転位線

転位線とは

転位線とは金属における原子配列のずれ (欠陥) が線状に発生していることです。

金属は原子がすべて規則正しく並んでいると考えられてきましたが、実際には所々で原子の並び方に乱れが存在していることが明らかになりました。

ある面の原子群が同じ方向にずれる場合、その面をすべり面と呼びますが、原子群が一度にずれるためにはかなり大きなエネルギーが必要です。実際には原子の一部分がすべり面に沿って順番にずれることにより、きわめて小さい力で金属が変形を始めます。この理論は1934年にテーラー、オロワンらにより提案されました。

転位線の使用用途

金属鍛造や塑性加工などによる外力によって変形します。変形するときは必ず金属の内部に転位線が発生して移動しています。金属を強くするためには転位線の移動を抑えることが必要です。

転位線の移動を抑える方法として、加工硬化、析出強化、固溶強化、結晶粒の微細化があります。

転位線はX線解析による転位密度の測定に使用されます。転位密度は転位線の長さの合計を表したものです。転位密度を測定することによって材料がどの程度強くなっているか評価することができます。転位密度が大きいほど材料の強度が大きくなります。

転位線のその他情報

1. 転位線の特徴

線状の格子欠陥となる転位線は、結晶の塑性変形において発生し、隣の原子に動きが伝わり、最終的には結晶の表面に到達して1原子分の段差を表示させます。塑性変形は結晶内部に転位線として発生し、隣の原子に段階的に移動するため、いきなり結晶表面に段差ができることはありません。

転位の移動を起こすために外部からのせん断力が必要となりますが、その力をパイエルス力と呼びます。パイエルス力はすべり面の間隔、バーガースベクトル、ポアソン比、剛性率から求めることができます。

2. 転位線の分類

転位の大きさまたは向きを表すものに、バーガース・ベクトルがあります。転位線とバーガース・ベクトルの向きの関係によって刃状転位、らせん転位、混合転位に分類されます。

刃状転位
たくさん並んだ原子面の中に、原子面の刃物を上半分または下半分の位置まで1枚余分に切り込んだものをイメージしたものです。上下にすべり面があって上半分に刃状転位がある場合、上では格子が圧縮され、下では膨張している状態を「正の転位」と呼び、反対を「負の転位」と呼びます。

らせん転位
金属の中にある線を定義した場合、その線を中心に360°回転をすると1か所の面で原子層がずれている状態を指します。ずれる方向によって、右巻きまたは左巻きと区別します。刃状転位は、バーガース・ベクトルと転位線が直角をなしており、らせん転位は平行です。

混合転位
直角でも平行でもない状態で、刃状転位とらせん転位が混在している状態になります。

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