水晶フィルタ

水晶フィルタとは

水晶フィルタ (英: crystal filter) とは、水晶振動子の鋭い共振性を利用したフィルタのことです。

電気-機械フィルタの一種で、必要な周波数成分を取り出すためのバンドパスフィルタとして主に用いられます。水晶フィルタに使用する水晶振動子は高いQ値 (共振の鋭さ) を有しており、急峻な通過特性を示します。

そのため、水晶フィルタは選択的に周波数を取り出す際に有用です。SAW (弾性表面波素子) フィルタも必要な周波数成分を取り出せるので、フィルタに使用されることがあります。SAWフィルタは、基板上に金属皮膜により、くし形の電極を形成し、特定の周波数範囲を選択的に取り出すフィルターです。

水晶フィルタの使用用途

水晶フィルタは、広範な周波数成分の中から特定の周波数成分のみを選択し、不要な成分を減衰させることができます。そのため、精度の高い周波数選択が必要な機器に多く用いられます。一般的に多く使用されるのは、無線通信機器です。

無線機器では、搬送波 (キャリア) と呼ばれる信号が用いられます。搬送波とは、情報を送受信するために使用する電波などの基本的な波のことです。無線信号を作る際に、搬送波に送りたい情報を重畳させ通信信号を作ります。

そして、受信する際には、搬送波の分離が行われます。無線機器の中では、必要な周波数と不要な周波数の分離を行う必要があり、水晶フィルタなどを用いたフィルタが主流です。

水晶フィルタの原理

水晶フィルタに使用される水晶振動子は、三方晶系の水晶結晶を特定の方向にカットしたものです。室温付近から高温まで広い温度範囲にわたって温度係数が非常に小さく、周波数温度特性に優れています。

また、水晶は物理的、化学的に非常に安定している物質であり、エージング特性にも優れています。水晶フィルタは、水晶振動子の高いQを用いたフィルタです。QとはQuality Factorの略で、選択度と呼ばれます。

Qはフィルタ等に用いられる先鋭度を示し、Qが大きいほど帯域幅が狭く鋭い特性になり、Qが小さいほど帯域幅が広くなだらかな周波数になります。

水晶フィルタの種類

水晶フィルタは大きく、ディスクリート型水晶フィルタとモノリシック型水晶フィルタの2種類があります。

1. ディスクリート型水晶フィルタ

ディスクリート型水晶フィルタは、1つ以上の水晶振動子とコイル及びコンデンサを使用してパッケージし、1つの電子素子にしたものです。一般水晶フィルタの呼び方もあります。回路構成に使われるのは、主としてヤーマン形フィルタと呼ばれる回路です。

2. モノリシック型水晶フィルタ

水晶板を1枚使い、その上に2対以上の電極対を接近して配置し、電極間の音響的結合による複数の振動モードと共振する特性を利用したフィルタです。エネルギー閉じ込め理論を応用しています。

ディスクリート型に比べて設計・製造上の制約が大きいですが、1枚の水晶板が複数の振動子になり、又コイルが必要なヤーマン回路を用いません。そのため、小型・軽量の特性があります。

モノリシック型水晶フィルタは、他のフィルタと比較して、温度に対する安定した周波数特性を有し、低損失・高遮断特性・エージング特性なども優れています。SAWフィルタと比べると、製造範囲が低周波・狭帯域です。

水晶フィルタのその他情報

Qの特性

Q値は計算が可能で、中心周波数に対してどの程度の帯域幅の特性を持つかで表されます。

   Q = ωo / (ω2 − ω1)

ωo:中心周波数、ω2, ω1: ωoに対して1/21/2の強度の周波数です。

一般的な受動部品であるLCを用いたバンドパスフィルタは102程度になりますが、水晶振動子はQ値が高く103~106程度あり、水晶フィルタはQ値の高いフィルタを構成できます。Q値の高いフィルタをバンドパスフィルタとして用いて、信号をフィルタに通すと中心周波数以外ではほとんど出力が出ず、特定の周波数を選択的に得る回路を作ることができます。

参考文献
https://www.qiaj.jp/pages/frame20/page01.html
https://www.kds.info/wp-content/uploads/2015/11/p085-092_ja.pdf
https://www.kds.info/wp-content/uploads/2020/06/white-paper-jp-20200616.pdf

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