半導体洗浄装置

半導体洗浄装置とは

半導体洗浄装置とは、半導体製造工程の1つである洗浄工程に用いられる装置の総称です。

洗浄工程は半導体製造工程全体の30〜40%を占める重要な工程です。高温処理工程や薄膜形成工程の前に十分に汚れを除去する前処理としての洗浄と、酸化膜・薄膜を削るエッチング工程の後にレジスト残滓物などを除去する後工程としての洗浄があります。

半導体洗浄装置は、薬液や純水を使用するウェット洗浄装置と薬液を使用しないドライ洗浄装置に大別されます。

半導体洗浄装置の使用用途

半導体洗浄装置は、半導体製造工場の各種工程で使用されます。シリコンウェハ上に半導体素子を形成する前工程でも素子を切り離し、パッケージ化して最終製品を製造する後工程でも使われます。

特に前工程では、ウェハ表面の汚染物質や付着物が半導体の品質や歩留まりに与える影響が非常に大きいです。そのため、ウェハ上に酸化膜・薄膜を形成する工程の前、成膜工程の後、エッチング工程の後など、非常に多くの段階で半導体洗浄装置が使われています。

半導体洗浄装置の原理

半導体製造の前工程では、半導体洗浄装置を使ってウェハ表面についた汚れを徹底的に除去する必要があります。具体的には高温処理でウェハ表面に酸化膜を形成する酸化工程の前、ウェハを薄膜材料のガスにさらして成膜するCVD工程の前後、放電によってイオン化した薄膜材料をウェハ表面に当てて成膜するスパッタリング工程の前後などです。

洗浄が十分でないと不良品の発生率が上がり、品質やコストに悪影響を与えます。薬剤を使用するウェット洗浄装置では一度に複数種類の薬剤を使えないため、1種類の薬液を用いてウェハを洗浄した後に純水で洗浄してから次の薬液槽にウェハを浸します。また、洗浄が終わった後にはウェハを乾燥させるプロセスも必要です。

半導体洗浄装置の種類

洗浄方式によって、半導体洗浄装置はバッチ式と枚葉式の2種類に分類できます。洗浄の処理方法ではドライ式とウェット式に分けられます。

1. 洗浄方法による分類

バッチ式
複数枚のウェハを同時に処理槽に浸して洗浄します。薬液の種類によって多槽式と単槽式に分類可能です。多槽式では処理槽を準備して順番に浸漬し、単槽式では1つの槽だけで薬液を入れ替えて洗浄します。

枚葉式
ウェハを1枚ずつ洗浄します。ウェハを回転させて処理液をノズルで吹き付けて洗浄します。

2. 洗浄の処理方法による分類

ウェット式
液体の薬液を洗浄に用いる方式です。

ドライ式
オゾンやアルゴンエアロゾルのような非液体で洗浄します。

半導体洗浄装置の構造

1. 多槽バッチ式

順番に浸漬し、洗浄とリンスを繰り返して処理可能です。一度に多量のウェハを処理できますが、装置が大きく、薬液の使用量が増えます。

2. 単槽バッチ式

処理槽を1個だけ使います。薬液を入れ替えて洗浄シークエンスを構築し、多槽式の欠点を補ったバッチ式です。比較的省スペースでウェハを大量に処理できます。処理ごとに薬液を入れ替える必要があり、薬液の使用量は多いです。

3. 枚葉式

薬液をウェハ1枚ずつに吹き付けて高速で回転させて洗浄します。省スペースで薬液の使用量が少なく処理液の汚染がありません。ただし、ウェハを回転させるため、薬液が飛散して回収や再利用は難しいです。

半導体洗浄装置の選び方

洗浄工程で対象となる汚れには、各種対応した洗浄方法があります。汚れの具体例はパーティクルと呼ばれる微細なゴミ、人の汗などに含まれるナトリウム分子や油脂成分、工場内で使われる薬剤に含まれる炭素分子などの有機物や金属原子などです。

1. パーティクル

パーティクルの除去のために、ブラシなどを使う物理的洗浄やアルカリ性薬品を用いたウェット洗浄が行われます。

2. 有機汚染物

有機汚染物の除去には酸性薬品やオゾン水を用いたウェット洗浄装置のほか、プラズマクリーナや紫外線オゾンクリーナーなどのドライ洗浄装置を使用可能です。

3. 金属汚染物

金属汚染物の除去のために酸性薬品によるウェット洗浄が行われます。

微圧計

微圧計とは

微圧計とは、非常に低い圧力を精密に測定するための装置です。

通常、微圧計は約500Pa以下の圧力差を測定しますが、製品によっては0~3kPaから30kPaまでの範囲をカバーするものもあり、微小な圧力変動を正確に把握することが可能です。

この装置は主に空調管理やクリーンルーム、研究・開発環境など、微細な圧力調整が必要とされる分野で活用されています。微圧計を使用することで、空気の流れや圧力の微細な変化を把握できるため、設備の効率的な運用が可能です。

微圧計の使用用途

微圧計は、微小な圧力の変化を精密に測定するため、多様な分野で使用されています。特に、以下の分野ではその性能が不可欠です。

1. 空調システムでの利用

空調システムでは、空気の流れや圧力を適切に制御することが重要です。微圧計は、エアフィルターの圧力損失を測定し、フィルターの目詰まりを早期に検知します。これにより、空調設備の効率的な運用とエネルギー消費の最適化が可能です。また、空調ダクト内の圧力を一定に保つことで、建物全体の空気品質を維持し、快適な環境を提供します。

2. クリーンルームの圧力管理

クリーンルームでは、外部からの汚染物質の侵入を防ぐため、正確な圧力管理が求められます。微圧計を使用することで、室内の圧力を一定に保つことが可能です。さらに、微圧計を利用して圧力差をリアルタイムで監視し、異常が発生した場合に迅速に対応することができます。

3. 医療機器・分析装置への応用

微圧計は、医療現場でも重要な役割を果たします。手術室や無菌室の圧力を一定に保ち、感染リスクを低減するために活用されます。また、人工呼吸器などの医療機器では、微細な圧力制御が患者の安全に直結するため、精密な微圧計が不可欠です。

分析装置においても、微圧計はサンプルの正確な処理を可能にし、測定結果の信頼性を高めます。

微圧計の原理

1. ダイアフラム式

ダイアフラムは、圧力を受けることで変形する薄い膜状の部品です。微圧計では、圧力の変化によってダイアフラムがわずかに変形し、その変位を電気信号に変換して圧力を測定します。この方式は、高い感度と応答性を持ち、空調設備や医療機器など、微細な圧力変動を正確に測定する用途に適しています。

2. チャンバー式

チャンバーは、圧力を受ける密閉空間のことです。微圧計では、チャンバー内に一定量の基準圧を保持し、外部との圧力差を測定します。圧力差によってチャンバー内部のセンサーが反応し、圧力を数値化します。

3. 電気的変換による測定原理

近年では、電子センサーを活用した微圧計が増えています。これらのセンサーは、圧力の変化を直接電気信号に変換し、デジタルデータとして出力します。主に半導体技術を用いたピエゾ抵抗型や静電容量型のセンサーが利用されており、高精度なデータ処理が可能です。

微圧計の種類

微圧計には主に以下の種類があります。

1. ダイアフラム式微圧計

ダイアフラム式微圧計は、微小な圧力でも高精度で測定可能です。繰り返し使用による耐久性が高く、医療機器や空調設備などの精密測定に適しています。

2. チャンバー式微圧計

チャンバー式微圧計は、相対的な圧力測定に適しており、安定した環境での長期監視に向いています。主に配管設備や工場の圧力管理で活用されます。

3. デジタル微圧計

デジタル式微圧計は、精度が高く、リアルタイムの圧力監視が可能です。小型で持ち運びが容易です。また他の装置と連携しやすくデータ管理が簡単であり、データ記録機能やアラーム機能を備えたものがあります。

4. アナログ微圧計

アナログ式微圧計は、針や目盛りを用いて圧力を表示するというシンプルな構造なため直感的に数値を読み取れ、またメンテナンス性に優れています。電源が不要なため設置が容易であり、高温・低温環境でも使用可能です。

微圧計の選び方

1. 測定範囲

微圧計の選定において、最も重要な要素のひとつが測定範囲です。測定対象の圧力値を把握し、それに適した範囲をカバーできるモデルを選ぶ必要があります。

選定ポイント

  • 最小圧力と最大圧力を考慮し、適切な測定レンジを選ぶ
  • 負圧が発生する環境では、正圧・負圧の両方に対応するモデルが必要
  • 圧力変動の頻度や大きさを考慮し、十分な余裕を持たせる

2. 精度と分解能

微圧計の精度は、測定結果の信頼性に直結します。特に、医療機器やクリーンルームなど高精度が求められる環境では、分解能 (対象の最小の値や間隔をどれだけ細かく識別できるか) の高い製品が必要です。

選定ポイント

  • 使用環境の要件に応じた精度 (±0.5%〜1.0%など) を確認する
  • 分解能の高さが、圧力変動の微細な違いを把握するために重要
  • 安定した測定を行うため、温度補正機能が備わったモデルを検討する

3. 使用環境

微圧計を使用する環境に応じた適切な仕様を選ぶことが重要です。例えば、耐湿性や防塵性、耐薬品性が求められる場合があります。

選定ポイント

  • 温度や湿度などの環境条件を考慮し、適切な材質や保護等級 (IP規格) を選定する
  • 腐食性ガスが存在する場合は、耐腐食性の高い材質のモデルが推奨される
  • 屋外や移動用途には、耐衝撃性や防水機能がある製品が望ましい

4. 接続方式

微圧計の設置方法に応じて、適切な接続方式を選ぶことも重要です。配管接続やねじ接続など、使用環境に適した方式を選択します。

選定ポイント

  • 配管直結型:固定設置に適し、長期的な測定に最適
  • ねじ接続型:設置や取り外しが容易で、頻繁なメンテナンスが必要な場合に便利
  • ポータブル型:移動しながら測定が必要な環境に最適

ゴムキャブタイヤケーブル

ゴムキャブタイヤケーブルとは

ゴムキャブタイヤケーブル

ゴムキャブタイヤケーブルとは、絶縁層とシースが天然や合成のゴム類で構成されているキャブタイヤケーブルです。

他のキャブタイヤケーブルと同様に通電状態でも移動できるのが特徴です。ビニルキャブタイヤケーブルと比較して耐衝撃や耐摩耗性に優れており、悪天候にも適応するため主に屋外や過酷な環境下においての使用に適しています。

現在は合成ゴムが主流となっており、天然ゴムを使用したキャブタイヤケーブルは徐々に合成ゴムに置き換わりつつあります。

ゴムキャブタイヤケーブルの使用用途

ゴムキャブタイヤケーブルは一般的に柔軟性が高く、建設機械やクレーンなど移動が多い設備に多く使用されています。耐候性にも優れており、屋外に設置している設備にも使用可能です。耐油性が高いことからオイルミストが飛散しているような工場や、トンネル工事の掘削機、鉱山などの過酷な状況下で使用されています。

耐熱性にも優れており、アーク溶接機の変圧器から溶接電極までの配線のように高温になる用途でも使用可能です。また耐水性にも優れていることから、船舶や港湾設備など塩水や湿度が高い環境でもよく使用されます。

ゴムキャブタイヤケーブルの原理

ゴムキャブタイヤケーブルは以下の4つの部分で構成されています。

  • 導体:電気を通すための銅線やアルミ線で芯線とも呼ばれる
  • 絶縁層:導体を包んで電気的絶縁を確保するもの
  • 内被:絶縁層を保護する被覆
  • 外被:ケーブル全体を保護するゴム

最も重要な役割を持つのが導体 (芯線) であり、本数と太さで仕様が決まります。例えば、アース付きの3相200Vで使用される導体の本数は4本です。導体の太さは流れる電流値によって決まり、芯線の断面積を表す単位sqを用いて、2sqや3.5sqなどの種類があります。

ゴムキャブタイヤケーブルの種類

ゴムの素材の組み合わせにより、ゴムキャブタイヤケーブルは以下の3種類に分けられます。

  • CT:絶縁体とシースの両方が天然ゴムで構成されたもの
  • PNCT:絶縁体がEPゴム、シースがクロロプレンで構成されたもの
  • RNCT:絶縁体のみ天然ゴムが使用されたもの

またグレードが1種から4種まであり、使用する環境によって適切な選定が必要です。1種は天然ゴムのみで、環境の変化に弱いため現在は2種に統合されています。2種は最も使われている低圧用のケーブルで、屋外屋内問わず使用可能です。3種はシースを補強する層があるため2種よりも絶縁体とシースが太く、衝撃や摩耗に強く、4種は3種よりもさらに耐摩耗性が高いため、超過酷下での使用に適しています。

例えば、2種グレードのPNCTであれば「2PNCT」と表記されます。2PNCTは600V以下の低圧設備で使用されることが多く、最も代表的なゴムキャブタイヤケーブルです。

ゴムキャブタイヤケーブルのその他情報

ゴムキャブタイヤケーブルは、導体のサイズが太くなるほど大容量の電流を流せるようになり、反対に本数が増えるほど流せる電流値は下がるのが特徴です。

断面積が2sqの導体の場合、単芯の許容電流は32Aですが、4芯になると21Aとなります。導体に電気を流すと熱が発生するため、導体の本数が増えるほど放熱性が悪くなるため、許容電流値も低くなるのが一般的です。許容電流値を超えて使用した場合、被覆の劣化が進みやすくなり、火災や感電の原因にもなるため、できるだけ余裕を持った設計にすることが大切です。

プラスチックシリンジ

プラスチックシリンジとは

プラスチックシリンジ

プラスチックシリンジとは、シリンジの中でもすべてプラスチックで製造されているシリンジのことです 。

オールプラスチックでないディスポーザブルシリンジについては、「ディスポシリンジ」を参照してください。通常のシリンジは、注射器のような構造のうち液体や気体を押し込む方の筒 (プランジャー) 側のガスケット部分がゴムで作られています。

しかし、プラスチックシリンジではすべてがプラスチック素材でできており、ゴム素材の溶出が起こらないためシリンジ内でガスケットのゴムに由来する汚染 (コンタミネーション) が起こりません。

プラスチックシリンジの使用用途

主に医療用途や理科学実験でゴムからの成分溶出が懸念される場合、あるいは理科学実験でゴムが変質する使用条件であるがプラスチックは使用可能である場合に、特定の体積を計り取るシリンジとして用いられます。

プラスチックシリンジの外筒 (バレル) には目盛がついており、液体の体積を計り取って移す操作を簡便に行うことができます。プラスチックシリンジは比較的安価で、使い捨てることが可能です 。

プラスチックシリンジの原理

プラスチックシリンジは、プラスチックのみでも気密性が保たれるように工夫されており、多くの場合にバレルが硬いポリプロピレン (PP) 、プランジャーがやや柔らかいポリエチレン (PE) であり、この組み合わせで気密性を高めています。

ガスケットが弾力性に欠ける硬質プラスチックである場合、バレルがわずかに変形しながらガスケットに密着するようにして気密性を保つようにしているものもあります。

プラスチックシリンジの構造

プラスチックシリンジは注射器であり、外筒 (バレル) 、ポンプの持ち手 (プランジャー) とプランジャーと結合した密閉する部品 (ガスケット) に分かれており、プランジャーを押し引きすることによって液体や気体を吸ったり出したりすることができます。

プラスチックシリンジの選び方

1. 材質

材質が目的に合っているか確認します。多くのオールプラスチックシリンジはバレルがポリプロピレン (PP) 、プランジャーがポリエチレン (PE) です。

2. 最大容量・目盛

最大容量に応じてサイズと目盛が異なるため、使用したい体積と目盛の刻みを考慮して選定します。医療機器のシリンジでは目盛の刻みがサイズごとにほぼ統一されていますが、理科学実験用のシリンジでは目盛が製品シリーズによって異なっているため、特に考慮して選定します。

3. 筒先位置 (中口・横口)

プラスチックシリンジの先端にはいくつか種類があり、吐き出し口が筒先の真ん中についているもの (中口) と端についているもの (横口) が存在します。

中、小容量はほとんどが中口ですが、大容量のものは横口が主流です。横口の利点は、太いシリンジでも空気抜きが行いやすい点です。中容量の場合には中口・横口両方の製品がある場合があり、この場合は実際の操作で使いやすいものを選びます。

4. 先端形状

通常、プラスチックシリンジの先端には針などがついていないため、液体を吸い上げるときに液面に届かせたいときは、先端に注射針を使用することも多いです。状況に応じて、チューブを取り付けることもあります。

多くのプラスチックシリンジは、ルアースリップ式 (ルアーチップ式) またはルアーロック式です。ルアースリップ式 (ルアーチップ式) は、注射針などをまっすぐ差し込んで固定するタイプです。

ルアーロック式は吐き出し口の先端に注射針を差し込んだ後回転させ、捻じ込むことで抜けなくするストッパーがついているタイプです。特に取り付けるものが無い場合は、シンプルなルアースリップ式を用います。

プラスチックシリンジのその他情報

オールプラスチックとする利点

最大の利点はゴムを使わないため、ゴム由来のコンタミネーションのリスクが低く、ゴムが耐えられない溶媒条件でも使用できることです。オールプラスチックにすることで、プランジャーとガスケットを一体として製造することも可能です。また、ガスケットが操作中に脱落する事故が起こりにくくなります。

マグネシウム燃料電池

マグネシウム燃料電池とは

マグネシウム燃料電池は、マグネシウムを負極として用いた燃料電池です。

なお、燃料電池は、水素と酸素を反応させて電気を生成する電池のことです。

マグネシウム燃料電池は、本来はマグネシウムを供給し続けられる電池を指しますが、一般的には陰極がマグネシウムである使い捨ての燃料電池もマグネシウム燃料電池として扱われています。燃料電池では、発電後には電気と水のみが生じ、二酸化炭素は発生しません。そのため、クリーンな発電方法として注目されています。

マグネシウム燃料電池の使用用途

マグネシウム燃料電池の使用用途を現在すでに使用されている「災害時の非常用電源」と将来の利用が期待されている「常用電源」に分けて解説します。

1. 災害時の非常用電源

マグネシウム燃料電池の使用用途のうち、最も重宝されるのは、災害時の非常用電源です。具体的には、災害時のスマートフォンの充電やラジオの電源に使用されています。また、TVや冷蔵庫などの電源としても使用されます。これは、マグネシウム燃料電池の燃料となるマグネシウムが比較的軽量でありながら長期間安定して貯蔵できるため、非常用電源に向いているからです。さらに、陰極であるマグネシウムを交換すれば繰り返し電力を供給できる点も非常用電源に向いている理由です。

非常用照明の電源としても活用可能で、LEDランタンのバッテリーやポータブル照明機器のバッテリーとしても使用されています。非常時など、これら照明の電源が確保されれば、暗闇の中での作業や夜間の避難所での照明提供が容易になり災害時にも安全が確保されます。

2. 常用電源

マグネシウム燃料電池は、常用電源としての使用も期待されています。具体的には、家庭用定置型電源やドローンの電源、電気自動車および電気バイクへの搭載などです。

この用途においてもマグネシウム燃料電池の特徴であるマグネシウムが比較的軽量な点や陰極であるマグネシウムを交換すれば繰り返し電力を供給可能な点が有利に働いています。

マグネシウム燃料電池の原理

マグネシウム燃料電池は、マグネシウムを陰極とし、例えば活性炭などを陽極として使用しています。マグネシウム燃料電池では、まず電解液に接触した陰極であるマグネシウムが酸化される反応が起こり、マグネシウムの表面が溶解します。

この酸化反応により、マグネシウムはプラスイオン (Mg²⁺) として陰極から離れます。この過程で、マグネシウムの原子が電子を放出するため、余った電子が陰極と陽極を繋ぐ外部の導線を通じて流れ、電流が発生する仕組みです。

一方、陽極となっている活性炭などがマグネシウムから放出された電子を受け取る役割を果たし、電解液中の水分子と反応して水酸基を生成します。この陽極から放出される水酸基と陰極から放出されたマグネシウムイオンが反応して水酸化マグネシウムを生成し、全体として電流が流れ発電が可能となります。

マグネシウム燃料電池の種類

マグネシウム燃料電池は、陰極にマグネシウムを使用していることが特徴です。代表的なものはマグネシウムー空気燃料電池とマグネシウムー酸化物燃料電池です。順番に解説します。

マグネシウムー空気燃料電池は、陰極がマグネシウムであり、正極が空気中の酸素を取り入れる仕組みの燃料電池です。酸素が酸化剤として働き、マグネシウムが還元されて電気を生み出します。反応式は、以下の通りです。

  • 負極の反応:Mg→Mg2++2e
  • 正極の反応:1/2O2+H2O+2e→2OH
  • 全部の反応:Mg+1/2O2+H2O→Mg(OH)2

マグネシウム-酸化物燃料電池も陰極はマグネシウムです。陽極として酸化銀などの酸化物を使用します。

マグネシウム燃料電池のその他情報

この章ではマグネシウム燃料電池のメリットを解説します。マグネシウム燃料電池のメリットは以下の通りです。

1. 高エネルギー密度をもつ

マグネシウムは非常に高いエネルギー密度を持っています。そのため、比較的小型で長時間の電力供給が可能です。この特性を生かして、特にポータブル機器や電気自動車の電池としての応用が期待されています。

2. 環境に優しい

マグネシウムは海水中に多く存在します。一番多いのはナトリウムでマグネシウムは二番目です。地球上の海水の中には1800兆トンものマグネシウムが含まれているといわれています。そのため、よく使用されているリチウムイオン電池よりも環境への影響を大きく削減可能です。さらには、マグネシウムは反応後に水酸化マグネシウムになりますが、熱による還元反応でマグネシウムに戻ります。

加熱手段としては、太陽熱や太陽光レーザーなどが使用可能です。リサイクル可能なうえ、リサイクルの際に有害な物質が生じることもありません。この点からも環境に優しいといえます。

3. 軽量である

マグネシウムは軽金属であるため、燃料電池全体の重量を軽減できる点もメリットです。この特性から、特に輸送機器やポータブルデバイスでの使用に期待がかかっています。

4. 安全性が高い

マグネシウムは他の金属と比べて化学的に安定しています。そのため、過剰な熱や圧力がかかる状況でも、比較的安全に動作可能です。

5. 未発電で保存が可能である

マグネシウム燃料電池の大きな特徴として、未発電状態で運搬や保存が可能なことが挙げられます。そのため、非常用電源として非常に有用です。例えば、紙製の箱と電極などの付属品をセットで販売している製品もあります。非常時に電解液として水や食塩水を容器に入れて電極などをセットすれば発電が起こり、非常用電源として使用可能です。

液体研磨材

液体研磨材とは

液体研磨材とは、通常のペースト状研磨材よりもさらに粘度が低く、ほぼ液体に近い研磨材の種類です。

柔らかい布や、ウエスに研磨材をつけて使用するため、研磨した後の拭き取り作業が簡単にでき、細やかなアルミナ系研磨材を配合しているため、傷が付きにくく、表面に美しい光沢を出すことができます。

使用できる素材は多岐に渡り、鋼材からステンレス、アルミなどの非鉄金属、更にはプラスチック類の研磨にも適応するため、様々な場所で使用することができます。

液体研磨材の使用用途

主に金属類の艶出しやプラスチック類の研磨に使用し、種類によってはガラスの汚れや水垢の除去、タイルにも使用できるものもあり、住宅の掃除道具としても広く用いられています。

また、帯電防止剤を配合し、静電気を抑えることにより、鏡面の汚れやほこりの付着防止が可能な製品もあります。

しかし、研磨力は他の研磨材よりも低いことから、キズ落としや深いサビの除去には適しておらず、表面の艶出しや汚れの除去といった軽研削に使われます。

液体研磨材の特徴

固形やペースト状の研磨材のように専用のバフグラインダーを用いる必要がなく、使用するときは布やウエスに染み込ませて使用するので、バフグラインダーがなくても手軽に研磨することができるのが、液体研磨材のメリットです。

また、家庭内でもシンクやタイル、鏡や蛇口といった様々な場所に使用することができ、車やバイクといった乗り物の艶出しにも広く使えるため、ホームセンターなどで安価に購入することができるのも特徴です。

デメリットとしては、粘度が低いため飛び散るリスクが高いことと、研磨力が低いため重研削には向いていないことが挙げられます。

また、素材を問わず多用途に使用できる研磨材がある一方で、使用できる素材ごとに分類して売られている研磨材もあるので、必ず使用する前には研磨する素材に適しているかを事前に確認し、研磨材に配合されている研磨粒子の粗さも確認した上で、用途に適した研磨材を選定することが重要です。

低圧検電器

低圧検電器とは

低圧検電器

低圧検電器とは、検電器の中でもより低圧な回路の電圧を測定するための測定器のことです。

低圧検電器を調べたい部分に接触させることで電気が通っているか否かを確認することができます。調べたい回路の電圧の大きさによって使用する種類が異なります。

低圧検電器の使用用途

低圧検電器を使用する場所は、回路の中に比較的低圧な電圧が流れている場所です。

通常低圧検電器では、20V~1000V程度の電圧を測定でき、家庭内で使用されている製品などについては使用可能です。

しかし、電気回路には直流回路と交流回路があり、回路の違いによっても検電器を使い分ける必要があるため、不安な方は直流回路も交流回路も測定できる検電器を使用することが推奨されます。

低圧検電器の原理

低圧検電器を含んだ検電器はすべて、検電器を接触した場所に電気が通っているか否かを知らせます。知らせ方には3種類あり、光、ブザー音、両方で知らせてくれるものなどです。検知方法も検知部を接触させるものと非接触のものに分けられます。

しかしこれらの原理はどれも同じです。通常回路に電気が流れている場合は、その周辺の電界が流れていない時とは変化しています。そのため、検電器を近付けることによってこの電界の変化を感知し光や音で知らせてくれます。

低圧検電器の使い方

接触型の検電器はしっかりと検電器をもち、検知部の先端ではなく側面を電線に接触させます。また、電線が被覆されている場合はむき出しの電線よりも動作感度が悪くなるので十分に電線に接触させる必要があります。

これらは電気が通っていないことを確認しその後の作業を行うために使用することが多いですが、万が一感電の恐れもありますので濡れた手で使用しないなど注意が必要です。

分光蛍光光度計

分光蛍光光度計とは

分光蛍光光度計とは、試料中に含まれる分子やイオンなどから発せられる光を解析する装置のことです。

分光器の一種で、その他に紫外・可視分光光度計や赤外分光光度計等が挙げられます。発光スペクトルは分子、イオンごとに異なるため、発光ピークの波長と強度から試料に含まれる成分を定量することが可能です。

分光蛍光光度計は非常に感度が高く、微量成分の検出に使われています。また、生化学分野では特定の化合物と結合するような蛍光プローブと組み合わせることで、生体内でのタンパク質の動きの解析などに使用されています。

なお、生体や食品など複数の成分が含まれる試料では各成分の発光が重なり、複雑なスペクトルが得られますが、最近は多変量解析などの統計解析手法を適用することで、多数の成分に関する情報を引き出す方法も検討されています。

分光蛍光光度計の使用用途

分光蛍光光度計法による定量分析は、一般的に吸光光度法に比べて1,000倍以上感度が高いため、分光蛍光光度計は試料中に含まれる極微量の成分を検出、定量するために用いられています。

具体的には、白色LEDや有機EL素子の発光効率を表す指標である量子収率の測定や、素子が発する光のスペクトル分析などです。スペクトル分析は非常に複雑ですが、解析ソフトも高度化しており、様々な情報を引き出すことができます。

分光蛍光光度計の原理

分光蛍光光度計の原理

図1. 分光蛍光光度計の原理

分光蛍光光度計は、分子やイオンの電子が励起状態から基底状態に戻るときに余分なエネルギーを光として発する蛍光(またはりん光)を利用する装置です。分子はそれぞれ固有のエネルギー状態を有しており、特定の波長の光を選択的に吸収して励起状態に遷移します。

この励起状態に存在する電子は直ちに基底状態に戻りますが、そのときに励起状態と基底状態のエネルギー準位の差に対応する波長の光を発します。なお、照射する光は試料が吸収する波長にしなければ蛍光を発せず、測定を行うことができません。

分光蛍光光度計のその他情報

1. 分光蛍光光度計と多変量解析

分光蛍光光度計と多変量解析

図2. 分光蛍光光度計と多変量解析

食品など多数の有機物が含まれている試料に対して蛍光測定を行うことで、産地や原料ごとのパターンを分類する解析が試みられています。試料に複数の成分が含まれているとき、分光蛍光光度計測定で得られるスペクトルは各成分が発する蛍光の足し合わせになります。

一般に複数成分が含まれる試料の蛍光スペクトルは非常に複雑で解析が困難です。特に食品や飲料など、多数の有機物が含まれるサンプルでは多数のピークが出現して、熟練者でなければ解析することはできません。

一方で、最近では食品などの複雑な発光スペクトルから多変量解析、統計解析的な手法を用いて情報を得る試みも行われています。例えば多変量解析手法の一つである主成分分析 (PCA) を用いるとスペクトルのような多次元データを2・3次元の低次元に圧縮することが可能です。

次元圧縮を行ったあとの各サンプルの分布からグループ分けを行うといった解析が行われています。

2. 生化学分野における分光蛍光光度計の活用

分光蛍光光度計の活用

図3. 分光蛍光光度計の活用

生化学分野では蛍光を発するプローブを選択的に特定のタンパク質やカルシウムイオンなどに結合させることで該当成分の定量を行うことが可能になります。例えばカルシウムイオンの検出ではキレート剤と呼ばれる、イオンを選択的に挟み込む構造を有する化合物が使用可能です。

その他、生物由来の蛍光タンパク質を改変した高分子も蛍光プローブとして用いられています。この高分子は蛍光タンパク質に由来しており、導入することで生体細胞自体が複製することが可能になります。

なお、ノーベル賞を受賞した日本人の下村脩氏の業績はこの緑色蛍光タンパク質を発見したということです。生体分子に蛍光タンパク質を導入できるようになり、蛍光光度計で高感度検出ができるようになったことで生体分子の解析が大きく進みました。

FPD製造装置

FPD製造装置とは

FPD製造装置とは、フラットパネルディスプレイ (FPD) を製造するために使用する装置の総称です。

テレビやスマートフォンに代表されるように、近年では様々な製品にフラットパネルディスプレイが使用されています。そのフラットパネルディスプレイは、液晶ディスプレイを始め、有機ELディスプレイ、マイクロLED、電子ペーパーなどいくつかの種類に分類されます。

それぞれのディスプレイの製造は、異なった工程もあれば、同じ工程もあります。製造に使用する装置も同様であり、FPDの製造に関わる専用の装置のことをFPD製造装置と言います。

FPD製造装置の使用用途

FPD製造装置は、それぞれの種類のフラットパネルディスプレイの製造において、各々の工程で使用されます。

1. FPDの分類

液晶ディスプレイ (LCD)
現在、FPDの中で最も生産数が多いのが液晶ディスプレイ (LCD) です。LCDは長年の実績と技術の成熟により、コストパフォーマンスが高く、大画面から小型まで幅広い製品に採用されています。

有機ELディスプレイ (OLED)
次に生産量が増えてきているのが有機ELディスプレイ (OLED) です。OLEDは高コントラスト、広視野角、応答速度が速く、薄型軽量化が可能なため、高画質を求める製品に採用されています。

マイクロLED
マイクロLEDは液晶や有機ELに比べて高輝度、高コントラスト、広色域を実現でき、長寿命なのが特徴です。デジタルサイネージや大型ディスプレイでの採用が進んでいます。

また、かつてはプラズマディスプレイも数多く生産されていましたが、消費電力が大きいのと製造コストが高くなるのが欠点とされて、現在はあまり生産されなくなっています。

2. FPDの各工程とFPD製造装置

それぞれのFPDは内部構造が異なるので、製造工程も異なります。しかし、FPDはフラットなパネル上に画像を表示するという最終機能が同じで、外観も似た製品となるので、異なる種類のFPDの製造であっても、同じ製造工程を用いるところもあり、多種のFPD製造装置が共通で使用されています。

フォトリソグラフィ関連装置
液晶ディスプレイの製造と有機ELディスプレイの製造では、FPD露光装置に代表されるフォトリソグラフィ関連装置が共通で使われています。リソグラフィ関連装置は、液晶パネルのTFT形成や、有機ELパネルの有機層形成など、両方のディスプレイにおいて回路パターンを形成するために使用されます。

スパッタリング装置
液晶パネルのTFT形成や、有機ELパネルの金属電極形成など、導電性薄膜を形成するために使用されます。

蒸着装置
スパッタリング装置と同じように、蒸着装置が液晶パネルのTFT形成や、有機ELパネルの有機層形成など、様々な薄膜を形成するために使用されます。

その他
その他には、洗浄装置や検査装置も、広い意味での共通に使われるFPD製造装置と言えます。

FPD製造装置の原理

FPDの中で、最も生産量の多い液晶ディスプレイの製造について説明します。液晶ディスプレイの製造は、大まかに分類すると、アレイ工程、セル工程、モジュール工程に分類されます。

アレイ工程の中には、スパッタリング工程とフォトリソグラフィ工程があります。スパッタリング工程では、スパッタリング装置を用いて、ガラス基板上に薄膜トランジスタ (TFT) の形成に用いる薄い金属膜を形成します。フォトリソグラフィ工程では、FPD露光装置を用いてフォトマスク上のパターンを転写します。

セル工程では、主に液晶注入装置を用いて液晶セルに液晶材料を注入します。モジュール工程では、偏光板貼り合わせ装置を用いて液晶パネルの両面に偏光板を貼り合わせます。

実際にはFPDの製造には20から30の工程が存在し、それぞれの工程で専用のFPD製造装置が使用されています。

FPD製造装置の選び方

FPDの製品の品質は、最終的には人が目で見て判断します。人間の目はFPDの表示する画像の、歪み、色ムラ、段差、ドット抜け等を敏感に感じ取ります。

特に大型化、高精細化の進歩が著しい大型ディスプレイの製造では、歪みが生じやすい薄くて大きなガラス基板上に、微細なパターンやセルを高精度で形成して行かなければならず、基板の取り扱いにも高度な技術が必要となります。

FPD製造装置の選択に当たっては、価格や仕様、納期の確認の他に、メーカーや代理店との入念な打ち合わせを行い、必要に応じて実機デモをしてもらい、慎重に選択することをお薦めします。

PINフォトダイオード

PINフォトダイオードとは

PINフォトダイオードは、照射された光を電気信号に変換するフォトダイオードの一種です。

フォトダイオードには、主にPN型、PIN型、APD(Avalanche photodiode)の3種類のタイプがあり、PINフォトダイオードは、P型半導体とN型半導体の間に絶縁体の真性半導体であるI型半導体(Intrinsic semiconductor)を挿入した構造をしています。

P型半導体とN型半導体のPN結合で構成されたPNフォトダイオードに比べ、PINフォトダイオードは、光を照射してから電気信号に変換されるまでの応答速度が速いという特徴があります。

PINフォトダイオードの使用用途

PINフォトダイオードは、高感度で応答速度が速いという特徴を持ち、フォトダイオードの中では最も使われています。

具体的には、デジタルカメラなどのCCDやCMOSセンサーの受光素子、CDや DVDの光ピックアップ、リモコンの受信装置、光通信システムの受信機、光度計・露出計など光検出器、バーコードリーダー、文字読取り装置、車載向けの太陽光センサー・トンネルセンサーや、X線検出器・放射線検出器など、幅広い分野で使用されています。

PINフォトダイオードの原理

PINフォトダイオードは、P型半導体とN型半導体の間に絶縁体のI型半導体をはさんだ構造をしています。

P型半導体領域が受光面、N型半導体側が基板側、I型半導体領域は空乏層の代わりとなって光吸収領域になります。P層は内部まで受光しやすいように非常に薄く、光吸収層になるI層は比較的厚い構成になっています。

P側にマイナス、N側にプラスの逆バイアスを印加すると、P層の正孔はマイナス側に、N層の電子はプラス側に移動し、中間層はキャリアがほとんど存在しない空乏層になります。I層にはもともとキャリアが存在しないので、I層の厚さだけ空乏層の幅は広がります。

この状態で、P層側からバンドギャップよりも大きいエネルギーを持つ光が照射されると、電子が光励起されて自由電子になり、その跡に正孔ができます。空乏層で生成された電子はN層へ、正孔はP層へ移動し、PINフォトダイオードには光電流が流れます。このとき、電流の大きさは入射した光の強さに比例します。

PINフォトダイオードでは、I層によって形成された広い空乏層に逆バイアスが印加されているため、PNフォトダイオードに比べてキャリアの移動速度が速く、受光素子としての応答速度が速いという特徴があります。また、光吸収領域である空乏層が広いため、感度も高くなります。