油圧工具

油圧工具とは

油圧工具

油圧工具とは、油圧システムを使用して作動する電動工具の一種です。

高圧力を生成して機械的な作業に利用します。

油圧工具には手動式と電動式の両方があります。手動式油圧工具は手動でポンプを操作して圧力を生成するため、電源が不要であり屋外や現場などで使用できます。

一方、電動式油圧工具は電気モーターを使用してポンプを駆動し、より高速かつ効率的な作業が可能です。電動式油圧工具は、自動的に圧力制御や漏れ防止機能を備えている場合があり、安全性が高いという利点があります。

油圧工具の使用用途

油圧工具は主に油圧ジャッキや油圧リフターなど重い物の持ち上げや運搬に使用されます。その他にも金属の切断や穴あけ、金属の曲げや圧縮、配線や配管の圧着、鉄道レールの敷設、地中パイプの埋設、船舶の係留や牽引、自動車の修理や整備など幅広く使用されます。

工具の種類としては油圧カッターや油圧パンチ、油圧プレス、油圧ベンダー、油圧圧着工具、油圧レールプッシャー、油圧トレンチャー、油圧ウインチ、油圧ジャッキ、油圧プレス、油圧ドライバーなどが挙げられます。

油圧工具の特徴

長所

油圧工具は小さな油圧シリンダでも大きな力を発生できるため、非常に効率的に仕事をこなせます。また油圧システムの圧力を調整することで、油圧工具は非常に正確に力を発生でき、速度やストロークの制御も可能です。

さらに油圧システムは液体を媒体としているため、部品の摩耗が少なく長期間にわたって高い性能を維持できます。また油圧工具は構造が単純であるため故障が少なく、信頼性が高いことも特徴です。

油圧工具は、電気式の工具に比べて維持費用が低く経済的です。また油圧工具は非常に効率的に仕事をこなせるため、作業時間を短縮し生産性を向上できます。

短所

油圧工具には油圧システムが含まれており、パイプや接続部、油圧シールなどから油漏れが発生することがあります。

また油圧システムでは、油の汚れや摩耗によってシステムが損傷を受けることがあり、油圧工具を適切にメンテナンスする必要であるため維持費用がかかります。

油圧工具の種類

油圧工具には、ポンプ式やシリンダ式、パワーユニット式など、様々な種類があります。それぞれの特徴や使用目的は以下の通りです。

1. ポンプ式油圧工具

ポンプ式油圧工具は手動で油圧を発生させる工具です。ポンプを手動で操作するため電源が不要で、屋外や現場での使用に適しています。しかしポンプ操作による圧力の発生が比較的遅いため、高速かつ大量の作業には向いていません。

2. シリンダ式油圧工具

シリンダ式油圧工具は油圧シリンダを使用して力を発生させる工具です。手動式ポンプで油圧を発生させるタイプや、電動式ポンプで油圧を発生させるタイプなどがあります。
シリンダ式油圧工具は、油圧シリンダを使用して力を発生するため、ポンプ式油圧工具に比べて高速かつ大量の作業に向いています。また油圧シリンダの動きを正確に制御できるため、正確な作業にも適しています。

3. パワーユニット式油圧工具

パワーユニット式油圧工具は、電動式ポンプを使用して油圧を発生させる工具です。電動式ポンプによって高速で油圧を発生させるため、大量の作業に適しています。パワーユニット式油圧工具には圧力制御や漏れ防止機能が備わっている場合があり、安全性が高いという利点があります。一方で、電源が必要なため屋外や現場での使用には制限があります。

油圧工具の構造

油圧工具は以下のような過程で力を発生します。

1. 油圧生成

油圧工具の基本的な構造は、油圧ポンプ、配管、制御弁、作動部品などから構成されています。最初に油圧ポンプによって油が加圧され、高圧の油が配管を通じて作動部品に送られます。

2. 油圧シリンダの作動

高圧の油がシリンダのピストンに流れ込むことで、ピストンが押し出されると同時に、シリンダ内の油が押し出されて圧力が生じます。この圧力によりシリンダに取り付けられた作業具が動作します。

3. 作動部品の連動

油圧シリンダが作動することで、シリンダに取り付けられたピストンが油を圧縮し、高圧の油が配管を通じて作動部品に送られます。この高圧の油によって作動部品が動き、小さな力で大きな力が発生します。

4. 油圧の制御

油圧工具は、制御弁によって油圧を制御することで、作動部品の動きを調整できます。制御弁は油圧を調整するための弁であり、油圧の大小や流量の制御に使われます。制御弁によって、油圧工具の動作速度や力の強さを調整できます。

5. 油の循環

油圧工具には、油の循環を確保するための配管があります。油圧ポンプで加圧された油は、配管を通じて作動部品に送られ、作動部品で使用された油は再び油圧ポンプに戻って循環します。これにより効率的に油圧を利用できます。

油圧工具のその他情報

油圧工具の例と各使用用途

一般的な油圧工具の種類と用途を以下に示します。

  1. 油圧ジャッキ: 車両や建設現場での持ち上げ作業
  2. 油圧リフター: 重量物の持ち上げ作業
  3. 油圧ベンダー: 金属パイプやバーの曲げ作業
  4. 油圧パンチ: 金属板の穴あけ作業
  5. 油圧圧着工具: 電線や配管の圧着作業
  6. 油圧レールプッシャー: 鉄道路線の枕木やレールの位置調整作業
  7. 油圧トレンチャー: 地中にトレンチを掘削する作業
  8. 油圧ウインチ: 荷物の引き上げ作業
  9. 油圧クランプ: 加工作業における工作物の固定作業

有機ELディスプレイ

有機ELディスプレイとは

有機ELディスプレイ

有機ELディスプレイとは、有機EL (エレクトロルミネッセンス) の技術を利用した省電力・高輝度の新たなディスプレイです。

ジアミンやアントラセンなどの有機化合物は電圧を印加することで発光する分子として知られ、有機ELはこの性質を利用しています。従来の液晶ディスプレイと異なりバックライトが不要であるため、ディスプレイの薄型化を図ることができます。また蛍光体として無機物を使う場合と比べて、多彩なカラー表示が実現しやすいという特徴があります。 

有機ELディスプレイの使用用途

有機ELディスプレイは従来の液晶ディスプレイに代わる新たな技術として様々な場面で活用されています。最も特徴的なのがテレビ用のディスプレイであり、薄型でありながら高輝度化を実現しています。

その他にも、スマートフォンのディスプレイとしても利用されています。薄型であることから、従来は実現できなかった折り曲げ可能なディスプレイの技術へのと応用などが進み、その結果、新たな性能や形状を備えたスマートフォンの実用化が進んでいます。

有機ELディスプレイの原理

有機EL (エレクトロルミネッセンス) とは、ジアミンやアントラセンといった有機化合物に電圧を印加することで発光する現象のことです。

有機ELディスプレイはこうした有機EL技術を利用したディスプレイの総称であり、低電力であっても高輝度の発光が得られること、従来の液晶ディスプレイと比べて薄型化を図りやすいことなどのメリットがあります。 液晶ディスプレイ (図1) および有機ELディスプレイ (図2) の概略図をそれぞれ示します。

有機ELディスプレイの原理

図1. 液晶ディスプレイ (左) / 有機ELディスプレイ (右)

液晶は非発光性の材料なので、図1のように発光のためにバックライトを裏側から照射する必要があり、薄型化を妨げる要因となります。

また、カラー表示のために各画素にカラーフィルタが設けられます。 一方で、有機ELは自発光性の材料であり、バックライトは不要で、電圧を印加するのみで発光させることができるため、薄型ディスプレイの実現には有利です。

図2のように、外部へ光を取り出す側に透明電極を、発光層を挟んた対極側には反射電極を用います。透明電極を陰極、反射電極を陽極として、陰極にマイナス、陽極にプラスの電圧を印加し、陰極から電子を電子注入輸送層に、陽極から正孔を正孔注入輸送層にそれぞれ注入します。

注入された電子と正孔が発光層に達すると、キャリア (電子および正孔) の再結合が起こり、発光層の有機EL分子の電子エネルギー順位が基底状態から励起状態に遷移します。エネルギー準位は励起状態から直ちに基底状態に緩和し、その際にエネルギーを放出します。このエネルギーに由来する発光現象がEL (エレクトロルミネッセンス) であり、発光材料として有機化合物を用いるこの技術を、有機ELあるいはOLED (有機発光ダイオード) と呼びます。

カラー表示については、各画素の発光層に赤 (R) /緑 (G) /青 (B) の発光材料を用いる方式 (3色発光方式) と、無色 (白色) の発光層に対して液晶ディスプレイのようにカラーフィルタを組み合わせる方式 (白色+カラーフィルタ方式) などがあります。

消費電力や応答速度の面でも、従来の液晶ディスプレイよりも大きなメリットがあり、さらに湾曲型や折り畳み型など、自在に曲げられるディスプレイも登場しています。このようにして、現在は薄型テレビのみならず、スマートフォンなど様々なディスプレイの基盤技術として取り入れられています。

参考文献
https://www.weblio.jp/content/

誘導灯

誘導灯とは

誘導灯

誘導灯は、非常時に、避難経路を示した照明です。

人を多数内在する設備で設置が義務付けられており、具体的な設置基準は消防法施令第26条で定められています。

非常口付近の誘導灯には標識が付属しています。多くは緑色が背景で、人が扉から飛び出している絵で表現されており、日本国民に広く知られている標識の一つです。

誘導灯は寸法の違いで等級が定められており、A級、B級、C級があります。A級が寸法が最大で、C級が最小となります。建物の床面積によって、使用する等級が異なります。

誘導灯の使用用途

使用用途としては、地震や停電、火災の際に、第三者が安全な場所まで避難できるように設置されています。漢字を読む通り、避難経路を誘導する照明となります。

誘導灯には避難口誘導灯、通路誘導灯、客席誘導灯と使用用途が分かれています。避難口誘導灯は避難口があることを示し、通路誘導灯は、階段などで避難しやすくするために設置されます。客席誘導灯は客席の足元を照らし、点灯等を防ぎます。

また、建屋の大きさや階数、使用用途によって、誘導灯の大きさや数等が変化します。劇場やキャバレー、百貨店などの人が多く内在し、かつ巨大な建物にはA級の誘導灯が使用されます。また、倉庫などではB級、C級の小型誘導灯が使用されます。

誘導灯の原理

誘導灯は、主に標識部分、照明部分、電源部分で構成されています。

標識部分は、非常口付近の誘導灯では使用され、足元誘導灯等では省略されます。また、アクリル等の透過性の高い材質が用いられます。裏面から、照明部分の光を透過して、停電時にも見えやすくしています。

照明部分は、かつては蛍光灯等が使用されていました。安定器などを介して蛍光ランプを点灯させていました。しかしながら、水銀汚染防止法によって、微量の水銀を含む蛍光灯の多くは生産終了になりました。近年では、エネルギー損失が少なく、構造も簡単なLED灯が多く使用されます。LED灯は、発光ダイオード(LED)に電圧をかけることにより、光を取り出す装置です。LEDの種類によって光の色を変えられますが、誘導灯には主に白色光が使用されます。

電源部分では、普段は商用電源を受け入れて照明部分を発光させますが、停電時には電池部分とスイッチングして照明部分に電源を供給する仕組みとなっています。災害時に機能する誘導灯には電池で数十分動作することが義務付けられています。

地震計

地震計とは

地震計

地震計とは、地震のあった際に、その揺れを記録するために開発された機器です。

1800年以上前の中国には既にその原型があったとされ、世界最古の地震計としてよく紹介されます。近代的な地震計は明治時代初期の日本で発明されたといわれており、その後、さまざまな改良がなされて今に至ります。

地震計に似た言葉としては震度計がありますが、これは地震計の一種になります。震度計は、地震計の機能に加え、震度を算出する機能も持つため、地震計とは区別した名称が用いられています。

地震計の使用用途

地震計によって計測されたデータは、様々な地震対策に使われています。

地震計は全国各地に設置されており、気象庁によるものだけでも全国600か所以上に及びます。気象庁は全国各地の地震計からデータをリアルタイムに収集し、地震発生時には緊急地震速報という形で一早く危険を発信したり、震度や震源の情報発信、津波の予測など様々な形で役立てられています。これらの情報は、その後に必要となる支援が迅速に行えるように、国や各省庁に展開されていきます。

また地震計は火山活動の観測機器としても活用されています。火山の近くに地震計を設置して、火山性地震や火山性微動を観測しています。

地震計の原理

地震計の原理

図1. 地震計の原理

地震計は、振り子の原理を利用した計器です。

1. 慣性の法則による不動点の確保

3方向の揺れの観測

図2. 3方向の揺れの観測

地震計は、通常、地表面や地中に設置されており、地面が揺れた際に一緒に動いてしまうため、不動点と呼ばれる地面に対して絶対に動かない基準が必要です。

振り子の支点を地面と仮定し、重りの位置にペンを、その先に一定速度で送られるロール紙を設置します。地面が速く揺れると、装置全体も揺れますが、重りは慣性の法則により空間に静止するため、ロール紙に地面の揺れが記録されます。地震の揺れは、通常、あらゆる方向に揺れますが、ロール紙が送られる動きと平行な揺れは記録が難しいため、3つの地震計を用いて、南北、東西、上下方向の3成分をそれぞれの地震計で記録します。

最近では、ロール紙の代わりにコイルと磁石を使用して、振り子の動きを電気信号として記録する地震計も活用されています。

2. 変位・速度・加速度の観測

振り子の固有周期と揺れの周期の関係

図3. 振り子の固有周期と揺れの周期の関係

地面の変位・速度・加速度のいずれを観測するかに関しては、振り子の固有周期に関係します。

振り子を自由に揺らした際、重りが元の位置に戻ってくるまでの時間を固有周期と呼びます。地面の揺れる周期が固有周期に対して非常に短い場合は重りが静止し、逆に、地面の揺れる周期が固有周期に対して非常に長い場合は重りも地面と同じように揺れることとなります。地面の揺れる周期が固有周期と一致した場合は、共振するため、重りは地面よりもはるかに大きく揺れてしまいます。

重りにダンパーを設け共振を防ぎ、地面の周期を横軸、変位を縦軸とした地震計の応答曲線を考えます。揺れの周期が固有周期よりもはるかに短く、変位が一定となる領域においては、重りが空間に静止するため、揺れにより地面が元の位置からどれだけ動いたか、つまり、変位が観測できるということになります。揺れの周期が固有周期と同程度の領域においては速度が観測でき、固有周期よりさらに長い領域においては加速度が観測できることになります。

地震計のその他情報

1. 地震計の種類

地震計の種類は、大きく分けると、小さな揺れに適した高感度地震計、ゆっくりとした揺れに適した広帯域地震計、強い揺れに適した強震計の3つあります。

これらは、目的により適切に使い分けられます。例えば、高感度地震計は、その特性から、目的とは関係のない揺れまで検知してしまう可能性もあるため、観測井戸を掘削するなどの対策が必要となる場合もあります。

2. 地震計による観測方法

地震観測には、定常観測と臨時観測の2種類があります。

定常観測は、長期間、継続的に観測を行う方法であり、臨時観測は、短期間、限定的に観測を行う方法です。臨時観測は、大地震発生後の余震観測など、特定の目的のために行われます。

3. 地震計を用いた取り組み

地震計は、防災や減災等の目的で、様々な取り組みに用いられております。

気象庁の配信する緊急地震速報などの情報にも地震計が使われています。気象庁が所有する約690箇所の地震計・震度計、国立研究開発法人 防災科学技術研究所により整備された地震観測網、これらのデータを利用し、直ちに、地震発生をとらえ、適切な情報を発信します。

国立研究開発法人 防災科学技術研究所は、高感度地震観測網 (Hi-net) 、広帯域地震観測網 (F-net) 、強震観測網 (K-NET、KiK-net) などの地震観測のネットワークを整備し、これらにより得られたデータを公開しています。Hi-netには高感度地震計と強震計、F-netには広帯域振動地震計と強震計、K-NET、KiK-netには強震計が用いられています。

参考文献
https://www.tdk.com
https://tohoku-geo.ne.jp
http://www.eonet.ne.jp
https://www.data.jma.go.jp
https://www.hinet.bosai.go.jp

裸圧着端子

裸圧着端子とは

裸圧着端子

圧着端子は、電気線と電気機器と接続する部品です。

圧着部に電気線の端部を通して機械的圧力を加え、圧着端子と電線を強固に接続します。電気機器との接続は、圧着端子の端子接続部を端子盤にネジ止めすることで接続します。

裸圧着端子は、圧着端子の一種で絶縁被膜がついていないタイプです。絶縁被膜付圧着端子に比べると、値段が安めで作業時間も短いというメリットがありますが、取り付ける場所によっては取り付け後に絶縁する手間が発生するというデメリットもあります。

裸圧着端子の使用用途

電気線と電気機器の接続は半田付けで行うことも多いですが、半田付けにはある程度の半田付け技術が必要であるのに対し、圧着端子による接続は比較的簡単であるというメリットがあります。

また、半田付けは作業所など決められた場所で行いますが、圧着端子による接続作業は場所を選びません。現場での作業が可能であるため、配電盤などの配線によく使われています。

圧着端子の中で、裸圧着端子は一般に単線の電気線の接続用に使われます。

裸圧着端子の原理

裸圧着端子は、電線とネジの組合せによって多くの品種があり、「R2–4」のような統一された呼び名があります。

先頭のアルファベットは端子接続部の形状を表し、端子がリング状の丸型(R型)はR、端子がオープンになっている先開型(Y型)はYと表示されます。2つの数字のうち1番目の数字は電線の断面積(mm2)、2番目の数字はネジの直径(mm)を表します。

品種名の電線断面積に対し、実際に使用できる電線サイズには範囲があります。電線が抱合範囲よりも小さいと電線が抜ける恐れがあり、抱合範囲よりも大きいと圧着端子に入らず圧着できないので、注意が必要です。

圧着端子と電線を接続する工具は、圧着端子の種類によって専用の工具があります。裸圧着端子を圧着するときは、必ず裸圧着端子専用の工具を使用します。

圧着工具には複数のサイズの歯口があります。端子サイズに合わせて歯口を選び、裸圧着端子を歯口にセットしてから端部の被覆を剥いた電線を圧着部に通し、圧着工具を強く握れば圧着完了です。

参考文献
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/crimp-terminal-guide
https://www.m-system.co.jp/mstoday/plan/mame/b_actuator/9508/

冷陰極管

冷陰極管とは

冷陰極管

冷陰極管は、蛍光灯の一種で、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)とも呼ばれます。

一般的な蛍光灯がフィラメントを加熱して熱電子を放出させるのに対して、冷陰極管は電極を加熱することなく電子を放出させます。そのため、冷陰極管は低温で動作し寿命が長いという特徴があります。

また、管内にフィラメントを内蔵する必要がないので、その分管を細くすることができます。蛍光灯の管径は15〜38mmですが、冷陰極管の管径は3〜5mm程度です。

冷陰極管は、一般的な50または60Hzの商用交流で使用することができず、高周波数の電源を供給する専用電源が必要です。

冷陰極管の使用用途

冷陰極管には30年以上の歴史があり、調光がしやすいことや省エネで寿命が長いことから、液晶ディスプレイのバックライト、広告看板、誘導灯、照明などに長年使用されてきました。

近年は、冷陰極管の持つメリットに対してLEDの方が優れていることから、冷陰極管からLEDへの移行が進んでいます。すでに、液晶ディスプレイのバックライトは完全にLEDに置き換わっており、冷陰極管の生産を中止するメーカーも増えています。

ただし、冷陰極管には、広範囲に光を拡散してムラのない均一な光を出力すること、自然光に近い眼に優しい白色光を実現できることなど、LEDにはないメリットもあり、病院、図書館、店舗の照明などに使われています。

冷陰極管の原理

冷陰極管は、細長いガラス管の中にアルゴンガスと水銀蒸気が封入され、ガラス管の内壁に蛍光体が塗布され、ガラス管両端に電極が設置されているという構造をしています。

冷陰極管の基本的な動作原理は一般的な蛍光灯と同様で、電極から放出された電子がガラス管内に充填されている水銀イオンと結合して紫外線を放射し、この紫外線放射によって管内壁の蛍光体が励起されて可視光を発します。

違いは電子の放出方法だけで、一般的な蛍光灯が、電子放出材料が塗布されたフィラメントに電流を流して熱電子を放出させるのに対して、冷陰極管は、アルゴンのイオン衝突による二次電子を放出させています。

冷陰極管の金属電極に高電圧をかけた時、管内の電子がプラス電極に引かれて電界内を移動してアルゴンと衝突します。この衝突で電離したアルゴン陽イオンがマイナス電極に衝突し、2次電子を放出するのです。

冷陰極管で2次電子を放出させるためには高電圧を印加する必要があるため、電源にはインバータ回路が使われます。

参考文献
https://electric-facilities.jp/denki3/ccfl.html
http://asahibiru.com/wp-content/uploads/2013/11/katarogu1.pdf
http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2005_10/jspf2005_10-801.pdf

冷却塔

冷却塔とは

冷却塔

冷却塔とは、ある流体を冷却するための装置を指します。対象となる流体は、排ガスやプロセス水、循環水等様々です。一番多く使用されるのは、循環上水冷却用の冷却塔で、構造が簡単であることから広く用いられます。

冷却塔は空調などに用いられる比較的小型なものから、プラントの全体冷却に用いられる高層ビル程度の巨大なものまで規模も様々です。

冷却塔によって循環水を冷却する場合、循環水に細菌が成長して人体に悪影響を及ぼす危険性もあるため、添加剤を注入して水質を管理するのが一般的です。

冷却塔の使用用途

冷却塔は様々な局面で使用されます。

日常生活では、大型商業施設の空調用、大型倉庫の冷凍庫に使用されます。冷却装置の規模や能力が大きくなってくると冷却塔が用いられるようになります。

産業用としては、発電所のガスタービン入口空気の冷却用や、プロセス系工場での排ガス冷却用等に用いられます。産業用では、ある物体を冷却した方が合理的な際に使用され、省エネルギーの観点から回収熱を再利用されることも多くあります。最も多く使用される熱媒体は上水です。

冷却塔の原理

冷却塔は熱交換器の一種です。原理としては、循環している冷却対象に空気を当てることで熱交換させて、冷却対象を冷却します。

冷却塔は大きく分けて開放型と密閉型に分かれます。

開放型は、冷却対象がクーリングタワー内で直接外気と触れることで抜熱されます。冷却対象が無害な液体の際に用いられます。

開放型は循環上水の冷却用として使用される場合が多く、貯水タンク、循環ポンプ、給水装置、薬液注入装置がセットで用いられ、次のような構造となります。mず、貯水タンク内の水が循環ポンプで循環し、常時冷却塔に導入されます。冷却塔内では水が大気によって抜熱され、常に貯水タンク内が低温に保たれます。冷却塔内では水が少しずつ蒸発していくため、給水装置で貯水タンクの水位を一定に保ちます。貯水タンクでは長時間循環することで細菌が繁殖するため、薬液注入装置で殺菌します。上水循環ではないクーリングタワーでも、同様の仕組みとなります。

密閉型は、冷却対象が導管コイルなどによって、間接的に大気に触れて冷却されます。密閉型冷却塔は冷却対象を大気開放したくない場合に使用されます。

参考文献
空研工業株式会社 冷却塔 https://www.kuken.com/product/cool/

零相変流器

零相変流器とは

零相変流器

零相変流器は、三相交流電源において零相電流と呼ばれる電流値を検知するための器具です。

三相交流電源のそれぞれの相に流れる電流のベクトルの和は通常は対称であるためゼロとなりますが、地絡電流が流れた場合にはそのバランスが乱れてゼロ以外の値を持ちます。

地絡時には零相変流器が作動することにより、故障個所を周囲の電気回路からただちに切り離されます。

そのためあらかじめ漏電遮断器に内蔵され、絶えず事故検知の役割を担っています。 

零相変流器の使用用途

電気設備に備えられた電路が大地と電気的に接続されると、その箇所に地絡電流として大電流が流れ込むため、重大な事故につながるリスクがあります。

これを防ぐために零相変流器は使用されており、地絡電流を検出した場合に地絡箇所をただちに周囲から切り離すという機能を持っています。

低圧の一般計器用としても用いられますが、より高電圧の電路ほど事故の程度も大きくなりかねないことから、零相変流器の役割は必須のものとしてより重要になります。 

零相変流器の原理

三相交流電源では、それぞれに流れる電流が等しく対称である場合、そのベクトルの和はゼロです。

ベクトルの和の平均値は「零相電流」と呼ばれ、上記のような対称形の場合、零相電流はゼロとなります。

三相のいずれかに地絡電流が流れると、三相のバランスが崩れて零相電流はゼロとなりません。これにより地絡事故をただちに発見することができます。

「零相変流器」は、こうした三相交流電源における零相電流を検出する装置です。

一般的な変流器と同様に、円環状の鉄心にコイルを巻き付けた構造を持ち、円環の中央に導体が貫通しています。

ただし通常の変流器は貫通する導体は1本ですが、零相変流器の場合は3相分の3本となります。

何らかの原因で3相の電流のバランスが乱れると、コイルに二次電流が瞬間的に流れ、地絡として検出されます。

継電器(リレー)や遮断器とともに漏電遮断器に内蔵されることが多く、事故や火災などの災害につながる漏電を防ぐ上で重要な役割を担っています。 

参考文献
https://www.hikari-gr.co.jp/dcms_media/other/ZCT.pdf

漏電火災警報器

漏電火災警報器とは

漏電火災警報器とは、漏電が発生した際に音や信号を発信して警報を発報する装置です。

電気配線は、災害や経年劣化等で絶縁被覆が剥がれ、絶縁劣化を起こす場合があります。その際に剥き出しとなった芯線と建物架台等の間でスパークして発熱すると、有機物である絶縁被覆を持つ配線は容易に発火してしまいます。

電気火災は上記のような原因で起こることがしばしばありますが、漏電火災警報器はこれらの漏電火災を未然に防ぐことを目的として設置されます。

漏電火災警報器の使用用途

漏電火災警報器は、消防法によって設置が義務付けられています。消防法で定められている基準は、主にラスモルタルを使用する建物に対しての設置基準です。

ラスモルタルとは、メタルラスと呼ばれる金属製網の周囲にモルタルを敷き詰めた構造のことです。細い金属網は許容電流が低い上に、接地抵抗が低くなるため火災のリスクが上昇します。従って、消防法によって警報器設置を義務化し、法的対策を取っています。

ラスモルタルを使用している場合でも、契約電流が低い場合や、延べ面積が小さい場合には設置適用除外となる場合があります。具体的には施行令別表第一によって定められます。

漏電火災警報器の原理

漏電火災警報器の動作原理は、多くの場合は地絡電流を検知することで警報を発報します。

ある電力系統が正常に給電しているとき、配電線上の電流の和は必ず0となります。これは3相系統でも単相系統でも変わりません。電気工学的にはこれを平衡状態と呼びます。平衡状態の時には1系統を給電する配線周囲の磁界の和が0となり、磁界により周囲へ及ぼす電流の変化は0Aとなります。

しかしながら、地絡が発生して地絡電流が流れると、平衡状態が崩れてしまい、全相の磁界の和が0ではなくなってしまいます。ZCTは、配線を全相一括でクランプして、平衡状態が崩れて流れる電流を検知するための装置です。

漏電火災警報器はZCTから地絡電流値を受け取り、定められた閾値を超えると警報を発報する仕組みとなっています。警報器は発報するだけであるため、漏電に対する遮断性能はありません。漏電火災の保護を行う場合には、別途開閉器や漏電遮断器を設置する必要があります。

参考文献
消防法施行令 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=336CO0000000037

PLMシステム

PLMシステムとは

PLM (Product Lifecycle Management) システムとは、製品の設計データ、仕様書、部品データ、製造現場における指示書、製造実績情報、購買情報、取引先情報などの製品情報を一元管理するシステムです。

製品ライフサイクル管理システムとも呼ばれます。製品開発や製造プロセスを管理することで、製品の品質向上、開発期間の短縮、生産性の向上などのメリットがあります。

同様の製品管理システムにPDM (Products Data Management) システムがありますが、PDMシステムが設計開発プロセスにおける情報を管理するのに対し、PLMシステムは企画から設計、製造、調達、販売、保守に至る製品の全プロセスに関わる情報を相互に関連付けて管理するものです。 

PLMシステムの使用用途

PLMシステムは、製品のライフサイクル全体の中で最大の収益を得るために使用されています。すなわち、開発期間の短縮化による製品の早期市場投入、部品データ、調達情報、製造情報などを紐付けて管理することによる製造コスト削減、全工程で顧客からのフィードバック情報を共有することによる製品品質の向上など、企業の収入を上げコストを削減することを支援するシステムです。

そのため、PLMシステムは製造業全般、特に電機・電気産業や自動車産業、航空機産業など、部品データや部品調達情報が重要である組立製造業で早くから導入されてきました。その後、PLMシステムの利用は拡大し、部品、金型、建材、医療、食品など様々な分野で使用されています。

また、近年のモノのインターネット接続による通信 (IoT:Internet of Things) の普及に伴い、IoTで得られたデータをPLMシステムで管理して活用しようという動きもあって注目されています。

PLMシステムの原理

PLMシステムには、製品の企画・営業・設計・製造・調達・販売・保守といった製品ライフサイクルの各工程の情報を一元管理し、活用するためのさまざまな機能が搭載されています。

1. プロジェクト管理機能

製品プロジェクト、スケジュール、リソースなどを管理する機能です。製品企画段階のポートフォリオ管理や予算管理などを含むこともあります。計画に対する進捗を管理できる機能は、プロジェクトマネージャーが主に使用し、リソースの配分や調整に役立てることができます。

2. データ管理機能

PDM (Products Data Management) システムに相当する機能です。設計データや部品表 (BOM: Bill of Materials) 、設計変更管理、構成管理、品質管理、サプライチェーン管理などを行います。製品に関する情報を管理・共有することができるため、開発プロセスの迅速化や品質管理の強化に繋がります。製

品設計に必要な機能である図面作成ツール (CAD:Computer Aided Design) や解析ツール (CAE:Computer Aided Engineering) といったソフトウェアと連携可能です。

3. BOM管理機能

PDMシステムにおけるBOM管理は、設計段階で作成され設計BOMと呼ばれます。PLMシステムでは、この設計BOMの他に製造部門で作成される製造BOMも管理します。

製造BOMには製品を構成する部品だけでなく、製造現場で用いられる塗料やシール材などの補助材や梱包材なども含まれます。

4.工程表 (BOP) 管理機能

製造段階におけるプロセスの流れの表 (BOP: Bill of Process) を管理する機能です。製造工程や作業指示書などを共有することで、製造現場の作業効率の向上や、有識者でなくても作業が可能となる標準化に貢献します。

工程ごとの工数を管理し、原価計算に必要な加工費試算や、作業者のスキルや経験に応じた最適な割り当てをすることができます。

PLMシステムの選び方

PLMシステムを選ぶ際に、考慮するべきポイントは以下の5つです。

1. 企業の事業分野との一致

PLMシステムは、ソリューション・パッケージによって機能・構成が異なるため、企業の提供する製品分野・生産規模・導入要件に適したソリューション選定が求められます。管理機能を充実させることで、安全性・品質性・作業性の向上につながります。

2. システムの拡張性

企業は今後も事業を拡大するため、PLMシステムは企業が変化に対応できるような拡張性が必要です。特に製品の性能向上の場合、管理システムの機能向上も必ず求められます。新しい機能や新しいモジュールの追加が容易に行えるシステムを選ぶことが望ましいです。

3. セキュリティ性

PLMシステムには、企業が保有する重要な情報が含まれるため、セキュリティが非常に重要となります。そのため、アクセス制御やデータの暗号化、バックアップ機能などの機能が必要です。

4. カスタマーサポートの有無

PLMシステムを導入する際には、カスタマーサポートが重要なポイントです。問題が発生した場合、迅速かつ適切なサポートを提供してくれるサービスを選ぶことが望ましいです。

参考文献
https://www.hitachi-solutions.co.jp/reports/dms2012/pdf/DMS2012_conceptstage.pdf
https://jpn.nec.com/plm/about/abt-index.html
https://www.ieice.org/publications/conference-FIT-DVDs/FIT2017/data/pdf/O-011.pdf