酸化銅

酸化銅とは

酸化銅とは、その名の通り、が酸化したものです。

酸化銅には、酸化銅 (I) と酸化銅 (Ⅱ) の2種類があります。酸化銅 (I) は、水溶液をフェーリング液で還元して得られるものです。一方で、酸化銅 (Ⅱ) は、銅片を空気中で赤熱して得ることができます。

酸化銅の使用用途

1. 酸化銅 (I)

酸化銅 (I) の使用用途は、整流器、赤色顔料、及び赤色釉、殺菌剤・農薬の原料をはじめ、船底用・海水用塗料や漁網防汚塗料、ガラス用赤色顔料などです。なお、船底に酸化銅 (I) の塗料を塗るのは、船底にフジツボが付着して燃費が悪化するのを防止するためです。

従来は毒性の強い有機すず化合物が使われていましたが、近年は環境に優しい酸化銅 (I) 主体の船底塗料が使用されています。また、光電池、種子の殺菌、合成樹脂や酵素製造用の触媒としても使われます。

2. 酸化銅 (Ⅱ)

酸化銅 (Ⅱ) の使用用途は、強力な酸化剤として有機元素分析やガス分析用試薬、触媒、顔料をはじめ、窯業用釉、ガラス用緑青色着色剤などです。特に鮮明で着色力の強い青顔料のフタロシアニンブルーの原料として有名です。

その他、半導体素子、メッキ薬などに使われています。また、塗料、レーヨン製造、銅塩の製造や光学ガラス研磨材、農薬、木材防腐剤用原料などの用途もあります。陶磁器に酸化銅 (Ⅱ) を含んだ釉をかけて還元焼成すると、酸化銅 (Ⅱ) が酸化銅 (I) に還元されて赤色になります。

酸化銅の特徴

1. 酸化銅 (I)

酸化銅 (I) は、別名で酸化第一銅、赤色酸化銅、亜酸化銅とも呼ばれ、化学式がCu2Oの赤色の粉末です。空気が乾燥していれば安定していますが、湿度が高いと徐々に酸化が進行して、酸化銅 (Ⅱ) に変化します。

分子量は143.08、比重5.88、融点は1,235℃、沸点1,800℃、沸点で酸素を失います。塩酸、塩化アンモニウム水、アンモニア水に溶解しますが、水、アルコールには不要です。

2. 酸化銅 (II)

酸化銅 (II) は、別名で酸化第二銅、黒色酸化銅や、単純に酸化銅とも呼ばれ、化学式がCuOの黒色の粉末または粒です。天然黒銅鉱に含まれています。銅粉を酸素中で加熱すると、酸化銅 (II) が生成され、黒色の無定形粉末になります。

分子量は79.55、比重6.31、融点は1,026℃、塩酸、塩化アンモニウム水、アンモニア水に溶解します。水酸化アルカリ溶液にも溶け、水溶液は青色を呈色します。水、アルコールには不要です。

酸化銅のその他情報

1. 酸化銅の酸化と還元

銅・酸化銅における酸化と還元の原理を、実験で確認することができます。銅Cuの粉末をガスバーナーなどで加熱すると、黒い固体になります。これが酸化銅 (Ⅱ) CuOです。銅を加熱すると、空気中の酸素と反応して、酸化物である酸化銅に変化します。そして、銅が有する金属光沢や電気伝導性、熱伝導性などの特性がすべて失われます。

次に、酸化銅を還元により元の銅に戻すことが可能です。いくつかの方法がありますが、炭素を用いる方法では、酸化銅と炭素の粉末を試験管に入れ、ガスバーナーで加熱すると金属光沢がある銅が現れます。炭素が酸化銅の中の酸素と結合して炭酸ガスとなり、銅が残ります。

水素を用いる方法は、試験管を水素で充満させ、その中に高温に加熱した酸化銅を入れると、光沢がある銅に変化します。水素が酸化銅中の酸素と結合して水となり、銅が残ります。試験管の内壁に小さな水滴が付く様子を観察できます。酸化銅の還元反応を利用した工業技術の一つが、銅の精錬です。銅鉱石には不純物が多く含まれているので、還元の工程により精錬を行います。

2. 酸化銅の製造方法

酸化銅 (I)

  • 電解法
    正負極の銅板を食塩水に入れ50℃で電気分解すると、正極側に塩化第一銅が生成し、これが陰極側で生成する水酸化ナトリウムによって、酸化銅 (I) に変えられます。
  • 化成法
    また食塩を入れた塩化第二銅溶液に、還元剤を添加し水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ溶液を添加することでも、酸化銅 (I) が生成します。

酸化銅 (Ⅱ)

  • 加熱酸化法
    酸化銅 (I) または銅の伸線、銅粉を流動床または移動床で400~600℃に加熱して酸化、粉砕、分級することで酸化銅 (II) がえられます。
  • 化成法
    塩化銅、硫酸銅、硝酸銅などの銅化合物を500℃以上に加熱分解後、粉砕、分級します。
  • 直接湿式法
    塩化第二銅、硫酸銅、硝酸銅などの銅化合物の溶液を80~100℃に加熱しつつアルカリ溶液によって強アルカリ性にすることで酸化銅を生成させ、水洗、乾燥後、粉砕します。
  • 間接湿式法
    塩化第二銅、硫酸銅、硝酸銅などの銅化合物の溶液を常温付近にしてアルカリ溶液で中和し、水酸化銅または炭酸銅を製造しててから500℃以上に加熱分解、粉砕、分級します。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1317-38-0.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1317-39-1.html

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