監修: 株式会社クレタス
搬送用タイミングベルトとは
搬送用タイミングベルトとは、製品搬送を使用目的としたタイミングベルト(歯付きベルト)です。主に正確な位置決め精度が求められる際に使用します。ベルトの歯形と同じ歯形のプーリにかみ合わせて回すことで、同期搬送することができます。
また、ベルト背面に各種プロファイル(プロフィル)を取り付けることで、搬送物の正確な位置決めをサポートすることができます。
搬送用タイミングベルトの仕組み
構造
- 本体
熱可塑性ポリウレタン(TPU) 機械的強度、耐オゾン製、耐摩耗性に優れ発塵が少なくクリーンに使用ができます。 - 主な心線
スチール心線 伸びが少ないため、応答性や高精度の位置決め用途に最適。
アラミド心線 軽量で耐屈曲性に優れます。食品用に最適。
高強度グラスファイバー心線 メンテナンスの簡素化、良好な加工性がある。
ベルトタイプ
- フレックスタイプ
初めから決まった長さで成形加工して作るもの。ジョイント部がないので強度が必要な場所に使用する。製作に時間が掛かるので、短納期での対応は難しい。 - ジョイントタイプ(つなぎ目有り)
プーリ間長に応じた長さ(歯数)を長尺材料から切り出し、溶着加工で輪状に加工したもの。
・ オープンエンドタイプ
往復運動する装置のベルトとして使用されるもの。輪状の加工をしないで板状のまま使用する。
その他、標準仕様、ウェット食品用、ドライ食品用、帯電防止用、特殊搬送用、幅広仕様などがあります。それぞれの用途によってウレタンの種類・硬度、心線などの仕様が異なります。
- 歯形状
メートルピッチ・インチピッチでの台形・円弧歯形があります。 - 帆布仕様
歯面帆布仕様 プーリやテーブル面との摩擦が軽減し更に低騒音となります。
背面帆布仕様 搬送物との摩擦が軽減し、滑り・アキューム用途に適しています。
特殊加工
搬送用タイミングベルトは、さまざまな用途に活用されるため、各種処理が必要になる場合があります。
- プロファイル加工
搬送物の仕分けや分離、送りや起動などを制御するには、正確な位置決めが必要となります。搬送タイミングベルトは搬送物の形状に合わせたプロファイルを取り付けすることで、正確な位置決め搬送のサポートをすることが出来ます。
熱可塑性ポリウレタンのベルトとプロファイルを高周波溶着加工をすることで強固に取りつけることが出来ます。ベルトの搬送面に取り付けたプロファイルに機械部品やクランプオン装置を装着することもあります。
- カバー貼り加工
ベルト背面にクッション性のよいスポンジや、グリップ性または滑り性の良い素材を貼り付けるなど、用途に合わせてカバー材を接着することが出来ます。CRスポンジやウレタンシートなどカバー材には種類があります。主に耐摩耗性・クッション性・離型性・耐熱性など、特性のある材料が用いられます。
- 穴加工、歯研磨加工
バキューム搬送用では、ベルト本体に穴をあけて使用します。
さらに、歯を削り落として歯部を平滑にすることもできます 。
- 幅継ぎ加工
タイミングベルトの製造最大幅を超えた仕様において、
ベルトを横並びに幅継ぎ加工することで、規格外サイズのベルトを製作することが出来ます。
付帯品
- プーリ
材料 アルミニウム、ステンレス、スチールなどが一般的です。メッキなど表面処理も可能です。 - クランプ
ベルトが輪になっていないオープンエンドのベルト両端を固定するために使用します。プーリ間をベルトが往復し、リニア位置決めなどの用途で使用します。
搬送用タイミングベルトの選定
搬送を行う際は搬送用タイミングベルトの表面に突起があったり摩擦抵抗が大きいものを選定します。また、搬送物を横から投入する場合は逆に表面が滑りやすく加工された搬送用タイミングベルトを選びます。
- 原動機特性
搬送の際にどのような原動機を用いるかによって使用できるベルトの種類が変わります。搬送作業においては特殊な原動機を用いることが少ないと思われますが、タイミングベルトを導入する際は製造業者へ使用可否を確認することが望ましいです。
- 負荷動力
負荷動力とはプーリーなどの従動側が消費する動力で、タイミングベルトを動かすために最低限必要な動力に関係します。プーリーとベルトの摩擦やベルト自体の重力の大きさによって負荷動力は決まるため、ベルトの材質、大きさ、プーリーの種類などで値は決まります。
- プーリー径
プーリー径は動力側、従動側のプーリーの大きさです。プーリーの大きさによって用いることができる搬送用タイミングベルトは異なります。なお、径だけではなくプーリーの回転数や歯の数などもタイミングベルト選定に影響する因子です。
搬送用タイミングベルトの交換
タイミングベルトは定期的な交換が必要で、搬送用タイミングベルトも同様です。タイミングベルトには強い力が加わり続けるため、経時的に歯が摩耗したり亀裂、クラックが発生することがあります。
このように劣化したベルトを使用し続けると安定した搬送が行えなくなるため、動作が不安定になった際は交換が必要です。また、日常点検でも搬送用タイミングベルトに摩耗や亀裂がないように確認することが推奨されます。
本記事は搬送用タイミングベルトを製造・販売する株式会社クレタス様に監修を頂きました。
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