酸化ベリリウム

酸化ベリリウムとは

酸化ベリリウム (英: Beryllium oxide) とは、組成式BeOで示されるベリリウムの酸化物です。

CAS登録番号は1304-56-9であり、別名ベリリア (英: Beryllia) とも呼ばれます。

酸化ベリリウムの使用用途

酸化ベリリウムの主な用途は、ロケットの先端部や燃料室の部品、原子炉の減速材や中性子反射材などです。様々な産業分野で幅広く使用されています。酸化ベリリウムは、化学的に非常に安定であり、沸点融点が共に高いため高温環境下でも非常に安定して存在する物質です。

これらの性質ゆえに、過酷な温度環境の分野で用いられています。そのほか、セラミック素材としても用いられます。酸化ベリリウムは熱伝導性が高いです (325W/m・K) 。セラミックの中で群を抜いているだけでなく、アルミなどの金属材料よりも優れています。

主な用途は絶縁性が必要でありながら、且つ放熱が必要な製品への使用です。具体的には、医療機器、レーザー回路基板、半導体製造装置、ガスレーザー管、半導体部品の材料などが挙げられます。

酸化ベリリウムの性質

酸化ベリリウムの基本情報

図1. 酸化ベリリウムの基本情報

酸化ベリリウムは、分子量25.01、融点2,570℃、沸点3,900℃であり、常温での外観は白色粉末または無色結晶です。結晶構造は六方晶系のウルツ鉱型構造であり、ベリリウムおよび酸素原子は4配位となっています。

密度は3.02g/mL、水にはほぼ不溶です (水への溶解度: 0.2 g/1dm3) 。濃硫酸および濃塩酸との加熱によって溶解します (溶解過程の生成物: 硫酸ベリリウム或いは塩化ベリリウム)。フッ化水素酸にはフルオロ錯体を生成して溶解します。通常の保管環境においては非常に安定ですが、直射日光と高温を避けて保管することが必要です。

酸化ベリリウムの種類

酸化ベリリウムは、主に研究開発用試薬製品として販売されている他、産業用セラミック素材として販売されています。

1. 研究開発用試薬製品

研究開発用試薬製品としては、主に5g、10g、25g、100g、500gなどの容量の種類が有ります。実験室で取り扱いやすい容量での提供が中心です。安定な化合物であるため、通常室温で保管可能な試薬製品として取り扱われています。

2. 産業用セラミック素材

酸化ベリリウムは、優れた絶縁性と熱伝導性を併せ持つ産業用セラミック素材としても販売されています。様々なグレードが有り、強度と熱伝導性が異なっています。購入に当たってはメーカーへの個別の問い合わせが必要です。

酸化ベリリウムのその他情報

1. 酸化ベリリウムの合成

酸化ベリリウムの合成

図2. 酸化ベリリウムの合成

酸化ベリリウムの製造方法として、ベリリウムの炭酸塩または、ベリリウムの硝酸塩の加熱分解が挙げられます。水酸化ベリリウムの熱分解によっても酸化ベリリウムの合成は可能です。

工業的には、緑柱石を材料に酸化ベリリウムを製造する方法が一般的です。具体的には、まず、緑柱石を1,500℃で融解させた後に冷却し、ガラス状の生成物を硫酸と反応させて、中間体の硫酸ベリリウムを得ます。次にこの硫酸ベリリウムをアルカリで処理した後に加熱によって分解すると、酸化ベリリウムが生成します。

2. 酸化ベリリウムの化学反応

酸化ベリリウムの化学反応

図3. 酸化ベリリウムの化学反応

酸化ベリリウムは、非常に安定な化合物であり、強熱した結晶性のものは水に不溶であり、酸およびアルカリにも溶けません。ただし、濃硫酸および濃塩酸との加熱により、硫酸ベリリウムおよび塩化ベリリウムが生成します。また、フッ化水素酸を加えるとフルオロ錯体を形成して溶解します。

参考文献
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/cmpInfDsp?cid=C004-777-07A&slScNm=RO_02_003&bcPtn=3&cngLngMd=1

酢酸プロピル

酢酸プロピルとは

酢酸プロピルとは、化学式CH3COOCH2CH2CH3で表される有機化合物です。

無色透明な液体で、洋ナシによく似た独特な芳香があり、天然には、リンゴやバナナ、ラズベリーといった果実に多く含まれている物質です。香りの特徴から、香料に利用される他、溶剤などの工業用用途にも利用されています。

酢酸プロピルは、酢酸と1-プロパノールのエステル化 (縮合反応) により製造され、年間約3万トンが輸入されています (経産省2018) 。

酢酸プロピルの使用用途

酢酸プロピルは、洋ナシのような芳香の特徴から、食品のフレーバーや香水に使用されています。また、有機溶媒との混和性が高い特徴を活かし、溶剤としても有用です。

具体的には、各種プラスチックの溶剤や、塗料用剤、印刷インキ用溶剤、医薬用抽出溶剤などへの利用が挙げられます。

酢酸プロピルの性質

1. 物理的性質

酢酸プロピルは、分子量102.13、CAS番号 109-60-4の無色の液体です。酢酸n-プロピルとも呼ばれます。

凝固点−95℃、融点は−92℃、引火点14℃、沸点、初留点及び沸騰範囲101.6℃、自然発火温度450℃、爆発範囲の下限2 vol%、上限8 vol%の引火性液体です。製造メーカーによって熱的性質が異なるため、使用前にメーカーSDSを確認する必要があります。

蒸気圧は3,300Pa (20℃) 、蒸気密度は 3.5g/cm3 (空気=1) のため、空気よりも重いです。

2. 化学的性質

水への溶解度は1.6mL/100mL (16℃) とわずかに溶解し、アルコール、エーテル、炭化水素、エステルに可溶です。

強酸化剤、強塩基、強酸、強酸塩と反応し、火災や、爆発の危険性があります。また、水の存在下で、加水分解し酢酸を生じ、各種金属、プラスチックを侵す性質があります。

混触危険物質は、強酸化剤、強塩基、強酸、硝酸塩です。燃焼により、一酸化炭素、ニ酸化炭素などの危険有害性のある分解物を生成するため、高温を避ける必要があります。

酢酸プロピルのその他情報

1. 酢酸プロピルの安全性

引火性の高い液体および蒸気であり、蒸気を吸引すると有害です。また軽度の皮膚刺激性、眼刺激性がある他、中枢神経系、肝臓障害の危険性があります。

吸引、経口摂取による眠気またはめまい、呼吸器への刺激のおそれがあることから人体に接触、吸引しないよう注意して作業する必要があります。

また、水生生物に対しても有害であることから、環境へ流出を避け、廃時時は、都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託し処理を行うことが必要です。

2. 酢酸プロピルの取扱方法

作業場は防爆型の電気機器、換気装置、照明機器を使用し、静電気放電や火花による引火を防止します。また、屋外や換気の良い区域を選びます。

作業者は、適切な 保護手袋、保護眼鏡、保護面の着用が必要です。作業時は、飲食又は喫煙を避け、作業後はよく手を洗います。

引火性が高いため、熱、火花、裸火、高温のもののような着火源から遠ざけ、混触危険物質との接触しない場所での取扱いが必要です。

2. 酢酸プロピルの保管

保管場所には危険物を貯蔵、または取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設け、熱、火花、裸火のような着火源から離して保管を行います。冷所、換気の良い場所で貯蔵し、酸化剤、直射日光、火気を避け、密閉し施錠することが重要です。

3. 火災時の措置

消火剤には、 小火災の場合は、二酸化炭素、粉末消火剤、散水、耐アルコール性泡消火剤を使用し、大火災の場合は、散水、噴霧水、耐アルコール性泡消火剤を使用します。

棒状注水を消火剤に使用すると危険です。また、火災により、刺激性、毒性、又は腐食性のガスが発生するおそれがあるため、消火作業の際は、適切な空気呼吸器、化学用保護衣を着用します。

大規模火災時には、泡消火剤を用いて空気を遮断することが有効です。

4. 適用法令

労働安全衛生法では、名称等を通知すべき有害物、名称等を表示すべき有害物、第2種有機溶剤等、危険物・引火性の物質に指定されています。

消防法では、 第4類引火性液体、第一石油類非水溶性液体に分類され、船舶安全法では引火性液体類、航空法で引火性液体に指定されています。

参考文献

https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0729.html

亜リン酸

亜リン酸とは

水溶液中の亜リン酸

図1. 亜リン酸の合成

亜リン酸 (英: Phosphorous acid) とは、H3PO3の化学式を有するリンのオキソ酸の無機化合物です。

リン酸や次亜リン酸と同じく、リンのオキソ酸の一つです。酸無水物の加水分解で合成できます。

亜リン酸は、三塩化リンを水や水蒸気により加水分解する製造法が良く使われ、最近では肥料への用途が注目を浴びています。亜リン酸の前駆体である亜リン酸カリウムは、過剰な塩酸で処理されて、アルコールによる濃縮や沈殿により、純粋な亜リン酸を分離可能です。

亜リン酸の使用用途

亜リン酸は塩化ビニールの製造に使用する安定剤だけでなく、有機化合物を合成するための触媒や還元剤に使用されています。

作物の肥料に使う亜リン酸塩の原料などにも、亜リン酸を利用可能です。作物の肥料の三大要素である窒素・リン酸・カリウムの中で、リン酸は通常のリン酸肥料が使われています。しかし近年、さまざまな亜リン酸肥料が、肥料メーカーから発売されています。亜リン酸はリン酸より分子量が小さく、溶解性が良く、作物内での移行性も良いため、吸収されやすく、土壌への吸着性が小さいです。

亜リン酸とカリウムを主成分とした粒状や液体の亜リン酸肥料もあります。適切に使用すれば、収量が増え、品質も向上できます。

亜リン酸の性質

亜リン酸の合成

図2. 水溶液中の亜リン酸

亜リン酸は白色の結晶です。常温常圧では安定ですが、潮解性があります。水溶液中では圧倒的にHP(O)(OH)2の化学種が優勢で、2価の酸として作用し、pHが約1の酸性を示します。pKa1=1.5、pKa2=6.79です。

亜リン酸の還元性は比較的強いです。硝酸銀、塩化金(III)、硫酸銅水溶液から、それぞれの金属が遊離します。酸性水溶液中での標準酸化還元電位はE°=-0.276Vです。

亜リン酸塩の還元作用は強いです。アルカリ金属やアンモニウムの亜リン酸塩は、水に溶けます。その一方で、アルカリ土類金属やその他の亜リン酸塩の多くは、水に溶けにくいです。

亜リン酸の構造

亜リン酸の構造

図3. 亜リン酸の構造

いくつかのリン酸類はPとOとの間でHが移動し、複雑に互変異性化します。亜リン酸はHP(O)(OH)2に互変異性化し、P(OH)3よりHP(O)(OH)2の方が優位です。トリヒドロキシ型が亜リン酸で、ジヒドロキシ型はホスホン酸 (英: phosphonic acid) と呼ばれます。

ホスホン酸を含有する製剤は、毒劇法で劇物に指定されています。固体状態で亜リン酸は四面体構造を取っており、P-H間が132pmで、P=O間が148pmで、P-O(H)間が154pmです。

亜リン酸のその他情報

1. 亜リン酸の異性体

亜リン酸は、溶液中では互変異性体のホスホン酸との平衡混合物になっています。化学種の平衡は亜リン酸が劣勢です。

有機化学では、一般式がR-P(=O)(OH)2と表される化合物もホスホン酸と呼んでいます。有機ホスホン酸の具体例としてホスカルネット (英: foscarnet) があり、抗ウイルス薬の一つです。P-アルキルホスホン酸のジエステルであるR-P(=O)(OR’)2は、ホーナー・ワズワース・エモンズ反応 (英: Horner-Wadsworth-Emmons reaction) の基質です。ホーナー・エモンズ試薬とも呼ばれ、アルケンの原料になります。

2. 亜リン酸の関連化合物

亜リン酸はリンのオキソ酸です。リンの酸化数が5のオキソ酸には、リン酸 (H3PO4) 、二リン酸 (H4P2O7) 、三リン酸 (H5P3O10) 、メタ三リン酸 (H3P3O9) などがあります。リン酸はオルトリン酸とも呼ばれ、ピロリン酸などのリン酸骨格を有する類似化合物群をリン酸類と呼びます。ホスフィン酸はリンの酸化数が1のオキソ酸です。ホスフィン酸の分子式はH3PO2と表されます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/13598-36-2.html
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340CO0000000002

リンタングステン酸

リンタングステン酸とは

リンタングステン酸 (英: Phosphotungstic acid) とは、タングステンのヘテロポリ酸である無機化合物です。

別名として、ホスホタングステン酸やタングストリン酸 (英: Tungstophosphoric acid) 、12-タングストリン酸 (英: 12-Tungstophosphoric acid) と呼ばれます。略称は、TPAまたはPTAです。

代表的な化合物として、ホスホ十二タングステン酸 (H3PW12O40) が挙げられます。

リンタングステン酸の使用用途

1. 合成反応触媒

リンタングステン酸は、リンモリブデン酸などの他のヘテロポリ酸と同様に、有機合成反応の触媒として利用されています。

400℃まで熱的に安定で、溶液中では均一触媒として、有機物の水和反応やエステル交換、重合反応に用いられます。また、アルミナシリカなどの基材に担持された不均一系触媒としての使用も可能です。

酸触媒としての使用例を、以下に示します。

  • プロペンから2-プロパノールを合成する際の加水分解における均一系触媒反応
  • プリンス反応 (英: Prins reaction) における均一系触媒反応
  • 2-プロパノールからプロペン、メタノールから炭化水素などの脱水反応における不均一系触媒反応

プリンス反応とは、カルボニル‐エン反応を指します。ルイス酸またはブレンステッド酸存在下、アルデヒドとアリル化合物を混合することで、ホモアリルアルコールを得る反応です。

2. 染色剤

リン酸の比色定量、および透過型電子顕微鏡による細胞のネガ染色にも用いられています。

3. たんぱく質の沈殿剤

リンタングステン酸は、極性タンパク質の沈殿剤として使用されます。グアニジノ基とε-アミノ基、イミダゾール基を持つたんぱく質を選択的に沈殿させることが可能です。

リンタングステン酸の性質

化学式はH3O40PW12で表され、分子量は2880.2です。CAS番号は1343-93-7で登録されています。

24水和物の融点は89°Cで、常温で白色または黄緑色の結晶〜結晶性粉末です。無臭で、100mlの水に200g溶けます。水の他にも、エタノールジエチルエーテルに可溶です。高濃度の水溶液では、硫酸過塩素酸よりも高い酸強度を有します。

リンタングステン酸の陰イオンは、12個のタングステン原子と酸素原子によって連結されたカゴからなる完全な四面体対称性の構造を持ちます。その四面体の中心にリン原子が配置されたものが基本構造です。

リンタングステン酸の種類

リンタングステン酸は、通常、水和物として販売されます。水和物の化学式は、H3O40PW12・nH2Oと表され、CAS登録番号は12501-23-4です。主に24水和物として単離されますが、乾燥されて6水和物を形成することもあります。

リンタングステン酸のその他情報

1. リンタングステン酸の製造法

リンタングステン酸は、タングステン酸ナトリウム二水和物 (Na2WO4・2H2O) と、塩酸で酸性化されたリン酸 (H3PO4) との反応によって調製できます。

2. 法規情報

リンタングステン酸は、以下の国内法令に指定されています。

  • 労働安全衛生法
    名称等を表示すべき危険物及び有害物 (法57条、施行令第18条) 、名称等を通知すべき危険物及び有害物 (法第57条の2、施行令第18条の2別表第9) No. 337
  • 危険物船舶運送及び貯蔵規則
    腐食性物質 (危規則第3条危険物告示別表第1)
  • 航空法
    腐食性物質 (施行規則第194条危険物告示別表第1)

3. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱い時の対策
取り扱う際は、保護手袋と保護衣、保護メガネを着用します。必要に応じて、粉塵マスクや保護面を使用してください。

火災の場合
熱分解で、刺激性で有毒なガスと蒸気を放出するおそれがあります。現場状況と周囲の環境に適した消火方法を取ってください。

保管する場合
リンタングステン酸水和物は、空気中で風解します。ガラス製の容器に密閉し、直射日光を避けて冷蔵庫内 (2~10℃) に保管してください。保管場所は施錠します。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0116-0243JGHEJP.pdf

銅合金

銅合金とは

銅合金

銅合金とは、主成分となるに他の元素を添加した金属です。

銅合金の1種である青銅は、金や銀とともに、人類が古来から使用してきた金属であり、その時期は紀元前7,000年~8,000年頃 ごろから使われていたとも言われています。主成分である銅自体が、さまざまな優れた性質を有しています。

銅に1種類もしくは2種類以上の元素を加わえて合金化することで、より多様な性質を付与することが可能です。今日では青銅や黄銅をはじめ、きわめて多くの種類の銅合金が製造されており、鉄鋼材と同様に広い分野で利用されている金属材料の1つです。

銅合金の使用用途

銅合金は種類が多く性質も多様なため、産業界だけでなく、私たちの身の回りのものにも幅広く利用されています。最も身近なものは、日本の硬貨です。1円玉以外の全ての硬貨に銅合金が使われています。

  • 黄銅
    金管楽器やドアノブ、ベアリング、アクセサリーなど
  • 青銅
    アクセサリーや貨幣、建築物、銅像など
  • 白銅
    食器、貨幣、医療器具、機械部品など

白銅は清潔さが求められるところでの用途が多いです。また、銀の代用品としても使用されています。銅や銅合金は、電気伝導率や熱伝導率が非常に高いため、電気・通信分野においてコネクタ類やリレースイッチに使われることが多く、生活用品では調理器具によく利用されています。

また、銅合金は、海水に対しての耐性にも優れています。よって、船舶のスクリュー、シャフト、ポンプなどにも使われています。

銅の性質

銅は、元素記号Cu、原子番号29の遷移金属です。自然界では、銅の単体として産出されることもありますが、主に銅鉱石として産出されます。銅の主な性質は以下のとおりです。

1. 導電性

銅は非常に優れた電気伝導性を持っています。このため、電線や配線、電子機器など、電気を効率的に伝導する用途に広く使用されています。

2. 熱伝導性

銅は熱をよく伝導する性質があります。熱伝導率が高いため、冷暖房機器や調理器具などの熱伝導部材にも利用されます。

3. 耐食性

銅は空気中で酸化被膜を形成し、この酸化被膜によって表面が保護されます。これにより、耐食性が向上し、多くの環境で腐食に対して比較的耐性を持ちます。

4. 可塑性と延性

銅は非常に可塑性と延性に富んでおり、加熱によって容易に加工、成形、鍛造することができます。この特性は、さまざまな工芸品や製品の製造に利用されます。

5. 抗菌性

銅の表面は一部の微生物に対して抗菌作用を持っていることが知られており、この性質を利用して感染症予防などの用途にも応用されています。

 

銅合金は、銅に他の金属を加えて作られます。銅の特性に加えて、他の金属の特性も備えています。そのため、銅よりも強度や耐食性に優れているのが特徴です。

銅合金の種類

銅合金の種類は、きわめて多く特徴も多様です。主成分の銅が融合性に優れており、さまざまな元素と結び付きやすいためです。添加する元素によって、銅本来の優れた性質をさらに向上させたり、硬度や強度などの機械的性質を改善したりすることができます。

種類の多い銅合金ですが、組成成分によっていくつかに分類することができます。代表的な銅合金は、以下のとおりです。

1. 黄銅 (英: brass)

銅と亜鉛の組み合わせからなる黄金色をした合金で、銅合金の中でもっとも使用量が多いです。一般的な黄銅は銅と亜鉛の比率が60〜90%の範囲にあります。

亜鉛の添加により、黄銅は銅よりも硬度が高く、強度が増します。また、加工や形成が容易なため、鋳造用材としてもよく利用されます。

2. 青銅 (英: bronze)

銅とスズを主成分とする合金です。古くから人類に使われてきました。一般的な青銅は、銅とスズの比率が80〜90%の銅と10〜20%のスズで構成されています。

流動性がよく、鋳造に適しています。本来は、銅とスズからなる合金を指しますが、アルミニウム青銅マンガン青銅といったスズを含まない銅合金もあります。それらと区別する意味で、スズ青銅と呼ばれることも多いです。スズの添加量が多くなるほど、硬度が高くなります。

3. 白銅

キュプロニッケルとも呼ばれるように、銅にニッケルを添加した銀白色の合金です。耐食性に優れ、海水に対しても高い耐性を有しています。靭性が高く、比較的高温な状況下でも強度が低下しません。

4. 高銅合金

銅の含有率が他の銅合金に比べて高い銅合金群をいい、銅本来の優れた特性を維持しつつ、主として機械的性質の向上を図っています。高銅合金の1つであるベリリウム銅は、銅合金の中で最も強度が高いです。

炭素鋼

炭素鋼とは

炭素鋼

炭素鋼とは、主成分となる鉄に炭素を添加した鉄鋼素材の一種です。

組成成分は、鉄と炭素以外にマンガンやケイ素、リン、硫黄といった元素などです。炭素の含有量によって鋼の性質が決まるため、炭素鋼と呼ばれています。

炭素や他の元素をほぼ含まない純鉄 (炭素含有量0.02%未満) は、非常に軟らかく実用に向きませんが、炭素を添加することで硬度や強度などが向上する性質を持ちます。この性質を活かした材料が炭素鋼で、炭素の含有量を調節することにより、利用目的に応じた性質の炭素鋼を得ることができます。

炭素鋼の使用用途

炭素鋼は合金鋼と同様に、あらゆる構造物や機械構成部品、日用品に使用されています。炭素鋼の機械的性質は、炭素の含有量によって異なり、さらに熱処理によっても大きく変化することです。

したがって、金属素材としての適応範囲が広く、さまざまな分野で利用されています。炭素鋼や合金鋼は、非常に多くの種類があり、それらは炭素含有量や使用用途、強度、組成成分などによって分類され、他の工業製品のように規格化がなされています。特に炭素鋼は合金鋼に比べて安価であるため、鉄鋼材料を選定する際、最初に検討すべき素材です。

炭素鋼の特徴

一般的に、炭素含有量が0.02%~2.14%までの鉄鋼材を「炭素鋼」と呼びます。炭素含有量が多くなるにつれて、硬さや引張強さが増加します。一方で、脆く伸びにくくなるため、耐衝撃性や加工性は低下します。

炭素含有量の調整に加えて、熱処理を加えることで特性が変化します。主な熱処理方法として、焼なまし・焼ならし・焼入れ・焼戻しが挙げられます。

炭素鋼に含まれる鉄以外の成分のうち、特に炭素・マンガン・ケイ素・リン・硫黄を5大元素と呼びます。炭素以外の元素は多くの場合、意図的に添加されたものではなく製造時に除去されずに残ったものです。

ケイ素には引張強さを、マンガンには粘り強さ (靭性) と焼入れ性を向上させる働きがあります。リンは低温下での靭性を、硫黄は高温下での靭性を下げる働きがあるため、可能な限り含有率を下げるのが望ましいです。

炭素鋼の種類

以下に示すように、炭素鋼には複数の分類方法があります。

1. 炭素含有量による分類

炭素含有量によって、低炭素鋼 (0.02%~0.25%) 、中炭素鋼 (0.25%~0.6%) 、高炭素鋼 (0.6%~2.14%) に分類されます。幅広い用途に用いられることから、特に低炭素鋼・中炭素鋼をまとめて普通鋼とも呼びます。

2. 硬さによる分類

硬さにより、大きく軟鋼・硬鋼の2つに分類されます。炭素含有量で見ると、概ね0.18%~0.3%が軟鋼、0.3%~1.0%が硬鋼に対応します。

より細かく、極軟鋼 (0.12%以下) 、軟鋼 (0.12%~0.2%) 、半軟鋼・半硬鋼 (0.2%~0.45%) 、硬鋼 (0.45%~0.8%) 、最硬鋼・至硬鋼 (0.8~1.7%) と呼び分けられることもあります。軟鋼と硬鋼では、焼入れに対する特性が異なります。

軟鋼は炭素量が少ないため、焼入れを施してもほとんど効果が得られない点がデメリットです。一方で、焼きが入りにくいため溶接が可能であるというメリットもあります。

3. JIS規定名称による分類

工業的には、JIS規格において組成成分量、機械的性質、名称 (記号) によって細かく分類されています。JIS規格における代表的な分類名とその特徴は、以下の通りです。

  • 冷間圧延鋼板 (SPC材)
    炭素含有量0.1%未満の炭素鋼です。板状に加工された炭素鋼で、炭素鋼の中ではもっとも軟らかく、加工が容易ですが、負荷のかかる部材には向きません。
  • 一般構造用圧延鋼材 (SS材)
    安価で汎用性が高く、加工性も優れるため、構造用としてだけでなく機械部品にも使用されています。熱処理には向いていないので、処理をせずに用いるのが基本です。代表的な鋼種にSS400があります。
  • 機械構造用炭素鋼鋼材 (S-C材)
    SS材に比べて硬度、強度が高く、熱処理もできるので、ギアやベアリングなど機械的強度が求められる機械部品に向いています。代表的な鋼種にS45CS50Cがあります。
  • 炭素工具鋼鋼材 (SK材)
    S-C材よりもさらに硬度、強度の高い炭素鋼ですが、高温になると硬度が下がってしまいます。工具としての用途では、主に熱を発しない手作業用の工具類に向いています。

多孔質体

多孔質体とは

多孔質体(ポーラス体)とは、内部に多数の小さな空孔や空げきが形成されている物質をいいます。自然界にも多孔質体は多く存在しており、軽石や炭、貝殻、植物、骨などの組織は、多孔質構造をしています。また、蜂の巣も中空の正6角柱が隙間なく敷き詰められた多孔質構造をしており、通称ハニカム構造と呼ばれています。

自然界の物質だけでなく、産業界においても、金属や樹脂、ガラスなどを加工して、人工的に多孔質構造を形成し、利用目的に応じた多孔質体を数多く製造しています。

多孔質体の使用用途

自然界に存在する多孔質体を利用する場合も多く、主な天然の多孔質体とその用途として次のようなものがあります。

また、さまざまな材料を用いて製造した多孔質体も広い分野で利用されています。

  • 多孔質金属(ポーラスメタル):建築物や産業機械の構造材、自動車の衝突緩和材・フィルター、人工骨・インプラント
  • 多孔質ガラス(ポーラスガラス):分離膜、触媒担体
  • 多孔質樹脂(発泡樹脂断熱材、緩衝材、吸音材

多孔質体の特徴

多孔質体の特徴は、組成成分だけでなく多孔質構造の態様によっても違いが生まれます。例えば空孔のサイズは、多孔質の性質に大きく影響します。吸着材や分離材として多孔質体を用いる場合は、空孔のサイズによって、吸着・分離できる分子の大きさが違ってきます。また、構造部材として多孔質体を用いる場合、空孔が小さいほど機械的強度は高くなりますが、重量は増しますので、そういった要素のバランスを考えて部材を選定する必要があります。

空孔の形成状態も多孔質体の性質に影響します。多孔質構造には、個々の空孔が独立して形成されている「独立孔構造」や隣り合う空孔がつながって形成されている「連続孔構造」があります。

発泡スチロールや発泡ウレタンなどの多孔質樹脂を例にとると、独立孔構造の多孔質体は、内部に気体や液体を通しません。つまり、多孔質体内部には常に空気が閉じ込められた状態にあるので、断熱性や浮揚性、緩衝性が高くなります。一方、連続孔構造の多孔質体は、独立孔構造に比べて剛性は低くなりますが、吸水性や吸音性に優れた性質を有しています。

合金鋼

合金鋼とは

合金鋼

合金鋼とは、鉄に他の元素を添加して作られた合金です。

その組成によって物理的および化学的特性が変化します。一般的に、合金鋼には炭素、クロムニッケルモリブデンマンガン、バナジウムなどの元素が含まれていて、鉄と結合することで、鋼の強度、耐食性、耐磨耗性、耐久性、切削性などを向上させます。合金鋼の製造には様々な方法がありますが、一般的には鉄と添加される元素を高温で混合し、冷却して形成します。また、熱処理や加工などの後処理が必要な場合があります。

合金鋼の使用用途

1. 航空機

高強度・高耐食性が求められるため、ステンレス鋼やチタン合金などの合金鋼が使用されます。具体例としては、ジェットエンジン部品や着陸装置などが挙げられます。

2. 自動車

強度・硬度が求められるため、特に高張力鋼 (高張力鋼板) が使用されます。具体例としては、シャシーやボディパネルなどが挙げられます。

3. 建築

強度・耐久性が求められるため、特に耐震性の高い鋼材が使用されます。具体例としては、高層ビルや橋梁などが挙げられます。

4. エネルギー

高温・高圧の環境下での使用が求められるため、耐熱性・耐圧性の高い合金鋼が使用されます。具体例としては、原子力発電所や火力発電所などが挙げられます。

5. 医療器具

ステンレス鋼やチタン合金などの合金鋼が使用されます。具体例としては、人工関節や歯科用インプラントなどが挙げられます。インプラントは、身体の内部に埋め込む医療用具の一種で人工的に作られた材料から作られます。

6. 工具

耐摩耗性や耐熱性が求められるため、高速度鋼やモリブデン鋼などの合金鋼が使用されます。具体例としては、ドリルや切削工具などが挙げられます。高速度鋼 (英: High-Speed Steel、HSS) は、鉄にクロム、モリブデン、バナジウムなどの合金元素を添加した高性能鋼の一種です。HSSは高温での使用に耐え、高速度で切削や加工ができるため、切削工具や工作機械などに広く使用されています。

合金鋼の性質

合金鋼の主な性質は以下の通りです。

1. 強度

合金鋼は純粋な鉄よりも強度が高いため、高い荷重や衝撃に耐えられます。橋梁や高層ビル、航空機などの構造物や、自動車のシャシーやエンジン部品、工具などに使用されます。

2. 硬度

硬度が高く、摩耗に対する耐性があります。工具や機械部品、歯車などの高負荷部品に使用されます。

3. 耐摩耗性

耐摩耗性が高いため、研磨や摩耗による磨耗を防止できるため、工具や機械部品、歯車、軸受などの高負荷部品に使用されます。

4. 耐食性

添加された合金元素により耐食性が高くなります。ステンレス鋼などの合金鋼は食品加工装置や医療器具などの用途で使用されます。

5. 耐熱性

合金鋼は添加された合金元素により、耐熱性が高くなります。高温環境で使用される部品や、原子力発電所などで使用されます。

6. 耐腐食性

合金鋼の耐腐食性が高い理由は、合金元素が鋼中に添加されることで酸化物や腐食物の形成を防いだり、表面を保護する効果があるためです。耐腐食性の高さを利用して化学プラントなどで使われます。

合金鋼の種類

合金鋼には、多くの種類があります。以下は代表的な合金鋼の例です。

1. 炭素鋼

炭素が主な合金元素である鋼で、鉄と炭素のみで構成されます。強度が高く、低コストで生産できるため、広く使用されています。

2. ステンレス鋼

クロムを主要な合金元素として添加した鋼で、耐食性に優れます。食品加工や医療器具などの用途に適しています。

3. 工具鋼

炭素やクロム、バナジウムなどの合金元素を添加した鋼で、高硬度と高耐久性が特徴です。切削工具、金型、工作機械などに広く使用されています。

4. ニッケル鋼

ニッケルを主な合金元素として添加した鋼で、高強度と耐熱性が特徴です。航空機や原子力発電所などの高温環境で使用されます。

5. クロムモリブデン鋼

クロムとモリブデンを主な合金元素として添加した鋼で、高強度と耐久性が特徴です。自動車、鉄道車両、船舶などの構造部品や、油圧機器などに使用されます。

6. マンガン鋼

マンガンを主な合金元素として添加した鋼で、耐摩耗性に優れます。鉄道のレールや建築用鋼材、機械部品などに使用されます。

7. アルミニウム鋼

アルミニウムを主な合金元素として添加した鋼で、軽量であり、耐食性や加工性が優れます。自動車部品、航空機部品、建築用材料などに使用されます。

JIS (日本産業規格)のG 0203では、合金鋼とは,「鋼の性質を改善向上させるため,又は所定の性質をもたせるために合金元素を1種又は2種以上含有させた鋼」と規定されています。

合金鋼のその他情報

1. 耐衝撃性

合金鋼の硬度や強度が高いため、脆くなる場合があります。合金鋼に含まれる元素の配合により、結晶構造が均一でなくなり、局所的に結晶の欠陥が発生しやすくなることが原因です。この欠陥が、応力が加わることで拡大し、最終的には破壊につながることがあります。また、合金鋼は通常の鉄よりも硬くて脆いため、衝撃を受けると、簡単に破損してしまうことがあります。

2. 耐候性

一般的に、合金鋼には、クロム、銅、リン、シリコン、アルミニウムなどの元素が含まれています。これらの元素は、鋼の表面に酸化皮膜を形成し、腐食や劣化を防ぐ効果があり、特に、クロムの添加量が多い場合は酸化皮膜が非常に強靭で、腐食に対する耐性が非常に高くなります。

そのため合金鋼は屋外での使用に適しています。例えば、自動車部品や建築物の外壁、橋梁などの建設物、船舶、風力発電のタワーなどに使用されています。また、塩害が強い地域や、熱帯地域などの厳しい環境下で使用される部品や設備にも用いられています。ただし、耐候性については、使用環境によって異なるため、適切な合金鋼の選定が必要です。表面の酸化皮膜が破損すると腐食が進行するため、定期的なメンテナンスや修繕が必要です。

りん脱酸銅

りん脱酸銅とは

りん脱酸銅は、の割合が99.9%以上の純銅の1種です。

代表的な純銅の種類として、主にタフピッチ銅無酸素銅、りん脱酸銅が挙げられます。そのなかで、りん脱酸銅は、純銅のなかに少量のリンが添加されているのが、上記した他の2つの純銅との違いです。具体的なりん脱酸銅の化学成分は、銅(Cu)が99.9%で、リン(P)が0.015%から0.040%になります。

りん脱酸銅の製造方法は、三段階あります。第一段階として、電解精錬法を用いて、粗銅から電気銅を得ます。続いて、酸化処理を行い、不純物を取り除きます。最後に、リンを添加します。この過程で、りん脱酸銅を得ることができます。

りん脱酸銅の使用用途

りん脱酸銅は、高い熱伝導性を有する物質です。また、りん脱酸銅は、絞り加工性、溶接性、耐食性がよく、加工しやすい特徴を持ちます。そのため、りん脱酸銅は、使い勝手がよく、さまざまな分野で用いられています。

具体的なりん脱酸銅の使用用途として、化学工業用品、給湯器用材料、ヒューズキャップ、空調配管材、建築用材料、風呂釜、水道用材料、電気冷蔵庫用材料、ガスケットなどが挙げられます。また、りん脱酸銅は、銅溶接の際の溶接棒としても用いられています。

りん脱酸銅の特徴

りん脱酸銅の最大の特徴は、タフピッチ銅、無酸素銅とは異なり、製造過程でリンが添加されている点です。このリンが脱酸剤として機能します。上述したように、りん脱酸銅の製造では、初めに電解精錬法を用いて、粗銅から電気銅を得ます。しかし、この電気銅には、酸素が含まれています。純銅に酸素が含まれていると高温加熱したときに、酸素が水素と反応を起こして、水蒸気が発生してしまいます。しかし、りん脱酸銅では、この酸素をリンが除去します。このようにりん脱酸銅では、高温加熱下でも、水蒸気が発生しないという利点があります。

しかし、りん脱酸銅中に残存するリンがデメリットにもなります。この残存リンは、りん脱酸銅の電気伝導性を低下させる原因になります。そのため、純銅の1種であるタフピッチ銅と電気伝導性を比較すると、りん脱酸銅の電気伝導性は、タフピッチ銅の電気伝導性に比べて、約85%に留まるということが知られています。

このようにりん脱酸銅には、長所短所があるので、りん脱酸銅の特徴にあった使用方法を選択する必要があります。

鋼管

鋼管とは

鋼管

鋼管 (英: steel pipe) とは、鋼を用いて作られる管状の物体です。

鋼帯、厚板、ビレットなどの別の形状に加工して用いるため、通常は二次製品として扱われます。

鋼管は製造方法によって継目無し (シームレス) 鋼管、鍛接鋼管、電縫鋼管、アーク溶接鋼管に分類可能です。材料によってステンレス鋼管、炭素鋼鋼管、合金鋼鋼管に分けられ、用途によって配管用鋼管、構造用鋼管、熱交換用鋼管に分けられます。熱間仕上げや冷間仕上げなど、仕上げによっても分類されます。

鋼管の使用用途

鋼管は汎用性が高く、幅広い領域で使用されています。

最も一般的な鋼管の使用用途として、配管が挙げられます。配管は、液体や気体などを輸送する管です。土木、建築領域で鋼管は、ガス、油、空気、水などを輸送するために使用されます。

鋼管のその他の用途として、階段の手すりやガーデニング材料、フェンスなどが挙げられます。また農業分野でも鋼管は使用されており、具体例はビニールハウスを組み立てる際の骨組みです。

鋼管の原理

鋼管は、製法によって以下の4種類に分類されます。

1. 継目無し (シームレス) 鋼管

継目無し (シームレス) 鋼管とは、管に継目がない鋼管のことです。継目無し鋼管の製造では、まずビレットと呼ばれる鋼からできた円柱を約1,200°Cまで加熱します。続いて、その加熱された円柱の中央部分に特殊な工具を使って、押し広げて穴を開けます。この製法 (マンネスマン法) により、継目無し鋼管を製造可能です。

2. 鍛接鋼管

高温に熱した鋼帯を引き出して、円形に幅方向を変形させます。両端に酸素を吹き付け瞬間的に温度を高めつつ突き合わせると、両端を接合した鋼管が得られます。鍛冶屋が加熱した鉄片を金槌で叩いて接合する原理と同じです。

3. 電縫鋼管

常温の鋼帯を引き出して円形に幅方向を変形させます。接合直前に電流を流し瞬間的に接合部を高温状態にすると、押しつけて両端を溶接でき鋼管が得られます。自己溶接であるため溶接材料は必要ありません。

4. アーク溶接鋼管

厚板や鋼帯をアーク溶接によって管に加工した鋼管の総称です。具体的にはUOE鋼管、スパイラル鋼管、板巻鋼管などがあります。

UOE鋼管は厚板をプレス機でU字状からO字状に整形し、接合部をアーク溶接して、エキスパンダーで内側から拡張した鋼管です。スパイラル鋼管は、鋼帯を引き出しつつ螺旋状に整形して両幅をアーク溶接して製造します。板巻鋼管は厚板をロールやプレス成型で円筒状にして、両幅をアーク溶接した鋼管です。

鋼管の種類

鋼管は上述した製造方法による分類以外にも、材料により以下の3種類に分けられます。

1. ステンレス鋼管

ステンレス鋼管は10.5%以上のクロムが含まれた合金鋼を用いて製造される鋼管です。耐圧性が高く、軽量化が可能で鋼管の中で最も使用頻度が高いです。さびにくく長期にわたって使用できます。

2. 炭素鋼鋼管

炭素鋼鋼管は、炭素鋼と呼ばれる鉄と炭素から構成される合金を材料として製造される鋼管です。比較的安いため、油、ガス、水などを輸送する配管として広く使用されています。

3. 合金鋼鋼管

合金鋼鋼管は、炭素鋼にニッケルモリブデン、クロムなどを添加した合金から製造される鋼管です。鋼管の内側と外側で熱を交換するために用いられます。これを熱交換用配管と呼びます。

鋼管の選び方

1. 配管用鋼管

管内部に気体や液体を通して輸送する際に使用する鋼管です。中を通す物質の温度、性質、圧力によって、使用する鋼管や製法が異なります。

2. 構造用鋼管

機械部品や建築資材に使う鋼管です。機械部品用は機械構造用鋼管とも呼ばれます。建築用には構造用炭素鋼鋼管や建築構造用炭素鋼鋼管があります。

3. 熱交換用鋼管

管の内外面での熱の受け渡しに使用する鋼管です。コンデンサやボイラなどに利用されています。