環境試験室とは
環境試験室とは、各種機器・部品が様々な条件下において適切に動作することを確認するため、様々な環境条件・自然環境を疑似的に作り出す試験室です。
可変恒温恒湿の設備を備え、様々な環境条件を人工的につくり出すことができます。温湿度、風速、気圧、霧などの様々な自然環境条件を再現し、各種製品の性能や耐久性を検証する試験を行います。自動車、航空機、電気機器、建材、金属材料などの幅広い分野の製品を試験対象とし、様々な製品開発で役立てられている装置です。
環境試験室の使用用途
1. 試験対象物
環境試験室は被試験機器である各種機器や部品を試験室の中に入れて試験を行います。非常に幅広い分野で使用されており、下記は試験対象物の一部です。
- 自動車・タイヤ・エンジン・バイク
- トラック・トラクター・農作業機器・ブルドーザー・パワーショベル・掘削機
- 船舶関係
- 航空・宇宙産業 (航空機及びロケット)
- 建築用のコンクリートやモルタル、外壁材や屋根材などの各種建材
- エンジン・航空機・ロケット・金属材料
- インク・塗料
- 紙製品
- 家電 (テレビや冷蔵庫、洗濯機など)
- 電子基板・モーターを含む電機製品
2. 環境試験の目的
環境試験が行われる目的には、主に下記の3つがあります。
- 一定の使用環境下において試験対象物の品質の変化が発生しないことを確認する
- 高温環境や寒冷環境など、想定される過酷な使用環境における対象物の動作・機能を確認する
- 製品を過酷な状況に置いて劣化を促進することにより、短期間で劣化の度合いを確認する (加速劣化試験)
環境試験室は、これらの項目を確認し、製品の耐久性や安全性を担保する目的で、多くの開発現場で活用されています。
環境試験室の原理
環境試験室の試験対象である各種機器や部品は、様々な環境条件下で使用されます。環境試験室は温度・湿度・風速・日射など過酷な環境を再現することが可能です。
国内向けの民生用機器の場合、通常、真冬の北海道から真夏の沖縄までの温度条件を対象とするため、‐10度~+40度程度の範囲で試験を行います。環境試験室はこの様な条件を作り出すためにマイナス数十度からプラス50度以上の範囲での設定が可能です。
環境試験室は、上限および下限の温度および湿度の設定を行い、一定周期でこの上限と下限の温度と湿度の条件に切り替えて試験を行います。試験では、試験前に機器や部品の動作を確認し、試験終了後に再度同様の確認を行って動作に問題がなければ試験合格とされています。
環境試験室の種類
1. 規模
環境試験は、前述の通り様々な製品の開発現場で行われており、環境試験室は用途によって様々な種類があります。大きさは、実験室程度の小規模なものから、建屋や専用の電力源を必要とするものまで多岐に渡ります。住宅設備の性能を測定する環境試験室は、モデルルームを中に丸ごと一棟建設することができる大きさです。
環境試験室の維持には大きさに合った電力や水などが必要であり、定期的な校正や保守も必要となるため、あまり大きすぎるものを選択すると費用対効果が釣り合わない結果となります。用途に合わせて適切なものを選択することが必要です。
2. 機能の種類
個別の種類としては、例えば自動車用途では、車両の車体フレームに関連する性能試験を行うシャーシベンチ室、エンジンに関する性能試験を行うエンジンベンチ室などがあります。動的な気象環境試験を行うことができる大掛かりな環境試験室では、降雪、降雨、霧、日射、気流などの試験機能と恒温室機能とを組み合わせて試験を行うことが可能です。
また、音に関する環境試験を行う環境試験室としては無響室、残響室などがあり、宇宙開発用途では閉鎖環境に適応するための訓練設備も環境試験室の一種に分類されます。輸送環境試験装置は、輸送過程における振動や衝撃を再現する環境試験室です。輸送の安全性を確認・検証することができます。
参考文献
https://www.oeg.co.jp/Rel/environment.html
https://how.jp/column/tech-explanations/kankyousiken