分光蛍光光度計

分光蛍光光度計とは

分光蛍光光度計とは、試料中に含まれる分子やイオンなどから発せられる光を解析する装置のことです。

分光器の一種で、その他に紫外・可視分光光度計や赤外分光光度計等が挙げられます。発光スペクトルは分子、イオンごとに異なるため、発光ピークの波長と強度から試料に含まれる成分を定量することが可能です。

分光蛍光光度計は非常に感度が高く、微量成分の検出に使われています。また、生化学分野では特定の化合物と結合するような蛍光プローブと組み合わせることで、生体内でのタンパク質の動きの解析などに使用されています。

なお、生体や食品など複数の成分が含まれる試料では各成分の発光が重なり、複雑なスペクトルが得られますが、最近は多変量解析などの統計解析手法を適用することで、多数の成分に関する情報を引き出す方法も検討されています。

分光蛍光光度計の使用用途

分光蛍光光度計法による定量分析は、一般的に吸光光度法に比べて1,000倍以上感度が高いため、分光蛍光光度計は試料中に含まれる極微量の成分を検出、定量するために用いられています。

具体的には、白色LEDや有機EL素子の発光効率を表す指標である量子収率の測定や、素子が発する光のスペクトル分析などです。スペクトル分析は非常に複雑ですが、解析ソフトも高度化しており、様々な情報を引き出すことができます。

分光蛍光光度計の原理

分光蛍光光度計の原理

図1. 分光蛍光光度計の原理

分光蛍光光度計は、分子やイオンの電子が励起状態から基底状態に戻るときに余分なエネルギーを光として発する蛍光(またはりん光)を利用する装置です。分子はそれぞれ固有のエネルギー状態を有しており、特定の波長の光を選択的に吸収して励起状態に遷移します。

この励起状態に存在する電子は直ちに基底状態に戻りますが、そのときに励起状態と基底状態のエネルギー準位の差に対応する波長の光を発します。なお、照射する光は試料が吸収する波長にしなければ蛍光を発せず、測定を行うことができません。

分光蛍光光度計のその他情報

1. 分光蛍光光度計と多変量解析

分光蛍光光度計と多変量解析

図2. 分光蛍光光度計と多変量解析

食品など多数の有機物が含まれている試料に対して蛍光測定を行うことで、産地や原料ごとのパターンを分類する解析が試みられています。試料に複数の成分が含まれているとき、分光蛍光光度計測定で得られるスペクトルは各成分が発する蛍光の足し合わせになります。

一般に複数成分が含まれる試料の蛍光スペクトルは非常に複雑で解析が困難です。特に食品や飲料など、多数の有機物が含まれるサンプルでは多数のピークが出現して、熟練者でなければ解析することはできません。

一方で、最近では食品などの複雑な発光スペクトルから多変量解析、統計解析的な手法を用いて情報を得る試みも行われています。例えば多変量解析手法の一つである主成分分析 (PCA) を用いるとスペクトルのような多次元データを2・3次元の低次元に圧縮することが可能です。

次元圧縮を行ったあとの各サンプルの分布からグループ分けを行うといった解析が行われています。

2. 生化学分野における分光蛍光光度計の活用

分光蛍光光度計の活用

図3. 分光蛍光光度計の活用

生化学分野では蛍光を発するプローブを選択的に特定のタンパク質やカルシウムイオンなどに結合させることで該当成分の定量を行うことが可能になります。例えばカルシウムイオンの検出ではキレート剤と呼ばれる、イオンを選択的に挟み込む構造を有する化合物が使用可能です。

その他、生物由来の蛍光タンパク質を改変した高分子も蛍光プローブとして用いられています。この高分子は蛍光タンパク質に由来しており、導入することで生体細胞自体が複製することが可能になります。

なお、ノーベル賞を受賞した日本人の下村脩氏の業績はこの緑色蛍光タンパク質を発見したということです。生体分子に蛍光タンパク質を導入できるようになり、蛍光光度計で高感度検出ができるようになったことで生体分子の解析が大きく進みました。

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