水酸化ナトリウムとは
水酸化ナトリウムは、化学式がNaOHで表されるナトリウムの水酸化物で、常温では無臭で白色の単斜晶系結晶です。
水酸化ナトリウムは工業分野において、強アルカリ性の原料として使用されることが多いのが特徴です。反応に直接関わらなくても、反応系のpHをアルカリ性にするためなどに添加されます。
また、毒劇物取締法における劇物に該当するため、取扱う際は注意を要します。
水酸化ナトリウムの使用用途
水酸化ナトリウムの具体的な使用用途は、以下のとおりです。
1. 洗剤
水酸化ナトリウムは、けん化作用をもつ主原料として固形石鹸に用いられる他に、台所用の油落とし用の洗剤等にも使用されています。
2. 製紙、繊維産業
製紙産業においては、木材や植物繊維を処理してパルプを作る際や、紙の表面を滑らかにするために使用されたり、繊維産業では、綿や麻などの天然繊維を処理する際に使用され、柔軟性や光沢を向上させる目的で使用されます。
3. 工業用途
多くの化学製品用原料として使用されます。例えば、エステルの加水分解、アルカリ性酸化反応、芳香族化合物の水酸基化反応などが挙げられます。電気電子産業用途として、シリコンウェハのエッチングや表面改質に用いられます。
その他、焼き菓子をはじめとする食品などに食品添加剤として用いられたり、染料や農薬、医薬等の製造にも利用されています。また、分析試薬や乾燥剤、二酸化炭素吸収剤としても用いられています。
水酸化ナトリウムの性質
水酸化ナトリウムは別名苛性ソーダとも呼ばれ、化学式がNaOHの分子量が40.00の、常温で無色無臭の固体です。試薬としては白色の球粒状やフレーク状であるものが多いですが、工業用原料としてはフレーク状の他に水溶液などの形態が主流となっています。
水に溶けやすく、溶ける際には多量の熱を発生します。また、空気中の水分を吸収して水溶液化する潮解性を持っています。水酸化ナトリウムは、エタノールやグリセリンにもよく溶けますが、エーテルやアセトンには溶けません。
水酸化ナトリウムは、非常に強いアルカリ性を持つため、皮膚に付着すると皮膚表面のタンパク質が溶かされます。また、水酸化ナトリウムは毒物及び劇物取締法において劇物に指定されており、取扱いには注意が必要です。水には非常によく溶け、溶液はアルカリ性を示し、電気伝導度が高いです。
また、水への溶解や酸と反応する際に急激に熱を発生します。この反応は非常に激しい反応であり、取扱いには注意が必要です。さらに大気中の水分を吸収し、自ら水溶液に変化する潮解性をもつため、乾燥した密閉容器に保管しなければなりません。
水酸化ナトリウムのその他情報
水酸化ナトリウムの製造方法
水酸化ナトリウムは工業的には、食塩水の電気分解で製造されます。それ以外の製造方法についても、以下で合わせて説明します。
1. 食塩水の電気分解
食塩水の電気分解法は、電気分解とイオン交換膜法を用いた最も一般的な水酸化ナトリウムの製造方法です。この方法では、食塩水 (NaCl) を電気分解して、水酸化ナトリウム (NaOH) と塩素 (Cl2) を生成します。
2. 食塩の水酸化カルシウム処理
Ca(OH)2 + 2NaCl → 2NaOH + CaCl2
この方法では、水酸化カルシウムと塩化ナトリウムの反応によって、水酸化ナトリウムを製造します。
3. 水酸化ナトリウムのアンモニア処理
2NH3 + 2NaCl + H2O → 2NaOH + 2NH4Cl
この方法では、アンモニア (NH3) と食塩水 (NaC) を反応させ、水酸化ナトリウムを生成します。
4. 水酸化カルシウム (消石灰) と炭酸ナトリウムの複分解反応
Ca(OH)2 + Na2CO3 → 2NaOH + CaCO3
水酸化カルシウムと炭酸ナトリウムの水溶液を混合することでも水酸化ナトリウムを得られます。
上記の方法で水酸化ナトリウムを製造する場合、生成物中に純度を確保するために、後段の製造工程や精製工程が必要なことがあります。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1310-73-2.html