アスベスト測定

アスベスト測定とは

アスベスト測定

アスベスト測定は一般大気中、作業環境および建築物内のアスベスト量を検出する方法です。

アスベストとは石綿(いしわた、せきめん)とも呼ばれる繊維状のけい酸塩鉱物で、天然資源の一種に分類されます。また、他の鉱物に不純物として含まれることもあります。

アスベストは非常に細い繊維状の物質で、飛散した粉体を吸い込むことでじん肺や悪性中皮腫などの原因になることがあります。アスベストの影響は潜伏期間が非常に長く、直ちに影響を及ぼすことが無い点も特徴の一つです。

重篤な肺疾患の原因となるアスベストは規制が進められており、保温や断熱を目的としたアスベストの吹き付け作業が1975年に原則禁止となりました。また、それ以降も各種アスベストの利用は禁止され続け、最終的に原則として製造等が禁止されました。

一方で、現在も例外的にアスベストを取り扱う工場や、過去にアスベストが使われた工場、もしくは過去に建材としてアスベストが含まれるものを使用した建物についてはアスベスト測定を行い作業環境中にアスベストが含まれるか確認しています。

アスベスト測定方法の種類

アスベストの測定は環境省が発行している『アスベストモニタリングマニュアル』に具体的な手順が記載されています。

現在はアスベスト製造工場が廃止され、過去にアスベストが使われた建物の解体現場などが主なアスベスト発生源となり、上記マニュアルに記載された測定手順も合わせて改定されました。

  • 位相差顕微鏡法

    位相差顕微鏡は一般環境でまず総繊維数の計測を行うための装置です。

    サンプリングした試料の位相差顕微鏡において観測された総繊維数が1f/L以下の場合は観測された繊維数を総繊維数として記録します。

    一方で総繊維数が1f/Lを超えた場合においては次に述べる電子顕微鏡でアスベストを固定して計測を行います。

    なお、場合によっては最初から電子顕微鏡で分析を行うことも可能です。

  • 走査電子顕微鏡法

    走査電子顕微鏡は位相差顕微鏡よりも高倍率な電子顕微鏡です。本測定では元素分析を行うためにエネルギー分散型X線分析装置(EDX)が備わっていることが求められています。

    位相差顕微鏡法と同様の前処理法、もしくはより操作が簡便なポリカーボネートフィルター法によって前処理を行ったのち、顕微鏡で測定を行います。

    計測ではモニターに表示された像から繊維形態を識別するとともに、EDXによって繊維の種類も同定します。そして総繊維数は像に含まれる繊維の数を数え上げて計測します。

  • 繊維状粒子測定法

    建築現場でのリアルタイム計測、長時間連続計測などの目的で繊維状粒子を自動で測定する装置も販売されています。このような装置では試料空気を吸引ポンプで内部に導入、検出部で粒子数を計測します。

    繊維状粒子測定装置は総繊維数濃度であり、算出される粒子数はアスベスト以外の繊維も合わせた数です。そのため、装置によってはバックアップフィルタが内蔵されているものもあり、必要に応じて他の分析法を適用することもあります。

アスベスト測定に関する法律

アスベストは各種法律によって基準値が定められています。例えば大気汚染防止法の基準値は「特定粉じん発生施設の敷地境界線における石綿粉じん濃度10f/L」、労働安全衛生法の基準値は「石綿粉じん管理濃度0.15f/cm3」です。

なお、アスベストが含まれる可能性がある建築物を所有する場合、アスベスト測定を行うことは法律的な義務とはなっておりませんが、定期的な測定が推奨されています。ただし、自治体によっては施工前後でのアスベスト測定が要求されることもあります。

  • アスベスト測定に必要な資格

    労働安全衛生法に定められたアスベスト測定は作業環境測定の一種であり、測定者は国家資格である作業環境測定士の資格が必要であるほか、事業として検査を行うには作業環境測定機関への登録が必要です。

    なお、作業環境測定とは測定のために必要なサンプリング、分析、解析の一連作業を指しており、資格では「鉱物性粉じん」などの区分ごとに分けられているほか、作業環境測定すべての業務を行うことができる第1種作業環境測定士、一部業務を担うことができる第2種作業環境測定士に分類されています。

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