零相変流器とは
零相変流器は、三相交流回路の異常を検知する機器です。
電気は、絶縁されたケーブルの中を流れますが、経年劣化などで絶縁不良となったケーブルが地面に接触した場合、地面に大きな電気が流れる現象が生じます。これは地絡と呼ばれ、感電事故や火災といった事故の原因となる非常に危険な現象です。
地絡による事故を未然に防ぐには、地絡の早期発見と、電気を回路から即座に切り離すことが必要となります。零相変流器は、地絡が発生した際に流れる電気の流れを検知する役割を担っています。
零相変流器の使用用途
零相変流器は、主に6000V以上の高圧の電気を使用する工場やビルなどの受電設備で使用され、継電器という機器と組み合わせて使用します。
継電器は、異常時に電路を電気から切り離す遮断器を動作させる機器です。継電器は、零相変流器から送られてきた電流によって動作し、遮断器を動作させます。零相変流器がない状態では、地絡時に遮断装置は動作せず、地面に流れる電気を止めることができません。
また、零相変流器は、地絡時に流れる電気の流れを非常に素早く検知できるため、高圧の受電設備を安全に取り扱うために欠かせない機器になっています。
零相変流器の原理
零相変流器は、三相交流回路に設置される機器です。三相交流は、電圧の大きさと電流の大きさが共に同じで、位相が120°ずつズレた3つの交流を組み合わせた交流のことをいいます。3つの交流は、120°ずつズレたベクトル方向の成分をもっていますが、異常がない場合は、3つのベクトルの大きさは等しく、互いに打ち消し合うため、全体のベクトル和はゼロです。このように異常がなければ、零相変流器に電流が流れることはありません。
しかし、3つの交流のうち、どれか1つに地絡電流が流れると、ベクトルのバランスが崩れ、全体のベクトル和がゼロになりません。ベクトル和がゼロにならなくなると、零相変流器の1次側のコイルに磁界が生じ、生じた磁界の電磁誘導で、2次側に電流が流れるようになり、継電器を動作させます。このように、零相変流器は三相交流のベクトルのバランスの乱れを検出し、地絡時の電気の流れを検知する機器です。
零相変流器の構造
円環状の鉄心にコイルを巻きつけた1次側と、1次側のコイルによって生じた磁界を電流に変換する2次側に分かれたシンプルな構造です。1次側の円環の鉄心部には、三相交流で使用する3本のケーブルを通し、2次側は変換された電流を継電器に送ることができるように接続します。
零相変流器の選び方
零相変流器は、以下の3点を正確に調べて、慎重に選定しなければなりません。選定を謝ると、機器の故障だけでなく、機器が地絡時に流れる電気の流れを上手く検知できず、事故の原因にもなります。
1. 円環状鉄心貫通部の径
零相変流器の1次側の円環状鉄心の貫通部の大きさには種類があります。貫通部の大きさを間違えば、貫通部にケーブルが通らず、零相変流器が使用できないため、事前に三相交流回路のケーブルの径の大きさを正確に調べておくことが大切です。
2. 零相変流器の定格電流
零相変流器を選定する時は、機器を安全に使用できる電流の値である「定格電流」というものが定められており、いくつか種類があります。「定格電流」の値を超えると、零相変流器が壊れ、地絡による電気の流れを検知できなくなるため危険です。地絡時に三相交流回路に流れる最大の電流値は計算できるため、事前に使用中の三相交流回路に流れる地絡電流の値を求め、適切な値の「定格電流」をもつ零相変流器を選ぶことが必要となります。
3. 継電器の定格電流
零相変流器の2次側は、継電器と繋がっているので、継電器を使用できる「定格電流」を事前に調べなければなりません。「定格電流」の値を超えると、継電器が壊れ、電気を止めることができないので、感電や火災といった事故の原因になります。地絡時に三相交流回路に流れる最大の電流値に対して、継電器の「定格電流」が適切な値でない場合は、継電器を適切なものに交換することが必要です。
参考文献
https://denken3s.com/zct/#toc1
https://denginoheya.com/encyclopedia/transformer/zct/
https://www.hikari-gr.co.jp/dcms_media/other/ZCT.pdf