蛋白質加水分解物とは
蛋白質加水分解物 (英: Protein hydrolyzate) とは、肉・魚・大豆・小麦などの蛋白質を含んだ原料を加水分解することにより得られるアミノ酸混合物です。
蛋白質を加水分解する方法として、塩酸等の酸を使用する酸分解法やプロテアーゼ等の酵素を使用する酵素分解法、熱水分解法などが挙げられます。主流である酸分解法は、発がん性の疑いのあるクロロプロパノール類 (3-MCPD、1,3-DCPなど) が生成される場合があります。
しかし、コーデックス委員会で3-MCPDの最大基準値を設定するなど、安全性を向上させるための対策が行われています。
蛋白質加水分解物の使用用途
蛋白質加水分解物は、主に食品と化粧品の用途があります。
1. 食品
食品では、主に調味目的で加工食品に使用されています。例えば、漬物、たれ、かまぼこ、即席麺などです。蛋白質を加水分解することによりペプチドやアミノ酸が生成されるため、旨味やコクを付与することができます。食品衛生法での分類上は食品添加物ではなく、食品の扱いです。
2. 化粧品
化粧品では、泡立ちを良くするためや保湿の目的で石鹸やシャンプー等に使用されています。小麦を使用した加水分解物においては、使用した化粧品でアレルギーを発症した事例が過去にあることから、安全性に関する基準が制定されました。
蛋白質加水分解物の性質
蛋白質加水分解物はうま味やコク味を感じさせてくれる性質があります。加えて、次のような性質があります。
1. 消化・吸収の向上
蛋白質は消化されてアミノ酸に分解されることで吸収されますが、加水分解された蛋白質はより小さなペプチドやアミノ酸で構成されているため、消化と吸収が迅速かつ効率的に行われます。
2. 筋肉の超回復・成長の促進
アミノ酸は筋肉の修復や成長に重要な栄養素です。加水分解された蛋白質は消化が速いため、筋肉へのアミノ酸供給が迅速に行われ、トレーニング後の回復や筋肉の成長をサポートします。
3. 消化が容易
蛋白質加水分解物は消化が容易で、消化器官に負担をかけにくいため、栄養補給や食事の代替として利用されることがあります。特に、体力を必要とするスポーツや活動後の栄養補給に適しています。
4. 風味や食感の向上
蛋白質加水分解物はペプチドやアミノ酸で構成されており、これによって食品の風味や食感が向上することがあります。これは、調味料や食品添加物としても利用される要因の1つです。
蛋白質加水分解物のその他情報
蛋白質加水分解物の製法
蛋白質加水分解物は、大豆や小麦などの植物性蛋白質や動物性の蛋白質を原料として、アミノ酸まで分解することで作られます。具体的な方法は、以下の2つです。
1. 酸分解法
植物性蛋白質や動物性の蛋白質を酸を用いて加水分解する方法です。植物性蛋白質を塩酸で分解したものはHVP (Hydrolyzed Vegetable Protein) 、動物性蛋白質はHAP (Hydrolyzed Animal Protein) と呼ばれます。
塩酸で分解する方法は安価で分解することが可能です。しかし、塩酸と油脂成分の反応により有害なクロロプロパノール類が少量生成される可能性があります。これについて国際連合食糧農業機関 (FAO) および世界保健機構 (WHO) において国際的な規格が設けられ、安全性が確立されています。
2. 酵素分解法
動物性の蛋白質をプロテアーゼなどの酵素によって加水分解する方法です。酵素による酵素分解法は、塩酸を使用しないため安全性が高く、高度な分解が要求される場合でも苦味を避けることができます。
しかし、酵素分解法は技術的に難しく、多量の酵素を必要とするため、結果的に高価になる場合があります。 また、動物性蛋白質については、植物性蛋白質と比較して酵素分解が難しく、現在では畜肉や骨からの調味料は十分な技術が確立されていない状況です。