作業支援

作業支援とは

作業支援

作業支援は、現場で対象者の補助を行う動作や遠隔からの指示による支援のことを指します。人以外にも機器やソフトウェアを用いた支援方法も存在しています。

作業支援の例としては、建築現場で経験の浅い作業者に対して熟練の指導者が、補助作業で支えることにより、技術力の向上を図ったり、労働災害を未然に防ぐことが挙げられます。

しかし、狭い環境や高所での作業の場合には、安全面が考慮されるため、作業者だけしか立ち入りができません。そのため、無線機から遠隔で指示を出し、作業を支援することがあります。

さらに、作業支援は、パソコンを使用したデスクワークでも活用されます。例として、作業者が書類の作成をしていたが「一人では解決できない問題に直面したとき」などを挙げることができます。

このような場合には、ソフトウェアを利用した書類の共同編集機能を活用します。共同編集では、作業者と共に、編集者が書類の編集を同時に行え、コメントなどにより指示を与えることが可能です。このような事例も作業支援に当たります。

作業支援の導入

作業支援は、主に工場や建築現場、デスクワークで遠隔支援として導入されています。このような取り組みは、コロナ禍も影響して国内でも急速に拡大しています。

遠隔支援について

遠隔支援とは、映像や音声、AR画像を活用した支援技術を指します。この方法は、デバイスやソフトウェアを利用しており、インターネットに接続することで複数人による操作が可能となります。

遠隔での作業支援は、業種の垣根を超えて、さまざまな場所で活用できます。

しかし、両者の地点を接続するために、ネットワーク機器やスマートフォン、タブレットといったデバイスが必要になります。これらにネットワークカメラやウェアラブルカメラ、スマートグラス、ARグラス、MRグラスを連携することで、スムーズな遠隔支援が行えます。

下記にそれぞれの特徴を記載します。

1.ネットワークカメラ

ネットワークカメラは、カメラ本体に、それぞれのIPアドレスが割り当てられており、単体でインターネットに接続できます。また、遠隔地からでも観察が可能で、拡大や縮小を行えます。

2.ウェアラブルカメラ

ウェアラブルカメラは、小型のカメラで頭や服に取り付けることが可能な機器です。リアルタイムなライブ映像として共有が行え、ヘッドフォン型の音声通信装置が内蔵されている製品も発売されています。

3.スマートグラス、ARグラス、MRグラス

機器自体は、メガネやサングラス型になっています。機能が豊富になれば、帽子型やサンバイザー型の少し大きな構造になります。ディスプレイ画面が左右のどちらかに割り振られており、現実世界にデジタル情報を重ねることが可能です。

また、音声機能や録画機能、AR技術が組み込まれています。一般的にスマートグラスは、現実空間に3DCGのオブジェクトを表示する機能を有していません。

作業支援の活用

作業支援は、医療現場で活用されています。特に昨今は、コロナ禍の影響により感染の飛沫を防止しなければなりません。

作業支援は、すでに活用されている技術ですが、2020年に第5世代移動通信システム(5G)が商用サービスとして、提供が開始され始めたことや「IoT(Internet of Things)」の発達により活用できる技術が豊富になりました。

これに伴って、医療現場でも遠隔からの対面診療が可能となり、厚生労働省からもオンライン診療の取り組みが認可されています。

5Gの提供も相まって、大容量の通信が高速伝送できるため、大学病院に対象者の患部画像やデジタル聴診器による心音、肺音を伝送することが可能になりました。

また、最新の遠隔支援として脳外科分野では、遠隔手術支援による実証実験が進められています。手術室にある複数の機器をネットワークに接続し、患者の生体情報や手術の進捗情報などを統合して1つのモニターに表示することで、執刀医と熟練医が遠隔地に滞在している場合でも対応することが可能になっています。

稼働監視

稼働監視とは

稼働監視

稼働監視は、生産設備の稼働状況を収集して異常を事前に予測する仕組みのことを指します。生産設備の運転や停止、異常などの情報を収集することで稼働監視を行うためだけでなく、工場の生産実績を把握し「工場の見える化」にも貢献しています。

これまでの異常検知の方法は、しきい値やルールを取り決めることにより人の手で行われてきました。

しかし、近年は、第5世代移動通信システム(5G)や「IoT(Internet of Things)」といった商用サービスが開始されるほど、システムが発達し、取り扱う情報量が拡大しました。

このことから解析対象も多様化し、監視する対象も複雑になり、人間の限界を超えたといっても過言ではありません。

また、データを収集しても解析するためには、高度な専門知識が必要となり人材が不足しています。

このような理由から稼働監視は、機器やソフトウェアを組み込んで1つのシステムとしてまとめることで、監視領域の拡大と高度なデータ分析を画面上から正確な判断を下せるようになりました。

稼働監視の導入

稼働監視を導入すると、データベースやアプリケーションサーバーに問題が発生した場合、稼働しているシステムに対しての被害を最小限で食い止められます。

また、システムは、休むことなく稼働しているため、想定外のアクセスなどで、リソースが不足しても稼働監視を導入していれば、未然に回避することが可能になります。

しかし、稼働監視を導入していなければ、システム管理者は、サーバー障害の発見に遅れてしまい、必要な資源をシステムに投資できなくなってしまいます。

そして、膨大な情報の精査に追われてしまい、システムの問題要因を把握することが困難になります。

さらに、サーバー障害が発生すると顧客側からシステムにアクセスできなくなり、クレームにつながる可能性が高まります。

例えば稼働監視は、設備の監視システムとして導入されています。このシステムを導入することにより、生産設備に付属している積層表示灯や警告灯の状態を工事を行うことなく確認することが可能です。

これは表示灯の上からかぶせて使用する機器で、ゲートウェイなどの中継機に接続すればIoTソリューションとして利用することが可能になります。配線や電源が不要なタイプも販売されており、集光レンズを表示灯に貼り付けるだけで稼働監視を実現できます。

稼働監視の活用

以下に、稼働監視の活用例を挙げます。

2011年の東日本大震災の影響を受けて同年の5月に「電気事業法第27条による電気の使用制限」が、政府により一時的に実施されました。これにより電気事業法第27条の対象となる大口需要家は、電気の需要対策に取り組む必要がありました。

大口需要家は、需要対策として合成需要電力デマンドの監視装置を設置し、事業所毎の節電状況および電力会社管内単位で、全事業所の合成需要電力をリアルタイムで監視するシステムを構築しました。

しかし、電気事業法第27条に基づく共同使用制限スキームでは、複数事業所が共同で使用最大電力を制限値以内に収める必要がありました。これは従来の事業所別に設置されたデマンド監視装置では対応できないため「株式会社エナリス」が開発した監視システムを「王子製紙株式会社」が導入しました。

その結果、法規制値および王子製紙グループの節電目標電力を共に上回る電力削減を達成することが可能になりました。

このように稼働監視は、時折、早急な対応が必要になることがあります。稼働監視を活用すれば、あらゆる問題への対処がより迅速になるため、稼働監視の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

稼働監視と見える化

稼働監視を仕組みとして取り入れることで、生産設備の生産数や稼働状況が見える化できるようになります。

そのため、いつでもリアルタイムで生産数の確認が可能となり、設備の稼働率や停止率が「いつ・どこで・どのように」発生したのか?といったような問題点の洗い出しと改善を早急に行えます。

また、稼働監視の導入や増設の際に、IoTセンサも同時に取り付けることで、安価で設置することが可能です。IoTセンサを併設することにより、長期的な設備のメンテナンスにもつながります。

稼働監視と見える化を活用し、設備の事前保全や保守部品の在庫を確認できるようにしましょう。

予知保全

予知保全とは

予兆保全

予知保全とは、設備の状態を継続的に監視、計測することで設備や部品の劣化を早期に検出し、故障する前に設備の部品交換や修理を行うことです。

似た用語として予防保全という保全方法もありますが、予防保全は部品が劣化していなくても定期的に交換、メンテナンスを行う方法で余分なコストが発生するのに対して、予知保全は部品の劣化を早期に検出して交換、メンテナンスを行う方法なので余分なコストが発生しにくい特徴があります。

熟練作業者の引退、コスト削減の要請などから製造業へのデジタル・トランスフォーメーション(DX)活用が盛んに行われており、異常を早期に検知する予知保全の導入が進められています。またAI、機械学習を活用したシステムの導入によって一つ一つの部品の予知保全のみならず設備全体の予知保全も進められています。

予知保全と予防保全の違い

予知保全とは設備の状態を継続的に監視、計測することで故障、異常が発生する前に設備劣化を検知して設備の部品交換や修理を行うことです。「予知保全」「状態基準保全(Condition Based Maintenance)」「状態監視保全」とも言われます。

予知保全と似て非なる用語として「予防保全」という用語もあります。予防保全は各部品の交換頻度を予め定め、故障していなくても定期的に部品交換を行うことです。一方、予知保全は部品の交換頻度は定めず、機器の状態をモニタリングして劣化を検知した際に随時メンテナンスを行います。

予知保全は機器を連続的に計測、監視するシステムが必要であり、システムの実装が費用、工数面で課題となりますが、定期的な部品交換、メンテナンスのコストは抑えられます。一方で予防保全は故障していない部品も定期的に交換するというコストは発生しますが、交換頻度を定めるだけなので現場への導入が容易であるというメリットがあります。

予知保全と機械学習、AI

予知保全は前述の通り、設備を継続的に計測、監視して部品の劣化が検知されたときに部品の交換を行う保全方法です。ここで「どのような状態を劣化と認識するか」という課題に対して最近は機械学習やAIが使われるようになりました。

機械学習やAIを用いることで過去に蓄積した大量の計測データを用いて、コンピュータに「正常な状態」と「劣化した状態」の計測結果を学習させることができます。AIに正常値と異常値を学習させることで今後測定した結果に対してもコンピュータが正常か異常かを判断することが可能となり、従来は作業者の感覚で判断していることも多かった異常の検知を再現性高く実施することが可能となりました。

予知保全の事例

熟練作業者の引退や機器・装置の複雑化、設備維持のコスト削減などの背景から、製造業へのデジタル・トランスフォーメーション(DX)の活用が増えており、様々な業界で予防保全から予知保全への切り替えも進められています。ここでは具体的な予知保全の事例について紹介します。

振動センサーによる予知保全

予知保全の方法の一つとして、工場設備に振動センサーを取り付けて計測を行うというものがあります。ベアリングやモーター、ポンプなど各種装置にセンサーを取り付けることで異常振動を検知、装置や部品の劣化を検知することができます。

また化学工場や引火物を取り扱う工場でも使用することができる防爆対応の振動センサーがあるほか、食品や飲料の製造ラインに接続できる振動センサーも販売されています。

機械設備の予知保全

一つ一つの設備について予知保全するのではなく、生産設備全体に対して予知保全のシステムを導入して各設備の計測データを一元管理、見える化することで解析しやすい形式にして予知保全を行うことも進められています。システムによっては過去の計測データや故障、異常データを学習させることも可能で、従来は熟練作業者の勘と経験でしか見つけられなかった異常も検知できるようになっています。

画像解析

画像解析とは

画像解析

画像解析とは、コンピューターが画像内の属性を認識する能力です。つまり取得した画像からデジタルなデータの特徴を取り出して、人間の主観的な判断や人間の判断基準をもとにアルゴリズムを作成し、自動的に判断することを指します。

例えば画像解析の技術は、わたしたちの生活においてスマートフォンの写真アプリで普及しています。写真アプリで使われる技術は、顔の認識機能を利用して写真に映っている対象を分類することで、類似した対象を一覧として表示することに使用されています。

私たちは、ソーシャルメディアも利用していますが、ソーシャルメディアでは、テキスト分析が基本機能として利用されています。また、ソーシャルメディアにおいて画像解析の重要性は高まっています。

なぜなら、ソーシャルメディアの分析という観点において、画像解析は、テキスト分析の機能をビジュアルコンテンツに適用した延長線上のものとして考えられているからです。

1960年代後半のAIの出現から機械学習をはじめとする人工知能が発達してきました。現代では、この技術を利用して画像と付与情報から情報を抽出することにより自動的に判断が行えるようになっています。

画像解析の導入

画像解析の導入例を挙げると、染色体異常試験法の開発が挙げられます。

染色体異常試験法とは、発がんの初期過程を予測するために培養細胞を用いて化学物質による染色体の構造異常や数的異常の誘発性を調べる試験方法です。

自然水や飲料水のなかに含まれる変異原物質や発がん物質を検出するためには、微生物を用いたスクリーニングテストが行われることが多いです。しかし、人に対する危険性を定量的に評価するためには、哺乳動物を試験対象とすることが望まれています。

よって、簡単な試験方法として哺乳動物の培養細胞を活用することで、安全性も考慮することが可能になります。

さらに、哺乳動物の培養細胞を用いた染色体異常試験を取り入れていく意義が大きいため、染色体増を画像解析することによって異常の検出と試験結果への客観性をもたせる研究に利用されています。

一方で、画像解析の技術は、高度な発達を遂げていますが、使いこなすための解析手法が追いついていません。

そのため、この研究は、画像解析の手法を押し上げるためにも極めて重要になります。

この研究は「衛生工学研究論文集、第26巻、1990(Proc. of Environ. & Sani. Eng. Research,Vol.26,1990)」に記載されています。

画像解析のメリットとデメリット

画像解析のメリットとしては、生産性の向上や労働環境の改善、人件費の削減につながることが挙げられます。例えば画像解析を検品作業に組み込んだ場合には、人の目を使用せずに部品などの不良を判別できます。

また、画像解析に加えて仕分け機械やロボットを連動させることにより、自動で検品対象を振り分けることも可能となります。

そのため、長時間の作業や危険が伴う環境でも検品作業が可能になり、職場の安全にもつながります。

さらに、ヒューマンエラーによる品質のブレを減少し、人の目で見逃した品質不良を後々にダブルチェックするなどの無駄な労力を削減できるため、別の業務を行う余裕が生まれ、人件費の削減にもつながります。

一方で、画像解析のデメリットには、画像解析を行うための設備費用が生じる点やソフトウェア・アプリケーションの少なさが挙げられます。

画像解析を行うには、カメラやセンサー、モニターなどが必要となり、初期費用が高くなります。また、画像解析は、まだまだ発展途上の技術のため、業務に適したソフトウェアやアプリケーションを見つけることが難しいかもしれません。

ただし、今後も発展していくと考えられる分野のため、ニーズに適した商品が販売されているか注視することも必要になります。

画像解析の手法と種類について

画像解析の代表的な手法には、画像分類と物体検出、画像セグメンテーションの3つの区分があります。

  • 画像分類(Image Classification)

    画像分類とは、対象の画像のなかに何があるのかを区別し、カテゴリーで分ける方法を指します。画像や写真には、異なる情報が保持されており、これらの情報をラスター画像から特徴を抽出することで画像を分類します。例えば1枚の画像のなかにある空間をそれぞれイヌ・ネコ・ヒト・空・木などのように機械へ覚えさせることで認識させます。

  • 物体検出(Object Detection)

    物体検出は、画像分類と同様の動作により、対象物が何なのかを検出する方法です。しかし、物体検出は、これに加えて物体の領域の位置を絞り込み、認識している対象以外をはじく動作を行います。また、画像分類は、画像のなかの1つを対象とするのに対して、物体検出では、複数の対象をとらえることができます。

  • 画像セグメンテーション(Image segmentation)

    画像セグメンテーションとは、画像の領域が何なのかを判別する方法です。この方法は、一般的に複数の技術を組み合わせて動作させています。例えば判別した領域の信頼性を確実なものとするためには、アノテーションと呼ばれるタグ付け作業が必要になります。アノテーションは、特定の情報にメタデータを付与することで、対象に情報タグを付けて判別する方法です。

また、画像解析の技術には、以下の2種類があります。

  • 顔認識

    顔認識は、コンピューターが、その人の顔の特徴を抽出し、識別するための技術です。データベース上に登録されている顔の情報とセンサーで検出している顔の情報を比較する場合は、顔認証という技術が使われます。近年では、ヒトの顔だけではなく、動物の顔も検出できるようになっています。また、顔の表情を読み取る技術は、感情認識と呼び、研究が進められています。

  • 文字認識

    文字認識は、紙を媒体とした文書に記載されている文字を読み取り判別する技術です。一般的には、スキャナーを使用して文字を読み取ったり、カメラで撮影して文字を読み取ったりすることで文字データとして取り込んでいます。取り込まれた文字データは、テキストデータに変換され、翻訳機能や文字の差分チェックなどに活用されます。

AIと画像解析の関係

AIは、人工知能と呼ばれており、人間の脳の仕組みを模範し、コンピューターが人間のような知的活動を行う仕組みです。こうした仕組みと画像解析を組み合わせることで、より確実性をもたせることができます。

AIを活用した画像解析は、ニーズに合わせてさまざまな種類が普及を始めています。このトピックでは、一般的な画像認識の方法を解説し、どのように活用されているのかを解説します。

まず、AIを使用するためには、画像のデータを準備し、検出したい対象が何なのかを覚えさせなければなりません。なぜなら、AIによる画像解析は、対象の判別ができなければ、そこに何かがあるということしか判断できないからです。

そして、対象の特徴を学習させる画像の枚数は、多いに越したことはありませんが、画像の枚数が少ない場合には、画像を拡大・縮小・回転させることで画像の枚数を増やすことが可能です。

また、学習する特徴は、複数指定することでより正確性が増します。例えば耳だけを特徴として学習した場合は、耳がある対象を検出しますが、それが何の耳なのかの判断ができません。

その後、畳み込みと呼ばれる方法で検出率を判断します。畳み込みは、画像をいくつかの四角形で区分し、その枠内の一致率が特徴と比べてどれだけの正確性を有しているかを数値で判断します。

特徴を学習した後は、プーリングと呼ばれる手法で、畳み込みのなかから1番数値が高いものを選択し、特徴を要約します。

最後に特徴の検出率と一致率を判断し、性能を評価します。ここで良い結果が得られない場合には、上記で解説した方法をアップデートしていきます。

画像解析の活用

画像解析は、例としてガボールウェーブレット変換を用いたコンクリートのひび割れに対する画像解析技術を開発する手段として活用されています。

ガボールウェーブレット変換とは、データを解析するための数学的なツールです。

コンクリート構造物のひび割れ調査は、目視観察による点検調査で行われています。

しかし、この調査方法では、点検者によって評価のばらつきが生じてしまい、見落としによる客観性や定量性に影響を及ぼします。そのため、点検調査の効率化や自動化、デジタル性が必要とされ、デジタル画像処理による研究が行われました。

この画像処理における手法を確立するためには、精度の高いひび割れ検出方法や処理作業が必要不可欠になります。

したがって、これらを実現するために既存の二次元ガボールウェーブレット変換を活用した画像解析手法に改良を加えることで、実構造物のひび割れに対して有効性が確認されました。

この研究は「土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造), Vol.68, No.3,178-194,2012.178」に記載されています。

また、画像解析は、このほかにも粒子解析にも利用されており、セラミックや樹脂、金属といった材料の「粒子の数」「粒子の直径」「周囲長の分布」「粒子の破損」の測定に活用されています。

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絶対に触らないでください(日本会社ニュース)

Metoreeで加工サービスの紹介を開始しました

エンジニアや研究者の方からのご要望があったことから、メトリーで試験サービスを提供する企業・業者の紹介を開始しました。

今回新規で紹介する加工サービスは合計39(2021年12月現在)で、下記のようなサービスをご紹介しています。

加工サービスの一覧ページも合わせて作成致しました。

今後も引き続き紹介する加工サービスを増やして参ります。

メトリーではエンジニアや研究者の方が研究・開発に集中できるような環境をつくるべく今後もサービスの充実を加速させていきます。

酪酸

酪酸とは

酪酸の基本情報

図1. 酪酸の基本情報

酪酸とは、炭素数4の脂肪族カルボン酸の1つで、油状の無色の液体です。

酪酸はバターの腐敗臭のような不快な匂いがします。極微量でも哺乳類は、酪酸の臭いを探知することが可能です。酪酸にはイソ酪酸と呼ばれる構造異性体が存在するため、酪酸は正酪酸とも呼ばれます。

酪酸はグリセリドとして動物の乳脂に含まれている他、糖や乳酸の醗酵により生成し、エステルとして植物精油中に含まれています。また、工業的にはブチルアルデヒドやブチルアルコールの酸化によって生成可能です。

酪酸の使用用途

酪酸は、ワニスの製造原料として利用されています。その他にも、4-ヘプタノンのような有機合成原料や乳化剤として使用可能です。さらに、酪酸はあらゆるバイオ燃料の前駆体としても使用できる他、酪酸がエステル化することで、合成香料の製造に使われるといった用途があります。

着香剤などの食品添加物に使用されるなど、食品加工や調味料の製造にも利用されています。また、酪酸には栄養価を高めたり、感染症や病気を予防したりする効果があるため、動物飼料に利用可能です。がんや過敏性腸症候群向けの医薬品製造にも、酪酸が使用されています。

酪酸の性質

酪酸の密度は0.96g/cm3で、分子量は88.11です。常圧だと、融点は−7.9℃、沸点は164℃です。酪酸はカルボキシ基を有し、水とよく混和します。

食塩水には溶けにくいため、多量の食塩を酪酸水溶液へ加えると分離することが可能です。酪酸の水溶液は酸性を示します。常温ではpKa = 4.82の弱酸で、類似化合物である酢酸のpKa = 4.76と近いです。酪酸はエタノールやエーテルにも溶けやすいです。

酪酸は直鎖状のカルボン酸で、分子式はC4H8O2、示性式はCH3(CH2)2COOHです。ブタン酸やn-ブタン酸などの別名で呼ばれることもあります。

酪酸のその他情報

1. 天然における酪酸

酪酸はバターから得られたため、ラテン語でバター「butyrum」が語源となり、酪酸「butyric acid」と呼ばれるようになりました。脂肪酸の分解の過程で生合成されるため、天然に広く分布しています。

体外に分泌される皮脂にも含まれており、酪酸は蒸れた足が発する悪臭の原因物質の1つです。乳汁を原料とするチーズやバターをはじめ、植物にも含まれています。銀杏の異臭の原因です。

2. エネルギー源としての酪酸

酪酸は微生物により作られる場合もあり、草食性動物においては重要なエネルギー源になっています。具体的には、哺乳類の反芻胃や大腸で食物に含まれるセルロースや、ヘミセルロースを細菌が嫌気醗酵して酪酸のような短鎖脂肪酸を生成可能です。

吸収された酪酸は、β酸化によってアセチルCoAに分解されて、クエン酸回路によってエネルギー源として使用されます。大腸内で生成した酪酸は、優先的に結腸の細胞においてエネルギー源として利用可能です。酪酸は腸管増殖因子として作用するため抗炎症作用があり、傷害腸管の修復に関与しています。

3. 酪酸の構造異性体

酪酸の構造異性体

図2. 酪酸の構造異性体

酪酸の構造異性体には、イソ酪酸があります。IUPAC命名法で2-メチルプロピオン酸とも呼ばれており、イソ酪酸の示性式は(CH3)2CHCOOHです。

天然には遊離した状態で存在しています。マメ科やセリ科の植物中には、他の分子とエステル化した形で存在する場合もあります。

4. 酪酸の関連化合物

飽和脂肪酸の構造

図3. 飽和脂肪酸の構造

酪酸と同じ飽和脂肪酸の具体例として、プロピオン酸吉草酸が挙げられます。プロピオン酸はプロパン酸とも呼ばれ、示性式はCH3CH2COOHです。

吉草酸はペンタン酸とも呼ばれ、示性式はCH3(CH2)3COOHです。すなわち、プロピオン酸は炭素数3の飽和脂肪酸で、吉草酸は炭素数5の飽和脂肪酸と言えます。

酸化銀

酸化銀とは

酸化銀とは、酸素と銀の化合物です。

酸化銀には、酸化銀 (I) と一酸化銀が存在しますが、通常は酸化銀 (I) のことを指します。酸化銀 (I) は、硝酸銀の濃水溶液に水酸化ナトリウムの希水溶液を加えることで得られる、暗褐色の粉末です。

それに対して一酸化銀は、灰黒色の粉末です。銀とオゾン (O3) との反応のほか、硝酸銀水溶液とペルオキソ二硫酸塩である(NH4)2S2O8との反応によって生成されます。

酸化銀の使用用途

1.酸化銀 (I)

酸化銀 (I) は、触媒や飲料水の殺菌、着色ガラスや導電性ガラスの製造、ガラスの研磨、有機合成のヒドロキシ基導入剤、脱ハロゲン化剤、医療などの用途として、幅広く用いられています。

また、酸化銀 (I) には、非常に高い殺菌作用や消臭効果等があることから、化粧品に配合することも可能です。

2. 一酸化銀

一酸化銀は、酸化剤や分析試薬等の用途に用いられます。さらに、負極に亜鉛、正極に酸化銀、電解液にアルカリ水溶液を使用した小型一次電池である酸化銀-亜鉛アルカリ電池にも利用されています。

酸化銀の性質

酸化銀 (I) は、熱や光に対して不安定です。酸化銀 (I) を太陽光にさらしたり、熱したりすることで、銀と酸素に分解します。およそ160℃で分解し始めて、250~300℃で急激に分解し、酸素を放出して金属銀になります。

完全に分解して、単体の銀になるのは300~340℃です。また、酸化銀 (I) はエタノールなどに不溶です。一酸化銀は反磁性を示します。100℃以上で、酸素と銀に分解されます。

一酸化銀は最も強い酸化剤の1つです。一酸化銀は冷水には溶けませんが、アンモニア水には溶けます。

酸化銀の構造

1. 酸化銀 (I)

酸化銀 (I) の化学式はAg2Oで、式量は231.74、密度は7.14g/cm3です。結晶構造は立方晶系を取っており、酸化銅(I) と同一の結晶構造です。

銀原子が面心立方に、酸素原子が体心立方に配列しています。面心立方と体心立方の2種の格子が互いに入り組むことで、酸化銀 (I) の格子を作っています。4個の銀原子によって酸素原子が正四面体形に取り囲まれており、銀-酸素原子間距離 (Ag―O) は2.043Åで、銀-銀原子間距離 (Ag―Ag) は3.336Åです。

2. 一酸化銀

一酸化銀の化学式はAgOと書かれますが、銀 (II) の酸化物ではありません。X線回折の結果によると、AgIAgIIIO2のような銀 (I) と銀 (III) の混合酸化物であると考えられています。

一酸化銀の式量は123.9で、密度は7.48g/cm3です。一酸化銀は過酸化銀とも呼ばれますが、過酸化物イオン (O22-) を持っていません。

酸化銀のその他情報

1. 酸化銀 (I) の反応

酸化銀 (I) は水にはわずかに溶け、Ag(OH2)2という加水分解物が生じます。Ag2Oの懸濁液は、HO2CCF3、HF、HCl、HBr、HIなどの酸と反応します。また、酸化銀 (I) はアルカリ塩化物水溶液との反応によって、塩化銀 (I) やアルカリ水酸化物を得ることが可能です。さらに酸化銀 (I) は、湿った状態で二酸化炭素を吸収します。

酸化銀 (I) はアンモニア (NH3) やチオ硫酸イオン (S2O32-) を含む水溶液に溶けます。ジアンミン銀 (I) イオン ([Ag(NH3)2]+) とビス(チオスルファト)銀(I)酸イオン ([Ag(S2O3)2]3-) のような錯イオンをそれぞれ形成して溶解するためです。

2. 酸化銀 (I) の応用

酸化銀 (I) は有機化学において、温和な酸化剤として用いられています。具体的には、アルデヒドの酸化によるカルボン酸の合成などに利用可能です。この酸化反応では、アルカリ水酸化物と硝酸銀によって、よくイン・サイチュ (英: in situ) で調製されています。

一酸化銀と同じく、酸化銀 (I) は酸化銀電池にも使用されます。それ以外にも、微細な電子回路を製造するために、導電性材料として用いられる銀粉の代わりに、酸化銀 (I) を使うことも可能です。酸化銀(I)は粉末化が容易で、加熱によって導電性の銀に変換できます。

酢酸ブチル

酢酸ブチルとは

酢酸ブチルとは、分子式C6H12O2で表される酢酸とブタノールのエステルです。

酢酸ブチルは、別名ブチルアセテートとも呼ばれ炭化水素系エステルに分類されます。分子量は116.16g/molで、化学物質個々に付与されるCAS番号は123-86-4です。

酢酸ブチルは、常温常圧では無色透明の液体であり、果実臭と呼ばれる甘い独特の匂いをもつことが特徴です。また、エタノールに極めて溶けやすく、水には溶けにくいという性質をもっています。

酢酸ブチルの原料であるブタノールには、4種類の構造異性体が存在します。そのため、酢酸ブチルにも同様に、酢酸n-ブチル・酢酸イソブチル・酢酸sec-ブチル・酢酸tert-ブチルといった、4種の構造異性体が存在します。

 

酢酸ブチルの使用用途

酢酸ブチルは、各種溶剤として幅広く使用されています。具体的な溶剤の用途としては、塗料やインキ用をはじめ、各種樹脂、化粧品、医薬品、接着剤、香料、レザー、エナメル、ショウ脳、ゴムなどです。

酢酸ブチルは塗料やインキの溶媒としてはやや沸点が高く、「重い」溶媒です。そのため、単独では常温常圧で乾燥が進みにくく、他の沸点が低い「軽い」溶媒に加えて、揮発性を調整する目的で使用されることが多いです。分かりやすい例としては、爪用のマニキュアの溶媒の用途に酢酸エチルに加えて使用されます。

また、酢酸ブチルは、硝酸セルロースやエチルセルロース、ポリスチレン、メチルメタクリレート樹脂等のフィルムをコーティングしている樹脂面に対して、優れた流動性とブラシ耐性があることから、ラッカーの溶剤としても有用です。食品関係では、その香気を活かし、果実エッセンスや着香剤、香辛料等の原料として、キャンディ、アイスクリーム、チーズなどに果物の香りを付けるため、酢酸ブチルが使用されています。

酢酸ブチルの性質

酢酸ブチルの融点は-74℃、沸点は124℃です。沸点は高い温度ですが、20℃での蒸気圧が1.3 kPaと比較的高いために常温でも揮発が進むとともに香気を発します。

酢酸ブチルの4種の構造異性体は、それぞれに性質が異なります。ですので、例えば酢酸n-ブチルと酢酸イソブチルはリンゴやバナナのような香り、酢酸tert-ブチルはブルーベリーのような香りです。それぞれ異なる匂いをもっており、これらは分けて使用されます。

酢酸ブチルは、自然界において、ブドウやイチゴ、リンゴなど果物の揮発性香気成分として存在しています。

酢酸ブチルのその他情報

1. 酢酸ブチルの安全性

酢酸ブチルの人体や環境への安全性は比較的高く、急性毒性はGHS区分の区分外です。ただし、軽度の目刺激性と気道刺激性があります。また、高濃度の酢酸ブチルを吸引すると、頭痛や吐き気、眩暈、呼吸困難、意識喪失といった症状が出ることがあるため、取り扱いには注意が必要です。

酢酸ブチルは常温で揮発性がある有機物なので引火性が高く、火災や爆発を引き起こす可能性があります。消防法では、可燃性液体として、危険物第4類、第二石油類非水溶性液体に指定されています。

よって指定数量以上の保管や使用は、有資格者のもと定められた設備で行わなければいけません。労働安全衛生法においても、その容器に名称を表記し、使用者にはその危険性を通知すべきことが定められています。

2. 酢酸ブチルの製造法

酢酸ブチルは、酢酸とブタノールを原料とし、エステル化反応によって製造されます。具体的には、酢酸とn-ブタノールを硫酸等の酸触媒の存在下で反応させることで脱水縮合によりエステル化する方法です。

工業的には上記の方法で得られた粗酢酸ブチルを脱低沸物蒸留塔を用いて低沸物を除去し、その残留液である缶出液を脱高沸物蒸留塔によって蒸発させ、その塔頂から気体の酢酸ブチルを留出物として得る方法などが用いられます。

食品や電子機器製造用溶媒として高純度が要求される用途では、蒸留工程を工夫し、脱低沸物蒸留塔からの抜き出し位置を変え、高沸物不純物をあらかじめある程度除去する方法が提案されています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/123-86-4.html

酢酸エチル

酢酸エチルとは

酢酸エチルの基本情報

図1. 酢酸エチルの基本情報

酢酸エチルとは、エステルの1種で、酢酸エタノールがエステル結合した無色透明の液体です。

自然界ではパイナップルなどの果実に含まれ、その独特の香りの成分となっています。主に有機溶媒として使われており、日本国内での酢酸エチルの市場規模は22〜26万トンと見積もられています。

毒物及び劇物取締法で医薬用外劇物に指定されており、高濃度のものは毒性を持っているため、取り扱いには注意が必要です。

酢酸エチルの使用用途

酢酸エチルは、ほとんどすべての有機溶媒に溶け、速乾性が高いため、塗料、印刷インキ、接着剤、医薬品原料などの溶剤として広く使用可能です。

特に、印刷インキ、接着剤では、短時間で加工ができることが重要であり、速乾性の高い酢酸エチルが多用されます。化粧品業界でも、速乾性の高さが求められるマニキュアや除光液などの溶剤として、酢酸エチルを用いることが可能です。

また、食品衛生法で食品添加物として指定されています。独特の果実香を持ち、揮発性も高いことから、パイナップル、イチゴ、バナナなどの香料として清涼飲料水、菓子などの食品にも使われています。

酢酸エチルの性質

酢酸エチルは、エタノール、ベンゼン、エーテルなど、ほとんどの有機溶媒に可溶です。極性が高いため、最大3%重量の水が酢酸エチルに溶けます。25℃では水に対して10体積%ほど溶けて、温度が低いほど溶ける量が増えます。

融点は−83.6℃で、沸点は77.1℃であり、引火点は−4°Cです。なお、酢酸エチルはエタノールと酢酸が脱水縮合したエステルです。化学式はC4H8O2で、分子量は88.105g/molです。密度は0.897g/cm3で、示性式ではCH3COOCH2CH3と表します。

酢酸エチルのその他情報

1. 酢酸エチルの合成法

フィッシャーエステル合成反応 (英: Fischer esterification) によって、酢酸エチルを得られます。酸触媒に硫酸を使用して、エタノールと酢酸を加熱して脱水縮合すると、酢酸エチルが生じます。酢酸エチルは低沸点であり、反応中に生成した酢酸エチルを、蒸留で連続して取り出すことで、効率的に合成可能です。

ティシチェンコ反応 (英: Tishchenko reaction) によって、塩基触媒を用いてアセトアルデヒドを酢酸エチルに転換できます。形式上は、アセトアルデヒドが不均化して、酢酸とエタノールが反応したように見えます。エタノールに課税している日本などの国では、エタノールの原料コストが高いため、主流のプロセスです。

それ以外にも、シリカ担持ヘテロポリ酸触媒を使用して、酢酸とエチレンから合成できます。エチレンの代わりとして、エタノールを使うことも可能です。

2. 酢酸エチルの生成

酢酸エチルの反応

図2. 酢酸エチルの生成

合成法としての価値はありませんが、さまざまな反応によって酢酸エチルが生じることがあります。例えば、エタノールが、無水酢酸、ケテン、塩化アセチルと反応すると、酢酸エチルが生成します。

3. 酢酸エチルの反応

酢酸エチルの生成

図3. 酢酸エチルの反応

水分を含んだ酢酸エチルは、徐々に加水分解します。酸が存在していると加水分解は加速し、アルカリ水溶液中ではけん化 (英: saponification) によって加水分解します。

酸触媒を用いた場合には、平衡反応で可逆です。その一方で、アルカリ触媒を使用した場合には、加水分解のみが進みます。

4. 溶媒としての酢酸エチル

有機化学実験で酢酸エチルは、アミンやヒドリド還元試薬のような求核試剤と、エステル交換反応を起こす場合があります。したがって、酢酸エチルの利用は限定されます。

その一方で、抽出溶媒やクロマトグラフィーの展開溶媒として利用可能です。とくにクロマトグラフィーでは、低極性溶媒のヘキサンとの混合溶媒が頻繁に使用されています。

水酸化ナトリウム

水酸化ナトリウムとは

水酸化ナトリウムは、化学式がNaOHで表されるナトリウムの水酸化物で、常温では無臭で白色の単斜晶系結晶です。

水酸化ナトリウムは工業分野において、強アルカリ性の原料として使用されることが多いのが特徴です。反応に直接関わらなくても、反応系のpHをアルカリ性にするためなどに添加されます。

また、毒劇物取締法における劇物に該当するため、取扱う際は注意を要します。

水酸化ナトリウムの使用用途

水酸化ナトリウムの具体的な使用用途は、以下のとおりです。

1. 洗剤

水酸化ナトリウムは、けん化作用をもつ主原料として固形石鹸に用いられる他に、台所用の油落とし用の洗剤等にも使用されています。

2. 製紙、繊維産業

製紙産業においては、木材や植物繊維を処理してパルプを作る際や、紙の表面を滑らかにするために使用されたり、繊維産業では、綿や麻などの天然繊維を処理する際に使用され、柔軟性や光沢を向上させる目的で使用されます。

3. 工業用途

多くの化学製品用原料として使用されます。例えば、エステルの加水分解、アルカリ性酸化反応、芳香族化合物の水酸基化反応などが挙げられます。電気電子産業用途として、シリコンウェハのエッチングや表面改質に用いられます。

その他、焼き菓子をはじめとする食品などに食品添加剤として用いられたり、染料や農薬、医薬等の製造にも利用されています。また、分析試薬や乾燥剤、二酸化炭素吸収剤としても用いられています。

水酸化ナトリウムの性質

水酸化ナトリウムは別名苛性ソーダとも呼ばれ、化学式がNaOHの分子量が40.00の、常温で無色無臭の固体です。試薬としては白色の球粒状やフレーク状であるものが多いですが、工業用原料としてはフレーク状の他に水溶液などの形態が主流となっています。

水に溶けやすく、溶ける際には多量の熱を発生します。また、空気中の水分を吸収して水溶液化する潮解性を持っています。水酸化ナトリウムは、エタノールグリセリンにもよく溶けますが、エーテルやアセトンには溶けません。

水酸化ナトリウムは、非常に強いアルカリ性を持つため、皮膚に付着すると皮膚表面のタンパク質が溶かされます。また、水酸化ナトリウムは毒物及び劇物取締法において劇物に指定されており、取扱いには注意が必要です。水には非常によく溶け、溶液はアルカリ性を示し、電気伝導度が高いです。

また、水への溶解や酸と反応する際に急激に熱を発生します。この反応は非常に激しい反応であり、取扱いには注意が必要です。さらに大気中の水分を吸収し、自ら水溶液に変化する潮解性をもつため、乾燥した密閉容器に保管しなければなりません。

水酸化ナトリウムのその他情報

水酸化ナトリウムの製造方法

水酸化ナトリウムは工業的には、食塩水の電気分解で製造されます。それ以外の製造方法についても、以下で合わせて説明します。

1. 食塩水の電気分解
食塩水の電気分解法は、電気分解とイオン交換膜法を用いた最も一般的な水酸化ナトリウムの製造方法です。この方法では、食塩水 (NaCl) を電気分解して、水酸化ナトリウム (NaOH) と塩素 (Cl2) を生成します。

2. 食塩の水酸化カルシウム処理
Ca(OH)2 + 2NaCl → 2NaOH + CaCl2
この方法では、水酸化カルシウム塩化ナトリウムの反応によって、水酸化ナトリウムを製造します。

3. 水酸化ナトリウムのアンモニア処理
2NH3 + 2NaCl + H2O → 2NaOH + 2NH4Cl
この方法では、アンモニア (NH3) と食塩水 (NaC) を反応させ、水酸化ナトリウムを生成します。

4. 水酸化カルシウム (消石灰) と炭酸ナトリウムの複分解反応
Ca(OH)2 + Na2CO3 → 2NaOH + CaCO3
水酸化カルシウムと炭酸ナトリウムの水溶液を混合することでも水酸化ナトリウムを得られます。

上記の方法で水酸化ナトリウムを製造する場合、生成物中に純度を確保するために、後段の製造工程や精製工程が必要なことがあります。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1310-73-2.html