マグネシウム燃料電池

マグネシウム燃料電池とは

マグネシウム燃料電池は、マグネシウムを負極として用いた燃料電池です。

なお、燃料電池は、水素と酸素を反応させて電気を生成する電池のことです。

マグネシウム燃料電池は、本来はマグネシウムを供給し続けられる電池を指しますが、一般的には陰極がマグネシウムである使い捨ての燃料電池もマグネシウム燃料電池として扱われています。燃料電池では、発電後には電気と水のみが生じ、二酸化炭素は発生しません。そのため、クリーンな発電方法として注目されています。

マグネシウム燃料電池の使用用途

マグネシウム燃料電池の使用用途を現在すでに使用されている「災害時の非常用電源」と将来の利用が期待されている「常用電源」に分けて解説します。

1. 災害時の非常用電源

マグネシウム燃料電池の使用用途のうち、最も重宝されるのは、災害時の非常用電源です。具体的には、災害時のスマートフォンの充電やラジオの電源に使用されています。また、TVや冷蔵庫などの電源としても使用されます。これは、マグネシウム燃料電池の燃料となるマグネシウムが比較的軽量でありながら長期間安定して貯蔵できるため、非常用電源に向いているからです。さらに、陰極であるマグネシウムを交換すれば繰り返し電力を供給できる点も非常用電源に向いている理由です。

非常用照明の電源としても活用可能で、LEDランタンのバッテリーやポータブル照明機器のバッテリーとしても使用されています。非常時など、これら照明の電源が確保されれば、暗闇の中での作業や夜間の避難所での照明提供が容易になり災害時にも安全が確保されます。

2. 常用電源

マグネシウム燃料電池は、常用電源としての使用も期待されています。具体的には、家庭用定置型電源やドローンの電源、電気自動車および電気バイクへの搭載などです。

この用途においてもマグネシウム燃料電池の特徴であるマグネシウムが比較的軽量な点や陰極であるマグネシウムを交換すれば繰り返し電力を供給可能な点が有利に働いています。

マグネシウム燃料電池の原理

マグネシウム燃料電池は、マグネシウムを陰極とし、例えば活性炭などを陽極として使用しています。マグネシウム燃料電池では、まず電解液に接触した陰極であるマグネシウムが酸化される反応が起こり、マグネシウムの表面が溶解します。

この酸化反応により、マグネシウムはプラスイオン (Mg²⁺) として陰極から離れます。この過程で、マグネシウムの原子が電子を放出するため、余った電子が陰極と陽極を繋ぐ外部の導線を通じて流れ、電流が発生する仕組みです。

一方、陽極となっている活性炭などがマグネシウムから放出された電子を受け取る役割を果たし、電解液中の水分子と反応して水酸基を生成します。この陽極から放出される水酸基と陰極から放出されたマグネシウムイオンが反応して水酸化マグネシウムを生成し、全体として電流が流れ発電が可能となります。

マグネシウム燃料電池の種類

マグネシウム燃料電池は、陰極にマグネシウムを使用していることが特徴です。代表的なものはマグネシウムー空気燃料電池とマグネシウムー酸化物燃料電池です。順番に解説します。

マグネシウムー空気燃料電池は、陰極がマグネシウムであり、正極が空気中の酸素を取り入れる仕組みの燃料電池です。酸素が酸化剤として働き、マグネシウムが還元されて電気を生み出します。反応式は、以下の通りです。

  • 負極の反応:Mg→Mg2++2e
  • 正極の反応:1/2O2+H2O+2e→2OH
  • 全部の反応:Mg+1/2O2+H2O→Mg(OH)2

マグネシウム-酸化物燃料電池も陰極はマグネシウムです。陽極として酸化銀などの酸化物を使用します。

マグネシウム燃料電池のその他情報

この章ではマグネシウム燃料電池のメリットを解説します。マグネシウム燃料電池のメリットは以下の通りです。

1. 高エネルギー密度をもつ

マグネシウムは非常に高いエネルギー密度を持っています。そのため、比較的小型で長時間の電力供給が可能です。この特性を生かして、特にポータブル機器や電気自動車の電池としての応用が期待されています。

2. 環境に優しい

マグネシウムは海水中に多く存在します。一番多いのはナトリウムでマグネシウムは二番目です。地球上の海水の中には1800兆トンものマグネシウムが含まれているといわれています。そのため、よく使用されているリチウムイオン電池よりも環境への影響を大きく削減可能です。さらには、マグネシウムは反応後に水酸化マグネシウムになりますが、熱による還元反応でマグネシウムに戻ります。

加熱手段としては、太陽熱や太陽光レーザーなどが使用可能です。リサイクル可能なうえ、リサイクルの際に有害な物質が生じることもありません。この点からも環境に優しいといえます。

3. 軽量である

マグネシウムは軽金属であるため、燃料電池全体の重量を軽減できる点もメリットです。この特性から、特に輸送機器やポータブルデバイスでの使用に期待がかかっています。

4. 安全性が高い

マグネシウムは他の金属と比べて化学的に安定しています。そのため、過剰な熱や圧力がかかる状況でも、比較的安全に動作可能です。

5. 未発電で保存が可能である

マグネシウム燃料電池の大きな特徴として、未発電状態で運搬や保存が可能なことが挙げられます。そのため、非常用電源として非常に有用です。例えば、紙製の箱と電極などの付属品をセットで販売している製品もあります。非常時に電解液として水や食塩水を容器に入れて電極などをセットすれば発電が起こり、非常用電源として使用可能です。

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