膜分離

膜分離とは

膜分離

膜分離とは、膜を利用して物質をふるい分けることで分離・抽出・濃縮する技術です。

膜分離に使用する膜には小さな孔が空いており、物質のサイズや電荷、浸透圧の違いなどによって物質を選択的に透過することができます。

膜分離は、積極的に物質を透過させるための推進力としてエネルギー勾配を利用しています。原理的には3種類に大別され、それぞれ化学ポテンシャル、圧力差、電位差を利用しています。

ポリカーボネート

ポリカーボネートとは

ポリカーボネート

ポリカーボネートとは、分子式がC15H16O2で表され、ビスフェノールAを原料とする非晶性プラスチックです。

樹脂の中では抜群に耐衝撃性が高いため割れにくく、機械的強度が大きい、透明性が高い、毒性がない、耐候性が高い、自己消火性があるなどのメリットを有しますが、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性が低い、傷がつきやすいというデメリットがあります。

ポリカーボネートは熱を加えると軟化する熱可塑性樹脂に分類され、JIS記号ではPCと表記され、現場ではポリカとも呼ばれるプラスチックです。

ポリカーボネート反応式

図1. ポリカーボネートの反応式

ポリカーボネートの使用用途

ポリカーボネートは、耐性と加工性の高さから、非常に多くの用途に使用されています。以下に、ポリカーボネートの特徴とともに使用用途の例を挙げます。

1. 透明性

ガラスと同等の透明性をもつため、メガネのレンズやカメラのレンズ、光ファイバー、CD、DVDの基板などの光学用途や、戦闘機の窓にも使用されています。汎用エンプラの中で無色透明な素材はポリカーボネートのみです。

2. 衝撃耐性

プラスチックの中で最高の耐衝撃性を持つことから、防弾材料、ヘルメットの風防などに使用され、一般的な環境において使用する場合、割れる心配がほとんどありません。

3. 耐候性

紫外線にも強く、劣化しにくいため、屋外で使う場合にも、高い強度を長期間維持します。屋根材や太陽光パネル表面材など屋外で使用するものや、自動車のヘッドライトやルーフレール、ドアハンドルにも使用されています。

4. 寸法安定性

成形時の収縮が小さく、吸湿性が小さいため寸法安定性が高く、スマートフォンのケースなどに使われています。

ポリカーボネートの特徴

5大汎用エンプラとその物性値

表1. 5大汎用エンプラとその物性値 (化学便覧第5版参照)

ポリカーボネートは5大汎用エンプラの一つで、衝撃に強く (ポリアミドやポリブチルテレフタレートの20倍) 割れにくいのが特徴です。また、機械的強度が良いだけではなく、主鎖にベンゼン環を2つ含まれているため、自己消火性 (火をつけても燃え広がらない) があることから様々なところで使用されています。

ポリカーボネート単独ではなく、別のポリマーとポリマーアロイにして使用されるケースもあります。例えば、耐薬品性を向上させるためポリカーボネートと耐薬品性が良いABS樹脂と混ぜたPC-ABSなどです。このほか、PET、PBTなどのポリエステルなどと混合したり、フィラー (充填剤) などを混ぜ込んだ製品もあります。

ポリカーボネートは幅広い製法に対応している点も特徴の一つです。射出成形だけでなく押出成形や真空成形、ブロー成形など様々な成形法で成形することができます。また、最近では、手軽に複雑な形状を製作できる3Dプリンターでもポリカーボネートが使用されるようになりました。ただし、製法によっては機械強度が弱くなることもあるので注意が必要です。

ポリカーボネートの製造方法

ポリカーボネートの製造方法としては、冒頭で示した反応式による重合法 (界面重合法) と、エステル交換法という2つの方法が挙げられます。

1. 界面重合法

ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液 と、塩化メチレンまたはクロロベンゼンとの懸濁溶液に塩化カルボニルを添加して水相と油相の界面で縮合重合させてポリカーボネートを製造する方法です。エステル交換法に比べて反応条件がマイルドなため、低分子量から高分子量まで幅広い分子量のポリカーボネートを製造できます。

重合後、ポリカーボネート樹脂は油相に溶解しており、分離中和精製工程、ポリマー回収工程、 乾燥工程を経て顆粒状のポリカーボネートが得られます。

2. エステル交換法

エステル交換法の反応式

図2. エステル交換法の反応式

ビスフェノールAとジフェニルカーボネートを触媒の存在下溶融混合して、溶媒を用いることなく高温減圧下でフェノールを回収しながら重縮合を行いポリカーボネートを製造する方法です。なお、回収されたフェノールは、ジフェニルカーボネートの原料として再利用されます。

ポリカーボネートは溶液ではなく、純品の溶融状態で得られペレタイジングして製品化できるため、後工程が界面重合法と比較して簡易な合成法です。

ポリプロピレン

ポリプロピレンとは

ポリプロピレン

ポリプロピレンとは、プロピレン (分子式: C3H6、構造式: CH2=CH-CH3 ) を重合して合成するプラスチックで、汎用樹脂の1種です。

ポリプロピレンは、1954年にイタリアのNatta氏がZiegler-Natta触媒というチタン系の有機金属化合物を用いて合成できることを発見しました。日本では1962年に工業的な量産が始まっています。

汎用樹脂の中でも、ポリプロピレンの低コストで製造が可能で、ポリエチレンに次ぐ生産量となっています。比重が0.9と小さく、傷が付きにくく丈夫で耐薬品性に優れているのが特徴です。包装材料や食品容器などの家庭用資材をはじめ、自動車用品や医療用品などに至るまで幅広い用途で用いられています。

ポリプロピレンはガラス転移点、あるいは融点以上に加熱すると軟化する「熱可塑性樹脂」に分類され、JIS記号ではPPと表記されるプラスチックです。

ポリプロピレンの使用用途

ポリプロピレンはその特徴を生かし、非常に幅広い用途で活用されています。

1. 食品容器

代表的な用途として、食品容器が挙げられます。ポリプロピレンは、結晶性樹脂であるため耐熱性が高く、かつ誘電率が低いため電子レンジで高周波にさらされても発熱しない特徴があります。その特徴を活かし、汎用の食品容器にとどまらず、繰り返し使用する食材保管用タッパーにも用いられています。

2. 自動車用途

次に注目されているのが、自動車用途です。比重が小さく、強度も強いことから従来金属材料が用いられていたバンパーやランプハウジングにポリプロピレンが使われ始めています。今後、電気自動車への置き換わりにより、軽量なポリプロピレン製自動車部品の開発が加速されるといわれています。

3. 理化学機器・医療機器

ポリプロピレンは、炭素と水素のみから成る非極性の高分子であるため有機溶剤や酸、アルカリへ優れた耐性を有します。したがって、溶剤に触れる実験機器や計測機器、医療分野における注射器のシリンジなどに活用されています。

4. 医療やカーペットの繊維

ポリプロピレンは前述したとおり非極性のため、染色性や印刷性に劣りますが、近年は表面処理などの技術進歩によりそれが可能となり、速乾性素材として採用されることが増えてきています。

ポリプロピレンの性質

ポリプロピレンは、容易に結晶化することが可能で、優れた耐熱性と機械的強度を持っています。成形品の表面硬度は高く、簡単には傷つきません。ガラス繊維やフィラーを配合することで所望の強度を持つグレードにするとも可能です。

耐水性は0.01%と低く、食品容器やパイプなど長期間水にさらされる用途にも使用可能です。一方で、いくつかの欠点も有しています。1つ目に挙げられるのが接着性や印刷性の低さです。非極性樹脂であるため極性の接着剤との相性が悪く、インクに対する濡れ性も良くありません。

これらを改善するには表面に微細な凹凸形状を付与する、化学的に変性させて官能基を設けるなどの下地処理が必要になってきます。2つ目に挙げられるのが耐候性の低さです。

ポリプロピレンは紫外線に曝されると劣化や酸化が引き起こされ、機械的強度の低下や白化を招きます。ただし、紫外線吸収剤や酸化防止剤を添加することで欠点を補えます。

ポリプロピレンのその他情報

ポリプロピレンの成形方法

ポリプロピレンは熱可塑性樹脂であるため、融点以上に加熱すると流動化します。成形方法は射出成型、押出成形、ブロー成型、真空成型など多岐にわたります。金型を用いた射出成型では、他の方法に比べ安価に製品を量産することが可能です。

ポリプロピレンは容易に結晶化するため、平らな成型物を得たい場合には性能上問題ない箇所にリブを立てるか、金型の昇温、冷却条件に注意を要します。押出成形やプレス成型などで製作したポリプロピレン板の曲げ加工や切削加工も容易で、色々な形状を持つ部品製造が可能です。

近年は、金型を必要としない3Dプリンター用の材料としても活用されています。

マシニングセンタ

マシニングセンタとは

マシニングセンタ

マシニングセンタは、日本工業規格(JIS)により「工作物の取り付け替えなしに、多種類の加工を行うNC工作機械」と定義されています。NCはnumerical controlの略で数値制御を意味しており、マシニングセンタは工作物に対して工具の位置情報を数値で指令する数値制御による機械加工機です。

工具を取り付けて回転運動を与える主軸のほかにATC(Automatic Tool Changer;自動工具交換装置)や加工対象物を様々な角度で固定するためのインデックステーブルなどから構成されています。

マシニングセンタの使用用途

マシニングセンタは成形に欠かせない金型をはじめとする金属や木材、プラスチック、ガラスなどの加工で使用されています。さまざまなツールを自動で交換できるため、フライスやエンドミル、ドリル、中ぐり、タップといったツールでの加工を一工程で行うことができます。

加工自由度という点でも従来は縦、横、高さの3軸でしたが、今は回転の2軸が加わり、5軸の自由度で加工が可能となりワークを持ち直す必要がないため、加工精度の高い部品を製作することができます。

マシニングセンタの原理

マシニングセンタは立形マシニングセンタ、横形マシニングセンタ、門形マシニングセンタの3種類に分類されます。

立形は主軸が垂直方向についており、加工物を上から加工します。マシニングセンタの中でもコンパクトな構成になっており、最も普及しています。加工時に発生する切削カスが加工物の上に残り、工具の刃先を痛めやすいため、切削カスを除去しやすいように工具の回転速度を変えたり、切削油の増減させるなどの対策が必要となるため量産よりは多品種少量生産に向いています。

横形は主軸が地面に対して水平についており、加工物を横から加工します。切削カスが下に落ちるので排出性が良い特徴があります。また、自動で部品の搬送を行うパレットチェンジャを設置でき、人の手を使わずに連続で部品を加工することができるため、量産に向いています。

門形は正面から見た時に門の形をしており、加工物を置くテーブルが広く長いため、大型の製品の加工に向いています。

ミラー

ミラーとは

ミラー

ミラーとは、光を反射させる光学デバイスの一種です。

ミラーは一般家庭にもある鏡のことですが、工業分野では幅広い種類のミラーが存在します。例えば反射する面が球面である球面ミラー、X軸とY軸で曲率が異なるトロイダルミラー、焦点から出た光をすべて平行にする (逆に平行な光を一点に集める) 放物面鏡、ある点から発せられた光を別の点に集光する楕円面鏡などが挙げられます。

反射面には高純度のアルミが用いられる場合が多く、銀や金の薄膜が利用され、とくに赤外光の反射では金薄膜を使用可能です。

ミラーの使用用途

ミラーは家庭にあるドレッサーや化粧台などの鏡として使用されています。その一方で工業的には計測機器として分光光度計や光検出器、FTIRなどの光学機器で使用可能です。

民生品の光学機器としてプロジェクターやカメラ、CDやDVD、顕微鏡でも使われています。

レンズを使った光学機器の場合にはミラーがないと焦点の関係で長細い形状になり、ミラーを使って光路を折り曲げると光学機器を小さくできます。

ミラーの原理

光路を構成する光学素子にはミラーの他にレンズもあります。レンズの場合には屈折率の差で光を集光したり平行光に変えますが、波長によって屈折率が異なるため、色収差と呼ばれる波長ごとに集光される位置が変化する問題があります。それに対してミラーはすべての波長で同じように反射でき、波長ごとに進路が変わる問題を回避可能です。

最近は求められる反射面の形状の自由度が高くなっています。ダイヤモンドターニングは自由曲面のミラーを製作する方法で、アルミをダイヤモンドターニングマシンで直接加工し、幅広い曲面のミラーを製作可能です。

ミラーの構造

ミラーの形状には、平面鏡、球面鏡、非球面鏡などがあります。

1. 平面鏡

一般的な形をした平面のミラーです。1方向の像だけを写し、立体の正面は見えますが、側面は見えません。そのためミラーを複数組み合わせる場合もあり、通常鏡台は三面鏡になっています。

2. 球面鏡

球を切り取った形状の面を有します。凸面鏡は鏡面が凸面にあるタイプで、凹面鏡は鏡面が凹面にあるタイプです。

3. 非球面鏡

球面以外の曲面を有するミラーです。具体例は反射望遠鏡に使用される放物面鏡などです。

ミラーの種類

1. クリアミラー

姿見や洗面所の鏡など、普段よく目にするミラーです。厚みは5mmが一般的で、曇り止めコーティングを施したタイプもあります。

2. 高透過ミラー

クリアミラーより青みが少なく、そのまま色味が見えます。美容室や高級ブティックでもよく用いられ、化粧品売り場などで淡い色を見る場合に効果的です。的確に色を把握でき、顔だけを確認する際に向いています。

3. 耐湿ミラー

エポキシミラーとも呼ばれ、サビやシケに強いです。水廻りのミラーとして使用されます。

4. グレーミラー

濃いグレーのガラスです。落ち着いた雰囲気で引き締まって見え、使い方次第では空間に開放感を与えます。白い壁やコンクリート打ち放しの壁で用いると映えます。

5. ブロンズミラー

ブロンズ色をしたガラスです。全体的に赤く見え、飲食店、美容室、高級ブティックなどで使用されます。

6. タペミラー

砂で鏡の表面に細かい傷を付けてフッ酸処理したミラーです。表面の映り込みがなく、照明と組み合わせると間接的な照明効果を演出できます。

7. 薄板ミラー

厚さが2mm〜3mmの薄いミラーです。

8. マジックミラー

部屋の明暗で見え方が変わり、明るい部屋からは鏡になり、暗い部屋からは透けて見えます。プライバシーを保護したり、相手を緊張させず観察したい場合に間仕切りや扉として用いられます。

ミラーの選び方

ミラーの選定では耐久性が重要です。紫外線を受けると表面が劣化して経年的に反射率の低下を引き起こします。耐久性を高めるためアルミ面の上にフッ化マグネシウムなどでコーティングされています。

安全柵

安全柵とは

安全柵

安全柵は危険な区間への侵入を制限するための安全機器の一つです。触れると重篤な災害を引き起こす可能性がある加工機械や組立機械、回転機器の周辺に作業者が入らないようにする柵です。

また、危険地帯への侵入防止だけではなく工程で発生する粉塵の飛散を防いだり、加工時に発生する騒音を抑制するためにも安全柵を用いることもあります。

安全策は柵と出入り用の扉から構成されるケースが多く、ベースはアルミや鉄で内部が見えるようにメッシュ状やポリカーボネートなどの透明樹脂で周りを覆っています。

安全柵の使用用途

安全柵はFA(ファクトリー オートメーション)機器からの安全確保に用いられています。生産効率を大幅に改善する専用機の場合、安全装置が装置に組み込まれていることが多く、あまり安全柵を使うことはありません。ただし、最近増加している産業用ロボットの場合は、実際に使用する環境やロボットの動きにあわせて安全柵を設置することが多いです。

また、安全柵が不要とされる協働ロボットを使ったFAシステムでもエンドエフェクタ(ハンドとも呼ぶ)やワークが人と接触すると危険なため、安全柵で安全確保するケースもあります。

安全柵の原理

安全柵は柵と人が出入りする扉、扉の開閉をチェックするセーフティセンサから構成されています。安全柵と同じように、危険なエリアに人が入らないように安全確保する方法としてエリアセンサと呼ばれるセンサもあります。エリアセンサにはエリアカーテンやレーザースキャナなどがあり、設定したエリアに人や物が入るとセンサが検知して安全装置が動作します。

安全柵とエリアセンサの使い分けの一つの観点として視認性があります。エリアセンサは赤外線を使用しているため、センシングしているエリアを視覚的に確認するのが困難です。それに対して安全柵は柵自体が見えており、危険領域との境目を視覚的に確認できるため、誤って侵入するのを防ぐことができます。

エリアセンサは設置が容易、安価などのメリットがありますが、意図せず装置を止めてしまうリスクが高まるというデメリットがあります。予期せぬ装置停止を極力避けたい場合などは安全柵が使用されます。

環境試験機

環境試験機とは環境試験機

環境試験機は湿度や温度などの気象環境条件や装置使用環境条件(振動や電波)を人工的に制御した環境を作り出し、その中で材料や装置の性能を評価するための試験機です。

具体的には温度や湿度だけでなく、塩水による耐食性を調べたり、実際の圧力容器内部と同じように高温高圧水を再現することも可能で、一般的なものから特殊な条件まで幅広い試験機があります。環境試験の条件はそれぞれの分野、製品によって定められています。

環境試験機の使用用途

環境試験機は対象とする商品が実際に使われる環境、もしくは想定環境を上回る厳しい環境で性能を確認するために使用されます。

最も一般的に利用されているのは恒温恒湿試験機です。装置内、もしくは部屋の温度や湿度をコントロールすることが可能で、恒温槽とも呼ばれています。装置の使用環境条件の上下限だけでなく、空輸などを想定して0℃以下の低温や50℃以上の高温下などの環境で試験を行うことがあります。

環境試験機の原理

恒温恒湿試験機以外の環境試験機としては振動試験機耐候性試験機、腐食試験機や耐薬品性試験機などがあります。

製品を輸送するときに車などを使うと振動が発生します。そのため顧客に製品が到着したときには振動で装置が破損していた、というリスクもあります。そこで梱包した装置に振動を加えて問題がないことを確認するために振動試験機を用いることがあります。

また、ある装置寿命の保証期間が10年である場合、実際の環境で安定性試験を行うと結果が出るまで10年かかってしまいます。このときに用いるものが耐候性試験機で、人工的な光源や環境温度を変えることで短期間で安定性試験の結果を得ることができます。また、このような試験を加速試験と呼びます。ISOやJISなどが規定した光源を使うことで加速する試験を行う試験機を「促進耐候性試験機」と呼び、さらに短時間で劣化を確認することができる「超促進耐候性試験機」もあります。

光学ガラス

光学ガラスとは

光学ガラス

光学ガラスとは、珪素 (読み方: ケイソ) を主とする珪石や珪砂を主原料としており、透明性を損なう不純物が非常に少ないガラスです。

形状も均質で空気の泡や傷なども少ないため、レンズやプリズムのように光を透過させる光学機器で使用されています。使用する光の波長によって材料を使い分けることが多く、可視域中心の場合はBK7 (読み方: ビーケーセブン) 、紫外域でも使用する場合は溶融石英や合成石英が用いられます。

合成石英の中でも様々なグレードがあり、特に紫外域での透過率が材質やグレードによって異なるため注意が必要です。

光学ガラスの使用用途

光学ガラスは、レンズやプリズム、光学フィルタ、検出器などの窓板のように、光を透過させる光学素子やライトガイドや光ファイバーなどの光伝搬用に使用されることが多いです。また、半導体製造では重要な装置である露光装置に光学ガラスが使用されています。

半導体デバイスの集積度向上にあわせて、光学ガラスの純度、精度も更に高めることが求められています。その他、放射線だけを遮蔽する放射線遮蔽窓ガラスもあり、添加物によってガラスの特性を変えられるため、さまざまな分野に応用されています。研究や実験における使用用途は、以下の通りです。

1. 基礎研究

基礎研究では、光学ガラスを基板として用いて、ガラス上に試料を塗布、または蒸着し、分光測定に用いることも可能です。近年、注目される2次元材料であるグラフェンも光学ガラスに転写して販売もされています。通常、銅基板上に作成されるグラフェンですが、ガラス基板上に転写することで、透過光を観測できるため、さまざま分光研究で利用されています。

2. レーザーを使った光学実験

レーザーを使った光学実験でも光学ガラスを使用する場合があります。例えば、20分の1の反射板として光学ガラスを用いるケースです。一般的にガラスでは赤い光に比べて青い光の波長での屈折率が高くなっており、通過する光のうち、青い光の方が赤い光より早く進みます。

そのため、パルスレーザーのように時間軸で特定領域に存在する光を扱う際に、パルスレーザーのパルス光の波長分散を制御して、パルス幅を大きく (チャープ) 、または小さくするために、光学ガラスを使用することもできます。

光学ガラスの原理

光学ガラスの中でも合成石英は内部に泡や傷がなく、透明性も高く紫外域の光を透過させることが可能です。従来は、紫外線を透過させる光学素子といえば合成石英でしたが、近年は技術の進歩も進み、AGC社のサイドップなど樹脂で紫外域の光を透過させるものも開発されています。

光学ガラスは各波長での透過率や異物だけではなく、主たる屈折率と異なるガラス質が線状もしくは層状になることで生じる脈理と呼ばれる屈折率不均一性が重要です。例えば、光を曲げて集光させる光学部品であるレンズを考えてみると、レンズは空気との屈折率差が大きくなればなるほど光の曲がり方が大きくなり、レンズから近い位置で集光できる (焦点が短い) ため、光学系を小さくすることが可能です。

製造方法は切削、研磨が一般的ですが、融点が低い溶融石英ガラスなどは成形やプレス成形など、安価に量産できる製造方法を採用する場合があります。光学用研磨は、片面、両面どちらに施すかは発注時に選び、価格も異なります。

光学ガラスのその他情報

光学ガラスの屈折率

光学ガラスの屈折率は、紫外線領域の方が赤外線領域に比べ大きく、滑らかな分散を持っています。この分散はガラスの材質によって異なり、屈折率を利用した光学実験では非常に重要です。

例えば、合成石英の屈折率は、波長340nm付近で約1.48、650nm付近で1.457、900nm付近で1.452となっています。一方、BK7の屈折率は、波長340nm付近で約1.54、650nm付近で1.514、900nm付近で1.509です。屈折率の分散は各メーカーが出しているため、事前に確認できます。

パルスレーザーのパルス光の波長分散は、上記の屈折率の違いによって影響を受けます。材質やガラスの厚さによってパルスの群速度分散を制御が可能です。そのため、各波長の屈折率の違いの情報を基に、パルス形状の設計が可能となります。

産業用3Dプリンター

産業用3Dプリンターとは

産業用3Dプリンター

3Dプリンターは3D-CADで設計した形状を実際に生み出すことができるプリンターです。

設計した形状をスライスした2次元の層を1枚ずつ積み重ねることで立体モデルを製作します。もともとは樹脂を対象にした装置でしたが、最近は樹脂用以外にも金属用の3Dプリンターも増えています。

樹脂用の装置では液状の樹脂(紫外線硬化樹脂)に紫外線を照射し硬化させる「光造形方式」、熱で溶かした樹脂を積み重ねる「FDM方式」など様々な方式のプリンターがあります。

産業用3Dプリンターの使用用途

産業用3Dプリンターは樹脂製品の試作で用いられることが多いです。射出成形など樹脂部品を量産する場合は、金型を製作するなどの費用が膨大になります。そのため、実際に金型を製造する前に形状が問題ないか確認するために3Dプリンターを使用します。

また、加工では難しい中空部品なども積層する方式なら制作することが可能です。そのため、簡易治具や簡易金型用のマスターとしても使用されています。その他、最近では積層ピッチが細かくなり、形状精度も向上したため、最終製品用の部品を3Dプリンターで製作することも増えてきました。

産業用3Dプリンターの原理

産業用3Dプリンターが適用できる材料の種類は増えており、ABSやアクリルだけでなくPPやゴムなどさまざまな材料特性に似た材料が登場しています。

3Dプリンターで積層するために部品を支えるサポート材が必要になるため、サポート材を配置できる形状にする必要があります。通常はプリント後にサポート材を切り除く必要がありますが、最近では水に溶けるサポート材も登場しており、形状の自由度が高まっただけでなく作業性も向上します。

一方で3Dプリンターの問題点としては積層する角度によっては平面を出しにくい、加工にかかる時間が長い(小さい部品でも1日)などが挙げられます。

ただ、現在は3Dプリンターの価格も下がっているため購入へのハードルは下がりました。造形方法で加工を得意とする形、精度も異なるため、用途に応じた造形方法を選択する必要があります。また、造形には後処理(例えば紫外線硬化の光造形ならば硬化を完全にするためには後工程でUV照射が必要)な場合もあるので注意が必要です。

潤滑剤

潤滑剤とは

潤滑剤

潤滑剤 (英: lubricant) とは、複数の部品を摺動させる場合に部品間の摩擦を減らして動きを滑らかにしたり、摩耗を防いだり、摩擦により発生する熱を逃がす物質です。

減摩材とも呼ばれ、表面に油膜を張ると錆を予防可能です。

潤滑剤には潤滑油と呼ばれる油などの液体、グリースなどの半固体、グラファイト (黒鉛) や二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン (PTFE) などの固体があり、用途に合わせて使い分けられます。

潤滑剤の使用用途

潤滑剤は部品が摺動するほとんどの場所で使用されています。

1. 液体潤滑剤

ミシンや自転車、電動工具、一般的な機械の摺動部に使用され、浸透性が高く、狭い隙間から部品間に入り込みます。機械加工切削油としても使用可能です。

2. 半固体潤滑剤

シャッター歯車などに使用されます。浸透性がないため、組立時にあらかじめ塗布します。

3. 固体潤滑剤

液体や半固体の潤滑剤は定期的に補充する必要がありますが、固体潤滑剤は塗布した場所で固形の油膜を形成し、高い耐久性を有します。そのため高温になる場所や定期的なメンテナンスが難しい場所などでよく使われます。

潤滑剤の原理

機械の接触面に対する潤滑は「流体潤滑」と「境界潤滑」に分類可能です。流体潤滑は理想的で良い状態で、境界潤滑は摩擦は減っているものの耐久性などの面で問題が発生する可能性があります。

1. 流体潤滑

接触面に十分に分厚い油膜が存在して部品同士が直接接触していないため、摩耗が少なく理想的な潤滑状態を作り出し、機械の軸が回転すると潤滑油が隙間に入り込んで摩擦を大幅に減らせます。この効果を「くさび効果」と呼びます。

2. 境界潤滑

分厚い油膜が存在せず、部品同士が部分的に直接接触している潤滑状態です。例えば接触面の表面が粗い (凹凸が大きい) 部品同士の接触で起こります。部品同士が直接接触して接触面を傷つける「かじり」や同種金属の場合には摩擦熱により溶着する「焼き付き」など、不都合な現象が起こる可能性があり注意が必要です。

潤滑剤の種類

潤滑剤は液体潤滑剤、半固体潤滑剤、固体潤滑剤の3種類に分類されます。

1. 液体潤滑剤

潤滑油とも呼ばれ、切削油、防錆/浸透潤滑剤、オイル系、シリコンオイル系などに分けられます。

切削油は金属の素材にプレス、切削、研削、圧延、引き抜きなどの加工を施す際に使用可能です。主に潤滑作用と冷却作用の2種類のタイプに分けられます。防錆/浸透潤滑剤には金属から水を除去する水置換性を有するオイルと浸透性を持つオイルやラノリンのような防錆剤が混合されています。錆びたボルトやナットを緩める場合に利用可能です。

オイル系はスピンドル油がベースになっており、小型モータや精紡機などの主軸の回転を滑らかにします。油膜に強度があり、一般的な潤滑油としても使用可能です。シリコンオイル系はジメチルシロキサンをスプレー状にしたタイプが一般的です。シリコン被膜を素材表面に作って素材の滑りを良くします。

2. 半固体潤滑剤

グリースやコンパウンドがあり、潤滑油を半固体状にする増ちょう剤を含む油膜を形成して摩耗や摩擦を抑えます。

グリースは増ちょう剤に潤滑油を保持させて揺変性を与え、揺変性物質は外からの力で流動します。流動に必要な力をちょう度 (英: consistency) と呼び、ちょう度が大きいとグリースは柔らかいです。高温でグリースは増ちょう剤の3次元網目構造の崩壊によって非流動性を保てなくなります。

コンパウンドもグリーストと同様に、防錆、緩衝、潤滑作用を促す半固体潤滑剤です。

3. 固体潤滑剤

ポリテトラフルオロエチレン、二硫化モリブデン、グラファイト、鉛、銀などが用いられます。含浸させるタイプ、膜を形成するタイプ、微粉末を用いるタイプなどがあり、いずれも表面の硬さが低くて融点が高く、焼きつきにくくて化学的安定性が高いです。