電磁チャックとは
電磁チャック (英: electromagnetic chuck) とは、工作機械で被削材を電磁石により吸着固定する器具です。
電磁石を使用するため、吸着動作を行うには外部から電力の供給が必要です。また、通電時に発熱するので、比較的精度を要しない大型の材料加工用に適しています。さらに、チャックの大型化が容易であり、幅広いサイズの材料への適用が可能です。
吸着力の調整が外部スイッチの操作でできるため、機械と連動させた自動化が比較的簡単に行えます。永電磁チャックと呼ばれるものがありますが、これは着脱する場合、磁石に瞬間的に通電し、あとは無通電で使用するタイプです。
電磁チャックの使用用途
電磁チャックは、各種工作機械に使用されます。フライス盤、ボール盤、研削盤、中ぐり盤、歯切り盤、ブローチ盤 、マシニングセンタなどで加工する場合、電磁チャックを使用して被削材を固定します。また、放電加工などの切削しない加工機でも使用可能です。
被削材が鉄系の場合、磁力で工作機械のベッドに固定ができます。電磁チャックであれば、スイッチで磁力のon-offが可能なので、被削材の脱着が容易になります。
電磁チャックの原理
1. 一般的な電磁チャック
電磁チャックの電磁石は、鉄心とコイルから構成されます。チャックの面板の表面は多くの溝が切られ、防水層で内部に水などが入らないような構造です。
電磁石に通電すると、鉄心とコイルにより磁力線が発生します。鉄心からチャック本体に磁力が伝わり、取り付ける被削材を吸着します。逆に被削材を脱着する場合は、電磁石の通電を止めれば、直ちに吸着を止められます。
2. 永電磁チャック
電磁チャックには、永久磁石を使用した永電磁チャックがあります。永電磁チャックは、被削材の着脱に時のみ通電します。その後、通電を解除してもヨーク内に磁束が発生して磁力を作り、常時通電しないので省エネです。
永電磁チャックは、チャックの面板の多数の溝の中に棒状の細い電極を入れ、両側を真鍮製のセパレータを付けた構成です。着脱はパルス電圧をかけて、着磁・消磁を行います。ワークの着脱がスイッチで可能で、温度上昇による熱変位がなく、高精度加工が実現されます。
電磁チャックの特徴
電磁チャックは、電磁力を利用して、被削材を固定するので、特徴がいくつかあります。
1. ワークの着脱が容易
電磁石はスイッチでon-offができるので、被削材をスイッチ操作で着脱が可能です。また、機械と連動した自動化に対応できます。
2. 吸着力の調整が可能
吸着力の強弱調整が容易に可能です。加工の種類・力に応じて調整します。重切削用の強力形電磁チャックもあります。
3. 大型化が容易
チャックサイズの大型化が容易にできます。吸着力が300kg程度のチャックがあります。
電磁チャックの種類
電磁チャックの外形による種類は、丸型と角型です。被削材やベッドの形状と加工方法などにより選択します。 また、冷却なし、水冷式、空冷式の分類も可能です。電磁チャックは、通電すると発熱します。したがって、冷却することで被削材の温度変化を小さくして、加工精度を高めます。
さらに、可傾式の電磁チャックがあります。傾斜角度が自由に設定できるチャックです。型部品の研削などの際に、正確な角度出しができます。軸に高精度の特殊鋼を使用し、軸受は多数のボールを使った遊びのないものです。また、レバー式のワンタッチ固定を使って、固定による変動を防止します。クーラントを内部に循環して恒温に保持して、温度変化による精度悪化を無くしています。
永電磁チャックは、永久磁石と電磁石を使用するタイプです。着脱時のみ電力を使用するので、省エネです。
参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/080/
http://www.kanetec.co.jp/mgch-guide.pdf