地震計とは
地震計とは、地震のあった際に、その揺れを記録するために開発された機器です。
1800年以上前の中国には既にその原型があったとされ、世界最古の地震計としてよく紹介されます。近代的な地震計は明治時代初期の日本で発明されたといわれており、その後、さまざまな改良がなされて今に至ります。
地震計に似た言葉としては震度計がありますが、これは地震計の一種になります。震度計は、地震計の機能に加え、震度を算出する機能も持つため、地震計とは区別した名称が用いられています。
地震計の使用用途
地震計によって計測されたデータは、様々な地震対策に使われています。
地震計は全国各地に設置されており、気象庁によるものだけでも全国600か所以上に及びます。気象庁は全国各地の地震計からデータをリアルタイムに収集し、地震発生時には緊急地震速報という形で一早く危険を発信したり、震度や震源の情報発信、津波の予測など様々な形で役立てられています。これらの情報は、その後に必要となる支援が迅速に行えるように、国や各省庁に展開されていきます。
また地震計は火山活動の観測機器としても活用されています。火山の近くに地震計を設置して、火山性地震や火山性微動を観測しています。
地震計の原理
図1. 地震計の原理
地震計は、振り子の原理を利用した計器です。
1. 慣性の法則による不動点の確保
図2. 3方向の揺れの観測
地震計は、通常、地表面や地中に設置されており、地面が揺れた際に一緒に動いてしまうため、不動点と呼ばれる地面に対して絶対に動かない基準が必要です。
振り子の支点を地面と仮定し、重りの位置にペンを、その先に一定速度で送られるロール紙を設置します。地面が速く揺れると、装置全体も揺れますが、重りは慣性の法則により空間に静止するため、ロール紙に地面の揺れが記録されます。地震の揺れは、通常、あらゆる方向に揺れますが、ロール紙が送られる動きと平行な揺れは記録が難しいため、3つの地震計を用いて、南北、東西、上下方向の3成分をそれぞれの地震計で記録します。
最近では、ロール紙の代わりにコイルと磁石を使用して、振り子の動きを電気信号として記録する地震計も活用されています。
2. 変位・速度・加速度の観測
図3. 振り子の固有周期と揺れの周期の関係
地面の変位・速度・加速度のいずれを観測するかに関しては、振り子の固有周期に関係します。
振り子を自由に揺らした際、重りが元の位置に戻ってくるまでの時間を固有周期と呼びます。地面の揺れる周期が固有周期に対して非常に短い場合は重りが静止し、逆に、地面の揺れる周期が固有周期に対して非常に長い場合は重りも地面と同じように揺れることとなります。地面の揺れる周期が固有周期と一致した場合は、共振するため、重りは地面よりもはるかに大きく揺れてしまいます。
重りにダンパーを設け共振を防ぎ、地面の周期を横軸、変位を縦軸とした地震計の応答曲線を考えます。揺れの周期が固有周期よりもはるかに短く、変位が一定となる領域においては、重りが空間に静止するため、揺れにより地面が元の位置からどれだけ動いたか、つまり、変位が観測できるということになります。揺れの周期が固有周期と同程度の領域においては速度が観測でき、固有周期よりさらに長い領域においては加速度が観測できることになります。
地震計のその他情報
1. 地震計の種類
地震計の種類は、大きく分けると、小さな揺れに適した高感度地震計、ゆっくりとした揺れに適した広帯域地震計、強い揺れに適した強震計の3つあります。
これらは、目的により適切に使い分けられます。例えば、高感度地震計は、その特性から、目的とは関係のない揺れまで検知してしまう可能性もあるため、観測井戸を掘削するなどの対策が必要となる場合もあります。
2. 地震計による観測方法
地震観測には、定常観測と臨時観測の2種類があります。
定常観測は、長期間、継続的に観測を行う方法であり、臨時観測は、短期間、限定的に観測を行う方法です。臨時観測は、大地震発生後の余震観測など、特定の目的のために行われます。
3. 地震計を用いた取り組み
地震計は、防災や減災等の目的で、様々な取り組みに用いられております。
気象庁の配信する緊急地震速報などの情報にも地震計が使われています。気象庁が所有する約690箇所の地震計・震度計、国立研究開発法人 防災科学技術研究所により整備された地震観測網、これらのデータを利用し、直ちに、地震発生をとらえ、適切な情報を発信します。
国立研究開発法人 防災科学技術研究所は、高感度地震観測網 (Hi-net) 、広帯域地震観測網 (F-net) 、強震観測網 (K-NET、KiK-net) などの地震観測のネットワークを整備し、これらにより得られたデータを公開しています。Hi-netには高感度地震計と強震計、F-netには広帯域振動地震計と強震計、K-NET、KiK-netには強震計が用いられています。
参考文献
https://www.tdk.com
https://tohoku-geo.ne.jp
http://www.eonet.ne.jp
https://www.data.jma.go.jp
https://www.hinet.bosai.go.jp