テープ研磨

テープ研磨とは

テープ研磨は、加工物に研磨テープ(研磨フィルム、ラッピングフィルムともいう)を押し当て、一定方向に送りながら加工物表面を研磨する方法です。使用する研磨テープの幅や砥粒の種類・粒度などを加工物の素材や形状・加工部位に合わせて選択できるので、さまざまな製品、部品に対応することができます。

研磨テープの表面には砥粒が固定されており、研磨の加工中に砥粒が周囲へ飛び散ることがほとんどありません。よって、クリーンな環境内で加工することができます。

テープ研磨の使用用途

テープ研磨は、専用装置によってなされますが、専用装置の構成要素の形状やサイズ、駆動方法などを変えることによって、さまざまな部品・部位に対して研磨が行えます。例えばプリント基板のような平面、シャフトや軸受けなどの外径・内径、さらには球面に至るまで精密な研磨加工が可能です。また、研磨テープを変更することでいろいろな素材に対応することができ、表面粗さも鏡面にまで仕上げることもできます。

自動車、通信機器、産業機械などの高性能・多機能化が進むにつれ、それらハイテク機器を構成する部品類も、より高精度、高品質なものが求められます。さらに、加工環境面に対しても配慮しなければなりません。その点、テープ研磨は、加工精度、品質面だけでなく加工環境も良好ですので、広範囲の業界で利用されています。

テープ研磨の原理

テープ研磨に用いる研磨テープは、プラスチックフィルムなどの基材に研磨材(砥粒)が分散塗布され、基材に研磨剤が固着した構造になっています。よって、テープ研磨は、砥石研磨や研磨布紙加工などと同じ、固定砥粒方式に分類されます。

テープ研磨装置の主な構成要素として、研磨テープをセットする「供給リール」使用済み研磨テープを巻き取る「巻き取りリール」これら二つのリール間に配される「研磨ヘッド」があります。この研磨ヘッドによって研磨テープの砥粒面が、加工物表面に押し当てられます。

供給リールから送り出された研磨テープは、研磨ヘッドを経て、巻き取りリールへ一定の早さで送られていきます。つまり、加工物表面は、常に新しい砥粒面で研磨されるので加工効率がよく、均一で滑らかな表面仕上げが可能です。

テープ研磨は、研磨テープのサイズ、送り方、加工物表面への当て方などを加工物の形状や部位に応じてカスタマイズすることで、さまざまな加工条件に対応することができます。また、砥粒の種類、圧力の調整によって最適な表面粗さを得ることも可能です。

ラップ研磨

ラップ研磨とは

ラップ研磨とは、主に精密性が要求される加工物に用いられる研磨方法のひとつです。ラップ研磨は、平面台(ラップ)と加工物との間に砥粒(ラップ剤)を入れてすり動かし、両者間の摩耗作用を利用して加工物表面の凸部を取り除きます。

ラップ研磨は、研削加工などと比べて加工効率は低いですが、寸法精度の高い非常に滑らかな面が形成されますので、加工物の仕上げ工程で用いられます。

通常、ラップ研磨の専用装置(ラッピング装置)によって研磨加工をしますが、ラッピング装置では加工が難しい形状や寸法の微調整には手作業、いわゆるハンドラッピングも行われます。ただし、非常に高い技術が要求されます。

ラップ研磨の使用用途

ラップ研磨は、厳しい加工精度が求められる製品や部品の仕上げ工程に用いられます。

ラップ研磨を施すことで、高い寸法精度を出すことができ、さらに表面を鏡面のように滑らかに仕上げることができます。つまり、摩擦抵抗を減らすことで、はめ合い部や摺動部におけるトラブルを抑えることができます。このような効果があることから、光学部品、ゲージ類、ベアリングといった精密部品や摺動部品に広く利用されています。

特に半導体ウエハーは、難削材であるウエハーの両面を平行かつ滑らかに仕上げなければならず、加えて、一定した高品質性を維持しつつ大量生産しなければなりません。そのような半導体ウエハー製造において、ラップ研磨は重要な一工程を担っています。

ラップ研磨の原理

ラップ研磨の概要は、ハンドラッピングを例にとると、駆動している平面台(ラップ)に砥粒(ラップ剤)を介して加工物を押し付けます。ラップと加工物が相対運動するなかでラップ剤は圧力を受けながら徐々に加工物表面を削り取ります。その結果、表面粗さが均一で歪みのない平面が得られるというものです。

通常、ラップ研磨は、ラッピング装置を用いて行われ、加工物の材質や形、加工条件に応じてラップの形状や数、駆動方法、およびラップ剤の種類等を変えて対応します。

ラップ研磨は、ラップ剤の性状の違いによって湿式と乾式とに分けられます。湿式は、砥粒とラップ液(油など)を混ぜたスラリーをラップ剤として用いるものです。ラップ液中を砥粒が転動して加工物表面を削るので、加工量が大きく、表面は方向性のない梨地面になります。一方、乾式は、ラップ剤をラップ上に半固定した状態で用いる方法で、ラップ剤が加工物表面を滑り、引っかき作用によって加工物表面を削っていきます。湿式に比べ加工量が小さく、表面は鏡面になります。

センタレス研削

センタレス研削とは

センタレス研削

センタレス研削 (英: centerless grinding) とは、工作物の送りと回転を調整して外周を研削する加工方法です。

固定されたブレード (支持刃) と回転するコントローラー (調整車) の間に工作物を配置し、回転する砥石で研削します。加工精度は外径公差がφ±0.0005、真円度が0.0005以下、面粗さが0.0001レベル以下です。

加工物毎にセンタ孔を開け、チャッキングする必要がなく自動供給装置を併用して連続生産が可能です。長尺の工作物でも加工物全体を支持刃で支持すると、 曲がりも少なく研削精度を一定かつ高精度に保てます。

センタレス研削の使用用途

センタレス研削では、工作物の研削盤への取り付けが不要 (センタ穴を開けて工作物を固定する必要がない) です。工作物の着脱の時間が必要なく、研削加工を連続して行えます。円筒状工作物の全長を保持しながら外周を研削可能で、長手方向のたわみが少なく、長尺ピンやシャフトのような工作物の外周研削加工に向いています。

研削盤に工作物を取り付けないため、取り付け時に生じる誤差が少ない (チャック穴の穴開け精度の影響等) です。研削精度が一定に保てます。しかし、コントローラーや研削砥石のセッティング精度に限界があるので、単品の絶対研削精度は円筒研削と比べると劣ります。

センタレス研削の原理

センタレス研削盤はワークの外周面が、研削砥石、調整砥石、ブレードの3点で接しており、これら3点を通る円は1つだけです。最初は形が歪んでいても造円作用によって回転とともに歪みが小さくなり、最終的に真円へ近づけます。造円作用とは、少しずつ歪みが小さくなって、真円に近づく働きのことです。

ワークの軸心が基準となる他の研削方式とは異なり、センタレス研削盤ではワークを心出ししてチャックせず、研削砥石、調整砥石、ブレードの3点の位置関係を一定に保って研削するため、ワークが真円へ近づきます。

研削砥石と調整砥石の中心を結ぶ線とワークの中心の距離を心高と呼びます。心高が高さによって真円度不良になる可能性があり、注意が必要です。具体的には、心高が高いとワークは花びら形状になります。それに対して、心高が低いとワークはおむすび形状になります。

センタレス研削の種類

センタレス研削の加工方法には、一般的に通し研削と停止研削の2種類があります。

1. 通し研削

通し研削は加工物が2つの砥石の間を通過していく加工方法です。部品の位置決めがないため、連続して加工可能です。ただし外周に段差がない部品に限ります。段差がある部品は砥石間を通過できず、通し研削はできません。

2. 停止研削

停止研削は部品を位置決めして研削する加工方法です。通し研削とは異なり、砥石間を移動させずに加工します。そのため段差がある部品でも加工可能です。したがって段差の際まで加工する場合は停止研削が適しています。

センタレス研削のその他情報

センタレス研削の工作物の送り方

センタレス研削には工作物の送り方法が2種類あります。インフィード研削とスルフィード研削です。

1. インフィード研削
インフィード研削は工作物・ブレード・コントローラーの位置関係を保ったまま、高速回転している研削砥石に切り込む研削方法です。工作物は、調整砥石とブレードで支持され、正確な回転が与えられます。研削砥石・工作支持刃・コントローラーの3点に工作物の外周が接すると工作物は研削されます。

2. スルフィード研削
スルフィード研削は工作物がブレードとコントローラーで支持され、コントローラーによって回転と推力を与えられながらブレード上を通って研削する方法です。
ブレードに対してコントローラー軸が一定の角度に傾けられているため、工作物はグリップ力のあるコントローラーによって推力を与えられながらブレード上を進みます。コントローラーの回転が早くてコントローラーの傾斜角度が大きいほど、加工物は大きい速度で研削されます。

トラバース研削

トラバース研削とは

金属製品の表面を少しずつ削って表面を滑らかにするとともに寸法を微調整する作業のことを研削加工といいます。研削加工のうち円筒状の製品の表面を削ることを円筒研削といいます。

トラバース研削は円筒研削の一種で、他の円筒研削にはプランジ研削とアンギュラ研削があります。これら3種類の円筒研削はそれぞれ砥石の動かし方などに違いがあり、加工したい製品の種類によって使い分けられています。トラバース研削は、砥石または被加工材を被加工材の軸に沿って平行移動させる円筒研削加工です。

トラバース研削の使用用途

トラバース研削では砥石が被加工材の軸に対して垂直に切り込むため、加工後の表面が非常に滑らかに仕上がるという特徴があります。寸法の調整を精密に行うことができ、鏡面仕上げなどの美しい表面に仕上げることができるというメリットがあります。

研削加工は、さまざまな機械の部品などの製造に使われています。その中でもトラバース研削は、特に大きくて動かすのが困難な製品や寸法を精密に調整する必要のある製品の製造に適しています。

トラバース研削の原理

研削に使われる機会を研削盤といいます。研削盤は、砥石や研削水などで構成されています。

砥石は、被加工材を削る部分で、微細な砥粒が結合剤によってつなげられることで作られています。粒の種類や砥石の組成、砥粒の大きさ、結合剤の種類などが研削盤によって異なります。

砥石を被加工材に押し付ける機能をチャックといいます。円筒チャックでは被加工材の両端をセンタと呼ばれる突起で固定し、砥石を切り込ませます。

プランジ研削とトラバース研削では砥石を被加工材の軸に対して垂直に切り込ませますが、プランジ研削では砥石が固定されているのに対し、トラバース研削では砥石または被加工材が被加工材の軸に対して平行に移動します。そのため、砥石の幅よりも広い幅を持った被加工材を手動で動かすことなく端から端まで研削することができます。

トラバース研削の研削盤にはテーブル移動型と砥石台移動型の2種類があります。テーブル移動型では被加工材が固定された台が軸に平行に動く送り機能が搭載されているのに対し、砥石台移動型では砥石が動きます。したがって、砥石台移動型は、動かすのが難しい大きさや重さの被加工材の研削に適しています。

黒錆加工

黒錆加工とは黒染め加工

黒錆加工とは、金属表面に緻密で安定した酸化鉄被膜を生成させる表面加工法です。この酸化鉄被膜は、四酸化三鉄(組成式 Fe3O4)被膜であって、黒色をしているため黒錆加工と呼ばれています。(工業的には一般的に黒染加工と呼ばれることが多いです)

黒錆加工で形成された被膜は、金属の耐食性を高めます。また、皮膜自体の厚さも薄いことから加工物の寸法がほとんど変わりません。クロムメッキのような通常のめっき処理や防錆塗装処理が施された加工物では、経年劣化などによってめっきや塗装が剥離することがあります。その点、黒錆加工は、表面を酸化させる化学的処理ですから剥離の心配がありません。

黒錆加工の使用用途

黒錆加工は、低コストで耐食性、耐摩耗性、耐熱性を付与することができ、さらに長期使用による皮膜の剥離もありません。よって、身のまわりの生活用品から鉄構造物、産業機械にいたるまで大小さまざまな金属部材・製品に用いられています。

黒錆加工で形成された皮膜は、1~3㎛と薄く、加工寸法の変化がほとんどありません。よって、精密部品や繊細な模様の製品を加工するのにも向いています。さらに、黒錆は独特の風合いを持った黒色をしていますので、製品の意匠性を高めるといった効果も付与します。

黒錆加工の原理

私たちがイメージする錆として、鉄につく赤錆があります。赤錆は、表面から徐々に内部へ浸食していき金属を劣化させる性質を持っています。これに対し黒錆は、一部の金属を除いて、赤錆のように自然に発生することがなく、浸食性もありません。そこで、あらかじめ人工的に酸化皮膜(黒錆)を形成することで赤錆の発生を抑制しようというのが黒錆加工処理の目的の一つです。

黒錆を生成する酸化皮膜処理法として最も一般的なものにアルカリ黒色酸化法があります。アルカリ黒色酸化法は、酸化材を添加した苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)溶液などのアルカリ溶液に加工物を浸し、140~150℃で熱処理することによって黒錆を生成する工法です。この工法は、熱処理温度が比較的低く、化学反応もゆっくり進行するため、形状や寸法をほとんど変化させずに加工物を処理することができます。

黒錆の工法として他に水蒸気法があります。水蒸気法では、金属の焼戻し過程に水蒸気を入れることで金属と水蒸気が酸化還元反応を起こし加工物表面に黒錆が生成されます。この工法で生成された酸化皮膜(黒錆)は、アルカリ黒色酸化法より強固なものになります。

鏡面加工

鏡面加工とは

鏡面加工

鏡面加工とは、加工物の表面を鏡のように仕上げる加工方法です。

工作材の表面を凹凸なく仕上げることで、可視光線を反射する鏡面を得られます。日常生活でよく目にする、スプーンやフォークなどのステンレス部品のほか、プラスチックやセラミックス、ガラスなど幅広い材料に鏡面加工を行うことができます。

鏡面加工の使用用途

鏡面加工は工作材の表面に光沢を出すことができるため、高級家具に多く用いられています。医療機器や医薬品機器などの医薬関係から食品機器、車両部品など、鏡面加工された製品は非常に多いです。

また、半導体製造装置や液晶製造装置、産業用ロボットなど最先端のものづくりの現場でも、鏡面加工された製品や部品が使われています。

鏡面加工では、表面の凹凸を少なくし、表面を滑らかに仕上げることができます。表面を滑らかにすることで、粉や液体を流すときの抵抗を小さくできることから、パイプの内側の仕上げ加工としても、鏡面加工は用いられています。

鏡面加工の原理

鏡面加工は、表面粗さを表すパラメータ (JIS B 0601:2001) により基準が決められています。表面の粗さを表すものとしてRa (算術平均粗さ) 、Rz (最大高さ) がよく用いられます。単位はどちらも[μm]です。

Raは材料の表面曲線の面積を測定長さで割った数値で、粗さの平均となる数値です。多くの場合、Raが基準となります。Rzは表面曲面の上位5つの高さと上位5つの深さのそれぞれの平均値の差を表します。Raが0.2程度で材料の表面は鏡面となり、鏡のようなきれいな見た目のなります。

鏡面加工の方法

鏡面加工には、「切削加工」「研削加工」「蒸着めっき」「電解研磨」の4通りの方法があります。方法によって特徴やメリット・デメリットが異なるため、加工する対象物によって最適な方法を選ぶことが大切です。

1. 切削加工

切削加工は、高速で回転する切削工具を使用して、材料の表面を削ることで目的の形状や表面品質にする加工方法です。最大でナノスケール (1/1,000μm) の加工精度を実現できます。

切削加工は工具による切削のみのため、製品に研磨剤や砥粒などの不純物の混入リスクが少ない加工方法です。

切削加工について詳しくみる

2. 研削加工

研削加工は、高速で回転する研削砥石を使用して、材料の表面を削ることで形状や表面品質にする加工方法です。研削砥石は、砥粒と結合剤により形成されています。砥粒は、摩耗して削れなくなると古い部分がはがれ、新しい砥粒部分が表面に現れるため、継続した加工が可能です。

材料を削って表面を加工するという点では切削加工と同じですが、研削工具を使って表面の上部分のみを削る加工方法のため、主に仕上げ工程に用いられています。

研削加工について詳しくみる

3. 真空蒸着めっき

蒸着めっきは、亜鉛合金や樹脂成型品などの表面に蒸着めっきを薄膜状に形成する加工方法です。蒸着めっはアルミなどを真空状態で加熱蒸発させることで得られます。

真空蒸着は、蒸発した金属が一定速度で回転している製品に付着するため、ムラの少ないきれいな鏡面加工ができるのが特徴です。さらに、物理的な加工による摩耗が少ないため、幅広い材料に対して鏡面加工ができます。

4. 電解研磨

電解研磨は、鏡面加工を施す材料を電解研磨液に入れ、電気を流すことで化学反応を起こすことで金属表面を鏡面にする加工方法です。金属のイオン化傾向の差と酸化還元反応を利用した、電気分解を用いています。

電解研磨は金属同士の反応を利用しているため、金属以外の材料には適用できないのが欠点です。また金属材料においても、電解研磨で鏡面加工ができるものとできないものがあり、適用できる材料が少ないです。

さらに電流を流す装置や電解研磨液など、電解研磨を行うにあたり必要な道具が多いためコストがかかります。一方で、化学反応は均一に進むことから、キズやへこみなどの物理的に研磨しづらい部分でも鏡面加工が均一にできます。

クロームメッキ加工

クロームメッキ加工とは

クロームメッキ加工

クロームメッキ加工とは、クローム金属が用いられているメッキ加工のことです。

メッキ加工は、素材の表面に金属の皮膜を生成させる加工方法を指します。クロムを主とした皮膜で素材を覆い、耐食性や硬度を向上させます。外観はシルバーが基調となっており、少し青みがかっているのが特徴です。

美しい光沢があるため、意匠性を向上させることも可能です。一方で、クロームメッキは伝導効率が悪く、均一電着性に課題があります。皮膜の厚さにバラつきが生じやすい事がデメリットの1つとして挙げられます。

クロームメッキ加工の使用用途

クロームメッキは、その特徴から装飾用途と性能向上用途で分類されています。

1. 装飾用途

装飾用途では、水洗金具、街灯設備、照明器具、自動車外装部品、ゴルフヘッドなどに使用されています。具体的には、エンジン部品やシリンダ、シャフト、ポンプといった重工業製品などです。

意匠性があり、高光沢で厳しい環境にありながらも変色に強い点から重宝されています。

2. 性能向上用途

より過酷な環境で稼働し、信頼性も必要となる基幹部品にも使用されています。硬度と耐食性が高く耐久性自体が大きく向上するため、自動車や重機などの機構部での使用が多いです。

クロームメッキ加工の原理

クロム酸と硫酸を主とした50℃程度のめっき液浴を作成し、素材を浸漬させます。加えて通電処理を行うことで、電解による還元反応が発生します。その中でメッキ液中の金属イオンが電子を引き受け、陰極にクロム金属となり金属皮膜が析出する技術です。

通電が多い箇所 (素材角部等) には析出が起こりやすいですが、少ない箇所は (凹み部分等) 膜厚が薄くなります。他の金属種によるメッキ加工でも見られる現象ですが、クロームメッキ加工で特に顕著に起こりやすく、膜厚のコントロール方法は加工作業者の経験則に依存するケースが見られます。

硫酸の代替として、硝酸を使用することで皮膜を黒色化する技術も確立されています。

クロームメッキ加工の種類

1. 装飾用クロームメッキ

膜厚が1μm以下で、一般的に他の金属メッキ皮膜の上に薄く重ねられます。クロームメッキ特有の色調や光沢によって、表面が輝くような美しい外観となります。

加えて、メッキの表面が空気に触れて酸化被膜が形成されることで耐食性が向上します。特に自動車の外装部品用途では、銅や銅やニッケルなど数種類の金属皮膜を10層近く重ね、最後にクロームメッキを行います。下地皮膜との組み合わせで、その性能をより発揮することが可能です。

2. 硬質クロームメッキ

膜厚が1μm以上で、JIS規格では工業用クロムメッキとも呼ばれます。より厚くメッキ加工を施すことで、耐久性向上を重視します。

その皮膜は非常に硬く、耐摩耗性や離型性に優れています。膜厚が25μm以上でビッカース硬度HV800〜1,000を誇り、JIS (H8615) では膜厚20μmでHv750以上です。

クロームメッキ加工のその他情報

クロームメッキの浴種

1. 6価クロムメイン
ほとんどのクロームメッキの液中には、6価クロムが含有されています。これは、Rohs規制法等で世界的に有害成分に認定されてい流ものです。環境面と作業面を考慮し、6価クロムを用いてのクロームメッキ自体に否定的な意向を持つ業者も少なくありません。

廃液においても6価クロムを無害化する処理が必要であり、一定の手間が発生します。 しかしながら、各性能面は下記の3価クロムより優れており、スペックを優先して使用されるケースが見られます。なお、電解還元の過程で6価クロムは無害な成分に変化するため、メッキ皮膜中には有害な成分は含有していません。

2. 3価クロムメイン
上記規制を受け、近年は無害な3価クロムを主としたメッキ液組成が好まれる傾向にあります。その皮膜もまた異なる特徴を有します。

メッキ液組成の微調整により、色調の変更が可能であり、黒色から銀白色まで再現可能です。下地に光沢ニッケルメッキを施すことで、その光沢を維持する手法もあります。

複合加工

複合加工とは

複合加工

複合加工は、複数種類の加工作業をまとめて実行できる機構を備えた工作機械を用いて行う加工方式です。

精密部品加工は、旋削や切削などの複数工程が必要となる場合が多いです。従来は、NC旋盤マシニングセンタなどを使用し、独立した複数の工程で作業していました。このような複数の工程を複合加工では1台の加工機械で実施するため、工程を分けて機械ごとに材料を移動、取り外しや固定などの工程を省くことが可能になり、加工時間を短縮できるメリットがあります。

複合加工の使用用途

複合加工は、加工時間短縮によるコストダウンに加え、部品の取り外し・取り付け回数が減らせるため、高い部品の加工精度を得られるという特徴も備えます。この特徴を活かし、加工精度が要求される部品に対して使用されます。具体的な製品例としては、自動車のドライブシャフト、オイルポンプの蓋、ノーバックハウジングと呼ばれる航空機に使われる部品などで使用されます。

加工現場自体の省スペース化にも貢献するため、加工効率の向上・作業スペースの有効活用を目的とする製造現場においても、複合加工は選択され、使用されます。”¥

複合加工の種類

複合加工は、マシニングセンターで実行する工程と、NC旋盤で実行する工程をまとめて実行可能するものです。メインとする加工方法により、主に下記2種類が存在します。

  1. NC旋盤ベース複合加工:NC旋盤機ベースにマシニングセンタの機能を付与した複合加工機を用いたものです。NC旋盤の刃物台に回転工具を装着し、NC旋盤で通常行う旋削加工に加えて、ドリルやエンドミルによるマシニングセンタの加工も加えています。NC旋盤ベースであるため、円筒状の部材に対する加工に適しています。
  2. マシニングセンタベース複合加工:マシニングセンタをベースにNC旋盤の機能を付与した複合加工機を用いたものです。回転する工具を3次元的に動かして、テーブルに固定してある部材を加工します。テーブルには回転機構を備えておりターニングも可能です。マシニングセンタベースは、NC旋盤ベース複合加工機に比べて、テーブルが大きく加工範囲も広いため大きいサイズの部材加工に適しています。

タレパン加工

タレパン加工とは

タレパン加工

タレパン加工とは、タレットパンチプレス機械を用いて金属板材を打ち抜く加工のことです。

タレパンはタレットパンチプレス機械 (英: turret punch press) の略称です。紙に穴を開ける事務用品のパンチと似た仕組みで、金型を用いて打ち抜き加工を行います。タレットパンチプレスを行う金型は、パンチ (上金型) とダイ (下金型) で1セットです。

タレットと呼ばれる金型ホルダーに複数の円状や角状または扇状の金型を設置して、NC制御により金属板材へ打ち抜いて成形加工を行います。

タレパン加工の使用用途

タレパン加工は薄い金属板材から製造されるすべての部品を加工できる方法です。したがって自動車、医療関係、家電製品などの部品を代表として、あらゆる分野の部品製造現場で用いられています。

タレパン加工はニブリングにより、あらゆる形状に加工できます。ニブリングとは、円状や角状などの汎用的な金型を組み合わせて、追い抜き加工をする方法です。

ニブリングにより専用の金型を使わずに複雑な形状の加工も可能で、低コストで少量多品種から大ロット生産まで対応しています。そのため、タレパン加工は、板金加工プレス加工の現場で広く用いられています。

タレパン加工の原理

タレパン加工は、金型を用いて高い圧力でプレスし、板金を打ち抜きます。パンチとダイは、上と下に付ける2種類の金型のことです。

板材をセットして、CAD/CAMで作成したNCデータに基づいてタレットに充填したパンチを回転交換しつつ、板材を動かして打ち抜きます。加工精度はタレットと板材の位置により変化します。

タレパン加工の種類

タレパン加工には、板金を各種形状にする5種類の抜き加工に分類されます。

1. 打ち抜き加工

型抜きする加工です。パンチを複数重ねて製品を板材から抜き取ります。

2. 穴抜き加工

打ち抜き加工と加工方法が同じです。ただしダイに残った方が製品になります。

3. スリット加工

完全に板から抜き取る加工ではなく、繋がったまま切り込みを入れます。

4. トリミング加工

プレス加工のような別の加工法で作成した製品の不要な部分を切り取ります。

5. 半抜き加工

完全に板を打ち抜かずに途中で止める方法です。

タレパン加工の選び方

上金型のパンチが金属板材を押し付けると、ダレが生じます。ダレとは、金属板材がパンチに切断される時に発生する現象のことです。パンチが金属板材に押し付けられた際に金属板材に引張力が発生し、亀裂が発生するまで金属板材が引張られて滑らかな表面が生じます。

パンチが押し込まれると、金属板材にめり込んで剪断面が発生します。さらに、パンチを押し続けると剪断面からワレが発生し、金属板材を分断可能です。パンチを最後まで押し切ると、金属板材は切断されます。

また、パンチを押し切る工程でバリが発生します。バリは加工不良の原因に繋がるため、後工程で除去可能です。金属を剪断加工するので、厚板の加工には不向きな加工方法です。一般的にタレパン加工が行われる金属板材の板厚は3mmまでとされています。それ以上の板厚の金属板材を用いた打ち抜き加工では、レーザーによる加工が広く用いられています。

タレパン加工のその他情報

タレパン加工機の種類

タレパン加工機はタレットの有無で、タレット式とシングル式の2種類に分類されます。ストライカーの動かし方でも3種類に分けられます。

1. タレット式
タレットがある一般的な加工機で、金型を複数設置して連続して加工できます。

2. シングル式
タレットがなく、単一の金型によって加工可能です。構造が単純で比較的小型です。

3. 機械式
動力源にフライホイールを用います。パンチの衝撃が大きいため、振動や騒音が起きます。

4. 油圧式
動力源は油圧ポンプです。加工スピードが調整でき、振動や騒音は少ないです。

5. サーボモータ式
サーボモータを使ってストライカーを駆動します。加工の量や速度を微調整可能です。

スプライン加工

スプライン加工とは

スプライン加工

スプライン加工は、溝加工の1種であり、部材に対して複数の歯形のような形状の溝をつくる加工方式です。

溝加工は、はめ込み合わせる部材同士の接合強度を高めたり、動力伝達の効率を高めるために施されます。

スプライン加工は、軸となる部材および回転する部材それぞれに対してはめて固定できるように加工を施す必要はありますが、溝を複数本形成するため他の溝加工と比較して軸と回転部材の強い結合が得られるという特徴があります。

スプライン加工の使用用途

スプライン加工は、多数の歯でトルクを伝達するので大きい動力の伝達ができる事が大きな特徴です。そのため強い動力を効率良く伝える必要がある製品に対して使用されます。工作機械製造分野、自動車製造分野、航空機製造分野、宇宙産業、農業機械製造分野など幅広い工業分野や機械に使用されています。

スプライン加工を施した部品例としては、動力を伝える部品である、ギア・クラッチ・軸・シャフト・軸受スピンドル・プーリー(動力伝達滑車)・カップリングなどの部品に使用されています。

スプライン加工の種類

スプライン加工は、大別すると角形スプライン加工とインボリュートスプライン加工の2種類があります。それぞれの特徴は、以下の通りです。

  • 角形スプライン:複数溝の側面が直線的で、平行な形状であることが特徴です。トルクを伝達させる目的の加工です。JIS規格では溝数が6、 8、 10の3種類存在します。製造や精度確保の困難さからインボリュートスプライン加工が一般的に使われています。
  • インボリュートスプライン:歯形がインボリュート曲線で形成されています。角形スプラインに比べて製造と精度確保が容易であり「トルク伝達時に自動調心される」「動力伝達能力が高い」などのメリットがあります。自動車の変速装置において、歯車を軸に沿ってスライドし変速する用途などで使われています。

    インボリュートスプラインは、歯形形状により更に細かい種類が存在します。例えば歯形を三角形の山にしたインボリュート曲線によって形成するセレーションなども存在します。部品の特性に合わせて選択します。