鋼材とは
鋼材とは、鉄を主成分とし、あらゆる産業分野で使用される鉄鋼材料を総称したものです。
100%鉄で構成されている鋼材は存在せず、強度や摩耗、温度に耐えるために、炭素、窒素、クロムなどの化学成分を添加して使用します。鋼材として一般的なものでは、SS材 (一般構造用圧延鋼材) 、SN材 (建築構造用圧延鋼材) 、SM材 (溶接構造用圧延鋼材) があります。また鉄にクロムを10.5%以上添加したSUS材 (ステンレス鋼) は錆びに強い特徴があります。
鋼材の使用用途
家電製品や自動車など、身近にある製品には必ずと言ってよいほど、鋼材が使用されています。鋼材は強度、温度、伝導性、耐腐食性、耐摩耗性、被削性、靭性など、要求される項目は様々で、加工方法や鉄に添加する化学成分の割合、熱処理によって要求を満たした鋼材を製作します。
金属材料メーカーで鉄鋼石から製造する際は、H型鋼やI型鋼、C型鋼などの棒形状に成形し素材形状として販売しています。これらは橋などの建築材料として使用されます。このほか管形状ものも存在します。また、エレベータの壁など薄板の板金として使用するために、板状の鋼材もあります。
鋼材の性質
鋼材に含まれる化学物質は、以下の5元素から構成されています。
1. 炭素 (C)
炭素を添加することで引張強さや硬度を上げることができ、鋼材の強度を上げることができます。また、焼入れ性も向上しますが添加しすぎると靭性が低下する原因になります。
2. ケイ素 (Si)
金属の脱酸素剤として添加し、靭性や伸び能力を損ねることなく降伏点と引張強さを高める効果があります。しかし、添加しすぎると脆く壊れてしまう (脆化) を起こしやすくなります。
3. マンガン (Mn)
脱硫剤として添加し、焼入れ性を向上させることで靭性を損ねることなく降伏点と引張強さを高める効果があります。
4. リン (P)
鋼材を精製するときに発生する不純物として扱われており、靭性や引張強さといった強度を下げる原因となる物質です。一方で被削性を向上させる効果がありますが、基本的にはなるべく含有量を少なく抑えます。
5. 硫黄 (S)
リンと同じく強度を低下させる不純物として扱われ、溶接性を低下させますので、含有量もできるだけ少なくすることが一般的です。一方、マンガンと結合することで糸状に伸びる切りくずを適度に分断するチップブレーカーの役割を果たします。そのため被削性を向上させるために適量を添加する場合もあります。
これらの5元素を総称し、鋼の5元素と呼ばれています。1つの元素が著しく含有量が多いと強度に悪影響を及ぼすので、鋼材が使われる場所や用途によって含有量のバランスを調整し、適材適所の鋼材を精製していきます。また、鋼材の熱処理をどのように行うかによって性質も異なることから、熱処理後の性質を考慮した上で調整が必要です。
鋼材の種類
鋼材種類の代表例として、以下3種類の特徴を紹介します。
1. 一般構造用圧延鋼材 (SS材)
JISG3101で規定され、SS330、SS400、SS490、SS540の4種類あり、数字は引張強さの下限値を表しています。化学成分はC、Mn、P、Sの量が決められています。SS400が最も流通性があり、広く使用されています。
2. 建築構造用圧延鋼材 (SN材)
JISG3136で規定され、SN400A,B,CとSN490B,Cの5種類あります。建築や建造の構造材料として使われることを想定しており、耐震性や溶接性についての指標が決められています。塑性変形能力を確保するために、降伏比や降伏点の上限を規定しています。
3. 溶接構造用圧延鋼材 (SM材)
JISG3106では、SM材の種類は11種類あり、C、Si、Mn、P、Sの化学成分が決められています。SM材はキルド鋼 (またはセミキルド鋼) と呼ばれており、SS材に対して酸素含有量が少ないのが特徴です。