パラチオン

パラチオンとは

パラチオン (英: Parathion) とは、強い殺虫作用を持つ有機リン酸エステル系の農薬です。

ニカメイチュウやシンクイムシ類に有効であり、稲、小麦、野菜、果樹、綿等に使用されていました。しかし、人体に対する強い毒性と環境に対する有害性から、現在では農薬として使用することはできません。

「毒物及び劇物取締法における特定毒物」に指定されており、製造および使用が禁じられています。

パラチオンの使用用途

パラチオンは、主に農薬として使用されていた有機化合物です。0.05%~0.1%程度の低濃度溶液として稲、小麦、野菜、果樹、綿等に散布して使用されていました。

ニカメイチュウやシンクイムシ類などの害虫に対して、高い殺虫効果を有します。本剤が害虫体内に吸収されるとコリンエステラーゼ活性が阻害され、神経伝達物質であるアセチルコリンが蓄積し、その結果殺虫効果が発現します。

しかし、パラチオンは人体およびその他の哺乳類・鳥類・水棲生物・昆虫に対して非常に毒性が高いことから、現在では農薬としての使用は禁止です。日本、アメリカ、ヨーロッパ等にて、主要な農作物に対してパラチオンの残留基準が設定されています。

現在、試薬メーカーから販売されているパラチオンは、農薬用途ではなく、残留農薬の試験用試薬用途です。残留農薬試験用試薬としてパラチオンを購入し使用する際には、「毒物劇物取締法に基づく特定毒物研究者指定証」が必要です。

パラチオンの性質

化学式 C10H14NO5PS
日本語名 パラチオン
英語名 Parathion
CAS番号 56-38-2
分子量 291.26g/mol
融点/凝固点 6 ℃
沸点 375 ℃

 

パラチオンはエステル、アルコール、エーテル、ケトン、芳香族炭化水素などに良く溶ける性質を持っています。水への溶解性は24mg/Lと低いです。

室温では結晶または溶液で、ニンニク類似臭またはフェノール類似臭の独特の臭いを有します。化学的安定性としては、通常の取り扱い条件下では安定です。

また、パラチオンは120℃で引火し、さらに、200℃以上に加熱されると有毒な気体 (一酸化炭素、窒素酸化物、リン酸化物、イオウ酸化物など) を発生させます。パラチオンを使用・保管する際は、火花や熱源などの着火源から遠ざけ、直射日光を避け冷暗所で保管するようにしてください。

パラチオンのその他情報

1. パラチオンの有害性

パラチオンは、「毒物及び劇物取締法における特定毒物」に指定されている化合物です。パラチオンの危険有害性に関する情報として、発がん性、生殖毒性、神経系および視覚器への毒性、経口・経皮・吸入での急性毒性が確認されています。

また、パラチオンの水生環境有害性として、急性および長期間の水生生物への強い毒性があります。

2. パラチオンの安全注意情報

パラチオンは「特定毒物」に指定されており、購入・使用する場合は「毒物劇物取締法に基づく特定毒物研究者指定証」が必要です。パラチオンを使用する際は、厚生労働省が公開している職場のあんぜんサイトに掲載されている安全データシートをよく確認してから作業を開始してください。

経口・経皮・吸入での急性毒性および眼への刺激・毒性を有する化合物であるため、使用する際には保護眼鏡・保護手袋・呼吸用保護具・保護衣を着用し、眼・皮膚・呼吸器を保護した状態で作業してください。また、パラチオンを取り扱う際の設備対策として、取り扱い場所の近くに洗眼および身体洗浄剤のための設備を設け、よく換気された環境で使用することが推奨されています。

3. 廃棄処分方法

パラチオンは周辺環境に対する毒性が強いため、環境中に放出してはならない化合物です。パラチオンを廃棄処分する場合は、内容物および容器を都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して廃棄する必要があります。

4. パラチオンの別名

パラチオンの別名は、エチルパラチオン、ジエチル-パラ-ニトロフェニルチオフォスフェイト、O,O-ジエチル-O-(4-ニトロフェニル)ホスホロチオアートなどがあります。また、ドイツ企業でのパラチオンの商品名はホリドールです。

厚生労働省による職場の安全データシートや日本国内の大手試薬メーカーのウェブサイトでは、主に「パラチオン」の名称が使用されています。

ディルドリン

ディルドリンとは

ディルドリンの構造

図1. ディルドリンの構造

ディルドリン (英: Dieldrin) とは、かつて農薬の成分として使用されていた、化学式 C12H8Cl6Oで表される有機化合物です。

ディルドリンの分子構造は、ノルボルナン骨格を含む環状構造を持ちます。CAS登録番号は、60-57-1です。劇物に指定されている物質でもあります。

残留農薬が問題になったことから、現在では「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約 (POPs条約) 」によって世界中でその使用および製造が原則として禁止されています。

ディルドリンの使用用途

ディルドリンは、かつて農薬として使用されていたものの、現在では安全性の観点で使用が禁止されている化学物質です。主な使用用途は、野菜や果樹の害虫であるナミハダニ等を駆除する粉剤、粒剤、水和剤などの農薬の主成分でした。

その他では、シロアリの防除剤、羊毛製品の防虫剤、木材の防腐剤、塗料の防腐・防虫剤などとしても使用されていましたが、こちらの用途でも現在は使用されていません。

ディルドリンの性質

ディルドリンは、分子量380.91、融点176〜177℃、沸点385℃であり、常温での外観は結晶状固体です。化学的に安定していて難分解性であることから、農作物や土壌への残留性が高いことが分かっています。密度は1.75g/mLです。水にはほとんど溶けません。

ディルドリンの種類

ディルドリンは前述の経緯により、現在は産業用用途では使用されなくなっている物質です。製品としては、主に残留農薬分析で用いる農薬の標準品として、試薬メーカーなどより販売されています。

具体的には、ディルドリン標準品の純物質として販売されている他、PL 農薬混合標準溶液などの混合物として販売されている場合もあります。

ディルドリンのその他情報

1. ディルドリンの合成

ディルドリンの合成

図2. ディルドリンの合成

ディルドリンは、1,3-ヘキサクロロペンタジエンとノルボルナジエンのディールス・アルダー反応と、続くエポキシ化反応で合成される物質です。

ディルドリンの関連物質

図3. ディルドリンの関連物質

また、自然界ではアルドリンが動物体内あるいは土壌中でエポキシ化されることでも生じることが知られています。また、立体異性体としてエンドリンが存在します。

2. ディルドリンの作用機序

ディルドリンは、農薬として使用すると害虫のGABA 受容体に作用すると考えられています。この作用によって、神経が過度に興奮して痙攣が生じ殺虫効果につながると考えられています。

3. ディルドリンの有害性

ディルドリンは、前述の通り人体や環境への有害性が指摘されている物質です。GHS分類では下記のように分類されています。取り扱いの際には、適切な局所換気装置と全体換気装置を設置し、保護衣や保護メガネなどの適切な個人用保護具を使用することが必要です。また、廃液などの廃棄物も適切に処理することが求められます。

  • 急性毒性(経口) : 区分2
  • 急性毒性(経皮) : 区分2
  • 急性毒性-吸入 (粉じん/ミスト) : 区分1
  • 発がん性: 区分1B
  • 生殖毒性: 区分1B (追加区分)
  • 特定標的臓器毒性 (単回ばく露) : 区分1: 神経系
  • 特定標的臓器毒性 (反復ばく露) : 区分1 (神経系、肝臓、腎臓)
  • 水生環境有害性 (急性) : 区分1
  • 水生環境有害性 (慢性) : 区分1

4. ディルドリンの法規制情報

ディルドリンは、有害性ゆえに各種法令によって規制を受ける物質です。毒物及び劇物取締法において劇物に指定されており、労働安全衛生法では名称等を表示すべき危険物及び有害物、名称等を通知すべき危険物及び有害物に指定されています。法令を遵守して正しく取り扱うことが必要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds_label/lab60-57-1.html

アルドリン

アルドリンとは

アルドリンの構造

図1. アルドリンの構造

アルドリン (英: Aldrin) とは、化学式C12H8Cl6で表される安定な白色固体の有機化合物です。

別名として、1,2,3,4,10,10-ヘキサクロロ-1,4,4a,5,8,8a-ヘキサヒドロ-エキソ-1,4-エンド-5,8-ジメタノナフタレンなどが挙げられます。アルドリンは、農薬および殺虫剤として1970年代まで広く使用されていました。現在は残留性有機汚染物質として知られており、農薬や殺虫剤としての利用は停止されています。

アルドリンは劇物に指定されていて、発がん性、変異原性、催腫瘍性、催奇形成 (繁殖毒性) があります。また、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約によってアルドリンの製造と使用は原則として禁止されている物質です。

昭和48年の法律第117号の化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律によって、使用・輸入および製造における規制がある第1種特定化学物質に指定されています。

アルドリンの使用用途

アルドリンは、1970年代までは農薬や殺虫剤として土壌や種子に大量に使用されていたほか、木材の防腐剤や防虫用塗料などに用いられていました。

しかし、アルドリンは水に溶けにくく非常に安定であるという性質を持つため、環境中に残留し長期間に渡って毒性を発現することが明らかになりました。そのため、現在は農薬や殺虫剤としてのアルドリンの使用は禁止されています。

現在は主に、残留試験用試薬として使用されています。

アルドリンの性質

化学式 C12H8Cl6
日本語名 アルドリン
英語名 Aldrinr
CAS番号 309-00-2
分子量 364.91g/mol
融点/凝固点 104~105℃
沸点または初留点および沸騰範囲 145℃ (2mmHg)

1.アルドリンの溶解性

アルドリンは水にわずかに溶けます。また、エタノール、エーテル、アセトンなどの有機溶剤に可溶です。

2. アルドリンの安定性

ディルドリンの構造

図2.ディルドリンの構造

アルドリンは農薬として環境中に散布されると、土壌や植物表面などで酸化され、ディルドリンと呼ばれるエポキシド骨格を有する構造に変化します。このディルドリンはアルドリンに比べさらに強い農薬および殺虫効果を持ち、環境中に長期間残留し毒性を発現し続けます。

そのため、アルドリンおよびディルドリンの両方が残留性有機汚染物質として規制対象です。

アルドリンのその他情報

1. アルドリンの製造方法

アルドリンの製造方法

図3.アルドリンの製造方法

アルドリンは、ノルボルナジエンとヘキサクロロシクロペンタジエンを原料としたディールズ・アルダー反応によって合成されます。ディールズ・アルダー反応とは汎用性の高い環化付加反応であり、開発者であるオットー・ディールスとクルト・アルダーは1950年にノーベル化学賞を受賞しています。

アルドリンという化合物名は、クルト・アルダーの名前から名付けられました。

2. アルドリンの有害性

アルドリンは、毒物及び劇物取締法によって劇物に指定されている化合物です。安全データシートによるとアルドリンは、経口・経皮・吸引での急性毒性、発がん性、生殖毒性、神経毒性、臓器毒性等を有しています。

アルドリンを経口または経皮、吸引で摂取すると生命の危険があるため、細心の注意を払って取り扱うようにしてください。また、アルドリンは魚など水生生物に対する毒性が非常に高く、水生環境でも急性分解性がなく生物備蓄性があることも分かっています。

3. アルドリンの使用上の注意

アルドリンは経皮および経口、吸引による急性毒性を有するため、アルドリンを扱う際には、呼吸用保護具、保護手袋、保護メガネ、保護衣の使用が推奨されています。万が一、皮膚に付着したり飲み込んでしまった場合は、早急に対処が必要です。アルドリンを使用する前に、安全データシートをよく確認しておくことをおすすめします。

また、アルドリンは加熱によって分解し塩化水素を含む有害で腐食性のガス (フューム) を発生します。火元を近付けたりしないよう、適切な保管場所で保管してください。

4. 廃棄処分方法

アルドリンは周辺環境に影響を及ぼす可能性があるため、環境中に放出してはいけない化合物です。アルドリンおよびその容器を廃棄処分する場合は、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して適切に廃棄してください。

グリセロール

グリセロールとは

グリセリンの基本情報

図1. グリセロールの基本情報

グリセロールとは、一般的にグリセリンとも呼ばれる三価のアルコールです。

甘味があるため、ギリシャ語のglykys (甘い) に由来して命名されました。粘性のある無色透明の液体で、特筆すべき有害性は知られていません。消防法では、「危険物第4類第3石油類」に分類されています。

グリセロールは植物や動物の体内にも存在し、人間は皮下などに「脂質」の形で蓄えています。生物の油脂を加水分解して生産する方法が主流です。

グリセロールの使用用途

グリセロールは、食品添加物として甘味料や増粘安定等の目的で使用されています。グリセロールと油脂から得られる脂肪酸を反応させたグリセリン脂肪酸エステルは、乳化剤として有名です。

マーガリンや乳飲料、菓子類に広く使用されており、乳化剤以外の用途では、起泡剤や豆腐用消泡剤としても使われています。そのほか、保湿剤や潤滑剤等の用途で化粧品や医薬品、工業的には塗料やインクの染色助剤としても使用可能です。

グリセロールの性質

グリセロールの融点は18°Cですが、過冷却になりやすく、結晶化が難しいです。−100°C前後まで冷却し続けると、ガラス状態になります。ただし、液化した空気によって冷却し、1日以上かけてゆっくり温度を上昇させると結晶化します。沸点は290°Cで、引火点は密閉式で160°C、開放式で176°Cであり、発火点は370°Cです。

グリセロールは吸湿性が強く、水によく溶けます。水溶液は凝固点降下によって凍結しにくく、共晶点は0.667で−46.5°Cです。

エタノール、ピリジン、フェノールなど、さまざまな溶媒に溶解します。アセトン、ジオキサン、ジエチルエーテルには溶けにくく、ミネラルオイルやクロロホルムなどの無極性溶媒には溶けません。

なお、グリセロールは、3価のアルコールの1種です。化学式はC3H8O3、モル質量は92.09382g/mol、密度は1.261g/cm3、示性式はC3H5(OH)3と表します。

グリセロールのその他情報

1. グリセロールの油脂からの合成

油脂からのグリセロールの合成

図2. 油脂からのグリセロールの合成

生物の油脂中には、トリアシルグリセロールが大量に存在します。トリアシルグリセロールは、グリセリンと脂肪酸のエステルです。そのため、トリアシルグリセロールの加水分解によって、グリセリンと脂肪酸が生成します。実際に、石鹸を生産するときに、副産物のグリセリンが大量に得られます。

その一方で、バイオディーゼル燃料の主成分は、脂肪酸メチルエステルです。したがって、触媒を使ったメタノールと油脂のエステル交換反応によって、副産物としてグリセリンが生じます。

2. グリセロールのプロピレンからの合成

プロピレンからのグリセロールの合成

図3. プロピレンからのグリセロールの合成

プロピレンからさまざまな経路で、グリセロールは合成できます。最も一般的なのは、エピクロロヒドリンを経由する方法です。まず、プロピレンの塩素化によって、塩化アリルが生成します。

塩化アリルを次亜塩素酸塩でジクロロヒドリンに酸化した後、強塩基と反応させることでエピクロロヒドリンが得られます。そして、エピクロロヒドリンの加水分解によって、グリセロールを得ることが可能です。

プロピレンからの塩素を含まないプロセスもあります。例えば、プロピレンからアクロレインやプロピレンオキシドを経て、グリセロールを合成できます。

3. グリセロールの反応

グリセロールとギ酸を熱すると、エステル化を経由して脱離が起こって、アリルアルコールが生じます。また、硫酸水素カリウムを作用させて加熱すると、脱水してアクロレインになります。さらに、酸触媒を用いてアセトンと加熱しても脱水し、イソプロピリデン基により1,2位が保護された誘導体を得ることが可能です。

グリセロールは臭素と赤リンとの反応によって、1,3位が臭素化した誘導体を生成します。塩化水素と酢酸中で反応させると、1-モノクロロ体や1,3-ジクロロ体が生じます。

それ以外にも、酸化条件でアニリン誘導体とグリセロールを縮合すると、キノリン骨格を構築可能です。

蛋白質加水分解物

蛋白質加水分解物とは

蛋白質加水分解物 (英: Protein hydrolyzate) とは、肉・魚・大豆・小麦などの蛋白質を含んだ原料を加水分解することにより得られるアミノ酸混合物です。

蛋白質を加水分解する方法として、塩酸等の酸を使用する酸分解法やプロテアーゼ等の酵素を使用する酵素分解法、熱水分解法などが挙げられます。主流である酸分解法は、発がん性の疑いのあるクロロプロパノール類 (3-MCPD、1,3-DCPなど)  が生成される場合があります。

しかし、コーデックス委員会で3-MCPDの最大基準値を設定するなど、安全性を向上させるための対策が行われています。

蛋白質加水分解物の使用用途

蛋白質加水分解物は、主に食品と化粧品の用途があります。

1. 食品

食品では、主に調味目的で加工食品に使用されています。例えば、漬物、たれ、かまぼこ、即席麺などです。蛋白質を加水分解することによりペプチドやアミノ酸が生成されるため、旨味やコクを付与することができます。食品衛生法での分類上は食品添加物ではなく、食品の扱いです。

2. 化粧品

化粧品では、泡立ちを良くするためや保湿の目的で石鹸やシャンプー等に使用されています。小麦を使用した加水分解物においては、使用した化粧品でアレルギーを発症した事例が過去にあることから、安全性に関する基準が制定されました。

蛋白質加水分解物の性質

蛋白質加水分解物はうま味やコク味を感じさせてくれる性質があります。加えて、次のような性質があります。

1. 消化・吸収の向上

蛋白質は消化されてアミノ酸に分解されることで吸収されますが、加水分解された蛋白質はより小さなペプチドやアミノ酸で構成されているため、消化と吸収が迅速かつ効率的に行われます。

2. 筋肉の超回復・成長の促進

アミノ酸は筋肉の修復や成長に重要な栄養素です。加水分解された蛋白質は消化が速いため、筋肉へのアミノ酸供給が迅速に行われ、トレーニング後の回復や筋肉の成長をサポートします。

3. 消化が容易

蛋白質加水分解物は消化が容易で、消化器官に負担をかけにくいため、栄養補給や食事の代替として利用されることがあります。特に、体力を必要とするスポーツや活動後の栄養補給に適しています。

4. 風味や食感の向上

蛋白質加水分解物はペプチドやアミノ酸で構成されており、これによって食品の風味や食感が向上することがあります。これは、調味料や食品添加物としても利用される要因の1つです。

蛋白質加水分解物のその他情報

蛋白質加水分解物の製法

蛋白質加水分解物は、大豆や小麦などの植物性蛋白質や動物性の蛋白質を原料として、アミノ酸まで分解することで作られます。具体的な方法は、以下の2つです。

1. 酸分解法
植物性蛋白質や動物性の蛋白質を酸を用いて加水分解する方法です。植物性蛋白質を塩酸で分解したものはHVP (Hydrolyzed Vegetable Protein) 、動物性蛋白質はHAP (Hydrolyzed Animal Protein) と呼ばれます。

塩酸で分解する方法は安価で分解することが可能です。しかし、塩酸と油脂成分の反応により有害なクロロプロパノール類が少量生成される可能性があります。これについて国際連合食糧農業機関 (FAO) および世界保健機構 (WHO) において国際的な規格が設けられ、安全性が確立されています。

2. 酵素分解法
動物性の蛋白質をプロテアーゼなどの酵素によって加水分解する方法です。酵素による酵素分解法は、塩酸を使用しないため安全性が高く、高度な分解が要求される場合でも苦味を避けることができます。

しかし、酵素分解法は技術的に難しく、多量の酵素を必要とするため、結果的に高価になる場合があります。 また、動物性蛋白質については、植物性蛋白質と比較して酵素分解が難しく、現在では畜肉や骨からの調味料は十分な技術が確立されていない状況です。 

リン酸ナトリウム

リン酸ナトリウムとは

リン酸ナトリウムとは、一般的に化学式Na3PO4のリン酸三ナトリウム (英: trisodium phosphate) のことです。

別名オルトリン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸ソーダとも呼ばれる物質です。白色の結晶で、匂いはありません。リン酸ナトリウムの分子量は163.94、CAS番号は7601-54-9です。医薬分野や工業分野においては、化学式Na2HPO4)のリン酸水素二ナトリウム (英: disodium hydrogenphosphateのことを単にリン酸ナトリウムと称することがあります。

リン酸ナトリウムの性質表

化学式 Na3PO4
英語名 trisodium phosphate

リン酸ナトリウムの使用用途

1. 食品分野

リン酸ナトリウムは、食品添加物としてハムやソーセージなどの食肉の結着剤として使われる物質です。また、かんすいの添加剤やpH調整剤としても使用されています。

2. 工業分野

写真用現像液や製紙薬剤、皮なめし剤、染色助剤などに広く使われています。

その他、医薬品の添加物や医薬部外品の原料、リン酸系の洗剤、植物のウイルス病対策のための消毒液などに使用されています。

リン酸ナトリウムの性質

リン酸ナトリウムは水によく溶けます。25℃の水100グラムに対するリン酸ナトリウムの溶解度は14.5です。水溶液は強アルカリ性 (pH11.5〜12.5) で、酸と激しく反応します。

リン酸ナトリウムの密度は2.5グラム/立方センチメートル、融点は1340℃です。加熱により分解し、リン酸化物などの有毒で腐食性のヒュームを生じます。エタノールに不溶です。

リン酸ナトリウムの種類

リン酸ナトリウムには、無水和物 (Na3PO4) の他に一水和物 (Na3PO4・H2O) 、六水和物 (Na3PO4・6H2O) 、七水和物 (Na3PO4・7H2O) 、十水和物 (Na3PO4・10H2O) 、十二水和物 (Na3PO4・12H2O) など多くの水和物があります。このうち市販されているものは、主に無水和物 (無水) 、六水和物 (六水塩) 、十二水和物 (十二水塩)  です。

リン酸ナトリウム (無水) は、医薬部外品原料規格、食品添加物、1級、工業用などの規格で販売されている物質です。25グラム、500グラム、2.5キログラム、25キログラムなどの容量で販売されています。

リン酸ナトリウム (六水塩) は、主に工業用の規格で販売されている物質です。主に25キログラムの容量で販売されています。

リン酸ナトリウム (十二水塩) は、医薬部外品原料規格、食品添加物、試薬特級、1級、工業用などの規格で販売されています。500グラム、20キログラム、25キログラムなどの容量で販売されています。

リン酸ナトリウムのその他情報

1. リン酸ナトリウムの合成法

リン酸と水酸化ナトリウムの反応

  H3PO4 + 3NaOH → Na3PO4 + 3H2O

この方法で生成したリン酸ナトリウムを蒸発濃縮すると、常温で十二水和物が得られます。十二水和物は100℃に加熱すると一水和物になり,さらに200℃まで加熱すると無水和物になります。

塩化水素との反応

  Na3PO4 + 3HCl → 3NaCl + H3PO4

過塩素酸との反応

  Na3PO4 + 3HClO4 → 3NaClO4 + H3PO4

酸化ナトリウムと十酸化四リンの生成反応

  4Na3PO4 → 6Na2O + P4O10

2. リン酸水溶液の中和滴定と緩衝作用

リン酸水溶液を水酸化ナトリウム溶液で中和滴定すると、以下のような3段階の反応がおきます。

  1. H3PO4 + NaOH → NaH2PO4 + H2O
  2. NaH2PO4 + NaOH → Na2HPO4 + H2O
  3. Na2HPO4 + NaOH → Na3PO4 + H2O

第2段階の反応が進むと、pH11以上の液性になっても緩衝作用が持続します。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7601-54-9.html

ビタミンD3

ビタミンD3とは

ビタミンD3とは、別名カルシフェロール (Calciferol) ともいい、脂溶性ビタミンの1種です。

ビタミンDにはD2~D7までありますが、生理学的にはd2 (エルゴカルシフェロール) とD3が重要とされており、この2つは同等の作用があると考えられています。どちらもカルシウムとリンの代謝に関与し、骨の健康維持に重要な働きを果たします。

キノコ等の植物性の食品に含まれているのがビタミンD2であるのに対し、脂肪の多い魚等に含まれているのがビタミンD3です。ビタミンD3は、人間の皮膚でも作ることができます。表皮に多く存在するビタミンD3の前駆体である7-デヒドロコレステロールから、紫外線 (UVB) と体温の働きによりビタミンD3が合成されます。

ビタミンD3の使用用途

ビタミンD3は、主に骨の健康維持やカルシウムの恒常性を維持するために使用されます。ビタミンD3が欠乏すると、骨軟化症 (大人ではオステオマラシア、子供ではくる病) を引き起こす可能性があることが知られています。また、ビタミンD3は、免疫機能の向上や抗酸化作用、抗がん作用など健康効果が多いです。

外国ではビタミンD欠乏症に対処するため、栄養強化の目的で食品にも使用可能です。サプリメントとして使われることもあり、くる病や骨軟化症、骨粗鬆症等を予防することが知られています。

天然型のビタミンD3はそのままの構造では体内で働けず、肝臓や腎臓によって活性型ビタミンDに代謝される必要があります。人間の体内で働くためには、ビタミンD3の血中濃度よりも代謝が重要であるり、過剰摂取の危険性は少ないです。

ビタミンD含量の高い食品には、魚や乳製品、シイタケなどのキノコ類があります。十分量のビタミンDを食物から摂ることは困難であるため、日光浴による生合成が最も効果的といわれています。日本では、夏場で30分間程度、冬場で1時間程度の日照で十分な効果が得られます。

ビタミンD3の性質

ビタミンD3は、生体活動に必須の脂溶性ビタミンであり、光合成作用により生体内で生成される栄養素です。脂溶性物質であるビタミンD3は、水には溶けにくいですが、脂肪や有機溶媒には容易に溶解します。この性質のため、体内では脂肪組織に蓄積され、長期間保管されます。

ビタミンD3は、生体内で活性体であるカルシトリオール (1,25-ジヒドロキシビタミンD3) に変換され、カルシウムとリンの代謝を調節するのが役割です。特に、腸管でのカルシウム吸収を促進し、骨の形成・維持に寄与しています。欠乏すると、カルシウム吸収が低下し、骨の脱灰を引き起こします。

一般的なビタミンD欠乏症には、くる病や骨軟化症が挙げられ、骨粗しょう症のリスクも高めることが知られています。

ビタミンD3の構造

ビタミンD3 (カルシフェロール) は、分子式C27H44Oからなる脂溶性ビタミンです。その構造は、A環、B環、C環の3つの環構造と、長い炭化水素鎖を持っているのが特徴です。

7-デヒドロコレステロールから合成され、生体内でさらに活性化されて、カルシウム代謝に関与するホルモン、カルシトリオールに変換されます。カルシフェロールからカルシトリオールへの代謝はビタミンDの活性化において重要なプロセスで、CYP2R1、CYP27B1という酵素が主に関与しています。

ビタミンD3のその他情報

ビタミンD3 の製造方法

ビタミンD3は、自然界や生体内で生成される一方で、工業的な製造法も確立されています。一般的な合成方法は以下のとおりです。

アルデヒドとヨードメチレン化合物を用いてビタミンD3の前駆体 (プレビタミンD3) を合成し、続いて熱異性化させてビタミンD3に変換します。この方法では、高純度のビタミンD3を得られます。

トリクロロエチレン

トリクロロエチレンとは

トリクロロエチレンの基本情報

図1. トリクロロエチレンの基本情報

トリクロロエチレンとは、エチレンの持つ3個の水素原子が塩素原子に置き換わった有機化合物です。

別名、三塩化エチレン、トリクロルエチレン、トリクレンとも呼ばれています。常温では無色透明の液体です。

トリクロロエチレンには毒性があるため、経済産業省は「第一種特定化学物質」に定めています。また、トリクロロエチレンの発がん性は国際がん研究機関 (IARC) が定める発がん性分類として、グループ1 (人に対する発がん性がある) に分類されています。

トリクロロエチレンの使用用途

トリクロロエチレンは、油脂類やグリースなどの潤滑剤などを溶解するため、金属部品や電子部品の脱脂洗浄が主な用途です。さらに、ゴムや樹脂を溶解するため、接着剤中の溶剤としても使用され、染料や塗料の製造時に工業用溶剤として用いられています。

そのほか、代替フロン合成原料として利用可能です。つまり、フロンガスの製造にも使用されています。

また、水洗いできない衣類や羊毛、革製品の油分を洗浄するドライクリーニングに使用可能です。それ以外にも、水質基準などの測定時に比較対象の濃度標準液として使われますが、使用量は多くありません。

トリクロロエチレンの性質

トリクロロエチレンの沸点は86.7°C、融点は-86.4°Cで、発火点は420°Cです。常温では不燃性や揮発性を示し、クロロホルムのような甘い香りを持っています。

エタノール、ジエチルエーテル、クロロホルムのような、多くの有機溶媒によく溶けます。金属の存在下では、長時間は安定していません。高温ではさらに不安定になります。そのため、市販されているトリクロロエチレンには、添加剤が用いられています。

トリクロロエチレンの構造

トリクロロエチレンは、エチレンの3個の水素原子が塩素原子になった有機塩素化合物です。有機塩素化合物とは、炭素を含む化合物に塩素が結合した物質のことです。

化学式はC2HCl3と表されます。20°Cでの密度は1.46g/cm3です。

トリクロロエチレンのその他情報

1. アセチレンを用いたトリクロロエチレンの合成法

トリクロロエチレンのアセチレンからの合成

図2. トリクロロエチレンのアセチレンからの合成

1970年代初頭以前にトリクロロエチレンは、アセチレンから2段階の反応で製造されていました。90℃で塩化鉄 (III) 触媒を用いて、塩素とアセチレンの反応によって、1,1,2,2-テトラクロロエタンが得られます。

水酸化カルシウム水溶液を用いた1,1,2,2-テトラクロロエタンの脱塩化水素反応によって、トリクロロエチレンが生成可能です。1,1,2,2-テトラクロロエタンの脱塩化水素は、塩化カルシウムや塩化バリウムなどの触媒を使用して、気相中で300〜500℃に熱しても合成できます。

2. エチレンを用いたトリクロロエチレンの合成法

トリクロロエチレンのエチレンからの合成

図3. トリクロロエチレンのエチレンからの合成

現在は、エチレンから大部分のトリクロロエチレンを合成しています。触媒として塩化鉄 (III) を使ってエチレンを塩素化すると、1,2-ジクロロエタンを生成可能です。

1,2-ジクロロエタンに塩素を加えて、400℃付近で熱すると、トリクロロエチレンが生成します。1,2-ジクロロエタンの塩素化の触媒には、塩化アルミニウムと塩化カリウムの混合物のほか、多孔質の炭素も利用可能です。使用する塩素の量によっては、テトラクロロエチレンが副生しますが、蒸留で分離できます。

3. トリクロロエチレンの危険性

蒸気吸入や直接接触などでトリクロロエチレンが体内に入った場合、頭痛、めまい、おう吐などの中毒症状を引き起こします。また、肝臓や腎臓に障害を起こす可能性もあります。

トリクロロエチレンは、人体に対する毒性が強いです。環境に放出された場合には水に溶けにくく、土壌汚染や地下水汚染などの問題に繋がります。そのため、取り扱いには厳格な規制があります。

ジクロロエタン

ジクロロエタンとは

ジクロロエタンの基本情報

図1. ジクロロエタンの基本情報

ジクロロエタンとは、ハロゲン系炭化水素です。

1,2-ジクロロエタンと1,1-ジクロロエタンが存在します。ジクロロエタンは、中枢神経系、肝臓、腎臓、肺、心臓血管系に影響を与えるため、「第一種特定有害物質」に指定されています。人体に対して発がん性がありますが、現在のところ十分な評価がされていません。

したがって、国際がん研究機関では、「人に対して発がん性の可能性がある」に分類されています。

ジクロロエタンの使用用途

ジクロロエタンは、塩化ビニルモノマー (ビニールの原材料) 、エチレンジアミン (塗料、ワニス、接着剤、殺虫剤製紙などの原材料) 、ポリアミド樹脂 (プラスチック、ナイロンの原材料) 、イオン交換樹脂の原材料 (主に水浄化に使用される) などを合成するための原料として使用されます。

また、ジクロロエタンの溶解力は強力なため、非極性非プロトン性溶媒としても有用です。そして、鉄、アルミ、ガラスなどに付着した油成分を洗浄するための、脱脂洗浄剤としても利用できます。

そのほか、塗料の溶剤、スプレー製品の溶剤、毒性を活かして殺虫剤や燻蒸剤 (家屋などのカビ発生防止、害虫の駆除) としての用途もあります。

ジクロロエタンの性質

1. 1,2-ジクロロエタン

1,2-ジクロロエタンの融点は-98°Cで、沸点は57°Cです。常温では油状であり、エーテル臭がする無色の液体です。1,2-ジクロロエタンは、水にはわずかしか溶けません。エタノール、エーテルには溶けます。高い引火性や発癌性の可能性を有します。

2. 1,1-ジクロロエタン

1,1-ジクロロエタンの融点は-35°Cで、沸点は83.5~84.0°Cです。クロロホルムのような臭気を有する無色の液体で、水には難溶ですが、ほとんどの有機溶媒に可溶です。400~500°Cで10MPaに加圧すると、熱分解によってクロロエチレンが生成します。光分解によって生じたヒドロキシラジカルと反応しやすく、大気中での半減期は62日です。

ジクロロエタンが環境に放出された場合、地中内で地下水に移行して残留します。そのため、ジクロロエタンの環境放出は地下水の汚染問題に発展する可能性もあります。

ジクロロエタンの構造

1,2-ジクロロエタンと1,1-ジクロロエタンの化学式はC2H4Cl2、モル質量は98.96です。1,2-ジクロロエタンの密度は1.253g/cm3で、二塩化エチレン (英: ethylene dichloride) とも呼ばれます。

一方で、1,1-ジクロロエタンの密度は1.2g/cm3です。エチリデンジクロリド (英: ethylidene chloride) とも呼ばれます。

ジクロロエタンのその他情報

1. 1,2-ジクロロエタンの合成法

1,2-ジクロロエタンの合成

図2. 1,2-ジクロロエタンの合成

1,2-ジクロロエタンは、触媒に塩化鉄 (III) を用いて、エチレンと塩素から合成できます。塩化銅 (II) を使用して、塩化ビニル、塩化水素、酸素の反応によっても、1,2-ジクロロエタンが生成します。

2. 1,2-ジクロロエタンの反応

1,2-ジクロロエタンの反応

図3. 1,2-ジクロロエタンの反応

1,2-ジクロロエタンの生産量の8割が、モノマーである塩化ビニルの生産に使われています。具体的には、1,2-ジクロロエタンから塩化水素が脱離して、ポリ塩化ビニルの前駆体であるクロロエチレン (英: chloroethylene) を得ることが可能です。

クロロエチレンの化学式はCH2=CHClであり、塩化ビニル (英: vinyl chloride) とも呼ばれています。クロロエチレンを得る際の副生成物である塩化水素は、1,2-ジクロロエタンを合成するために再使用できます。

そのほか、1,2-ジクロロエタンは、有機合成化学における有用な反応中間体として利用可能です。

サリチルアミド

サリチルアミドとは

サリチルアミド (英: Salicylamide) とは、白色の結晶または結晶性粉末の芳香族化合物です。

IUPAC名は、2-ヒドロキシベンズアミド (英: 2-hydroxybenzamide) 、また別名としてo-ヒドロキシベンズアミド (英: o-hydroxybenzamide) とも呼ばれます。

化学式はC7H7NO2で表され、分子量は137.14です。なお、CAS登録番号は65-45-2です。

サリチルアミドは、サリチル酸メチルにアンモニアを作用させる、求核置換反応によるアミド化によって得られます。

サリチルアミドの使用用途

サリチルアミドは、非ステロイド性抗炎症薬の1種で、発熱や腫れ、痛みなどを軽減する薬物です。解熱作用、鎮痛作用はアスピリンと同様の効能があります。

経口投与の非ステロイド性抗炎症薬として多くの一般用医薬品に使用されてきましたが、現在では使われることは稀です。処方箋が必要な風邪薬であるPL顆粒にも、成分の1つとしてサリチルアミドが使用されています。しかし、一般市販薬とは成分の配合比率が異なります。

非ステロイド系抗炎症薬は、体内で生成される痛みを感じさせ、発熱、炎症を起こす物質 (プロスタグランジン) の生成を抑制します。プロスタグランジン生成阻害効果により、痛みの緩和、炎症を抑えることが可能ですが、痛みや発熱、腫れなどの発生原因自体を治すことはできません。

サリチルアミドの性質

融点は140〜144°C、沸点は270°Cで、常温で固体です。N,N-ジメチルホルムアミドに非常に溶けやすく、エタノールやプロピレングリコール、水酸化ナトリウム溶液に溶け、ジエチルエーテルやジメチルスルホキシドにやや溶けます。水やクロロホルムにはあまり溶けません。

酸性・アルカリ性の程度を表すpHは5、酸解離定数 (pKa) は8.37です。酸解離定数とは、酸の強さを定量的に表すための指標の1つです。pKa が小さいほど、強い酸であることを示します。

サリチルアミドのその他情報

1. 副作用

サリチルアミドには、以下の副作用が報告されています。

  • 血小板機能異常
  • 喘息を悪化させるおそれ
  • 胃潰瘍など消化性潰瘍の悪化のおそれ
  • 腎臓や肝臓の機能に影響するおそれ
  • 胃痛、腹痛、吐き気
  • 発疹、じん麻疹

インフルエンザを患っている小児、アスピリン喘息患者、消化性潰瘍のある患者への使用は避けます。

2. 取り扱い及び保管上の注意

取り扱う場合の対策
強酸化剤はとの接触は避けてください。局所排気装置であるドラフトチャンバー内で使用してください。使用の際は、個人用保護具を着用します。

火災の場合
燃焼すると、一酸化炭素や二酸化炭素、窒素酸化物などを生成します。消火には水噴霧や泡消火剤、粉末消火剤、炭酸ガス、消化砂などを使用します。

皮膚に付着した場合
皮膚に付着しないよう注意してください。使用時は必ず白衣や作業着などの保護衣や保護手袋を着用します。保護衣の袖は決して捲らず、皮膚が暴露しないようにしてください。

万が一皮膚に付着した場合は、石けんと大量の水で洗い流します。衣類に付着した場合は、汚染された衣類をすべて脱いで隔離します。症状が続く時は、医師の診療を受けてください。

眼に入った場合
使用時は、必ず保護メガネまたはゴーグルを着用してください。万が一眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗います。コンタクトを着用していて、簡単に外せるときは外し、しっかり洗浄します。直ちに、医師の診察を受けてください。

保管する場合
サリチルアミドは、光により変質する恐れがあります。保管する際は、遮光性のガラス製容器に入れて密閉します。高温と直射日光を避け、換気がよく、なるべく涼しい場所に施錠して保管してください。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/65-45-2.html
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0119-1581JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Salicylamide