水晶フィルタ

水晶フィルタとは

水晶フィルタ (英: crystal filter) とは、水晶振動子の鋭い共振性を利用したフィルタのことです。

電気-機械フィルタの一種で、必要な周波数成分を取り出すためのバンドパスフィルタとして主に用いられます。水晶フィルタに使用する水晶振動子は高いQ値 (共振の鋭さ) を有しており、急峻な通過特性を示します。

そのため、水晶フィルタは選択的に周波数を取り出す際に有用です。SAW (弾性表面波素子) フィルタも必要な周波数成分を取り出せるので、フィルタに使用されることがあります。SAWフィルタは、基板上に金属皮膜により、くし形の電極を形成し、特定の周波数範囲を選択的に取り出すフィルターです。

水晶フィルタの使用用途

水晶フィルタは、広範な周波数成分の中から特定の周波数成分のみを選択し、不要な成分を減衰させることができます。そのため、精度の高い周波数選択が必要な機器に多く用いられます。一般的に多く使用されるのは、無線通信機器です。

無線機器では、搬送波 (キャリア) と呼ばれる信号が用いられます。搬送波とは、情報を送受信するために使用する電波などの基本的な波のことです。無線信号を作る際に、搬送波に送りたい情報を重畳させ通信信号を作ります。

そして、受信する際には、搬送波の分離が行われます。無線機器の中では、必要な周波数と不要な周波数の分離を行う必要があり、水晶フィルタなどを用いたフィルタが主流です。

水晶フィルタの原理

水晶フィルタに使用される水晶振動子は、三方晶系の水晶結晶を特定の方向にカットしたものです。室温付近から高温まで広い温度範囲にわたって温度係数が非常に小さく、周波数温度特性に優れています。

また、水晶は物理的、化学的に非常に安定している物質であり、エージング特性にも優れています。水晶フィルタは、水晶振動子の高いQを用いたフィルタです。QとはQuality Factorの略で、選択度と呼ばれます。

Qはフィルタ等に用いられる先鋭度を示し、Qが大きいほど帯域幅が狭く鋭い特性になり、Qが小さいほど帯域幅が広くなだらかな周波数になります。

水晶フィルタの種類

水晶フィルタは大きく、ディスクリート型水晶フィルタとモノリシック型水晶フィルタの2種類があります。

1. ディスクリート型水晶フィルタ

ディスクリート型水晶フィルタは、1つ以上の水晶振動子とコイル及びコンデンサを使用してパッケージし、1つの電子素子にしたものです。一般水晶フィルタの呼び方もあります。回路構成に使われるのは、主としてヤーマン形フィルタと呼ばれる回路です。

2. モノリシック型水晶フィルタ

水晶板を1枚使い、その上に2対以上の電極対を接近して配置し、電極間の音響的結合による複数の振動モードと共振する特性を利用したフィルタです。エネルギー閉じ込め理論を応用しています。

ディスクリート型に比べて設計・製造上の制約が大きいですが、1枚の水晶板が複数の振動子になり、又コイルが必要なヤーマン回路を用いません。そのため、小型・軽量の特性があります。

モノリシック型水晶フィルタは、他のフィルタと比較して、温度に対する安定した周波数特性を有し、低損失・高遮断特性・エージング特性なども優れています。SAWフィルタと比べると、製造範囲が低周波・狭帯域です。

水晶フィルタのその他情報

Qの特性

Q値は計算が可能で、中心周波数に対してどの程度の帯域幅の特性を持つかで表されます。

   Q = ωo / (ω2 − ω1)

ωo:中心周波数、ω2, ω1: ωoに対して1/21/2の強度の周波数です。

一般的な受動部品であるLCを用いたバンドパスフィルタは102程度になりますが、水晶振動子はQ値が高く103~106程度あり、水晶フィルタはQ値の高いフィルタを構成できます。Q値の高いフィルタをバンドパスフィルタとして用いて、信号をフィルタに通すと中心周波数以外ではほとんど出力が出ず、特定の周波数を選択的に得る回路を作ることができます。

参考文献
https://www.qiaj.jp/pages/frame20/page01.html
https://www.kds.info/wp-content/uploads/2015/11/p085-092_ja.pdf
https://www.kds.info/wp-content/uploads/2020/06/white-paper-jp-20200616.pdf

多芯ケーブル

多芯ケーブルとは

多芯ケーブル

多芯ケーブルとは、内部芯線が2本以上存在するケーブルのことです。

信号配線用と電力供給用のどちらの用途でも使用されます。家庭用等の雑電力には、単相の回路が多いです。従って、2本のケーブルまたは、アースを含めた3本のケーブルで電力を供給します。産業における電力供給用としては三相回路が使用されるため、3本またはアースを含めた4本の多芯ケーブルが使用されます。

信号用ケーブルには、4本以上の内部芯線を有する多芯ケーブルが使用されることも多いです。電話線用の場合は、内部芯線が100本以上の多芯ケーブルが使用される場合もあります。ノイズに弱い微弱電流信号の伝送用には、シールドと呼ばれる導電層を施して対策することもあります。

多芯ケーブルの使用用途

多芯ケーブルは、電動機器を動かす際には必ずと言って良いほど使用されています。また、家庭用エアコン等にも使用され、世に広く使用されているる部品の一つです。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 家庭用エアコンの電源配線用
  • 産業用ポンプの電源配線用
  • シーケンサへの入力配線用
  • 分散型制御システムへの入力配線用

電気回路は片端を接地して使用する場合を除いて、往路と復路が必要です。したがって、2本以上の多芯線が多く使用されます。

大型の産業設備では、リミットスイッチなどのセンサが多数使用されます。1つのセンサは2本程度の芯線で信号を発信しますが、機械近傍に端子盤を設置して数十芯の多芯ケーブルで制御装置へまとめて伝送することで、工数を削減するような使い方がされています。

多芯ケーブルの原理

多芯ケーブルはシース、導体、絶縁被覆、介在物などで構成されます。

1. シース

シースはケーブルを保護する外皮です。ゴムやポリエチレンなどの頑丈な絶縁物が使用されます。日光や雨水などの外部環境からケーブルの芯線を保護する目的で設けられた部材です。また、シールドケーブルの場合はシースと芯線の間に銅テープなどの金属遮蔽を施されます。なおシースは英語でsheathと表記され、鞘などの覆いを指す言葉です。

2. 導体

導体は電気の通り道となる金属部分です。電気抵抗が低く値段も銀などに比べて安価なが使用されます。金属の中では柔らかく、曲げやすい点も銅のメリットです。導体は単線構造とする場合と撚線構造とする場合があります。

LANケーブルでは単線構造とする場合がありますが、多芯ケーブルではほとんどの場合撚線構造が採用されます。撚線構造とは複数の細い導体を撚り合わせて芯線を構成する構造で、可撓性が高いという点がメリットです。

3. 絶縁被覆

絶縁被覆は導体を絶縁する被膜のことです。ほとんどの場合は、ビニルなどが使用されます。絶縁被覆は接続時の誤配線防止を目的に着色されたり、芯線番号が印字されていたりします。

4. 介在物

介在物は芯線間に充填される部材です。紙ひもやジュートなどが使用されます。芯線の配置を安定させることを目的に充填されます。

多芯ケーブルの種類

多芯ケーブルは、使用用途に応じて構造が違うケーブルが使用されます。以下は、多芯ケーブルとして使用される代表的なケーブルです。

1. VCT/VCTF

ビニルをシースとするビニルキャプタイヤケーブルです。コンセントや電動工具用など、移動して使用する配線に使用します。頑丈で安価なため、幅広く使用されるケーブルです。

2. 2PNCT/WCT

合成ゴムや天然ゴムをシースに使用するゴムキャブタイヤケーブルです。シースが頑丈かつ曲げやすいため、ケーブルベアの内部などで使用されます。ビニルキャブタイヤケーブルよりもさらに過酷な環境で使用されます。

3. CVV/CVVS

ビニルをシースとするケーブルで、多芯ケーブルの代表とも言えます。10芯以上で使用されることも珍しくないケーブルで、産業機器などの制御用配線として使用されます。CVVSはシールド層付きのケーブルで、アナログ信号などを伝送するために用います。

単芯ケーブル

単芯ケーブルとは

単芯ケーブル

単芯ケーブルとは、1本の芯線しか内部に存在しないケーブルのことです。

ほとんどの場合、電気回路は平衡状態であることが求められます。単相回路では1相に流れる電流と、もう1相に流れる電流が釣り合う必要があるため、2本以上にケーブルが必要になります。また、3相回路でも、3相の電流の和が等しくなるようにしなければなりません。従って、単芯ケーブルは1本では用をなさないことがほとんどで、2本以上合わせて使うことで電気回路を成り立たせます。

単芯ケーブルの使用用途

単芯ケーブルの主な使用用途はは2種類あります。

一つは、アース線としての使用方法です。アース線とは、大地に埋めた接地極と接続されたケーブルで、対地間抵抗が100Ω以下となるように保たれます。平衡回路が成り立っている状態ではアース線に電流が流れることはありません。配線や機器に異常があった場合に機器に対地間電圧が掛かると感電の恐れがあるため、アース線に電流が流れるようにして安全を担保しています。アース線は大地に電流を流すことが目的の為、1本で使用されます。

2つ目は、電力回路としての使用です。上述したように2本以上組み合わせて電力用として使用するのが一般的です。

単芯ケーブルの原理

単芯ケーブルは多芯ケーブル等と同様の仕組みを取ります。

外装となるシースと芯線を保護する保護被覆を有しており、シースは用途によって様々な材質が使用されます。保護被覆は、低圧回路では安価なビニール等が使用されます。

単芯ケーブルは、単芯で表面積を大きく取れるため、放熱性能に優れています。従って、ほとんどの場合は大電流を取扱うために使用されます。ケーブルラック上や暗渠の中では放熱性能を高めるため、可能な限りケーブル同士積み上げず、平らに積むこととしています。具体的な基準は、国内では電気設備技術基準や内線規程で定められています。また、超特別高圧配電線路に使用する単芯ケーブルは、放熱性を高めるために内部に絶縁油や冷媒を循環させる場合もあります。

また、カメラ用のケーブルとして単芯同軸ケーブルが使用される場合もあります。これは、芯線から絶縁されたシールドが単芯の芯線を覆っており、芯線とシールドで2芯ケーブルのように使用します。アナログ画像信号としてはかつて主流の使い方でしたが、現在はLAN等のデジタル信号に置き換わりつつあります。

 

炭素繊維

炭素繊維とは

炭素繊維

炭素繊維とは、組成の大部分が炭素からできていて、軽くて強い特徴をもつ繊維です。

カーボン繊維、カーボンファイバーとも呼ばれ、繊維状にした有機化合物を耐炎化した後、1,000℃以上の高温加熱処理 (焼成) することで、原料の有機化合物に含まれる水素、窒素原子を除去し、炭素原子の含有率を90%以上にしています。

炭素繊維の使用用途

炭素繊維は、強度を確保しつつ軽量化できるという特長を活かし、金属材料の代替として多方面で使用されます。さらに柔軟性、電子伝導性があり、腐食しにくい、燃えにくいという特徴があるため、使用分野は幅広いです。

炭素繊維は単独で使用されることは少なく、一般的に樹脂・セラミック・金属などの素材と複合した炭素繊維複合材料として使用されます。具体的には、軽量化と高強度が求められる航空機、ロケット、人工衛星や、軽くて扱いやすいことから義足などの外科装具、車椅子や介護用ベッドなどの介護機器などです。

特に車関係では、車両の軽量化に伴い低燃費化に貢献できます。このため、レース系の車両には炭素繊維開発当初の頃から注目され、使用されていました。また、炭素繊維は強度と弾性率が高いことから、ゴルフシャフト、釣り竿、リール、自転車のフレーム、テニスラケット、スキー、スノーボードなど、スポーツ用品分野の用途もあります。

今後は、コンクリート構造物に炭素繊維シートを貼って耐震性を補強することや、吊り橋のケーブルや鉄骨などの代替材料として使用することなど、建築・土木分野への利用も期待されています。

炭素繊維の種類

炭素繊維は、原料によってPAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維の2種類に分類されます。現在は、PAN系炭素繊維が主流で、全世界の炭素繊維生産量の90%を占めています。

1. PAN系炭素繊維

PAN (ポリアクリロニトリル) 繊維から作られる炭素繊維で、強度と弾性率が非常に高く宇宙産業など高い信頼性を求められる産業分野から、身近なものではレジャー用品やスポーツの分野で幅広く使用されています。

この中で最も利用されているのは産業分野です。車関連ではボンネット、スポイラー、ガソリンタンクその他多くの部品に使用されています。その他、板ばねやギアなどのように金属部品の代替材料として使用されています。

2. ピッチ系炭素繊維

ピッチ系炭素繊維は、弾性率を調整できる特徴があります。このため、高弾性を必要としない部分や、逆に高弾性が必要な製品に使用されています。ピッチ系炭素繊維の中でも、さらにメソフェーズピッチ繊維、等方性ピッチ繊維に分けられます。

メソフェーズピッチは、原料の分子が液晶状態となって配向し光学的異方性を持っており、これから得られるメソフェーズピッチ繊維は、高強度、高弾性率の高性能炭素繊維 (HPCF) です。一方の等方性ピッチは、構成分子がランダムに配向しており、光学的には等方性です。

これから得られる等方性ピッチ繊維は強度、弾性率といった機械的な物性は、メソフェーズピッチ繊維に劣りますが、それ以外の部分においては同等の性能を持ち、弾性率が低めの汎用炭素繊維 (GPCF) となります。

炭素繊維のその他情報

炭素繊維の製造方法

炭素繊維は原料の違いにより、PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維がありますが、どちらも製造工程としてはおよそ以下の通りです。

  • 耐炎化:空気中で200~300℃の温度で加熱することで繊維を酸化させ、後工程での溶融を防止
  • 炭素化:不活性雰囲気下で800~1600℃に加熱することで水素、窒素、酸素を繊維中から除去
  • 黒鉛化:不活性雰囲気下で2,500~3,000℃に加熱することで、炭素を黒鉛化し弾性率向上

1. PAN系炭素繊維
アクリル繊維 (PAN繊維) を原料にして作られます。耐炎化工程では、空気中で200〜300℃の熱を加えてアクリル繊維の分子を環状構造にします。炭素化工程では、不活性ガス中で1000℃以上の熱を加え、分子構造を炭素の結晶構造へと変化させます。

炭素化工程終了の段階でも高強度・高弾性率の炭素繊維ができあがっていますが、さらに2,000℃以上の熱を加える黒鉛化工程を経ると、強度は若干低下しますが、弾性率の高い黒鉛繊維が得られます。

2. ピッチ系炭素繊維
石炭・石油を乾留して得られたタールを、蒸留した際に残る石炭ピッチ・石油ピッチを繊維化・焼成して作られます。耐炎化工程前の溶融紡糸工程で、ピッチから長繊維を作り、それを安定化処理して前駆体繊維を得ます。前駆体繊維をPAN系炭素繊維同様に、耐炎化、炭素化、黒鉛化して、ピッチ系炭素繊維が作られます。

参考文献
https://www.aibsc.jp/nsj/01gijyutsu/110501_01/
https://www.carbonfiber.gr.jp/material/

電源用IC

電源用ICとは

電源用IC

電源用IC(英語: Power supply integrated circuit)とは、電子機器を動作させる際に、安定した電源電圧が供給されるように制御を行う電子部品です。例えば、家庭用コンセントの交流100 Vを直流電圧に変換してさまざまな電子機器を使用する際に、電子機器の負荷が異なっても一定の出力電圧を維持するように制御します。また、使用中に負荷が変動したり温度などの使用環境の変化が生じても、安定した出力電圧を維持するように制御します。

電源用ICの使用用途

電源用ICは家電製品や携帯機器などさまざまな電子機器に使われています。最近の家電製品は電子制御されているものがほとんどで、その制御にさまざまな電子回路が搭載されています。また、携帯機器はディスプレイ、カメラ、センサなどさまざまな機能が搭載されています。それらを動作させるためには複数の電源電圧を安定して供給する必要があります。また、最近はリチウムイオン電池などの二次電池で動作する電子機器も増えてきており、安全に充電を行ったり安定した出力電圧を得るために電源用ICで制御を行っています。

電源用ICの原理

電源用ICには、リニアレギュレータ、DCDCコンバータACDCコンバータ、二次電池の充放電制御などさまざまな種類があります。基本的な動作原理として、入力と出力の間に制御素子があり、電源ICで出力電圧をモニタして、出力が一定電圧を維持するように制御素子の状態を制御します。制御素子にはパワーMOSFETIGBTなどのトランジスタ素子を用いることができます。

リニアレギュレータでは、出力電圧の変化に応じてトランジスタのゲートに印加する電圧を可変し、一定の出力電圧を維持するようにトランジスタの抵抗値を制御します。

DCDCコンバータやACDCコンバータでは、トランジスタをスイッチング素子として使い、出力電圧が一定になるようにトランジスタのオン/オフを制御します。また、ACDCコンバータでは力率を改善するための制御も行います。

また、二次電池の充電制御では電圧だけでなく電流や温度もモニタし、安全な範囲内でできるだけ充電電流を流して急速充電できるように制御をしています。

参考文献
https://club-z.zuken.co.jp/tech-column/20170831_r001.html
https://www.ablic.com/jp/semicon/products/power-management-ic/voltage-regulator-ldo/intro-2/
https://www.ablic.com/jp/semicon/products/power-management-ic/switching-regulator/intro-3/

電磁チャック

電磁チャックとは

電磁チャック

電磁チャック (英: electromagnetic chuck) とは、工作機械で被削材を電磁石により吸着固定する器具です。

電磁石を使用するため、吸着動作を行うには外部から電力の供給が必要です。また、通電時に発熱するので、比較的精度を要しない大型の材料加工用に適しています。さらに、チャックの大型化が容易であり、幅広いサイズの材料への適用が可能です。

吸着力の調整が外部スイッチの操作でできるため、機械と連動させた自動化が比較的簡単に行えます。永電磁チャックと呼ばれるものがありますが、これは着脱する場合、磁石に瞬間的に通電し、あとは無通電で使用するタイプです。

電磁チャックの使用用途

電磁チャックは、各種工作機械に使用されます。フライス盤、ボール盤、研削盤、中ぐり盤、歯切り盤、ブローチ盤 、マシニングセンタなどで加工する場合、電磁チャックを使用して被削材を固定します。また、放電加工などの切削しない加工機でも使用可能です。

被削材が鉄系の場合、磁力で工作機械のベッドに固定ができます。電磁チャックであれば、スイッチで磁力のon-offが可能なので、被削材の脱着が容易になります。

電磁チャックの原理

1. 一般的な電磁チャック

電磁チャックの電磁石は、鉄心とコイルから構成されます。チャックの面板の表面は多くの溝が切られ、防水層で内部に水などが入らないような構造です。

電磁石に通電すると、鉄心とコイルにより磁力線が発生します。鉄心からチャック本体に磁力が伝わり、取り付ける被削材を吸着します。逆に被削材を脱着する場合は、電磁石の通電を止めれば、直ちに吸着を止められます。

2. 永電磁チャック

電磁チャックには、永久磁石を使用した永電磁チャックがあります。永電磁チャックは、被削材の着脱に時のみ通電します。その後、通電を解除してもヨーク内に磁束が発生して磁力を作り、常時通電しないので省エネです。

永電磁チャックは、チャックの面板の多数の溝の中に棒状の細い電極を入れ、両側を真鍮製のセパレータを付けた構成です。着脱はパルス電圧をかけて、着磁・消磁を行います。ワークの着脱がスイッチで可能で、温度上昇による熱変位がなく、高精度加工が実現されます。

電磁チャックの特徴

電磁チャックは、電磁力を利用して、被削材を固定するので、特徴がいくつかあります。

1. ワークの着脱が容易

電磁石はスイッチでon-offができるので、被削材をスイッチ操作で着脱が可能です。また、機械と連動した自動化に対応できます。

2. 吸着力の調整が可能

吸着力の強弱調整が容易に可能です。加工の種類・力に応じて調整します。重切削用の強力形電磁チャックもあります。

3. 大型化が容易

チャックサイズの大型化が容易にできます。吸着力が300kg程度のチャックがあります。

電磁チャックの種類

電磁チャックの外形による種類は、丸型と角型です。被削材やベッドの形状と加工方法などにより選択します。 また、冷却なし、水冷式、空冷式の分類も可能です。電磁チャックは、通電すると発熱します。したがって、冷却することで被削材の温度変化を小さくして、加工精度を高めます。

さらに、可傾式の電磁チャックがあります。傾斜角度が自由に設定できるチャックです。型部品の研削などの際に、正確な角度出しができます。軸に高精度の特殊鋼を使用し、軸受は多数のボールを使った遊びのないものです。また、レバー式のワンタッチ固定を使って、固定による変動を防止します。クーラントを内部に循環して恒温に保持して、温度変化による精度悪化を無くしています。

永電磁チャックは、永久磁石と電磁石を使用するタイプです。着脱時のみ電力を使用するので、省エネです。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/080/
http://www.kanetec.co.jp/mgch-guide.pdf

電動リフト

電動リフトとは

電動リフト

 

電動リフトは、高所作業を要する場面で、荷物を搭載し移動させるための昇降作業台です。

たとえ重量のある荷であったとしても、安定して昇降動作ができ、必要時にはただちに停止させることができます。

昇降のスピードが制御でき、一定速度で昇降することで、規則的な運動が求められるバメ電は効率的な作業が実現できます。

油圧式のリフトと比べて、昇降時に発生する騒音も小さく、また油漏れのリスクがないというメリットがあります。

電動リフトの使用用途

電動リフトは高所まで物品や人の昇降を要する様々な作業現場において使用されます。

食品工場や自動車工場、化学工場、家電工場などといった工場では製造ラインに組み込まれることで、搬送されてきた物品を電動リフトに載せてその高さを調整することができます。

舞台装置でも使用され、演出に合わせて道具の位置を電動リフトによって調整します。

他にロボットの組み立てする際に、部品をドッキングするためにリフトが使用されます。 

電動リフトの原理

工場の製造ラインや高所作業が必要な現場では、荷の昇降が必要となる場面があります。

重量のある荷を昇降する器具としては主に電動リフト、油圧式リフト、電動油圧式リフトがあります。

電動リフトは昇降の駆動力として油を使用しないため、油漏れせず、自然降下するリスクがありません。また油の交換も必要ありません。

油圧式リフトは、油圧を利用して作業者が手動でリフトの高さを調整し、荷を昇降するものです。比較的軽い荷の昇降に対して適した器具と言えます。リフト自体の移動なども容易で、狭いスペースであっても使用することができます。電源を必要としないメリットもあります。

電動油圧式リフトは、本体に油圧ユニットを内蔵した電動リフトであり、耐久性に優れ、用途に応じて幅広く利用されています。

多くの電動リフトでは、荷の設置面を水平に保持するためにX字状のアーム(パンタアーム)を利用して昇降します。

このパンタアームの効果により、リフトの横揺れが抑制され、安全に昇降することができます。

参考文献
http://www.akashin.co.jp/dlift.html
https://www.webshiro.com/buturyufile/p03-51dendolifter_buturyu.html

電動工具

電動工具とは

電動工具

電動工具とは、電気によって動作する工具のことです。

メガネレンチドライバーなどの工具は、一般的に人力で使用するものです。電動工具を使用することで、人力よりも圧倒的に早く作業を行うことが可能です。一部の電動工具は人力よりも大きな力で工作をできるものもあります。

ただし、人力で使用する工具よりも高価であるという欠点があり、駆動部が故障することもあります。また、電池やモーターを付属しているため、重量も重く、小回りが効かないため狭い場所などでは使用できない場合があります。

電動工具の使用用途

電動工具は、生産現場や建築現場で広く使用されます。米国等のDIYが盛んな地域では、一般家庭でも所持している場合があります。

プロセス系工場等の巨大な配管を有する場所では、フランジ部分に使用されるボルトも巨大であり、人力では締結に時間がかかります。従って、インパクトレンチなどを用いて工数の削減を実現しています。また、錆落としや金属の加工などを目的に、電動サンダーが使用されることもあります。

建築現場では、木材の切断や加工、石膏ボードの加工などに使用されます。現在の産業ではなくてはならない存在です。

電動工具の原理

電動工具は、その名の通り、電気の力で動作する仕組みとなっています。大まかには、電力供給用のコードが付いたものと、電池で動作するものがあります。

世界的に、電力会社が供給する商用電源は交流です。そのため、コードが付いたものは交流用モーターが内蔵されており、内部で回転することで工作します。ボルトやねじ等は扱う装置の大きさによって頭の大きさが異なります。従って、それらの締結用電動工具はアタッチメントを変えるだけで締結できる頭を変えることができるものがほとんどです。また、アタッチメントを変えてドリルやドライバー、レンチなどを1商品で担う多機能商品もあります。

近年は、リチウムイオン電池などを代表する蓄電技術が進化したことにより、電池で動作する電動工具が需要のほとんどを占めます。電源も直流低電圧となるため、感電の危険も低くなります。電池は直流の電源となるため、直流モーターを内蔵しています。電池式の電動工具には付属品として、ACアダプタ付きの充電器が付きます。

 

電力計

電力計とは

電力計

電力計 (英: Wattmeter) とは、電気電子機器 (負荷) で消費される電力を測定するための装置です。

電力計は電源と負荷の間に挿入して使用し、印加される電圧と流れる電流の積 (電圧×電流) から電力を算出することができます。交流においては、電圧と電流の間に位相差があり、それが電力に影響するため、それらを同じタイミングで測定することが重要です。

また、近年は電源の品質も重要になってきており、電圧、電流、電力の波形を評価する機能が付いているものもあります。

電力計の使用用途

近年、地球環境問題への対策として消費エネルギー削減が大きなテーマになっており、さまざまな電気電子機器の消費電力を確認するために、電力計のニーズが高まってきています。節電を目的とした一般家庭向けから、工場やビルなどの電力監視システム向けまで、その用途はさまざまです。また、開発や生産の現場では、電力の測定に加えて、位相角や力率、高調波、フリッカ、ひずみ、ノイズなどの各種評価を行うために、高精度で高機能な電力計が必要とされています。

電力計の原理

電力は電圧×電流の積であるため、電圧と電流をそれぞれ測定して算出することができます。直流の場合は電圧も電流も一定になるので、それぞれを別々に測定しても電力を算出することができますが、交流の場合は電圧と電流の位相差を考慮しなければならないので、それぞれの瞬時値を同じタイミングで連続して測定することが必要です。

電圧と電流の瞬時値の積で算出される瞬時電力を積分し、一周期で平均した値が電力になります。これは実際に負荷で消費される電力であり、有効電力といいます。電圧の実効値をV、電流の実効値をI、電圧と電流の位相差をθとすると、有効電力はV×I×cos(θ)で算出できます。

交流の電力には、ほかに無効電力と皮相電力があります。それぞれ電力供給システムの効率や安定性を評価するために使用され、特に産業用電力システムや電力会社にとって重要です。電力ファクター (Power Factor) という概念は、有効電力と無効電力の比率を表し、電力供給システムの効率を改善するための対策を検討する際に参考にされます。

1. 無効電力 (英: Reactive Power)

電力供給システムにおいて電流と電圧の位相差によって生じる電力の一部で、電源と機器の間を往復する電力のことです。具体的な成分は負荷のコイル成分やコンデンサ成分によるもので、電力はV×I×sin(θ)で算出することができます。

2. 皮相電力 (英: Apparent Power)

電力供給システムにおいて実際に流れる電流と電圧の積で、皮相電力の二乗=有効電力の二乗+無効電力の二乗、という関係式が成り立ちます。

電力計の選び方

1. 測定対象の種類と要求精度の確認

測定対象 (電力、電流、電圧、力率など) と必要な測定精度を明確にします。用途に応じて、必要な測定範囲や解像度が異なるため、正確な要件を把握することが重要です。

2. 電力計のタイプの選択

電力計には、アナログ電力計とデジタル電力計の2つの主要なタイプがあります。アナログ電力計は瞬時値を表示し、デジタル電力計はデジタル表示とデータログ機能を提供します。そのため、使用用途や実際の作業環境、読み取りのしやすさに合わせて選ぶ必要があります。

3. 電力ファクターと精度の検討

電力ファクターとは、有効電力と無効電力の比率を示します。電力ファクターの評価と、選んだ電力計の精度に注意を払う必要があります。高い電力ファクターを維持するために、適切な製品を選びます。

4. 通信とデータ収集機能の確認

最新の電力計には、通信インターフェース (通常はModbusやEthernetなど) やデータ収集機能が備わっていることがあります。リアルタイムデータの収集や遠隔監視が必要な場合には、これらの機能を備えた電力計を選択することが重要です。

参考文献
https://tmi.yokogawa.com/jp/library/resources/measurement-tips/fundamentals_of_power_meter_and_power_measurement/
https://e-sysnet.com/
https://ednjapan.com/edn/articles/2003/16/news010.html

電力量モニタ

電力量モニタとは

電力量モニタ

電力量モニタとは、消費電力の削減による省エネ効果を高めるために、使用する機器などの消費電力をリアルタイムで計測する装置です。

一定時間ごと (分単位から1ヶ月単位まで) に計測値を本体のメモリに保存したり、ネットワーク通信によって計測値を転送したりする機能を有します。また、過電流や不足電流まで検知し、一定のしきい値に達した場合には警報を出力する多機能の電力量モニタもあります。 

目的に合わせて計測値を解析することで、システム全体における電力使用状況を見直すことができます。

電力量モニタの使用用途

近年、省エネ実現のために電力使用量の削減が求められていることから、電力量モニタの役割は重要になっています。

装置自体も小型で簡便に使用でき、データログ機能も充実したものが多いことから、省エネ効果を高めたい多くの場面で利用されています。

例えば、工場やビル、事業所、学校、大型店舗で省エネの推進を目指す場合、電力量モニタにより電力使用量の最適化を図ることは有効です。改正省エネ法が施行に伴い、電力量モニタの導入はより一層進みつつあります。

電力量モニタの原理

代表的な手法として、トランスの原理を使用したもの (カレントトランス) があります。

通常、トランスは一次側コイルと二次側コイルからなり、それぞれの巻き数に応じて電流を変換します。一方で、カレントトランスは、一次コイルの代わりに電線を鉄心の中に通したものです。

電線に流れた電流は、二次コイルに生じる電流によって検出します。電力量モニタでは、カレントトランスによって検出した電流・電圧を内蔵した演算器によって電力値へと変換します。さらに、電力値を一定時間積算することで電力量を導出し、表示器や通信器などを通じて外部へと出力します。

このような原理により動作する電力量モニタは、必要な現場へと持ち運びできる「可搬タイプ」と、配電盤発電機などの組込み用機器として使用する「常時設置タイプ」に分けれられています。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/products/family/2646/
https://www.yokogawa.co.jp/solutions/products-platforms/components/power-monitors/pr720
https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/powermonitor_tg_j_1_2.pdf