センタレス研削とは
センタレス研削 (英: centerless grinding) とは、工作物の送りと回転を調整して外周を研削する加工方法です。
固定されたブレード (支持刃) と回転するコントローラー (調整車) の間に工作物を配置し、回転する砥石で研削します。加工精度は外径公差がφ±0.0005、真円度が0.0005以下、面粗さが0.0001レベル以下です。
加工物毎にセンタ孔を開け、チャッキングする必要がなく自動供給装置を併用して連続生産が可能です。長尺の工作物でも加工物全体を支持刃で支持すると、 曲がりも少なく研削精度を一定かつ高精度に保てます。
センタレス研削の使用用途
センタレス研削では、工作物の研削盤への取り付けが不要 (センタ穴を開けて工作物を固定する必要がない) です。工作物の着脱の時間が必要なく、研削加工を連続して行えます。円筒状工作物の全長を保持しながら外周を研削可能で、長手方向のたわみが少なく、長尺ピンやシャフトのような工作物の外周研削加工に向いています。
研削盤に工作物を取り付けないため、取り付け時に生じる誤差が少ない (チャック穴の穴開け精度の影響等) です。研削精度が一定に保てます。しかし、コントローラーや研削砥石のセッティング精度に限界があるので、単品の絶対研削精度は円筒研削と比べると劣ります。
センタレス研削の原理
センタレス研削盤はワークの外周面が、研削砥石、調整砥石、ブレードの3点で接しており、これら3点を通る円は1つだけです。最初は形が歪んでいても造円作用によって回転とともに歪みが小さくなり、最終的に真円へ近づけます。造円作用とは、少しずつ歪みが小さくなって、真円に近づく働きのことです。
ワークの軸心が基準となる他の研削方式とは異なり、センタレス研削盤ではワークを心出ししてチャックせず、研削砥石、調整砥石、ブレードの3点の位置関係を一定に保って研削するため、ワークが真円へ近づきます。
研削砥石と調整砥石の中心を結ぶ線とワークの中心の距離を心高と呼びます。心高が高さによって真円度不良になる可能性があり、注意が必要です。具体的には、心高が高いとワークは花びら形状になります。それに対して、心高が低いとワークはおむすび形状になります。
センタレス研削の種類
センタレス研削の加工方法には、一般的に通し研削と停止研削の2種類があります。
1. 通し研削
通し研削は加工物が2つの砥石の間を通過していく加工方法です。部品の位置決めがないため、連続して加工可能です。ただし外周に段差がない部品に限ります。段差がある部品は砥石間を通過できず、通し研削はできません。
2. 停止研削
停止研削は部品を位置決めして研削する加工方法です。通し研削とは異なり、砥石間を移動させずに加工します。そのため段差がある部品でも加工可能です。したがって段差の際まで加工する場合は停止研削が適しています。
センタレス研削のその他情報
センタレス研削の工作物の送り方
センタレス研削には工作物の送り方法が2種類あります。インフィード研削とスルフィード研削です。
1. インフィード研削
インフィード研削は工作物・ブレード・コントローラーの位置関係を保ったまま、高速回転している研削砥石に切り込む研削方法です。工作物は、調整砥石とブレードで支持され、正確な回転が与えられます。研削砥石・工作支持刃・コントローラーの3点に工作物の外周が接すると工作物は研削されます。
2. スルフィード研削
スルフィード研削は工作物がブレードとコントローラーで支持され、コントローラーによって回転と推力を与えられながらブレード上を通って研削する方法です。
ブレードに対してコントローラー軸が一定の角度に傾けられているため、工作物はグリップ力のあるコントローラーによって推力を与えられながらブレード上を進みます。コントローラーの回転が早くてコントローラーの傾斜角度が大きいほど、加工物は大きい速度で研削されます。