クランプテスタとは
クランプテスタとは、測定しようとする電流が流れるケーブルをヘッドで挟む (コアで囲む) ことにより、ケーブルに流れる電流を測定できる測定器です。
被測定回路に直接接続する必要がないので、回路への影響は少なく、大きな電流も安全に測定できます。通常配線やケーブルに流れる電流を測定したい場合、回路を切断して電流計を挿入して測定します。
しかし、これは面倒な作業となるので、電気設備の点検時などではクランプテスタを使用して電流測定するようになりました。電流値の表示形態として、かつては測定値をメータで表示するアナログタイプもありましたが、現在では製品数が少なく、数値をディスプレイに表示するデジタルタイプが主流です。
尚、クランプメータと呼ばれる測定器も基本的には同じものですが、電流測定以外に、電圧や抵抗の測定機能を付け加えたものをクランプテスタとしている場合もあります。電圧測定や抵抗測定は通常のテスタと同じものですので、本記事では電流測定に限定して記します。
クランプテスタの使用用途
クランプテスタの主な用途は、家庭や事業所などにおける各種電気工事や点検作業時の電流測定です。ケーブルを切断せず、ケーブルに流れる電流を測定することを目的としています。
測定の度にケーブルを切断する必要が無いので、普段通り照明や設備を稼働したまま電流を測定できることが大きなメリットです。また、微小な電流を測定できる高感度な機種では、機器からアースへ流れる漏電電流の測定にも利用できます。
クランプテスタの原理
クランプテスタはトランスの機能を応用したもので、ケーブルを挟むヘッド部がトランスのコアに相当し、高透磁率磁性材料 (パーマロイなどの鉄系の素材) が使われています。トランスとは、1次側と2次側の巻き数比に応じて、1次側に加えた交流を2次側で巻き数比に応じた電圧や電流に変換できるものです。
コアで囲まれた中に電流が流れるケーブルを入れると、トランスの1次側巻数として作用することになります。また、ヘッドには2次側巻数に相当するコイルが設置されていて、そこに電流が流れることから電流値を測定し、ケーブルに流れる電流値を算出します。
但し、トランスを電流の検出用とした方式では2次巻き線に電流が流れないので、直流電流を測定できません。そのため、直流電流も計測できる交流/直流両用タイプのものは、ホール素子をコアの内部に埋め込んだヘッドを用います。ホール素子は直流、交流どちらでもホール効果により磁束密度に応じた電圧を出力しますので、この電圧を測定してケーブルに流れる電流値を算出します。
クランプテスタのその他情報
クランプテスタの使い方
1. クランプ方法
クランプテスタの操作は、ケーブルをヘッド部で挟むだけの至極簡単なものです。ケーブルをヘッドの中心に置くと測定誤差が小さくなりますが、多少ズレても大きな影響はありません。
2. 電流の向き
直流電流測定の際は、ケーブルに流れる電流の方向に注意が必要です。一般的なクランプテスタのヘッド部には”+”と”-“が表示がされています。これが電流の向きを示すガイドとなり、直流電流が”+”から”-“方向に流れる場合はプラスの電流値、”-“から”+”方向に流れる場合はマイナスの電流値となります。
3. リーク電流測定
機器に流れる電流を測定する場合は、往路もしくは復路どちらかのケーブルをヘッドに通しますが、往路と復路2本をヘッドに通すと、磁束密度が打ち消しあい電流値は0Aとなるはずです。しかし、機器内部で漏洩電流があると、アース (大地) に電流の一部が流れますので、往路の電流に対して復路の電流が若干少なくなります。
その差分に応じた磁束密度が発生してクランプテスタに測定値が表示されますが、これはリーク電流の大きさと等しくなります。この原理を利用して機器のリーク電流を測定することが可能です。なおリーク電流は数mAから数十mA程度ですので、利用するクランプテスタの感度は1mA程度の性能を必要とします。
4. アクセサリー
一般の家電製品では平行コードが使用されていますが、クランプテスタで平行コードの電流測定を実施する際にラインセパレータなどのアクセサリーを利用すると、平行ケーブルを一旦分離できるため、測定が容易になります。また、無線通信でPCに直接測定データを転送するワイヤレスアダプタを使うと、現場作業におけるデータの転記ミスを防ぐことが可能で非常に便利です。
参考文献
https://tmi.yokogawa.com/jp/solutions/products/portable-and-bench-instruments/clamp-on-testers/
https://www.sanwa-meter.co.jp/japan/support/faq/faq56.html