鋼材

鋼材とは

鋼材

鋼材とは、鉄を主成分とし、あらゆる産業分野で使用される鉄鋼材料を総称したものです。

100%鉄で構成されている鋼材は存在せず、強度や摩耗、温度に耐えるために、炭素、窒素、クロムなどの化学成分を添加して使用します。鋼材として一般的なものでは、SS材 (一般構造用圧延鋼材) 、SN材 (建築構造用圧延鋼材) 、SM材 (溶接構造用圧延鋼材) があります。また鉄にクロムを10.5%以上添加したSUS材 (ステンレス鋼) は錆びに強い特徴があります。

鋼材の使用用途

家電製品や自動車など、身近にある製品には必ずと言ってよいほど、鋼材が使用されています。鋼材は強度、温度、伝導性、耐腐食性、耐摩耗性、被削性、靭性など、要求される項目は様々で、加工方法や鉄に添加する化学成分の割合、熱処理によって要求を満たした鋼材を製作します。

金属材料メーカーで鉄鋼石から製造する際は、H型鋼やI型鋼、C型鋼などの棒形状に成形し素材形状として販売しています。これらは橋などの建築材料として使用されます。このほか管形状ものも存在します。また、エレベータの壁など薄板の板金として使用するために、板状の鋼材もあります。

鋼材の性質

鋼材に含まれる化学物質は、以下の5元素から構成されています。

1. 炭素 (C)

炭素を添加することで引張強さや硬度を上げることができ、鋼材の強度を上げることができます。また、焼入れ性も向上しますが添加しすぎると靭性が低下する原因になります。

2. ケイ素 (Si) 

金属の脱酸素剤として添加し、靭性や伸び能力を損ねることなく降伏点と引張強さを高める効果があります。しかし、添加しすぎると脆く壊れてしまう (脆化) を起こしやすくなります。

3. マンガン (Mn)

脱硫剤として添加し、焼入れ性を向上させることで靭性を損ねることなく降伏点と引張強さを高める効果があります。

4. リン (P)

鋼材を精製するときに発生する不純物として扱われており、靭性や引張強さといった強度を下げる原因となる物質です。一方で被削性を向上させる効果がありますが、基本的にはなるべく含有量を少なく抑えます。

5. 硫黄 (S)

リンと同じく強度を低下させる不純物として扱われ、溶接性を低下させますので、含有量もできるだけ少なくすることが一般的です。一方、マンガンと結合することで糸状に伸びる切りくずを適度に分断するチップブレーカーの役割を果たします。そのため被削性を向上させるために適量を添加する場合もあります。

これらの5元素を総称し、鋼の5元素と呼ばれています。1つの元素が著しく含有量が多いと強度に悪影響を及ぼすので、鋼材が使われる場所や用途によって含有量のバランスを調整し、適材適所の鋼材を精製していきます。また、鋼材の熱処理をどのように行うかによって性質も異なることから、熱処理後の性質を考慮した上で調整が必要です。

鋼材の種類

鋼材種類の代表例として、以下3種類の特徴を紹介します。

1. 一般構造用圧延鋼材 (SS材) 

JISG3101で規定され、SS330、SS400、SS490、SS540の4種類あり、数字は引張強さの下限値を表しています。化学成分はC、Mn、P、Sの量が決められています。SS400が最も流通性があり、広く使用されています。

2. 建築構造用圧延鋼材 (SN材) 

JISG3136で規定され、SN400A,B,CとSN490B,Cの5種類あります。建築や建造の構造材料として使われることを想定しており、耐震性や溶接性についての指標が決められています。塑性変形能力を確保するために、降伏比や降伏点の上限を規定しています。

3. 溶接構造用圧延鋼材 (SM材) 

JISG3106では、SM材の種類は11種類あり、C、Si、Mn、P、Sの化学成分が決められています。SM材はキルド鋼 (またはセミキルド鋼) と呼ばれており、SS材に対して酸素含有量が少ないのが特徴です。

鋼製電線管

鋼製電線管とは鋼製電線管

鋼製電線管は、電線を保護するための鋼管です。鋼製のほか合成樹脂製や塩化ビニール製もあります。色々な種類、外径、厚さがあり、長さは欧米の12フィート規格に由来する3,660mmが一般的です。

電線管の役割は、電線を物理的に保護すること、電線から火災が広がるのを防止すること、火災時に電線を保護することなどです。また、電線が絶縁劣化した時の外部への漏電を小さくしたり、電線の入れ替えなどの補修作業を容易にする役割もあります。

鋼製電線管は、屋内・屋外、露出・埋設、耐食性・可とう性、及び作業性、価格、サイズなどの使用条件に適合する種類が揃っています。

鋼製電線管の使用用途

鋼製電線管には、主なものとして3種類があり、JIS規格になっています。厚鋼電線管 はG管と呼ばれ、肉厚が2.3mm以上の金属電線管です。通常内面・外面が溶融亜鉛めっきされ、耐候性に優れているので、主として屋外の電線保護に使われます。直射日光が当たる屋上や排気ガスが多い駐車場、また、湿気が多い地下ピット、塩害区域など、環境が過酷な所にも使用が可能です。さらに高圧電線や防爆仕様として危険区域の電線にも使用されます。

薄鋼電線管は C管と呼ばれ、屋内使用を前提とする仕様になっているので、厚鋼電線管 に比べると耐久性が少し劣ります。肉厚は1.6mm近辺が多く、主として屋内の露出配管用に使われます。

ねじなし電線管はE管と呼ばれ、薄鋼電線管よりさらに肉厚が薄く、1.2mm近辺の電線管です。軽量で施工性に優れているが、強度が弱い欠点があります。屋内露出用や天井裏などに使用されます。

鋼製電線管の特徴

鋼製電線管には、主な3種類のほか、金属可とう電線管、ライニング鋼管などがあります。金属可とう電線管は、容易に曲げることができることを特徴とする電線管で、プリカチューブとも言われています。伸縮ジョイント部や振動がある所などで、完全固定が困難な所に使われます。また、分電盤や接続機器の近くで可とう電線管と鋼製電線管とを接続する使い方も多くみられます。

ライニング鋼管は、鋼製電線管に合成樹脂のコーティングをしたもので、ケーブル保護の電線管やガス管、水道管などを地中に埋設する場合に使われ、PLP管とも言われています。

電線管の設計技術として重要なことの一つが占積率です。占積率は電線管の内径面積に対して電線が占める面積の比率を言い、占積率を32%以下にする必要があります。占積率が大きいと、入線作業が困難となり、電線が損傷する可能性が高まり、また電線の交換が困難になるからです。電線管の長さも考慮する必要があります。曲がりが多い場合や、直線長さが約30m以上になる場合は、途中にボックスを一定間隔で設けます。

多くの電線を一つの電線管に収容する場合は、放熱が不十分となるため、電流減少係数と言って、許容電流が減少する比率があります。3本以下なら0.7倍、4~6本の場合は0.6倍、7~15本では0.5倍まで許容電流が減少します。

鋳塊

鋳塊とは

鋳塊

鋳塊(ちゅうかい)とは、溶かした金属、または合金を鋳型に流し込み、冷却し、固めた塊です。つまり鋳造によって作られるものであり、インゴットとも呼ばれます 。

鋳塊は、あらゆる金属製品のもとであり、圧延や押出し、除去などの加工工程に供給される素材です。鋳塊を作る工程の最後には脱酸素の工程があり、この程度によって、リムド鋼(脱酸素が不十分)、キルド鋼(脱酸素が十分)の2つに大別されます。リムド鋼は、有害不純物の残存が多いため、品質としてはキルド鋼の方が良いとされています。

鋳塊の使用用途

鋳塊は、各種金属・合金の塊であり、あらゆる金属製品を作るための素材です。

鋳塊は、その品質によって大別すると、リムド鋼とキルド鋼の2つに分けられ、より品質の高いキルド鋼は、高品質の求められる用途、例えば機械構造用鋼材や特殊鋼といったものに使用されます。

一方、リムド鋼は、キルド鋼と比較すると品質は落ちるものの、製造の歩留まりが良く、安価なため、一般構造用鋼材に使用されます。また、鋳肌(いはだ)が極めてきれいなため、薄板に適しているともされています。

鋳塊の種類

鋳塊は、その寸法、形状、用途の違いより、インゴット、ブルーム、スラブ、ビレットに分けられます。
以下で、それぞれについて説明します。

  • インゴット(ingot:一般原材料用鋳塊)
    加工メーカーが目的に応じて自由に溶解して使えるような形状寸法にした塊です。
  • ブルーム(bloom:条鋼圧延用鋳塊)
    角形断面をもち、断面がほぼ正方形で一辺が130mm以上のものを指します。条鋼圧延にかけられ、H形鋼などの形鋼製品の素材として使用されます。
  • スラブ(slab:圧延用鋳塊)
    圧延用鋳塊の名称で、角形断面をもち、厚さ50mm、幅300mm以上のものを指します。薄板などの板用素材であり、高温化で圧延することで板状にされます。
  • ビレット(billet:押出用鋳塊)
    ピレットは、押出加工用に切断した塊の名称で、主に円柱形の形状をしています。押出機にかけて高温度で押出し、管、棒などの形状をつくるための素材です。

銅ブスバー

銅ブスバーとは

銅ブスバー

銅ブスバーとは、電気機器の通電部に使用している銅材で、電気・熱の伝導性に優れているタフピッチ銅や無酸素銅で製作されています。

タフピッチ銅 (C1100) はCuの純度が99.9%以上の金属です。導電性、熱伝導性のほか、耐食性、加工性も優れています。内部に微量の酸素が含まれているため、高温では水素と反応して水素脆性が発生する可能性があります。

無酸素銅 (C1020) はタフピッチ銅に比べて酸素含有量が少なく、抵抗や歪みが少ないため、水素脆性が懸念される環境で使用する場合は無酸素銅を採用する場合があります。また、無酸素銅はガスの放出が少ないため、真空機器に広く利用されています。

銅ブスバーの使用用途

銅ブスバーは高圧で大きな電流を流すための導体として、配電盤をはじめ、電気自動車や電車の制御用回路など、さまざまな用途として利用されています。

銅ブスバーは丸形の導線と比較すると、導電率が良く、配線のスペースが少なくすむメリットがあります。また、端子をかしめる必要がなく、銅ブスバーに直接穴を空けるだけで、機器とボルト接合ができます。導線が太くなると、曲げRを考慮する必要がありますが、銅ブスバーにはその必要がありません。

銅ブスバーの特徴

銅ブスバーには電流値に応じて、最低断面積を決める必要があります。断面積は電流値を電流密度で割って算出します。
電流密度に関してはJISC8480で以下のように規定されています。

  • 125A以下:3.0以下
  • 125~250A以下:2.5以下
  • 250~400A以下:2.0以下
  • 400~600A以下:1.7以下

実際の断面積を設計する上では、材料の面取り及び成形を考慮して、電流密度増+5%を考慮して断面積を決めていきます。

また、銅ブスバーは機器に固定するために、ネジ穴を空けた箇所がありますが、その断面積が、ネジ穴のない断面積に対し1/2を超える場合は、ネジ穴部の断面積を計算で求めた断面積に合わせる必要はないとされています。

JIS H 3140には銅ブスバーの参考代表寸法が記載され、厚さは2.0mmから30mmまで、幅は300mm以下、長さは5000mm以下となります。

また、ブスバーは銅の他にアルミ製を使う場合があります。アルミ製は銅製に対して引張強さや導電性は低下しますが、価格が安いため、原価低減の案として検討する場合があります。反面、アルミ製は導電性が低くなりますので、銅のブスバーよりも導体の体積を広くしなければなりません。

鉄線

鉄線とは

鉄線

鉄線とは、鉄を線状に長く伸ばしたもので、俗称「はりがね」と言われます。鉄線と鋼線は、いずれも鉄鋼を原料としますが、このうち鉄線は低炭素鋼の軟鋼材を伸線したものが一般的です。

鉄線は冷間加工で伸線されますが、さらに亜鉛などのめっき、樹脂のコーティングや熱処理、ローラなどによる異形加工等が行われます。鉄線の製造に使われる素材は、JIS規格化されている軟鋼線材などを使用します。鉄線もJIS規格のものが多く、鉄線、合成樹脂被覆鉄線や着色塗装亜鉛めっき鉄線などがあります。また、溶融アルミニュウムめっき鉄線及び鋼線、亜鉛めっき鉄線やフェンス用亜鉛めっき鉄線及び鋼線もJIS規格化されています。

鉄線の使用用途

鉄線の種類は多くあり、普通鉄線は一般用、めっきや溶接などに使われます。くぎ用鉄線もあります。なまし鉄線は一般用、金網、及び結束などの用途があります。コンクリート鉄線は溶接金網やコンクリートの補強に使われます。

なまし鉄線は、鉄線を焼鈍加工したものです。結束などに向いており、型枠には#10、足場や仮設には♯12,鉄筋の結束には♯21が多く使われます。電気工事にはバインド線が使用されます。鉄バインド線の太さは、0.9, 1.2, 1.6mmなどが規格化され、亜鉛めっきをしてビニール樹脂被覆した線を、電線やケーブルの支持固定、及び電線管への電線引き入れ時の呼び線などに使用されます。

有刺鉄線は、先端を尖らせた金属のとげを一定間隔で巻き付けた鉄線であり、不法侵入防止や農作物の保護などに使われます。

鉄線の特徴

鉄線は錆びやすいので、めっき、表面処理や塗装、樹脂コーティングなどで保護したものが多く使われます。多くの用途がある亜鉛めっきは、鉄と亜鉛とは高温下で合金を作りやすく、鉄線の界面で鉄亜鉛合金層が形成される特徴があります。この合金層は硬度が高く鉄線を外部環境から遮断するのみでなく、亜鉛が優先的に溶けだして鉄の腐食を防ぐ機能をもっています。この層の厚さが亜鉛めっき鉄線の寿命を左右し、寿命が長くなり交換が減少するので経済的といえます。

なまし鉄線は、焼鈍加工と言って、鉄線を加熱した後、徐々に冷却することにより、弾性限度や強度は低下しますが、伸び特性が増加した鉄線です。したがって変形しやすいので、結束や金網に適しています。

鉄線の製造は年々合理化され、コスト低減に寄与しています。なまし鉄線では、軟鋼の素材を酸洗い処理し、皮膜処理した後、冷間引抜伸線をします。そして軟化焼鈍を行い、3次加工して完成させます。これらの工程が連結・自動化されています。

酸化銅

酸化銅とは

酸化銅とは、その名の通り、が酸化したものです。

酸化銅には、酸化銅 (I) と酸化銅 (Ⅱ) の2種類があります。酸化銅 (I) は、水溶液をフェーリング液で還元して得られるものです。一方で、酸化銅 (Ⅱ) は、銅片を空気中で赤熱して得ることができます。

酸化銅の使用用途

1. 酸化銅 (I)

酸化銅 (I) の使用用途は、整流器、赤色顔料、及び赤色釉、殺菌剤・農薬の原料をはじめ、船底用・海水用塗料や漁網防汚塗料、ガラス用赤色顔料などです。なお、船底に酸化銅 (I) の塗料を塗るのは、船底にフジツボが付着して燃費が悪化するのを防止するためです。

従来は毒性の強い有機すず化合物が使われていましたが、近年は環境に優しい酸化銅 (I) 主体の船底塗料が使用されています。また、光電池、種子の殺菌、合成樹脂や酵素製造用の触媒としても使われます。

2. 酸化銅 (Ⅱ)

酸化銅 (Ⅱ) の使用用途は、強力な酸化剤として有機元素分析やガス分析用試薬、触媒、顔料をはじめ、窯業用釉、ガラス用緑青色着色剤などです。特に鮮明で着色力の強い青顔料のフタロシアニンブルーの原料として有名です。

その他、半導体素子、メッキ薬などに使われています。また、塗料、レーヨン製造、銅塩の製造や光学ガラス研磨材、農薬、木材防腐剤用原料などの用途もあります。陶磁器に酸化銅 (Ⅱ) を含んだ釉をかけて還元焼成すると、酸化銅 (Ⅱ) が酸化銅 (I) に還元されて赤色になります。

酸化銅の特徴

1. 酸化銅 (I)

酸化銅 (I) は、別名で酸化第一銅、赤色酸化銅、亜酸化銅とも呼ばれ、化学式がCu2Oの赤色の粉末です。空気が乾燥していれば安定していますが、湿度が高いと徐々に酸化が進行して、酸化銅 (Ⅱ) に変化します。

分子量は143.08、比重5.88、融点は1,235℃、沸点1,800℃、沸点で酸素を失います。塩酸、塩化アンモニウム水、アンモニア水に溶解しますが、水、アルコールには不要です。

2. 酸化銅 (II)

酸化銅 (II) は、別名で酸化第二銅、黒色酸化銅や、単純に酸化銅とも呼ばれ、化学式がCuOの黒色の粉末または粒です。天然黒銅鉱に含まれています。銅粉を酸素中で加熱すると、酸化銅 (II) が生成され、黒色の無定形粉末になります。

分子量は79.55、比重6.31、融点は1,026℃、塩酸、塩化アンモニウム水、アンモニア水に溶解します。水酸化アルカリ溶液にも溶け、水溶液は青色を呈色します。水、アルコールには不要です。

酸化銅のその他情報

1. 酸化銅の酸化と還元

銅・酸化銅における酸化と還元の原理を、実験で確認することができます。銅Cuの粉末をガスバーナーなどで加熱すると、黒い固体になります。これが酸化銅 (Ⅱ) CuOです。銅を加熱すると、空気中の酸素と反応して、酸化物である酸化銅に変化します。そして、銅が有する金属光沢や電気伝導性、熱伝導性などの特性がすべて失われます。

次に、酸化銅を還元により元の銅に戻すことが可能です。いくつかの方法がありますが、炭素を用いる方法では、酸化銅と炭素の粉末を試験管に入れ、ガスバーナーで加熱すると金属光沢がある銅が現れます。炭素が酸化銅の中の酸素と結合して炭酸ガスとなり、銅が残ります。

水素を用いる方法は、試験管を水素で充満させ、その中に高温に加熱した酸化銅を入れると、光沢がある銅に変化します。水素が酸化銅中の酸素と結合して水となり、銅が残ります。試験管の内壁に小さな水滴が付く様子を観察できます。酸化銅の還元反応を利用した工業技術の一つが、銅の精錬です。銅鉱石には不純物が多く含まれているので、還元の工程により精錬を行います。

2. 酸化銅の製造方法

酸化銅 (I)

  • 電解法
    正負極の銅板を食塩水に入れ50℃で電気分解すると、正極側に塩化第一銅が生成し、これが陰極側で生成する水酸化ナトリウムによって、酸化銅 (I) に変えられます。
  • 化成法
    また食塩を入れた塩化第二銅溶液に、還元剤を添加し水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ溶液を添加することでも、酸化銅 (I) が生成します。

酸化銅 (Ⅱ)

  • 加熱酸化法
    酸化銅 (I) または銅の伸線、銅粉を流動床または移動床で400~600℃に加熱して酸化、粉砕、分級することで酸化銅 (II) がえられます。
  • 化成法
    塩化銅、硫酸銅、硝酸銅などの銅化合物を500℃以上に加熱分解後、粉砕、分級します。
  • 直接湿式法
    塩化第二銅、硫酸銅、硝酸銅などの銅化合物の溶液を80~100℃に加熱しつつアルカリ溶液によって強アルカリ性にすることで酸化銅を生成させ、水洗、乾燥後、粉砕します。
  • 間接湿式法
    塩化第二銅、硫酸銅、硝酸銅などの銅化合物の溶液を常温付近にしてアルカリ溶液で中和し、水酸化銅または炭酸銅を製造しててから500℃以上に加熱分解、粉砕、分級します。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1317-38-0.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1317-39-1.html

軸受鋼

軸受鋼とは

軸受鋼

軸受鋼とは、軸受に使用される鋼のことです。

JIS G 4805 (高炭素クロム軸受鋼) をはじめ、JIS G 4051 (機械構造用炭素鋼鋼材) JIS G 4053 (機械構造用合金鋼材) JIS G 4303 (ステンレス鋼棒) で規定された材料を軸受の材料、すなわち軸受鋼として使用しています。

軸受鋼に求められるのは「耐荷重」「耐摩耗性」「焼入性」「耐食性」で、使用する環境条件に応じて、炭素、クロムなどの添加と、熱処理、圧延などにより、高清浄や鋼中酸素量を低減、非金属介在物を微細化することにより、軸受の高寿命化を図っています。

軸受鋼の使用用途

軸受は回転体を支えるもので主にころ軸受と玉軸受があります。ころは円筒状、玉は球状のものが円筒形状の中でころがりながら、回転体を支えています。ころや玉は回転体の重みを受けながら線状、または点状に接触しますが、接触部は高い荷重がかかります。そこで大きい荷重に耐えるために開発されたのが軸受鋼です。主な加工方法としては以下です。

  • 鍛造または圧延によって、セメンタイトの粗大な網目組織を破砕した後、加熱して再結晶化により結晶粒を微細化する。
  • さらに球状化焼きなましをした後、焼入れ、または低温で焼き戻しを行う。

軸受鋼のその他情報

軸受に使用される材料の種類

軸受に使用される材料の種類は、次の通りです。

1. 高炭素クロム軸受鋼
SUJと呼ばれる材質で、表面だけではなく内部まで硬くしています。調質が容易で、球状化焼きなましで被削性を向上しているのが特徴です。JISではSUJ2からSUJ5まで分類されています。SUJ2からSUJ5に数値が大きくなるほど焼入れ性が高いです。

SUJ2は高炭素クロム鋼の中で90%以上使用されており、SUJ3はSUJ2に対してSiとMnの割合を増やし、Crを減らすことで焼入れ性を向上した種類です。SUJ5はSUJ3にMoを加えることで、さらに焼入れ性を向上させた種類で、大型の玉やころ、レースなど強度に対応しています。

2. 肌焼合金鋼系軸受用鋼
浸炭を施すことで、高炭素クロム軸受と同等の硬さと耐摩耗性を維持しつつ、内部に靭性を持つことが特徴です。

3. 耐食鋼系軸受用鋼
耐食性と耐摩耗性に優れており、材料の腐食が進行しやすい化学工場で使用されます。

4. 耐熱鋼系軸受用鋼
寸法安定性が良好で、高温環境で使用されます。

5. 中炭素鋼系軸受用鋼
高い硬さが求められる部分に高周波焼入れが施されており、自動車のハブユニット軸受や直線運動軸受などに多く使用されます。

転位線

転位線とは

転位線とは金属における原子配列のずれ (欠陥) が線状に発生していることです。

金属は原子がすべて規則正しく並んでいると考えられてきましたが、実際には所々で原子の並び方に乱れが存在していることが明らかになりました。

ある面の原子群が同じ方向にずれる場合、その面をすべり面と呼びますが、原子群が一度にずれるためにはかなり大きなエネルギーが必要です。実際には原子の一部分がすべり面に沿って順番にずれることにより、きわめて小さい力で金属が変形を始めます。この理論は1934年にテーラー、オロワンらにより提案されました。

転位線の使用用途

金属鍛造や塑性加工などによる外力によって変形します。変形するときは必ず金属の内部に転位線が発生して移動しています。金属を強くするためには転位線の移動を抑えることが必要です。

転位線の移動を抑える方法として、加工硬化、析出強化、固溶強化、結晶粒の微細化があります。

転位線はX線解析による転位密度の測定に使用されます。転位密度は転位線の長さの合計を表したものです。転位密度を測定することによって材料がどの程度強くなっているか評価することができます。転位密度が大きいほど材料の強度が大きくなります。

転位線のその他情報

1. 転位線の特徴

線状の格子欠陥となる転位線は、結晶の塑性変形において発生し、隣の原子に動きが伝わり、最終的には結晶の表面に到達して1原子分の段差を表示させます。塑性変形は結晶内部に転位線として発生し、隣の原子に段階的に移動するため、いきなり結晶表面に段差ができることはありません。

転位の移動を起こすために外部からのせん断力が必要となりますが、その力をパイエルス力と呼びます。パイエルス力はすべり面の間隔、バーガースベクトル、ポアソン比、剛性率から求めることができます。

2. 転位線の分類

転位の大きさまたは向きを表すものに、バーガース・ベクトルがあります。転位線とバーガース・ベクトルの向きの関係によって刃状転位、らせん転位、混合転位に分類されます。

刃状転位
たくさん並んだ原子面の中に、原子面の刃物を上半分または下半分の位置まで1枚余分に切り込んだものをイメージしたものです。上下にすべり面があって上半分に刃状転位がある場合、上では格子が圧縮され、下では膨張している状態を「正の転位」と呼び、反対を「負の転位」と呼びます。

らせん転位
金属の中にある線を定義した場合、その線を中心に360°回転をすると1か所の面で原子層がずれている状態を指します。ずれる方向によって、右巻きまたは左巻きと区別します。刃状転位は、バーガース・ベクトルと転位線が直角をなしており、らせん転位は平行です。

混合転位
直角でも平行でもない状態で、刃状転位とらせん転位が混在している状態になります。

超電導モータ

超電導モータとは

超電導モータの超電導とは、ある特定の物質を超低温にした場合に急激に電気抵抗がゼロになる現象をいいます。
この超電導を用いると、低電圧で大電流を流すことが可能になるため、強力な磁場を形成でき、優れたトルク特性の電気モーターを実現できます。

しかし超電導線材にもし外部磁場が印可されて臨界磁場を超えると超電導状態が破れ、通常の電気的抵抗を有する常電導状態になるため、超電導磁場の取扱いには注意が必要です。

超電導モータの使用用途

超電導モータはその高いエネルギー変換効率と通常の同出力の電動モータと比較して小型軽量化が期待できるので、超電導リニア鉄道(通称リニアモーターカー)をはじめ、船舶や航空機等の推進エンジン用途等に使用が期待されています。

実用化が既になされている超電導リニアモーターカーとしては、上海マグレブトレインが有名で、日本でもJR東海が2027年の開業を目指し工事を進めています。

また超電導自体は、医療用MRI機器ではすでにおなじみの実用化された技術と言えます。

超電導モータの原理

超電導モータでは、その名の通り、モーターの回転子に超電導線材を用いたコイルを用い、低損失で高効率かつトルク特性の優れたモーターを実現しています。
なお、リニアモーターカーの駆動箇所には、超電導の強力な磁場を活用した磁石を車両機体の左右に直線(リニア)上に配置し、車両を浮かせることで、車輪の摩擦等の抵抗成分の影響が少ない超高速鉄道の運転が可能になります。

超電導物質には 液体ヘリウムの4K(-269度)の低温で電気抵抗がゼロになる超電導現象を有するニオブチタン合金 (Nb-Ti) 等の磁石が有名ですが、液体ヘリウムはその取扱いが大変かつ高価であるため、医療用MRI等これまで実用化された用途が非常に限られていました。

一方で近年、高温超電導磁石と呼ばれる液体窒素温度77K(-196度)で超電導状態が実現可能なビスマス系銅酸化物が発見され、研究開発が活性化しています。なぜなら、液体ヘリウムに比較して液体窒素は、安価で取扱いがしやすく、冷却器を小型低コストにできるためです。

ただし実用化にはまだまだ解決が必要な課題もあり、重工産業の大手各社がしのぎを削って開発している状況にあります。

超電導モータを研究開発している企業

川崎重工業株式会社

https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20101101_1.html

日本製鉄株式会社

https://www.nipponsteel.com/news/20180803_100.html

硬鋼線

硬鋼線とは

硬鋼線(こうこうせん)とは、通常、硬鋼線材を熱処理した後、伸線など、冷間加工して仕上げられた鋼線のことをいいます。

なお、硬鋼とは、鋼を分類する際に硬さを区分けの基準としたものです。

ピアノ線と比較されることが多いですが、ピアノ線は、規格が厳しく強度面などで優れる高級材料に対して、硬鋼線は、身の回りの製品に使用されることの多い、比較的安価な一般材料です。使用例としては、椅子やベッドなどの家具のばね類として使われる他、玩具やシャッター、自転車のスプリングなどがあります。

硬鋼線の使用用途

硬鋼線は、主な用途として、ばね、針、スポークなどが挙げられます。例えば安全ピンのばね、スイッチ類のばね、はかりのばね、自転車のサドルなどがあります。

この他、高圧ゴムホース用補強材、ドライバー材、ヘアーピンなどの身近な日用品に用いられる他、建築業界では、シャッタースプリングとしても使用されています。また、自動車産業では、シートスプリングとして使用されており、エレクトロニクス分野では、通信線・送電線の補強材としてなど、幅広い産業で使用されています。

硬鋼線の種類

硬鋼線の材料となる硬鋼線材は、含有する炭素量や成分の違いによって、21種類あります。しかし、これらの線材から作られる硬鋼線は、硬鋼線A種(SW-A)、硬鋼線B種(SW-B)、硬鋼線C種(SW-C)の3種類に分類され、硬鋼線A<B<Cの順番に引張強度が高くなります。
以下で、それぞれの種類について説明します。

  • 硬鋼線A種(SW-A)
    引張強さは、硬鋼線では一番低く、ばね用として使われることが少なく、金網や線材加工などに使用されます。
  • 硬鋼線B種(SW-B)
    引張強さがA種より高く、線材は、60カーボンが多く使われています。主に静荷重を受けるばね用として使われます。
  • 硬鋼線C種(SW-C)
    引張強さは、B種よりさらに高く、線材としては80カーボンが使用されます。
    SW-Bと同様、主として静荷重を受けるばね用として用いられます。

なお、関連する規格としては「JIS G 3506 硬鋼線材」と「JIS G 3521 硬鋼線」が挙げられます。