PCB

PCBとは

PCBとは、パソコンや家電製品などのあらゆる電子機器に搭載される板状の電子部品です。

PCBはPrinted Circuit Board (プリント回路板) の略称です。PCB上で回路部品同士の通信や電力のやり取りが行われます。

PCBと類似する言葉にPWB (英: Printed Wired Board) という言葉があります。プリント基板であるPWBにICチップやコンデンサなどの電子部品が搭載されることで、実際に動作するPCBとなります。

PCBの使用用途

PCBの適用分野は非常に幅広く、パソコンや家電製品などの一般的な電子機器から製造業での大型装置、AI開発やデータセンター用のサーバー、自動車や鉄道の制御装置などに使用されています。

PCBは1950年頃に実用化され、装置や機器の開発・製造件数が飛躍的に伸びました。近年では、IoT機器やAIを開発するためのサーバーなどの性能向上に伴い、PCBも部品の微細化・高密度搭載化・高性能化が進みました。この技術を応用して、一般的な家電製品でも高性能なPCBが組み込まれるようになりました。今となってはPCBは電子機器産業には無くてはならない存在です。

PCBの原理

電子部品をPWB上にはんだで固定して、それら部品同士で通信や電力の授受を行います。それにより回路的な性能や機能を実現させます。電子機器の信頼性、性能などがPCBによって決まると言っても過言ではありません。

PCBの種類

PCBは、PWBと同様にリジッド基板とフレキシブル基板の2種類に大別されます。形状や大きさも様々で、人の両手で持つような大きさから、指の上に乗せられる大きさまであります。

リジッド基板は折り曲げられない硬い基板であり、フレキシブル基板は折り曲げ可能な柔らかい基板です。機器の設計制約や用途に応じて使い分けられたり、併用されたりします。

リジッド基板の形状は一般的に長方形が多く、厚さは1~1.6mmです。表面の色の大多数は緑色です。片面配線・片面部品搭載のシンプルな基板から、10層以上の多層配線・両面部品搭載の複雑な基板まで多様な種類が存在します。部品点数が多いものでは、数千個から数万個の部品が搭載される場合があります。

フレキシブル基板は柔軟であるという特性を活かし、様々な形状で作られます。厚さは一般的に数十μmです。柔軟性を出すという制約から、層数や部品搭載数はリジッド基板よりも少なくなります。

PCBの選び方

PCBは、回路に求められる性能(電気的な特性、機構的な特性、耐久力・信頼性など)とコストを考慮して選択する必要があります。

1. リジッド基板

リジッド基板はフレキシブル基板よりも硬く、厚いです。そのためフレキシブル基板よりも搭載部品を増やすことができ、大電流を流すことができます。また、限られた面積の中で複雑な配線パターンを形成できることもリジッド基板の利点です。

世の中のPCBの主流はリジッド基板です。そのためリジッド基板の方がフレキシブル基板よりも安価です。また、部品搭載時の対応コストもフレキシブル基板よりも低いです。これらのことから、多様な機能を実現し、消費電力の大きな電子機器を安定動作させる場合には、リジッド基板を選択することが多いです。

2. フレキシブル基板

フレキシブル基板は、その柔軟な特性から機器の摺動部分や開閉部分、PCB同士の接続などに採用されます。例として、昔の携帯電話の開閉ヒンジ部分にはフレキシブル基板が通っています。

流せる電流量や部品搭載量に制限があり、部品実装に専用の治具を準備するなどのコストがかかるものの、複雑な構造を持つ機器を実現させるためにフレキシブル基板を採用することがあります。

PCBの構造

PCBは、プリント基板に記載されるPWBと同じ構造をしています。どの構造を採用するかは、機器のサイズや構造、求められる性能やコストに応じて決める必要があります。

例えばスマートフォンやタブレットなどの小型な高性能民生機器には、高度で複雑な回路、省スペース、コスト削減への要求が強いです。そのため、微細部品を高密度に搭載できるリジッド多層基板や狭いスペースに組み込むことができるフレキシブル基板を併用しています。車載用であれば民生機器よりも搭載スペースやコストにやや余裕があるため、性能・信頼性・耐久性を優先した基板構造を選択します。

クライオ電子顕微鏡

クライオ電子顕微鏡とは

クライオ電子顕微鏡(英語: Cryogenic Electron Microscopy(CryoEM))とは、透過型電子顕微鏡の一種で、試料を液体窒素(-196 ℃)で凍結することにより、タンパク質などの生体分子の三次元構造を観察することができます。

クライオ電子顕微鏡による解析手法は近年急速に発展しており、2017年に、開発に携わった研究者三名にノーベル化学賞が贈られました。近年実用化が進んだ新しい解析手法であるため、今後、創薬、医療、生命科学など、様々な分野の発展に大きく貢献することが期待されています。

クライオ電子顕微鏡の使用用途

クライオ電子顕微鏡は、タンパク質などの生体分子の立体構造を高い分解能で解析するために開発されました。従来のX線結晶構造解析ではタンパク質の結晶化が難しく解析が困難でしたが、クライオ電子顕微鏡を用いることで溶液の状態で解析することが可能です。また、核磁気共鳴(NMR)による解析では困難であった高分子量の解析も可能です。

近年の活発な研究開発によって分解能が飛躍的に向上し、1.5 Å(1 Å(オングストローム)=10のマイナス10乗メートル)以下の原子レベルでの解析が可能になりました。

クライオ電子顕微鏡の原理

クライオ電子顕微鏡のベースである透過型電子顕微鏡では、真空中で試料に電子線を照射するため、タンパク質などの水分子を含む構造の場合、構造を保ったまま観察することが困難でした。そこで、液体窒素(-196 ℃)で急速に凍結し、構造を保ったまま観察できるようにしたのが、クライオ電子顕微鏡です。

クライオ電子顕微鏡でタンパク質などの分子構造を観察する際には、電子線による分子構造へのダメージを極力減らすため、微弱な電子線を照射します。そのため、得られる画像は非常にノイズが多くなります。そこで、同じタンパク質の写真を大量に撮影し、多数の画像データの平均化処理によってタンパク質の三次元構造を再構築します。このような解析手法は単粒子解析と呼ばれています。

クライオ電子顕微鏡の実用化と性能向上の背景には、冷却機構をはじめとする電子銃やレンズやカメラといった装置そのものの性能向上はもちろんですが、ディープラーニングによる新しい画像解析技術やコンピュータの演算能力向上など、多くの技術革新があります。

デジタルオシロスコープ

デジタルオシロスコープとはデジタルオシロスコープ

デジタルオシロスコープとは、電気信号の時間的変化をデジタルデータに変換して内部メモリに記録した上で、ディスプレイ上に表示する計測器です。

ある一時点の電圧もしくは電流を計測するだけのテスターとは異なり、オシロスコープは電気信号の周期/周波数や立ち上がりの状況、複数の信号間の時間差/位相差などを観測することができます。

オシロスコープは、デジタルオシロスコープとアナログオシロスコープに大別されます。アナログオシロスコープが電気信号をリアルタイムにブラウン管に投影するのに対し、ここで扱うデジタルオシロスコープは、電気信号を離散的な時間間隔でサンプリングして得られた「点」としての情報を集めて、擬似的な波形を表示します。

デジタルオシロスコープの使用用途

オシロスコープは、電気回路内の電圧や電流等の電気信号を時間軸を横軸とする波形として観察するための計測器であり、産業機器や民生機器などの開発時の動作検証やデバッグ、製品が故障したときの原因解析などに使用されます。

デジタルオシロスコープは、電気信号をA/D変換等のデータ処理後波形に変換するため、アナログオシロスコープに比べてリアルタイム性に劣るという短所がありましたが、2000年以降は画面更新レートの高速化が進み、実用上支障がないレベルに改善されました。

また、価格も徐々に低下してきたことから、現在では圧倒的にデジタルオシロスコープが使われています。 

デジタルオシロスコープの原理

1. 入力信号の処理

デジタルオシロスコープでは、入力信号をアッテネータ (減衰器) で感度を調節し、アンプ (増幅器) で振幅を最適化した後、A/Dコンバータに印加することが特徴です。A/Dコンバータでは、サンプリング周波数で設定されたタイミングで信号を取り込み、デジタル値に変換し、そのデジタル値は波形中の一つのポイントのデータとして記録メモリに記録されます。

2. 記録メモリ

記録メモリはFIFO (ファーストイン-ファーストアウト) メモリの構造を成していて、記録メモリの容量が一杯になると最も古いデータを捨て、新しいデータを書き込みます。其の結果、記録メモリには常に最新のデータを保持するよう動作します。

3. 信号波形

A/Dコンバータから記録メモリへの書き込みは、トリガ回路によって制御されるものです。トリガ回路からの信号により記録メモリへの書き込みが停止すると、そこに保存された各ポイントのデータの集合体である波形記録は表示メモリへ転送されます。この表示メモリ上のデータを基に、オシロスコープのディスプレイに信号波形が表示されます。

4. プリトリガ

トリガ回路の信号により新たな信号の取り込みを直ちに停止すると、記録メモリに保存されている波形記録はトリガ信号以前のものです。このように、トリガ信号以前の入力信号を観測可能な点はデジタルオシロスコープの特徴の一つで、プリトリガと呼ばれる機能です。アナログオシロスコープでは、トリガ信号を受けてから輝線の掃引が開始されるため、トリガ信号以前の波形を捉えることが困難でした。

デジタルオシロスコープの選び方

機種選定時には、測定内容に対して十分なスペックを備えたオシロスコープを使用することが重要なポイントです。具体的には、以下のポイントを押さえる必要があります。

  • 周波数特性
    広い周波数帯域ほど有利
  • サンプリング周波数
    高速なサンプリング周波数ほど有利
  • チャンネル数
    チャンネル数が多いほど有利
  • メモリ長
    メモリ容量が大きいほど有利
  • 利用可能なプローブの種類
    多種のプローブが用意されていると有利
  • トリガ機能
    様々なトリガ条件が設定出来れば有利

デジタルオシロスコープは波形を観測するという基本的な用途に加えて、タイミング検証や波形解析、コンプライアンステストなどへと用途が拡大しており、それに伴い測定範囲の拡大や高機能化が進んでいます。一方、高性能を求めればその分高価格になることは避けられません。そのため、使用目的に合った機能を有する機種の選定がますます求められています。

デジタルオシロスコープのその他情報

1. 波形記録の活用

デジタルオシロスコープは、入力信号をデジタルデータとして記録メモリに記録しているため、記録メモリ内のデータを使った波形解析、例えばFFT演算による信号の周波数分析も行えます。さらに、そのデータを外部メモリ装置 (USBメモリ等) に出力して、PCによる解析やデータの保存もできます。

2. エリアシング対策

デジタルオシロスコープでは、入力信号の周波数に対してサンプリングの間隔が長いと誤った波形として観測することがあります。これをエリアシングと呼びますが、エリアシングを防ぐには、入力信号の最高周波数の2倍を超えるサンプリング周波数で波形データの取り込みが必要です。

刃物研磨機

刃物研磨機とは

刃物研磨機

刃物研磨機とは、刃物の切れ味を保つために研磨する機械のことです。

刃物は金属の先端を斜めに仕上げて尖った状態にしていますが、使用を続けていくうちに刃先が丸くなったり、傷がついたりすると切れ味が悪くなります。刃物研磨機は、丸くなってしまった刃先を削り取ることによって再度刃先を尖らせることができます。

刃物研磨機の使用用途

代表的な刃物として包丁がありますが、切れ味が悪くなった時は砥石や包丁研ぎなどを使って手動でで切れ味を復活させます。しかし、より大きく複雑な形をした刃物は手動で研磨するのは難しく時間もかかるため、そのような場合に刃物研磨機を使用します。

電動で研磨機が作動しているので刃先をあてるだけで簡単に研磨されるので手軽に研磨できます。

刃物研磨機の原理

通常刃物研磨機には、刃物を研ぐための砥石と徐々に砥石と刃物に水を供給するタンクがついています。刃物を研ぎたい角度に設定し、回転する砥石に触れ合わせることで刃先を研磨し尖らせていきます。また砥石の回転や刃物と砥石による摩擦によって発生する熱を防ぐためにも常時水が供給されるので比較的簡単に使用できます。

これらの刃物研磨機には、砥石の種類や砥石を動かすための作動方法にいくつか種類があります。

砥石は、炭化ケイ素質研磨材、溶融アルミナ質研磨材、ダイヤモンド研磨材の3種類が一般的で、種類によって研げる刃物の材質が変わります。

砥石を作動させる方法は、電力で回転させるタイプのものと音波によって振動させるものなどがあります。回転させるタイプは少し場所を取るためスペースを確保することが大切です。

透過型電子顕微鏡

透過型電子顕微鏡とは透過型電子顕微鏡

透過型電子顕微鏡とは、試料の内部の構造を観察することのできる測定装置です。

電子顕微鏡の一種で、極薄の試料に電子線を照射し試料を透過する透過電子や散乱電子などを検出することで、内部を観察します。光学顕微鏡では観察不可能な高倍率で試料の内部構造を観察することができるため、材料工学や生化学など幅広い分野で利用されています。(英:Transmission Electron Microscope (TEM) )

透過型電子顕微鏡の使用用途

顕微鏡の種類と分解能

図1. 顕微鏡の種類と分解能

透過型電子顕微鏡は数百倍~数百万倍の倍率で試料の内部構造を観察するために使用されます。

数十μmレベルの細胞全体の観察から、数Å (1Å (オングストローム) =10-10m) レベルの原子配列構造まで観察可能です。半導体やセラミックなど各種材料の構造解析、細胞や細菌などの生体試料の構造解析など、様々な対象物の観察に対応することができます。レンズ系の調整によって電子回折パターンを観察したり、分光装置の追加取り付けによって元素分析や状態解析を行ったりと様々な情報を取得することが可能です。走査型透過電子顕微鏡 (STEM) とは異なり、一度に画像データを取得できるため構造変化の経時変化を観察する目的で使用されることもあります。

透過型電子顕微鏡の原理

顕微鏡の種類と構造イメージ

図2. 顕微鏡の種類と構造イメージ

透過型電子顕微鏡の原理は、加速させた電子を試料に照射し、試料を透過した電子を検出することで内部の状態を観察します。構造は光学顕微鏡と類似しているものの用いる光源が可視光ではなく電子線であるため、試料の厚さを電子が透過できる程度 (100nm程度以下) にまで薄くする必要があります。試料を透過した電子の密度の差がコントラストとして現れます。

分解能は試料に照射する電子の波長が短いほど (エネルギー が大きいほど) 高くなります。300kVの加速電圧で電子を加速させた場合の波長は 0.00197 nmで光学顕微鏡で用いる可視光線の波長 (約380nm~約780nm) に比べて非常に短いため、高い分解能 (~0.1nm) で観察することができます。
加速電圧が高いほど波長が短くなり分解能も高くなりますが、その分試料へのダメージが増えるため適切に調整する必要があります。分解能の上限は光学系の収差などの要因から50pm程度です。

透過型電子顕微鏡のその他情報

1. 透過型電子顕微鏡に用いる試料の調製

用いる試料によっては、適切な試料調製を必要とするものがあります。

厚い試料
一般の透過型電子顕微鏡で観察する試料は100nm程度の厚さに薄くする必要があります。
1. 分散法
試料を溶媒中に分散させ、分散液を観察用基板に滴下します。
2. ミクロトーム法
ダイヤモンドナイフを用いて試料を100nm前後まで薄くする方法です。ポリマーなどの柔らかい試料は液体窒素で冷却したのち切断します。
3. Arミリング法
機械的な加工によって厚さを数10μmまで薄くした試料を、Ar+イオンを照射することにより、試料中の結合を切断しながら薄片化します。
4. FIB法
走査型電子顕微鏡 (SEM) などで観察しながら目的箇所をFIBで薄片化します。加速電圧が1000kV以上の超高圧電子顕微鏡 (HVEM) を用いれば厚さ5µm程度の試料でも観察可能ですが、装置が超巨大で構造も複雑であるため主に大学などの研究施設で所有されています。

重元素を含まない試料
高分子や生体試料はC、H、N、Oなどの軽元素で主に構成されているため電子の透過性が高く、構造の識別のためのコントラストが十分でない場合があります。構造を観察したい部分を電子散乱能の高い染色剤 (OsO4や RuO4など) で選択的に電子染色することでコントラストの十分な画像を得ることができます。電子染色は試料の構造を変化させる可能性があり、この影響を避けるためには透過型電子顕微鏡の位相差によってコントラストを得る方法や走査型透過電子顕微鏡 (STEM) などの利用が効果的です。

高真空下で蒸発や昇華する試料
高真空条件で蒸発や昇華が起こると試料の構造や形状が変化してしまうだけでなく、装置の故障につながる場合があります。これを防ぐためには環境制御透過型電子顕微鏡 (ETEM) やクライオ電子顕微鏡を使用する必要があります。

2. 透過型電子顕微鏡に付属される主な分析装置

電子線照射によって発生する主な電磁波

図3. 電子線照射によって発生する主な電磁波

加速させた電子線を試料に照射すると電子以外にも様々な信号を得ることができるため、透過型電子顕微鏡には様々な種類の分析装置が装着される場合があります。

電子線回折
弾性散乱した電子線の干渉を検出することで試料の回折像が得られます。回折像を解析すると結晶構造や配向性などの結晶学的な情報が分かります。

電子エネルギー損失分光法 (EELS)
非弾性散乱した電子線は、入射した電子線が試料内の電子を励起した後に試料から放出される電子線です。入射前と比較して電子線のエネルギーがどれだけ失われたかを測定することで、試料の組成や結合状態などの情報が分かります。

電子線トモグラフィー
透過した電子に CT (計算機トモグラフィー) の原理を適用することで、試料の断層画像を積み重ねた3次元立体画像を作製することができます。

これらの他にも様々な分析機能を追加することが可能です。独立した測定装置で測定を行った場合と比べて、透過型電子顕微鏡の画像を見ながら測定位置を選択できるため、より詳細な測定が可能になります。

金属顕微鏡

金属顕微鏡とは

金属顕微鏡とは、射型顕微鏡あるいは落射型顕微鏡とも呼ばれており、光学顕微鏡の1種です。

一般的に、工業用顕微鏡と言われているものの多くは金属顕微鏡を指しています。「金属」と名前が付けられていますが、金属・鉱石・セラミック・半導体などの光を通しにくい試料の表面が観察対象です。金属顕微鏡では、試料から反射する光を用いて拡大された観察像を得ます。

同じように試料からの反射光で観察するものとして実体顕微鏡がありますが、両者の違いは以下の通りです。

金属顕微鏡と実体顕微鏡の比較

  金属顕微鏡 実体顕微鏡
拡大倍率 数十~数百倍 数~数十倍
解像度 高い 低い
被写界深度 浅い 深い
観察対象 平滑面 立体
照明方法 落射照明 任意

金属顕微鏡の使用用途

金属顕微鏡は、金属組織や合金を始めとして、セラミックス、半導体やプラスチック系の電子部品、岩石や鉱石の観察などに使用されています。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 金属の鋳造や精錬、冶金などの現場で、原材料の物理的あるいは熱的処理前後の状態変化の観察。
  • プラスチックや半導体製品などの加工現場で、実体顕微鏡では確認できない微細なへこみや傷などの不具合の点検。
  • 精密機械工業や電気・電子工業などの生産現場での品質管理。
  • 金属組織学、鉱物学などの研究あるいは教育。

金属顕微鏡の原理

図1. 透過照明と反射照明で観察した同一視野のイメージ

透過照明観察と反射照明観察の一番大きな相違点は、透過で暗く見える部分が反射では明るく見えるということです。従って、生物顕微鏡では見えなかった情報が金属顕微鏡により補えます。微生物や細胞などを観察する通常の光学顕微鏡 (生物顕微鏡) は試料を透過してきた光を対物レンズと接眼レンズとによって拡大するため、透過型光学顕微鏡とも呼ばれています。

落射照明光学系

図2. 落射照明光学系 (偏光観察仕様) 

金属顕微鏡も光学顕微鏡の1種なので、生物顕微鏡と大まかな構造は同じですが、光が透過できない試料を高倍率で観察するための独自構造を持っています。それが対物レンズを通して照明する「落射照明光学系」です。この光学系では光源から放出された光がハーフミラーで反射され、対物レンズを通って観察試料に到達し、試料からの反射光が対物レンズと接眼レンズを通って人の目で観察されます。

金属顕微鏡の選び方

金属顕微鏡には10万円以下で購入できるポータブルなものから、レンズセットや撮影装置などのオプションを含めれば数百万円の価格となる大型のものまで、様々なタイプがあります。金属顕微鏡を選ぶ場合は、まず使用目的を明確にすることが大切です。実際に選択する際は、以下の点を考慮します。

  • 試料表面が下向きの方が良い場合、あるいは試料の交換を迅速に行いたいのであれば、鏡体が試料の下にある倒立型を、そうでない場合は正立型を選ぶと良いです。
  • 試料の光学的異方性など、偏光特性の観察を目的とする場合は、偏光フィルターセットが標準で付属する偏光顕微鏡を選択します。
  • 透過照明観察も行いたい場合は透過・反射照明を瞬時にワンタッチで切り替えできるものが最適です。
  • 観察イメージの写真・動画撮影を頻繁に行いたい場合は、カメラを取り付けたままで双眼観察のできる3眼タイプが最適です。
  • 100倍を超えるような高倍率で試料を正確に移動させたい場合は、メカニカルステージやXYステージなど、目的に応じたステージを選択します。

金属顕微鏡のその他情報

1. 主な光学フィルタ

金属顕微鏡にも生物顕微鏡と同様のフィルター類が用意されており、試料の光学的特性を詳細に観察するのに役立ちます。

色温度変換 (LB) フィルター
照明の光源に用いるランプの種類によって色温度が変わるため、観察する試料の色は光源により変わってしまいます。光学顕微鏡では試料の色が重要な観察要素の一つです。

文献などに書かれてる色との比較を正しく行うためには、同じ色温度で観察する必要があります。そこで、最も普遍的な光源である太陽光と同じ色温度にするために用いられるのが色温度変換フィルタ-です。

色補正 (CC) フィルター
色補正 (CC) フィルターは、光の三原色である赤・緑・青、あるいは色の三原色であるシアン・マゼンタ・イエローそれぞれの光の強度を調整することで、色の微妙な調整を行うものです。

偏光フィルター
偏光フィルターは光源の直後 (試料の前) に入れるポラライザーと試料と接眼レンズの間に入れるアナライザーのセットです。ポラライザーを通った偏光が、試料によって反射された際の偏光状態の変化をアナライザーにより判定します。

試料の結晶構造などにより偏光状態が変化するため、偏光フィルターを用いることで結晶の光学的特性や高分子の内部構造を知ることができます。

2. 金属顕微鏡用試料の調整

金属顕微鏡で観察する場合、試料表面を平滑に仕上げて、対物レンズからの光が垂直に入射されるようにセットしなければなりません。反射光での顕微鏡観察では、試料表面の傷などでは強いコントラストが得られますが、結晶の光学的方位の違いやわずかな組成の違いなどは判別できないことが多いです。

そのため、加工しなくても表面が平滑なもの以外は、観察前に試料を切断・研磨したり、見えにくい微細組織を見えやすくするエッチング処理などが必要となる場合もあります。

研磨片の作成
試料を適切な大きさに切断して研磨するためには、ダイヤモンドカッターや研磨装置を用います。 また、鉱物の研究などで、透過照明観察と反射照明観察の両方を切り替えながら作業を行いたい場合は、研磨薄片という特殊な研磨片が必要です。研磨片の作成はある程度自動化できますが、研磨薄片の作成には十分な経験と知識が必要となります。

エッチング処理

エッチング処理した鉱石

図3. 硝酸によるエッチングで現れた閃亜鉛鉱中の成長模様

本来はあるはずの結晶粒界や微細な構造が見えない場合、試料表面のエッチングにより解決できる場合が多々あります。エッチングには酸などによる化学的な方法と電解による方法があります。

参考文献
https://www.olympus-lifescience.com/ja/support/learn/03/043/

微分干渉顕微鏡

微分干渉顕微鏡とは

微分干渉顕微鏡 (英: Differential interference contrast microscope) とは、主に無色透明な物質を観察する際に使用される光学顕微鏡の1種です。

1954年ごろにジョルジュ・ノマルスキーがノマルスキープリズムと呼ばれるプリズムを開発して、それを応用した微分干渉観察法が今日まで装置に応用されています。観察に使用する光は、偏光顕微鏡 (英: polarization microscope または polarizing microscope) などで用いられている偏光です。

観察には直交する2つの偏光を物質に当てることで起こる光の干渉と光路差のズレから、コントラストの明暗を付けることで物質の形状を目で確認できます。

微分干渉顕微鏡の使用用途

微分干渉顕微鏡は、無色透明な物質や細胞などの生体物質の観察に利用されます。以前は通常の光学顕微鏡では透明物質の観察が難しいため、物質に色を付けてから観察していました。

しかし、観察まで手間が掛かり、かつ染色により物質を壊す場合もありました。その一方で、微分干渉顕微鏡を用いると光路差のズレを利用し、明暗のコントラストを付けて物質を立体的に見られます。生きた状態でも細胞などの内部構造を観察可能です。

微分干渉顕微鏡の原理

光源から出た自然光 (全方位に振動方向を持つ光) は、ポラライザーに入り直線偏光となります。直線偏光が最初のウォラストンプリズムに入ると、振動方向が直交する2つの偏光に分離して観察対象である物質を透過可能です。

物質を透過した2つの偏光は異なる位相の光となり、2つ目のウォラストンプリズムに入ると光が合成されます。そして、アナライザーに入ると再度同じ振動方向を持つ偏光になり、これが光の干渉です。

干渉し合った2つの偏光は位相が異なるため、光路差にズレが生じています。したがって、コントラストの明暗がくっきりとして透明物質でも立体的に観察できます。

微分干渉顕微鏡の構造

微分干渉顕微鏡の光路構成には、明視野顕微鏡 (英: bright field microscope) に偏光板2枚とノマルスキープリズム2個が加えられています。そのため、光路から偏光板とノマルスキープリズムを抜くと明視野顕微鏡として利用可能です。ノマルスキープリズムだけを抜くと偏光顕微鏡として使用できます。

微分干渉顕微鏡では光源が物質を透過して人の目に届くまでに、次のような工程をたどります。光源から始まり、ポラライザー (偏光子) 、ウォラストンプリズム、観察物質が乗ったステージ、対物レンズ、ウォラストンプリズム、アナライザー (検光子) 、接眼レンズを通過して人の目で観察可能です。

これらの中で偏光子やプリズムを使用すると、偏光の取り出し、光の干渉、光路差のズレを起こします。

微分干渉顕微鏡の選び方

微分干渉顕微鏡は、非染色の生物試料を観察する際にメリットが大きいです。具体例として、水中の単細胞生物、組織培養された細胞、ダニや線虫などの多細胞動物の非染色標本などが挙げられます。通常の明視野顕微鏡と比べて、高い解像度と明瞭な観察像が特徴です。

周囲の物質とあまり屈折率が違わない透明な試料には、微分干渉観察は適していません。多く色素を含む濃い色の試料や組織切片などの厚い試料の観察にも不向きです。ほとんどの非生物試料は偏光性を有するため、微分干渉観察には向きません。

微分干渉像は最適条件下でとても高い像質が得られるので、アーティファクトを生みにくいです。ただし、常に微分干渉像はノマルスキープリズムの方向を考慮して解釈する必要があります。特にプリズムの向きに平行な構造は見えないため注意する必要がありますが、試料を回転させて観察すれば容易に克服できます。

デジタルマイクロメーター

デジタルマイクロメーターとは

デジタルマイクロメーター

デジタルマイクロメーターは、1ミクロン単位の高い寸法精度が求められる際の測定に使われるマイクロメーターの種類で、寸法がデジタルで表記されるマイクロメーターです。

測定した寸法が目視で瞬時に確認ができるため、目盛りを直接読み取るアナログ式のような目盛りの読み間違いを防ぐことができることから、製造現場で積極的に採用されています。

構成部品は基本的にアナログ式と同等で、デジタル式にも目盛りが刻まれています。

デジタルマイクロメーターの使用用途

主に製造現場をはじめとし、ノギスよりもさらに精密な測定が可能なため、0.001mm単位の高い寸法精度が求められる部品の測定に使用されています。

また、マイクロメーターは用途に合わせた様々な種類のものが用意されていて、基本的な外径や内径、深さの測定から、平歯車の歯厚を測定したり、細い溝の測定、さらにドリルのウェブ直径を測定するものまで存在しており、場面に合わせた様々な用途において幅広く使われています。

デジタルマイクロメーターの特徴

基本的にはアナログ式のマイクロメーターと構造は同じですが、デジタルなので電源ボタンや0点合わせボタン、寸法保持(ホールド)ボタンが存在しており、種類によってはメートルとインチ表記を切り替えることができる特徴があります。

また、測定結果をパソコンやタブレットに転送できる機能が備わっているデジタルマイクロメーターもあり、業務の効率化に貢献しています。

しかし、デジタル表記された寸法は電気的なトラブルにより表記が狂ってしまう可能性があり、誤った数値が表示されることがあるため、あくまでも参考値として最終的には目盛りを直接確認して寸法が間違っていないかを確認しなければなりません。

また、マイクロメーターは直接触ると体温でフレームが温まってしまい正確な測定ができないため、マイクロメータースタンドを用いてマイクロメーターを固定して測定する必要があります。

さらに電池を使用するため、電池切れのリスクがあるのがデメリットと言えます。

ビニルキャブタイヤケーブル

ビニルキャブタイヤケーブルとは

ビニルキャブタイヤケーブル

ビニルキャブタイヤケーブルとは、キャブタイヤケーブルの一種で、絶縁体とシースの素材がビニールで構成された電線です。

英語で表記すると「Vinyl Cabtire Cable:であり、頭文字を取ってVCTと呼ばれます。高い柔軟性や耐水性を持っているため、移動用電線として最適です。

ビニルキャブタイヤケーブルの使用用途

ビニルキャブタイヤケーブルは身近な家電製品から産業用機械まで、幅広い用途で使用されます。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 延長コード配線用
  • 業務用空調機のコントローラ配線用
  • 小型コンプレッサの電源配線用
  • 電動工具の電源配線用
  • エレベータの内部配線用
  • 溶接機やディーゼル発電機の配線用

柔軟性に優れているため、移動が必要で且つ大きな動力が必要な配線に広く用いられます。また、柔軟性の高さから屈曲や張力に強いのが特徴です。そのため、工事現場などで持ち運び使用する機器にも使用されます。

ビニルキャブタイヤケーブルの原理

ビニルキャブタイヤケーブルは、芯線、絶縁体、シースで構成されます。

1. 芯線

芯線は、電気の通り道となる金属材料部分です。芯線の材料はほとんどの場合はが使用されます。他の金属と比較して導電率が高い上に安価なためです。芯線は複数本の細い銅線を撚り合わせた「より線構造」となっており、ケーブルが柔らかくなるため取り回しが簡単です。

2. 絶縁体

絶縁体は、芯線を保護する絶縁材料です。ビニルキャブタイヤケーブルでは、ポリ塩化ビニルなどのビニル材料が使用されます。識別を容易にするために色が付けられた絶縁体が一般的です。

3. シース

シースは、絶縁体付き芯線を外部環境から保護する絶縁材料です。電磁ノイズ防止などの観点から、絶縁体付き芯線はシース内部で撚り合わせられています。ビニルキャブタイヤケーブルのシースはポリ塩化ビニルなどのビニル材料です。一般的には灰色ですが、指定するとシースが色付きのケーブルも購入可能です。

ビニルキャブタイヤケーブルの特徴

ビニルキャブタイヤケーブルは、ゴムキャブタイヤケーブルと比較して軽く、柔軟性が高い点が特徴です。また、取り回しが容易で、価格も安価な点も特徴と言えます。

ただし、ゴムキャブタイヤケーブルの方が頑丈で対候性にも優れているため、鉱山などの過酷な条件下で使用されます。

ビニルキャブタイヤケーブルの種類

ビニルキャブタイヤケーブルには多くの種類が存在します。代表的な種類は、以下の通りです。

1. VCT

一般的なビニルキャブタイヤケーブルです。安価なため、最も汎用的に使用されています。耐電圧は600V以下である場合が一般的です。

2. VCTF

絶縁体とシースは同様にビニル材料ですが、VCTより安価なビニルキャブタイヤケーブルです。主に小型の電器機器に使用されます。VCTが600V以下で使用可能なのに対し、VCTFは300V以下でなければ使用できません。

ただし、VCTよりも被膜が薄い分、さらに高い柔軟性があります。耐水性にも優れているため、厳しい環境下においても耐えることのできる耐久性を持っているのが特徴です。

3. H-VCTF

耐熱性を有するビニルキャブタイヤケーブルです。一般的なVCTFよりも耐熱温度が高く、工業炉周りなどの熱が加わる条件で使用します。

4. S-VCTF

被覆に高重合体を使用したVCTFです。寒冷地で使用することが可能で、-45℃程度の耐寒性を有しています。

ビニルキャブタイヤケーブルのその他情報

キャブタイヤケーブルの由来

キャブタイヤケーブルは馬車のタイヤに由来した和製英語です。馬車のタイヤを製作していた会社がケーブルにタイヤ被覆を使用したことから、Cab (馬車) のTire (タイヤ) のように頑丈なケーブルとしてキャブタイヤケーブルと名付けられました。

タイヤはゴムで作られるのが一般的ですが、ビニル系被覆のタイヤもキャブタイヤケーブルと呼ばれています。

直流電流計

直流電流計とは

直流電流計

直流電流計とは、電気回路に流れる直流電流を測定するための計測器です。

直流電流計は大まかに次の2種類に分けられますが、表示形態も測定原理も異なります。

  • アナログ式直流電流計:メーター指針が動いて電流値を示します。
  • ディジタル式直流電流計:電流値を数値で表示します。

アナログ式のメリットは、針の振れで電流値の概要が一目でわかる点です。しかしながら、測定精度は一般的なもので誤差2.5%、高精度のものでも誤差0.2%程度となっています。

デジタル式のメリットは、電流値が数字で表示されるので読み間違いが発生しにくいことです。また、測定精度は一般的なものでも誤差0.2%程度、高精度のものであれば誤差0.02%を謳うものがあり、アナログ式より測定誤差が小さく正確な測定値が得られます。

直流電流計の使用用途

直流電流計は、様々な施設や工場で稼働する直流機器において、電源の供給状況や機器の運転状態などを正確に監視するために用いられます。例えば、直流モーターを使った設備では、負荷が大きくなると消費電流値が増加するので、何らかの異常が起きた場合には電流計が示す電流値が上昇もしくは下降し、それをいち早く検知することが可能です。

また、電子回路の動作を検証する際も、設計通りの電流が流れていることを確認するために電流計を使用します。

直流電流計の原理

1. アナログ式

アナログ式直流電流では主に可動コイル型と可動鉄片型が使われています。

可動コイル型
均一磁界中に置かれたコイルには、そのコイルに流れる電流に比例する回転トルクが発生します。このコイルにスプリングと指針が取り付けられたものが可動コイル型電流計で、コイルは回転軸を中心に回転しスプリングのトルクと釣り合ったときに静止しますが、その回転角が電流に比例するので、指針が示す位置が電流値を示します。これが可動コイル型の原理で、直流電流計としては最も一般的なものです。

可動鉄片型
測定電流が流れるコイルによって発生する磁界の中に、一方は固定、他方が回転できるようになっている2つの鉄片を配して、それらが反発あるいは吸引するトルクを利用したものです。実効値を指示しますので主に交流電流計に採用されますが、交流成分が乗った直流電流も測定可能です。但し、目盛りが均等ではないので数値の読み取りに難があります。

熱電型
被測定電流を熱線に流して発生した熱を熱電対を用いて熱起電力に変え、その熱起電力で可動コイルを動かす仕組みの電流計です。高周波域を含めた交流から直流まであらゆる電流測定が可能ですが、温度が上昇するまで待つ必要があるため、測定に時間がかかることや過負荷に弱いデメリットがあります。

アナログ式の電流計では、その計器固有の電流範囲を超える大きな電流を測定するために、電流計固有の内部抵抗値より小さな抵抗値の分流器を並列接続します。分流器に電流の大部分を流し、一部が電流計に流れる様に抵抗値を定めることで、測定範囲を広げることが可能です。

2. デジタル式

主にデジタルマルチメータの電流測定レンジがこのタイプに該当します。電源装置と機器の間に低抵抗の抵抗器を挿入し、その両端の電圧を測定して電流値に換算する仕組みです。

電圧の測定にはデジタル電圧計を使うので、電流値は (測定電圧÷抵抗器の抵抗値) の演算結果であり、それを数値表示します。前記抵抗器の抵抗値を変化させることにより、電流の測定範囲を拡げることが可能です。

直流電流計のその他情報

直流電流計の使い方

電圧測定では、測定する2点間にプローブをあてることで済みますが、電流計を使った電流測定では回路に電流計を挿入する必要があります。即ち、回路の測定したい箇所を一旦切断し、そこに電流計を挿入することが必要です。また、測定後は電流計を外して、回路を再接続する手間がかかります。

直流電流計の電極端子には極性表示があり、高電圧側をプラス電極に接続し、低電圧側をマイナス電極に接続します。言い換えると、電流計にはプラス電極から電流が流れ込み、マイナス電極から電流が流れ出ることになります。これが逆になると、電流計は反対方向に振れようとして、最悪の場合壊れてしまいます。

また、電流計に測定レンジを超える電流を流すことは禁物です。過電流が流れると電流計は発熱し、メーターのコイルが焼き切れることがあります。回路を流れる電流の大きさが不明な場合の電流測定では、最初大きな電流測定レンジで大まかな電流値を把握した後、最適な測定レンジに設定し直して、改めて測定することが望ましい手順です。