PC鋼線

PC鋼線とは

PC鋼線

PC鋼線は、プレストレストコンクリート製造に使用される高性能・高品質の緊張材です。また、引張りに弱いコンクリートに対して、製造時に圧縮力を加えて、その性質を改善し、コンクリート構造物の強度を一段と高めるプレストレストコンクリートに使用される高強度の線材です。降伏点の約80%の高応力においてコンクリートを締め付ける目的で使用されます。

高引張強さがあり、破断時の伸びが大きく、リラクセーション値が小さいことや良伸直性を有し、加工性が良いこと、品質が均一なことなどが重要な品質の指針になります。

PC鋼線の使用用途

コンクリートにプレストレスを付与するため、鉄筋の5~6倍の強度を持っているPC鋼線を使用します。プレストレスの付与は、プレテション方式とポストテンション方式があります。

道路橋、鉄道橋をはじめ枕木、タンク、建築やグラウンドアンカーなど、幅広い分野に使用されています。橋梁構造、建築の基礎と本体、タンクや貯水池などの容器、ロックシェッドやスノーシェッドなどの防災設備等にも使用されています。

電信柱の芯金としても使用されていますが、事故などで緊急に切断が必要な時のために、PC鋼線専用の切断機も製造されています。

PC鋼線の種類

JISでは、強度レベルは、普通強度のPC鋼線と高強度のPC鋼線の2種類が規程されています。

普通強度PC鋼線は、SWPR1AN、 SWPR1AL、 SWPD1N、 SWPD1Lの4種類の規格、高強度PC鋼線は、SWPR1BN 、SWPR1BLの2種類の規格です。

形状は、丸線と異形線があります。丸線には A種かB種かの表示があり、その後にNかLの表示が続きます。B種は、A種より引張強さが100N/mm2高い強度となっています。異形線の記号は、SWPD1でNとLがありま す。Nは、Normal relaxationのNで、Lは、Low relaxationのLを示します。

各規格は、呼び名、標準寸法径、公称断面積、単位当たりの質量、0.2%永久伸びに対する試験応力、最大試験力、伸び、リラクセーション値、強度レベルが規程されています。また、巻付け性、ねじり特性、曲げ性についても加えて規程されています。PC鋼線をより線状にした線材をストランドとも呼びます。

PC鋼棒

PC鋼棒とは

PC鋼棒は、引張りに弱いコンクリートに対して、製造時に圧縮力を加えることで、その性質を改善し、コンクリート構造物の強度を一段と高めるプレストレストコンクリートに使用される高強度の鋼棒です。降伏点の約80%の高応力においてコンクリートを締め付ける目的で使用されます。

鋼材を伸線によって断面形状を加工し、高周波熱処理により仕様ごとに必要な機械的性質にします。その後、指定製品の長さに切断分割し、ねじ転造を実施します。また、指定がある場合は、端部加工や アンボンド加工を実施します。
化学成分は、P、S、Cuの3元素だけが規定されています。

PC鋼棒の使用用途

建設分野の多くの場面で使われています。建築物の基礎用パイル、送電鉄塔の基礎パイル、通信鉄塔用コンクリートポール、鉄道の線路コンクリートまくらぎ、下水道用パイル、共同溝用ボックス用カルバートをはじめ、橋梁用途にも広く使用されています。

一般のPC鋼棒には、両端部に定着用金具の取り付け用として、ねじ加工がされているもの以外にも棒鋼全長にねじ状の加工が施されたものがあります。総ねじ加工のPC棒鋼は、主にグランドアンカーや仮設材の一部として使用されることが多いです。

PC鋼棒の種類

PC鋼棒は、棒状の高強度鋼で、コイル状のPC鋼線と区別されています。

形状では異形丸鋼SBBRと異形PC棒鋼SBPDの2種類があります。また、強度から3種類(A種、B種、C種)があります。異形丸鋼は、φ9.2mmからφ32mm、異形PC棒鋼は、φ7.4からφ13mmが規程されています。機械的性質は、0.2%永久伸びに対する荷重、引っ張り強さ、伸び、リラクセーション値が規程されています。リラクセーション値は、耐力の最小値の

70%の荷重に対する1000時間リラクセーション値です。
製造方法によって、圧延棒鋼、熱処理棒鋼、引き抜き棒鋼の3種類があります。圧延棒鋼は、ストレッチング−ブルーイング、熱処理棒鋼は、焼入れ・焼戻し(熱処理前に引き抜きが入る場合もあり)、引き抜き棒鋼は、引き抜き−ブルーイングで各々製造します。

PC鋼棒は、火災や溶接などにより急激な温度変化を受けた場合、棒鋼に材質変化が生じて、強度や靱性の著しい低下を生じる危険性が指摘されていますので、使用部位には注意が必要です。

ボロン鋼

ボロン鋼とは

炭素鋼に、ホウ素とクロムを添加した鋼材がボロン鋼(B鋼)です。鉄鋼の材料に添加される元素には色々な機能がありますが、ボロンは、焼入れ性向上に効果がある元素です。基本成分として、ボロンを約0.0008%、クロムは0.10~0.20%加えます。

鉄鋼材料の五元素である炭素、ケイ素、マンガン、リン、硫黄と、他に、ニッケルの成分量などを調整します。合金ボロン鋼の場合は、クロム量が多くなります。ボロンを添加することで、線材を加工する際の熱処理工程を省略できるようになります。

ボロン鋼の使用用途

自動車部品で多く使用されます。特にボルト・ナットで多く使用する鋼種です。ボロン鋼は、合金鋼を使用するほど、強度が必要ではないところで、合金鋼に代わる鋼材として汎用的に使用されています。ボルトの強度区分10.9までが、通常ボロン鋼の使用可能範囲です。

ボロン鋼の使用の利点は、冷間鍛造加工です。冷間鍛造の加工工程は、熱処理工程のうち焼鈍(焼きなまし)が必要です。一般に、加工工程は、線材-球状化焼鈍-伸線-冷間鍛造 ですが、ボロン鋼を使用すれば、線材-伸線-冷間鍛造とすることが可能です。

ボロン鋼の種類

JIS規格では、冷間圧造用ボロン鋼として、24鋼種が規程されています。例えば鋼種記号は、SWRCHB223の場合、数字の前のBがボロン鋼を表します。

SAE規格(米国)でも、炭素ボロン鋼、マンガンボロン鋼、合金ボロン鋼が規程されています。例として1021Bの場合は、数字の後のBがボロン鋼を表します。

ボロン鋼の種類と用途は多くあります。いずれも、部品製造工程中の熱処理工程を省略、または処理時間短縮、熱処理温度の低温化を目的に使用されています。

それぞれにおいて一例を挙げるならば、肌焼ボロン鋼は、ギア部品用途に使用されており、ボルト用ボロン鋼は、ボルト用途として利用されています。また、省Mo強靭ボロン鋼は、高価なMoを省略すると共に熱処理も不要として、ナックル部品用途に活用されており、高強度高靱性ボロン鋼は、リンク用途に使用されています。

特に高強度ボルトにボロン鋼を使用する際には、耐遅れ破壊性が考慮されている鋼材を選定する必要があります。外部から侵入した水分による、水素脆化によって脆性破壊を生じることがあるので、各種合金元素を加えて防止する必要があります。

ニッケルクロムモリブデン鋼

ニッケルクロムモリブデン鋼とは

JISの鋼種記号は、SNCM220など、先頭の英字記号がSNCMです。JISでは、11種類が規程されています。

普通炭素鋼クロムモリブデンを添加したのがクロムモリブデン鋼です。そして、靱性をさらに向上させるため、ニッケルを加えたのがニッケルクロムモリブデン鋼です。ニッケル・クロム・モリブデンの各合金元素は、とくに焼入れ性と焼戻し性を調節するために添加されています。

また、肌焼鋼と呼ばれ、表面硬化(熱処理、処浸炭・窒化)や侵炭、窒化などの表面化成処理を実施することで、機械的特性を向上させています。

さらに、浸炭後に焼入れ・焼戻しの複合処理を実施するニッケルクロムモリブデン鋼もあります。

ニッケルクロムモリブデン鋼の使用用途

機械構造用合金鋼の7鋼種の中で、最も機械的特性に優れた鋼材です。しかし、高価なニッケルが添加されているため、高価格になります。機械的特性を高める元素とて、ニッケル・クロム・モリブデンの3元素を使用していることから高焼入硬化性、高靭性を可能としています。

熱処理により、高強度に強度調整が可能なことから高強度部品を必要とする航空機に多用されています。大型部品では、特にエンジン部品用として使用されています。合金鋼のなかでは最高クラスの強度を持ちますが、難溶接性材です。また、高強度なため、切削加工等の加工も容易ではありません。

ニッケルクロムモリブデン鋼の種類

SNCM439、SNCM447は、高強靱性で質量効果も小さいので大型の部品に適しています。ニッケルクロム鋼より入れ性がよいのも特徴です。

特にSNCM447は、ニッケルクロムモリブデン鋼の中で強度・硬度がともに最も優れています。 また、降伏点は、930N/mm2以上で、これは機械構造用合金鋼鋼材の中でも最も高い値です。中小型の軸、精密歯車、コレットチャック等に使用されています。

SNCM415、SNCM420は、主に浸炭用として使用されています。高強靱性で質量効果も小さいため、大型の部品に適しています。φ100以下のスピンドル、ウォーム、スプライン軸等に使用されています。

SNCM616は、浸炭鋼にも強じん鋼にも使用できます。浸炭鋼の中では、特に高強靱性で質量効果は最も小さいです。また、強い自硬性を持ち、複雑な形状の部品でも熱処理による寸法変化が少ないです。ただし、難被削性材です。強力歯車、シャフト、鋳造型等に使用されています。

ニッケルクロム鋼

ニッケルクロム鋼とはニッケルクロム鋼

JISの鋼種記号は、SNC236など、先頭の英字記号がSNCです。JISでは、5種類が規程されています。

炭素鋼に1.0%から3.5%のニッケル、0.2 %から1.0%のクロムを加えた合金鋼です。ニッケルにより靱性を強化し、クロムを加えることでより焼入れ性を向上させており、通常は、焼入れ焼戻し処理して使用されます。炭素鋼と比べて、強度・靱性・焼入れ性・焼き戻し軟化抵抗性が向上しています。焼戻し脆性と呼ばれる、焼き戻しの際に脆化しやすいことから、これを避けるために、焼戻し時は徐冷ではなく急冷が実施されます。

ニッケルクロム鋼の使用用途

合金鋼の中では、合金元素を多量に使用するため高価です。同様の機能を持つ、より価格の安いクロムモリブデン鋼に代替されることも多いです。ニッケルクロムモリブデン鋼やクロムモリブデン鋼が発達する以前の第二次世界大戦までは、合金鋼のほとんどがこの鋼種でした。機械的特性が優れることから、重工業、特に軍事産業で用いられる事が多かったとされています。

さらに、二段焼き戻しを実施すると、機械的特性の大幅な向上が可能となった事から、軍事車両・船舶の防弾用装甲板の他、船舶の駆動軸など、日本だけでなく世界中で使用されました。

浸炭技術の発展により、高価なニッケルクロム鋼の代替として、低価格のクロモリ鋼が多く用いられるようになりました。

ニッケルクロム鋼の種類

インコネルやハステロイなど、数多くの種類があり、電気抵抗合金や耐熱合金、耐蝕合金としていろいろな用途に使用されています。

インコネルは、耐熱性、耐蝕性、耐酸化性といった高温化での特性に優れている超耐熱合金です。優れた耐熱性能から、各種プラント設備、ごみ焼却炉、航空機のエンジンなどに使用されています。強度が高く、切削加工が難しい難切削材の一つです。電気抵抗合金は、電気抵抗体などに使用され、耐熱合金は、ロケットエンジン部品や航空機・原子炉部品などに使用されています。耐蝕合金の主な使用用途は、公害防止・排煙脱硫装置などです。

ハステロイは、ニッケルを主体とし、クロムやモリブデンなど、さまざまな合金成分を添加することにより、耐食性および耐熱性を高めたニッケル合金です。高温度下の機械的強度が高く、また耐食性に優れるだけでなく、硫酸硝酸塩素などの酸化性雰囲気でも優れた耐久性を誇ります。インコネルと同様に、加工が難しい難切削材です。

Cr-Ni系ステンレス鋼もニッケルやクロムを利用した合金鋼ですが、ステンレス鋼の場合は、これらの元素をより多く含んでいます

クロムモリブデン鋼

クロムモリブデン鋼とは

炭素鋼クロムモリブデンとを添加した鋼材です。

高温時の強度を向上させる目的でつくられた、この種の鋼材は、通常、耐熱鋼に分類されます。一般的に使用されるクロムモリブデン鋼は、1%程度のクロムと0.15~0.3%のモリブデンの成分を有し、0.2~0.45%の炭素を含有する、いわゆる低合金構造用鋼のことです。クロムとモリブデンとの添加により、炭素鋼丸棒の約5倍の直径の丸棒まで焼入れ硬化が可能となります。クロム鋼の場合は、焼戻し脆性を生じますが、モリブデンの添加により著しく軽減することが可能です。

クロムモリブデン鋼の使用用途

硬さと靱性に優れ、耐摩耗性も高い素材で、溶接もたやすく、高温にも強いため、多くの機械構造用部材に用いられています。また、焼戻しに対する抵抗力が高く、金属を脆くさせる脆性も低いことから加工性にも優れています。さらに耐錆性、表面光沢、耐衝撃吸収性も有します。

したがって、自動車用部品、航空機用部品、さらにはめがねレンチスパナなどの工具にもよく使用されるほか、自転車のフレームにも使用されています。部品別では、ピン類、シャフト類、歯車類などに使用されています。

クロムモリブデン鋼の種類

JISでは、大分類として先頭記号がSCMで表記されます。機械構造用合金鋼鋼材として11種類、焼入性を保証した構造用鋼鋼材(H鋼)として8種類、機械構造用合金鋼鋼管として6種類、冷間圧造用合金鋼-第1部線材として17種類が規程されています。

SCM435、SCM440は、クロム鋼よりも同一強さに対する靱性が高く、焼入性が安定していて質量効果が小さい特徴があります。ニッケルクロム鋼に近い性能を有しながら、安価であるためニッケルクロム鋼の代替品として使用されることもあります。送りねじ、スプライン軸、コレットチャック、アーム,スプール等に使用されています。

SCM415、SCM420は、浸炭用として使用され、質量効果が小さいことが特徴です。また、靱性が高く、耐摩耗性に優れます。エンジンのピストンピン・ピストンロッド、シャーピン等に使用されています。

クロムモリブテン鋼の各特性をさらに向上させた、ニッケルクロムモリブデン鋼(高靱性)、アルミニウムクロムモリブデン鋼(窒化処理)、高炭素クロム軸受け鋼(耐摩耗性)などもあります。

クロム鋼

クロム鋼とはクロム鋼

炭素鋼に、通常は0.8~3%のクロムを加えた成分の合金鋼です。

クロムは、鉄とともに硬い複炭化物をつくるので、著しく耐摩耗性を増します。焼入れ性も良好で、焼き入れ時のひずみが小さく、マルテンサイト化します。

炭素量が 0.13~0.23%の低炭素クロム鋼は、浸炭による複炭化物の形成で表面硬化性が大きいので、肌焼鋼として使用します。

クロム鋼の短所は、焼戻し脆性で、475℃付近において長時間加熱するか、徐冷すると靱性が低下します。また、脆化温度域以上に加熱した時は、油または水で急冷します。

クロム鋼の使用用途

クロム2%以下のものは、工具・歯車・軸受けなどの機械構造用合金鋼として使用されます。クロム12%以上のものは、ステンレスに分類されます。

クロム鋼は、硬度が高く、焼き入れ性が良いため、高級刃物工具、自動車部品、玉軸受などに用いられています。
錆にくく、磁石をくっ付ける性質もあるため、流し台などの錆を嫌う用途にも適しています。

ステンレスは、すべて鉄と他の金属との合金ですが、クロム鋼には他の一般的なステンレスのようにニッケルが含まれていません。

クロム鋼の種類

JISでは、材質記号SCrと、その後の番号で規定されています。その番号は、炭素量×100を示しています。炭素・クロム以外にも、ケイ素やマンガン、リン、硫黄、ニッケルの各元素量が規程されています。

JISでは、SCr420、SCr430、SCr435、SCr440、SCr445の5規格があります。また、クロム鋼をベースに、クロムモリブテン鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブテン鋼が各々の長所・短所を補う形で構造用合金鋼として規格化されています。

ステンレス鋼は、クロム鋼の一種で、クロムの含有量が10.5%以上の鋼と定義されています。台所のシンクなどに使われている優れた腐食耐性を持つ合金鋼です。クロムを多量に含有するものやクロムとニッケルを多量に含有するものなど、多くの種類があります。耐食性に加えて、耐熱性に優れた鋼種や加工性を向上させた鋼種、孔食や応力腐食割れなどの一部のステンレス鋼の欠点を補った鋼種などもあります。

マンガン鋼

マンガン鋼とはマンガン鋼

0.3~0.5%の炭素鋼に1%前後のマンガンを添加したものが機械構造用マンガン鋼です。歯車や車軸などの駆動力伝達機構部品に用いられることが多いです。

マンガン含有量の少ない低マンガン鋼は、張力が高く、高マンガン鋼は、耐磨耗性にすぐれます。また、炭素鋼にマンガンを添加すると焼入れ性が向上します。

熱処理は、高温から徐冷すると結晶粒界に炭化物が析出して低靭性となるため、高温から急冷する処理(水靭処理)が実施されています。

マンガン鋼の使用用途

マンガンは、シリコンと同様に、機械的性質の張力と靭性を向上させます。マンガンが1.5%以上になると伸びが減少しますが、炭素量を低めにして、マンガンを加えることで、張力を低下させずに靭性を高めることができます。鉄に有害な硫黄との親和力が高いので、赤熱ぜい性を防ぐ働きもあります。

JISでは、4種類の成分のマンガン鋼について規格化されています。

駆動力伝達機構部品のコネクティングロッド、フロントアクスル、リヤアクスルシャフト、ボールジョイント等に使用されることが多く、高張力ボルトやUボルト等にも使用されます。他に、加工性を良くするためにマンガンを増し、炭素を減らしたものが非磁性鋼として用いられています。

マンガン鋼の種類

JISでは、4つのマンガン鋼が規程されています。英語文字記号の後ろの数字が大きいほど、炭素量が多くなり、靭性の高い鋼材となります。SMn420は、マンガン鋼の規格の中で、炭素含有量が0.17%から0.23%と最も低い種類の鋼材です。マンガン鋼の規格中、ただ一つの肌焼鋼です。比較的安価で、摩耗耐久性が優れています。

SMn433は、炭素含有量は0.30%から0.36%です。機械構造用合金鋼のなかでは、耐衝撃性に優れている強靭鋼です。水冷焼入れ+空冷焼戻しを実施します。

SMn438は、炭素含有量0.35から0.41%の強靭鋼です。油冷焼入れ+急冷焼戻しを実施します。

SMn443は、炭素含有量が0.40から0.46%と最も多い、強靭鋼です。硬度も229HBW~302HBWと高硬度です。高硬度なため、JISマンガン鋼4種類の規格の中で、降伏点が最高となっています。熱処理の方法は、SMn438と同じです。

機械構造用炭素鋼鋼材

機械構造用炭素鋼鋼材とは

一般的には、SC材といわれます。Sは鋼Steel、Cは炭素Carbonです。主に機械部品、自動車のミッションやボルト・ナット、またドリルチャックレンチ工具類などにも使用されます。

S10CからS58Cまで23種類あり、中央の数字は、炭素量×100%を表しています。炭素量が多くなると、強度は上がりますが、靭性は低くなります。合金鋼に比べ、低硬度なので、加工が容易です。

SC材の中ではS30C〜S50Cがよく使われますが、普通鋼が化学成分の規定がないのに対して、SC材はJISで各元素の成分規定があります。有害物質のリンと硫黄も普通鋼より少なく規定されているため、その分だけ高価格な材料となります。

機械構造用炭素鋼鋼材の使用用途

焼き入れ・焼戻しなどの熱処理前であれば、切削加工が容易なので、歯車などの切削加工を実施する際には、切削加工後に熱処理を行います。また、研削加工では、切削加工の後に熱処理を行い、その後に寸法を作り込むために研削を実施します。一方、熱により性質が変化するので、熱を使う溶接加工を実施する部品には使用しません。

エンジンやその周辺部品のギアのほか、プーリーブラケットのような機械部品にも使われます。具体例をあげると、ポンプ、ブロアコンプレッサ、回転式機械の回転軸油圧ジャッキ、往復動型の軸材料、軸材各種、ボールネジ・台形ねじの軸材、移動台車用のレール材、ギヤ、スパナパイプレンチなどの工具類にも使われます。

機械構造用炭素鋼鋼材の種類

JISでは、23種類のSC材鋼材規格が設定されています。 SC材の炭素量は、0.08~0.6%に規程されていますが、これを超える炭素量になると、SK材と規程されます。JIS記号の最後にKがついている材料、例えばS15CKは、浸炭は、だ焼き専用鋼を示します。JISでは、3規格にKが末尾に付記されいます。歯車製造時などでは、最終工程で歯部表面に浸炭処理の実施により、炭素量の少ない材料においても、表面に強度を持たせることができます。

JISでのSC材成分は、Cの他にSi、Mn、P、SがJISで規程されています。炭素量が多くなる程、強度が上がるので、一般に、高強度部品にはS30C以上の鋼材が用いられています。

SC材は、室温時にパーライトフェライトの混合金属組織を担っていて、炭素量の増減に比例してパーライト組織の占める割合が増加します。したがって、完全焼なまし状態の金属組織を調べれば、パーライト組織の占める割合からそのSC材の炭素量を断定することが可能です。使用頻度の高いS40Cのパーライト組織の占有面積率は約50%です。

ゴム塗装

ゴム塗装とは

ゴム塗装

ゴム塗装とは、ゴムに対する塗装技術を指しています。ゴムは、塗装に限らず経年劣化による加水分解や可塑剤の移行が原因となり、塗膜がベタついたり、他の成形品に色が移ってしまうことがあります。

また、ゴムの種類には、さまざまな種類があり、メーカーによってゴムの製造方法が異なります。さらに、ゴムは、シンナーなどの有機溶剤に溶け出すため、溶剤を使用する際には特に注意しなければなりません。そのため、ゴムに対する塗装は、扱いが難しく、同じゴムの種類であっても塗装がうまく密着しないなどといった問題が生じます。

しかし、昨今は、技術の進歩もあり、ゴム用の塗料が豊富になりました。したがって、塗装を施した後でも問題が生じることが少なくなっています。

ゴム塗装の使用用途

ゴムに対する塗装は、わたしたちの生活にも取り入れられています。例えば民生品としては、リモコンなどのラバースイッチが挙げられます。ラバースイッチは、ボタン操作により家電製品を動作させるためのボタンですが、ラバースイッチにゴム塗装を行うことにより、耐熱性や耐水性、対薬品性、耐候性などの特性を付与することができます。また、ユーザーの利便性を向上させることにもつながります。

そのほかの産業用途では、野球場やテニスコート、港湾などにおいて使用されるラバーフェンスが挙げられます。球技場で使用されるラバーフェンスは、選手が衝突した際に衝撃を吸収し、怪我を防止する目的で使用されます。港湾で使用されるラバーフェンスは、漂流物の侵入を防ぐ目的で使用されます。

これらは、ポリエチレンフォームやポリウレタンフォームなどが活用されており、ゴム塗装を行うことで、光沢性や耐摩耗性、対傷性などが向上します。また、景観が良くなることから視認性も向上します。

ゴム塗装の原理

ゴムを対象とした塗装には、昔から使用されている油や石油の副産物として生成された原料を使用する方法など、塗装の対象や塗装後の環境に合わせて行う必要があります。いくつかの塗料を例として解説します。

ゴムを用いた塗料には、塗料の原料となるゴムに、さまざまな種類があります。まず、原料となるゴムには、天然ゴム(NR)や合成天然ゴム(IR)、ブタンジエンゴム(BR)、ブタジエンスチレンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)などがあります。これら以外にも、配合剤や加硫条件を組み合わせることにより、種類が極めて多くなります。

そのほかの塗料としては、油性塗料や酒精塗料、合成乾性油塗料、合成樹脂塗料、グラフト共重合体などが挙げられます。以下で、それぞれの塗料を解説します。

1. 油性塗料

古くからゴム靴用の塗料として活用されており、アマニ油やイオウ、テルペン油、ベンジンなどの硫化油が用いられています。

2. 酒精塗料

タイヤ・雨合羽・幌などに利用されており、コロホニウムやテルペン油、セラック、サンダラックなどが塗料として使用されています。

3. 合成乾性油塗料

石油化学の副産物として生成されたオレフィンのオリゴマーを塗料用の原料として使用しています。合成乾性油は、乾性油をゴムで変性して皮膜に弾性をあたえる使用法として利用されています。

4. 合成樹脂塗料

アルキド樹脂やビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂などを主成分とした塗料です。これらの樹脂をベンゼンなどの有機溶剤に溶かすことで塗料として製造しています。

5. グラフト共重合体

ゴム用塗料のビヒクルにゴムと樹脂の特性を合わせる方法がグラフト共重合体です。例えばゴム溶液にビニルモノマーを加えて、ラジカル開始剤を用いたビニル重合反応を行うことにより、ゴム-ビニル樹脂グラフト共重合体を生成する方法が挙げられます。生成されたグラフト共重合体は、主にゴム履物用の塗料として使用されています。グラフト共重合体の塗料への応用は、発展がめざましく、ゴム用の塗料として注目を集めています。