監修: 株式会社クレタス
樹脂加工とは
プラスチックは生活に欠かせない素材の一つであり、身の回りには様々な種類のプラスチック(樹脂)が使われています。
例えばビニール袋などにはポリエチレン (PE) が使われており、テレビや冷蔵庫などの家電製品の筐体として使われるABS樹脂、発泡スチロールなどに使われるポリスチレン (PS) などがあります。
これらの樹脂を適切な性能、形状とするために行われるのが樹脂加工です。加工条件は樹脂の種類や加工後の形状によって様々で、主な加工法としては射出成形や押出成形、真空成形、樹脂の切削加工などが挙げられます。
そのほかにも打ち抜き加工や光造形加工、ブロー成形、真空注型などの方法もあります。
樹脂加工の種類
樹脂加工は前述の通り様々な方法で行われています。樹脂の硬さや融点、流動性など樹脂固有の物性や最終的に得たい形状、物性に合わせて適切な加工条件が選択されます。
樹脂加工法は大別すると切削加工と成形加工に分けられ、前者は少量多品種の生産に用いられ、後者の成形加工は大量生産に用いられます。
プラスチックは基本的に加熱することで流動性を示すため、高温では金型などに流し込むことが可能です。例えば3Dプリンタも3Dデータを読み込み、加熱して流動性を示す樹脂を吐出することで造形物を得ることができます。
1. 切削加工
切削加工は固めた樹脂を機械で削る加工法です。
ブロック状の樹脂を旋盤や鋸盤などを用いて削り取ることで樹脂を加工します。この方法は一つ一つの樹脂を加工するため、大量生産よりは少量多品種の加工に向いた方法です。
切削加工は成形加工に比べて微細な加工が可能で、複雑な形状にも対応可能な方法です。また幅広い樹脂に対して適用可能な方法でもあり、スーパーエンプラや複合材にも用いることができます。
2. 成形加工
成形加工とは金型などに加熱した樹脂を注入したのちに冷却によって固化させて加工する方法です。
金型さえ用意すれば自動の加工機械に樹脂を充填することで加工できるため大量生産に向いている方法です。
成形加工は結晶性プラスチックであるポリエチレンやポリアミド、ポリスチレンやポリカーボネートなど様々な樹脂の加工に用いられています。
成形加工は細かく分類すると射出成形、押出成形、真空成形などに分けられ、樹脂の性質や求める品質に応じて適切な手法を選定します。
- 射出成形
射出成型とは樹脂を加熱して溶融させたあと、装置内で圧力をかけることで金型に流し込み、固まるまで圧力をかけたまま冷却、固化したあとに金型を取り出す方法です。スマートフォンのケース、バケツ、コンテナやCD、DVDなど幅広い生活用品の製造に使われている他、自動車の内装部材などにも射出成型は使われています。
- 押出成形
押出成形は射出成型と同様に樹脂を加熱して溶融させて金型に流し込んで製品形状に変形させたあとに樹脂を押し出し、冷却、固化させた後に一定の長さで切断する方法です。押出成形はパイプやシート、フィルム、チューブのように一定の形状を有する樹脂の加工に用いられています。
3. マシニングセンタによる樹脂切削加工
図1. マシニングセンタ
マシニングセンタとは、数値制御装置 (NC) のコントロールにより複雑な加工を高精度で行う事ができ、自動で工具交換ができるため、効率的な加工を可能とした加工機です。主軸に回転する工具を取付、材料に直接工具を当てて加工する機械です。
複数の工具を使う際、作業員が工具を取り替える作業を自動化できるため、フライス削りや中ぐり、穴あけ、ねじ立てなどの様々な加工を連続して行うことができます。比較的小さな材料から削り出す製品や立体的な加工に向いた加工機です。
工程1
図2. CAMデータの作成
まずは製品図面から加工プログラムとなるCAMデータ (加工データ) を作成します。3軸制御 (X軸・Y軸・Z軸) の加工になるので、図面を基にした3DモデルをCAMデータで作り上げる作業が一番最初に必要となります。
作成したCAMデータを機械に転送して、加工段取り作業の第一段階は完了です。
工程2
図3. 工具セッティング作業
工具セッティング作業です。今回は『Φ4エンドミル』と『Φ4 (R2) ボールエンドミル』の2種類を使用。プログラムで指定した工具ポッドへセットして工具の段取り作業は完了です。
工程3
図4. 材料を固定し加工する様子
ここから加工する材料を所定の位置に固定して加工を開始します。
今回はワーク底面まで加工があるため、両面テープで固定していますが、ワークの材質や加工方法によっては強力な固定が必要になる場合はバイスで直接チャッキングをしています。
加工は設定したプログラムに沿って行われ、自動で加工終了します。
樹脂加工のその他情報
樹脂加工の機械
樹脂加工に用いる機械は加工条件によって異なります。切削加工で必要なのは樹脂を削り取る機械で、旋盤や鋸盤、フライス盤などが用いられます。
一方成形加工では樹脂の加熱、加圧部、金型などが一体となった機械が必要です。そのような機械として射出成形機や押出成形機などが販売されています。また求める製品の形状に合わせた金型の製作も必要となるため、成形加工を行うには初期費用が大きく掛かります。
一方で成形加工は大量生産に向いているため、樹脂加工会社では様々な成形機が導入されています。
プレス機
樹脂加工では穴あけや曲げなどの加工が必要な場合もあります。このような加工で用いられる機械がプレス機です。
樹脂加工におけるプレス機は製品の形状に合わせた金型に溶融した樹脂を流し込み、金型同士で挟むことでプレスします。プレス加工は数秒程度で加工が終わるため、大量生産に向いている方法です。
本記事は樹脂加工を行う株式会社クレタス様に監修を頂きました。