光学ガラス

光学ガラスとは

光学ガラス

光学ガラスとは、珪素 (読み方: ケイソ) を主とする珪石や珪砂を主原料としており、透明性を損なう不純物が非常に少ないガラスです。

形状も均質で空気の泡や傷なども少ないため、レンズやプリズムのように光を透過させる光学機器で使用されています。使用する光の波長によって材料を使い分けることが多く、可視域中心の場合はBK7 (読み方: ビーケーセブン) 、紫外域でも使用する場合は溶融石英や合成石英が用いられます。

合成石英の中でも様々なグレードがあり、特に紫外域での透過率が材質やグレードによって異なるため注意が必要です。

光学ガラスの使用用途

光学ガラスは、レンズやプリズム、光学フィルタ、検出器などの窓板のように、光を透過させる光学素子やライトガイドや光ファイバーなどの光伝搬用に使用されることが多いです。また、半導体製造では重要な装置である露光装置に光学ガラスが使用されています。

半導体デバイスの集積度向上にあわせて、光学ガラスの純度、精度も更に高めることが求められています。その他、放射線だけを遮蔽する放射線遮蔽窓ガラスもあり、添加物によってガラスの特性を変えられるため、さまざまな分野に応用されています。研究や実験における使用用途は、以下の通りです。

1. 基礎研究

基礎研究では、光学ガラスを基板として用いて、ガラス上に試料を塗布、または蒸着し、分光測定に用いることも可能です。近年、注目される2次元材料であるグラフェンも光学ガラスに転写して販売もされています。通常、銅基板上に作成されるグラフェンですが、ガラス基板上に転写することで、透過光を観測できるため、さまざま分光研究で利用されています。

2. レーザーを使った光学実験

レーザーを使った光学実験でも光学ガラスを使用する場合があります。例えば、20分の1の反射板として光学ガラスを用いるケースです。一般的にガラスでは赤い光に比べて青い光の波長での屈折率が高くなっており、通過する光のうち、青い光の方が赤い光より早く進みます。

そのため、パルスレーザーのように時間軸で特定領域に存在する光を扱う際に、パルスレーザーのパルス光の波長分散を制御して、パルス幅を大きく (チャープ) 、または小さくするために、光学ガラスを使用することもできます。

光学ガラスの原理

光学ガラスの中でも合成石英は内部に泡や傷がなく、透明性も高く紫外域の光を透過させることが可能です。従来は、紫外線を透過させる光学素子といえば合成石英でしたが、近年は技術の進歩も進み、AGC社のサイドップなど樹脂で紫外域の光を透過させるものも開発されています。

光学ガラスは各波長での透過率や異物だけではなく、主たる屈折率と異なるガラス質が線状もしくは層状になることで生じる脈理と呼ばれる屈折率不均一性が重要です。例えば、光を曲げて集光させる光学部品であるレンズを考えてみると、レンズは空気との屈折率差が大きくなればなるほど光の曲がり方が大きくなり、レンズから近い位置で集光できる (焦点が短い) ため、光学系を小さくすることが可能です。

製造方法は切削、研磨が一般的ですが、融点が低い溶融石英ガラスなどは成形やプレス成形など、安価に量産できる製造方法を採用する場合があります。光学用研磨は、片面、両面どちらに施すかは発注時に選び、価格も異なります。

光学ガラスのその他情報

光学ガラスの屈折率

光学ガラスの屈折率は、紫外線領域の方が赤外線領域に比べ大きく、滑らかな分散を持っています。この分散はガラスの材質によって異なり、屈折率を利用した光学実験では非常に重要です。

例えば、合成石英の屈折率は、波長340nm付近で約1.48、650nm付近で1.457、900nm付近で1.452となっています。一方、BK7の屈折率は、波長340nm付近で約1.54、650nm付近で1.514、900nm付近で1.509です。屈折率の分散は各メーカーが出しているため、事前に確認できます。

パルスレーザーのパルス光の波長分散は、上記の屈折率の違いによって影響を受けます。材質やガラスの厚さによってパルスの群速度分散を制御が可能です。そのため、各波長の屈折率の違いの情報を基に、パルス形状の設計が可能となります。

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