オシロスコープとは
オシロスコープとは電気信号を波形として画面上に出力する機器で、時間経過による信号の変化を二次元的に観察できることが特徴です。
オシロスコープはアナロオシロスコープとデジタルオシロスコープに大別されます。
1. アナログオシロスコープ
入力信号をブラウン管の管面上に電子ビームを走査して波形を描き、それを観測するオシロスコープを指します。オシロスコープへの入力信号は、わずかの遅延時間で直ちに波形が表示されます。
2. デジタルオシロスコープ
入力信号をA/D変換器でデジタルデータに変換し、そのデータをメモリに一旦保存してから、ディスプレイで波形を表示するオシロスコープを指します。アナログオシロスコープとは異なり、離散的なデータの集まりなので、各データ間を補完して滑らかな曲線で表示させます。
オシロスコープの使用用途
オシロスコープは電気信号を波形として観察するため、電子回路の動作を視覚的に確認することができます。オシロスコープを利用することで、電子回路内の信号波形を確認し、設計の狙い通り動作しているかの検証が可能です。
高速デジタル回路の動作検証では、デジタル信号の変動(ジッター)に影響されない確実なタイミングで信号を取り込むことが求められますが、そのタイミングの設定にオシロスコープが使用されます。
また、機器の故障原因が電子回路にある場合、その電子回路の各部の信号波形を追跡することで故障部位を突き止められるため、電子機器の修理にも有効な測定器です。
オシロスコープの原理
従来のアナログオシロスコープでは、プローブから入力した信号はオシロスコープの垂直増幅回路に伝えられます。垂直増幅回路で信号は減衰もしくは増幅され、その後ブラウン管の垂直偏向板に伝わります。
垂直偏向板に印加された電圧によって電子ビームは上下に走査されます。この一連の流れがオシロスコープの原理です。入力した信号は同時にトリガ回路にも伝わりますが、その信号が設定されたトリガ条件に一致した瞬間から電子ビームは水平方向への走査を開始します。
デジタルオシロスコープでは、入力した信号をA/D変換器でデジタルデータに変換し、そのデータをメモリに順次保存します。そして入力信号がトリガ条件を満たした時点から所定時間経過後、新たなデータの保存を停止します。
その結果、上記メモリにはトリガ条件に一致したタイミング前後の信号が記録されているので、その信号をディスプレイで波形として表示します。即ち、トリガ以前の信号波形も観測可能です。
また、メモリ内のデータを使って、波形解析、例えばFFT演算による信号の周波数分析も行えます。さらには、そのデータをメモリカードなどに出力して、PCによる解析やデータの保存もできます。
オシロスコープの選び方
機種選定時には、測定内容に対して十分なスペックを備えたオシロスコープであることが重要なポイントです。具体的には、周波数特性、サンプリングレート、チャンネル数、メモリ長、利用可能なプローブの種類などの検討が必要となります。
現在のオシロスコープは波形を観測するという基本的な用途に加えて、タイミング検証や波形解析、コンプライアンステストなどへと用途が拡大しており、それに伴い測定範囲の拡大や高機能化が進んでいます。そのため、使用目的に合った機能を有する機種の選定が求められています。
オシロスコープの使い方
オシロスコープは、電圧の時間変化の観測に加えて、繰り返し信号の周波数測定やリサージュ曲線の描画なども可能です。電子回路の評価試験、ビデオや音声信号の波形観測、パワーデバイスの応答特性の試験、高速デジタル回路のタイミング余裕の測定、メカトロニクス製品における評価など幅広く利用されています。
測定する前準備としては、プローブの位相調整とプローブ間のスキュー調整があります。特にカレントプローブと電圧プローブを併用する場合、カレントプローブの遅延時間が大きいので、スキュー調整は必須です。また、電源投入後30分程度待ってから測定することも、十分な測定精度の確保のために欠かせません。
実際に所望の波形を観測するコツは、トリガ調整が必要になります。アナログオシロスコープでは、スロープの選択とトリガレベル、トリガディレイしか調整要素はありませんが、デジタルオシロスコープでは、それらに加えてパルス幅や間隔など様々なトリガ条件が設定できるようになりました。
さらに、複数のトリガ条件が成立したときに信号を取り込むシーケンシャルトリガも利用可能です。これらを活用し、観測する信号を取り込むテクニックが求められます。
オシロスコープのその他情報
1. アナログオシロスコープとデジタルオシロスコープの特徴と相違点
両者の特徴を纏めると次の様になります。
アナログオシロスコープ
- リアルタイム性に優れていて、新たな信号を取り込んで表示するまでのデッドタイムが短い
- 信号の明るさで、同一波形の発生頻度が判断できる
- 単発現象や繰り返し頻度の少ない現象観測には不向き
- 観測結果の保存には写真撮影機材などを用意する必要がある
- 波形を使った解析はできない
デジタルオシロスコープ
- 単発現象を補足して表示することが可能
- 観測結果は、電子データとして扱えますので、保存が容易
- 波形をデジタル・データとして扱い、プロセッサによる解析が可能
- 信号処理にかかるデッドタイムが長いため、実際に観測できる時間が相対的に短くなる
- 繰り返し波形における波形の頻度情報が失われる
今現在、工業計測の用途に限れば、入手可能なアナログオシロスコープは存在せず、ほぼ100%デジタルオシロスコープが選択されています。
<p.これは、高速A/Dコンバータや波形処理用のプロセッサが広く供給されていることや、デジタルオシロスコープの欠点を補う技術面の進歩などにより、比較的低価格でも高機能な製品が販売されるようになったのが理由です。
2. オシロスコープの注意点
オシロスコープで正しい波形を観測するためには幾つか注意すべき点がありますが、特に測定したい周波数帯域を充分カバーする周波数特性を持った機種を選定することが重要です。
オシロスコープの周波数特性は振幅が-3dBになる周波数で定義されますので、正確な振幅測定には被測定信号の周波数の5倍程度の周波数特性の機種を選定すべきです。
またデジタルオシロスコープでは、データサンプリング周波数に関しても注意しなければなりません。サンプリング周波数が被測定信号の2倍以下になると、エイリアシングを起こして偽波形が表示されてしまうためです。
参考文献
https://jp.tek.com/oscilloscope
https://www.iti.iwatsu.co.jp/ja/support/05_07.html
https://www.cqpub.co.jp/column/books/2001a/11891osiro/
https://electrictoolboy.com/media/1353/
https://www.keysight.com/jp/ja/assets/7018-05607/ebooks/5992-2095.pdf