられます。

機器分析法では、長所として精度の管理が比較的容易であり、ガスクロマトグラフ質量分析計を活用すれば、主要成分の定性分析が可能な点などが挙げられます。一方、短所としては、単一の物質以外では、感覚量との相関関係が得られない点や物質によって人の閾値と比較した際に、下限値の設定が困難な点などが挙げられます。

2019年の悪臭による苦情件数とその区分は、野外焼却が全体の29%を占めており、最多の3,593件となっており、サービス業・そのほかでは、15.3%で1,842件、個人住宅・アパート・寮では、12.3%で1,474件となっています。そして、畜産農業では、8.0%、そのほかの製造工場では、7.3%、食品製造工場で、5.2%です。ついで、下水・用水や建設作業現場などが続きます。

臭気測定の原理

臭気指数規制ガイドラインには、臭気指数規制の導入方法と臭気指数規制導入後の対策について記載されています。このトピックでは、導入方法の流れについて解説します。

臭気指数規制を導入する事例としては、物質の濃度規制を行なっており、測定した値が規制の基準値内であるにもかかわらず、苦情が解決しない場合や未規制の地域において苦情が発生し、苦情が解決しない場合、または将来的に苦情の発生が予想される場合などが挙げられます。

実際の導入フローでは、苦情受付から開始され、その後に調査が行われます。そして、規制地域なのか否かについて判断を行い、詳細なフローに分かれていきます。一方、将来的に苦情の発生が予想される地域においては、知事への要望を行う前段階である臭気指数規制導入の検討段階にただちに移行されます。

これらのプロセスに沿って、臭気指数規制導入を検討しており、物質濃度規制から臭気指数規制へ規制方式を変更する場合や新しく臭気指数規制を導入する場合には、調査・手続きが必要になります。これらのフローについては、以下の通りです。

臭気指数規制導入の検討後、市町村に対する導入意向調査(事前調査)が行われます。そして、導入を予定する市町村に対してヒアリングを行い、実態調査として現状把握調査と臭気測定調査が行われます。また、規制地位の指定および規制基準の設定に市町村の意見が加えられ、最後に公示が行われます。

アスベスト測定

アスベスト測定とは

アスベスト測定

アスベスト測定は一般大気中、作業環境および建築物内のアスベスト量を検出する方法です。

アスベストとは石綿(いしわた、せきめん)とも呼ばれる繊維状のけい酸塩鉱物で、天然資源の一種に分類されます。また、他の鉱物に不純物として含まれることもあります。

アスベストは非常に細い繊維状の物質で、飛散した粉体を吸い込むことでじん肺や悪性中皮腫などの原因になることがあります。アスベストの影響は潜伏期間が非常に長く、直ちに影響を及ぼすことが無い点も特徴の一つです。

重篤な肺疾患の原因となるアスベストは規制が進められており、保温や断熱を目的としたアスベストの吹き付け作業が1975年に原則禁止となりました。また、それ以降も各種アスベストの利用は禁止され続け、最終的に原則として製造等が禁止されました。

一方で、現在も例外的にアスベストを取り扱う工場や、過去にアスベストが使われた工場、もしくは過去に建材としてアスベストが含まれるものを使用した建物についてはアスベスト測定を行い作業環境中にアスベストが含まれるか確認しています。

アスベスト測定方法の種類

アスベストの測定は環境省が発行している『アスベストモニタリングマニュアル』に具体的な手順が記載されています。

現在はアスベスト製造工場が廃止され、過去にアスベストが使われた建物の解体現場などが主なアスベスト発生源となり、上記マニュアルに記載された測定手順も合わせて改定されました。

  • 位相差顕微鏡法

    位相差顕微鏡は一般環境でまず総繊維数の計測を行うための装置です。

    サンプリングした試料の位相差顕微鏡において観測された総繊維数が1f/L以下の場合は観測された繊維数を総繊維数として記録します。

    一方で総繊維数が1f/Lを超えた場合においては次に述べる電子顕微鏡でアスベストを固定して計測を行います。

    なお、場合によっては最初から電子顕微鏡で分析を行うことも可能です。

  • 走査電子顕微鏡法

    走査電子顕微鏡は位相差顕微鏡よりも高倍率な電子顕微鏡です。本測定では元素分析を行うためにエネルギー分散型X線分析装置(EDX)が備わっていることが求められています。

    位相差顕微鏡法と同様の前処理法、もしくはより操作が簡便なポリカーボネートフィルター法によって前処理を行ったのち、顕微鏡で測定を行います。

    計測ではモニターに表示された像から繊維形態を識別するとともに、EDXによって繊維の種類も同定します。そして総繊維数は像に含まれる繊維の数を数え上げて計測します。

  • 繊維状粒子測定法

    建築現場でのリアルタイム計測、長時間連続計測などの目的で繊維状粒子を自動で測定する装置も販売されています。このような装置では試料空気を吸引ポンプで内部に導入、検出部で粒子数を計測します。

    繊維状粒子測定装置は総繊維数濃度であり、算出される粒子数はアスベスト以外の繊維も合わせた数です。そのため、装置によってはバックアップフィルタが内蔵されているものもあり、必要に応じて他の分析法を適用することもあります。

アスベスト測定に関する法律

アスベストは各種法律によって基準値が定められています。例えば大気汚染防止法の基準値は「特定粉じん発生施設の敷地境界線における石綿粉じん濃度10f/L」、労働安全衛生法の基準値は「石綿粉じん管理濃度0.15f/cm3」です。

なお、アスベストが含まれる可能性がある建築物を所有する場合、アスベスト測定を行うことは法律的な義務とはなっておりませんが、定期的な測定が推奨されています。ただし、自治体によっては施工前後でのアスベスト測定が要求されることもあります。

  • アスベスト測定に必要な資格

    労働安全衛生法に定められたアスベスト測定は作業環境測定の一種であり、測定者は国家資格である作業環境測定士の資格が必要であるほか、事業として検査を行うには作業環境測定機関への登録が必要です。

    なお、作業環境測定とは測定のために必要なサンプリング、分析、解析の一連作業を指しており、資格では「鉱物性粉じん」などの区分ごとに分けられているほか、作業環境測定すべての業務を行うことができる第1種作業環境測定士、一部業務を担うことができる第2種作業環境測定士に分類されています。

作業環境測定

作業環境測定とは

作業環境測定

作業環境測定はガスや蒸気、粉じんなどの有害物質や騒音や放射線、高熱などの有害なエネルギーによって作業者が疾病を患うことを予防するために行う、作業環境の実態を把握する測定です。

作業環境測定は労働安全衛生法にもとづいて行われており、同法第2条第4号では作業環境の実態を把握するための空気環境やそのほかの作業環境について行うデザイン・サンプリング・分析・解析を作業環境測定に含む作業としています。

事業者は有害業務を行う作業場においては必要な作業環境測定を行わなければならないと安衛法で定められています。具体的な作業場としては粉じんが発生する場所や特定化学物質を製造する場所など10種類の作業場が挙げられます。

作業環境測定法と作業環境測定士

作業環境測定を行う際は厚生労働省令に基づいた方法で行わなければなりません。

作業環境測定などを適切に実施するために必要な事項を定めた法律が作業環境測定法で、同法第3条では指定作業場の作業環境測定は作業環境測定士、もしくは作業環境測定機関が実施する必要があると定められています。

作業環境測定士は区分ごとに第1種と第2種に分類され、第1種作業環境測定士は作業環境測定に関する業務全般を行うことができる人で、第2種作業環境測定士は解析を含む分析業務を除いた作業環境測定業務を行うことが認められている人です。

なお、作業環境測定の実施回数、測定の方法、測定結果の記録を保存する年数等も安衛法などの法令で定められています。

作業環境測定の管理区分

作業環境測定における測定対象物質ならびに管理濃度は物質ごとに基準が定められています。

作業場の単位作業場所ごとに平均的な環境状態を反映したA測定、高濃度で物質をばく露しうる条件であるB測定と呼ばれる測定を行い、測定結果と管理濃度を比較することで作業場の管理区分を評価します。

評価結果は第1管理区分から第3管理区分までの3段階評価で表され、区分に応じて行うべき処置が変わります。最も対策が必要なのは第3管理区分で、当該場所での作業では呼吸用保護具の装着などの対策が必要です。

  • A測定

    A測定とは作業場所における有害物質の平均的な状態を把握するための測定で、作業場で等間隔に測定点を選んで測定します。

    なお、原則として測定点の間隔は6メートル以下です。そして各測定点の測定値の統計処理を行い、結果を正規化したときに母集団の95%以上が管理濃度を超えていないときは区分1、区分1の条件は満たさないが平均値が管理濃度を超えないときは区分2、それ以外を区分3として評価します。

  • B測定

    B測定とは有害物質の発生源に近い場所での作業など、作業者が最も高濃度の有害物にばく露すると考えられる条件での測定です。

    B測定の結果も統計処理を行ったのちに基準に対して評価しますが、A測定の基準とは同一ではありません。

    測定結果が管理濃度を下回っている場合は区分1、測定結果が管理濃度以上でかつ管理濃度の1.5倍以下であるときは区分2、測定結果が管理濃度の1.5倍を超えるときは区分3となります。最終的な管理区分はA測定とB測定の結果から決定されます。

作業環境測定対象の有機溶剤

作業環境測定を実施する作業場の一つとして特定化学物質を製造、または取り扱う屋内作業場、特定有機溶剤混合物を製造、または取り扱う屋内作業場が挙げられます。

具体的に述べると特化則36条で第1類、第2類物質に該当する特定化学物質、有機則の第1種、第2種有機溶剤に該当する有機溶剤が測定対象です。

特定化学物質はガンなどの慢性、遅発性障害を引き起こす可能性がある物質で、塩化ビニルベンゼンジクロロメタンなどが第2類物質に該当します。

一方で有機則の対象となる有機溶剤は有機溶剤中毒を引き起こす危険性がある化合物で、アセトントルエンなどが該当します。

なお、特定化学物質と有機則の有機溶剤の両方に該当する化合物もあります。