グリセロール

グリセロールとは

グリセリンの基本情報

図1. グリセロールの基本情報

グリセロールとは、一般的にグリセリンとも呼ばれる三価のアルコールです。

甘味があるため、ギリシャ語のglykys (甘い) に由来して命名されました。粘性のある無色透明の液体で、特筆すべき有害性は知られていません。消防法では、「危険物第4類第3石油類」に分類されています。

グリセロールは植物や動物の体内にも存在し、人間は皮下などに「脂質」の形で蓄えています。生物の油脂を加水分解して生産する方法が主流です。

グリセロールの使用用途

グリセロールは、食品添加物として甘味料や増粘安定等の目的で使用されています。グリセロールと油脂から得られる脂肪酸を反応させたグリセリン脂肪酸エステルは、乳化剤として有名です。

マーガリンや乳飲料、菓子類に広く使用されており、乳化剤以外の用途では、起泡剤や豆腐用消泡剤としても使われています。そのほか、保湿剤や潤滑剤等の用途で化粧品や医薬品、工業的には塗料やインクの染色助剤としても使用可能です。

グリセロールの性質

グリセロールの融点は18°Cですが、過冷却になりやすく、結晶化が難しいです。−100°C前後まで冷却し続けると、ガラス状態になります。ただし、液化した空気によって冷却し、1日以上かけてゆっくり温度を上昇させると結晶化します。沸点は290°Cで、引火点は密閉式で160°C、開放式で176°Cであり、発火点は370°Cです。

グリセロールは吸湿性が強く、水によく溶けます。水溶液は凝固点降下によって凍結しにくく、共晶点は0.667で−46.5°Cです。

エタノール、ピリジン、フェノールなど、さまざまな溶媒に溶解します。アセトン、ジオキサン、ジエチルエーテルには溶けにくく、ミネラルオイルやクロロホルムなどの無極性溶媒には溶けません。

なお、グリセロールは、3価のアルコールの1種です。化学式はC3H8O3、モル質量は92.09382g/mol、密度は1.261g/cm3、示性式はC3H5(OH)3と表します。

グリセロールのその他情報

1. グリセロールの油脂からの合成

油脂からのグリセロールの合成

図2. 油脂からのグリセロールの合成

生物の油脂中には、トリアシルグリセロールが大量に存在します。トリアシルグリセロールは、グリセリンと脂肪酸のエステルです。そのため、トリアシルグリセロールの加水分解によって、グリセリンと脂肪酸が生成します。実際に、石鹸を生産するときに、副産物のグリセリンが大量に得られます。

その一方で、バイオディーゼル燃料の主成分は、脂肪酸メチルエステルです。したがって、触媒を使ったメタノールと油脂のエステル交換反応によって、副産物としてグリセリンが生じます。

2. グリセロールのプロピレンからの合成

プロピレンからのグリセロールの合成

図3. プロピレンからのグリセロールの合成

プロピレンからさまざまな経路で、グリセロールは合成できます。最も一般的なのは、エピクロロヒドリンを経由する方法です。まず、プロピレンの塩素化によって、塩化アリルが生成します。

塩化アリルを次亜塩素酸塩でジクロロヒドリンに酸化した後、強塩基と反応させることでエピクロロヒドリンが得られます。そして、エピクロロヒドリンの加水分解によって、グリセロールを得ることが可能です。

プロピレンからの塩素を含まないプロセスもあります。例えば、プロピレンからアクロレインやプロピレンオキシドを経て、グリセロールを合成できます。

3. グリセロールの反応

グリセロールとギ酸を熱すると、エステル化を経由して脱離が起こって、アリルアルコールが生じます。また、硫酸水素カリウムを作用させて加熱すると、脱水してアクロレインになります。さらに、酸触媒を用いてアセトンと加熱しても脱水し、イソプロピリデン基により1,2位が保護された誘導体を得ることが可能です。

グリセロールは臭素と赤リンとの反応によって、1,3位が臭素化した誘導体を生成します。塩化水素と酢酸中で反応させると、1-モノクロロ体や1,3-ジクロロ体が生じます。

それ以外にも、酸化条件でアニリン誘導体とグリセロールを縮合すると、キノリン骨格を構築可能です。

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