リン酸ナトリウムとは
リン酸ナトリウムとは、一般的に化学式Na3PO4のリン酸三ナトリウム (英: trisodium phosphate) のことです。
別名オルトリン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸ソーダとも呼ばれる物質です。白色の結晶で、匂いはありません。リン酸ナトリウムの分子量は163.94、CAS番号は7601-54-9です。医薬分野や工業分野においては、化学式Na2HPO4)のリン酸水素二ナトリウム (英: disodium hydrogenphosphateのことを単にリン酸ナトリウムと称することがあります。
リン酸ナトリウムの性質表
化学式 | Na3PO4 |
英語名 | trisodium phosphate |
リン酸ナトリウムの使用用途
1. 食品分野
リン酸ナトリウムは、食品添加物としてハムやソーセージなどの食肉の結着剤として使われる物質です。また、かんすいの添加剤やpH調整剤としても使用されています。
2. 工業分野
写真用現像液や製紙薬剤、皮なめし剤、染色助剤などに広く使われています。
その他、医薬品の添加物や医薬部外品の原料、リン酸系の洗剤、植物のウイルス病対策のための消毒液などに使用されています。
リン酸ナトリウムの性質
リン酸ナトリウムは水によく溶けます。25℃の水100グラムに対するリン酸ナトリウムの溶解度は14.5です。水溶液は強アルカリ性 (pH11.5〜12.5) で、酸と激しく反応します。
リン酸ナトリウムの密度は2.5グラム/立方センチメートル、融点は1340℃です。加熱により分解し、リン酸化物などの有毒で腐食性のヒュームを生じます。エタノールに不溶です。
リン酸ナトリウムの種類
リン酸ナトリウムには、無水和物 (Na3PO4) の他に一水和物 (Na3PO4・H2O) 、六水和物 (Na3PO4・6H2O) 、七水和物 (Na3PO4・7H2O) 、十水和物 (Na3PO4・10H2O) 、十二水和物 (Na3PO4・12H2O) など多くの水和物があります。このうち市販されているものは、主に無水和物 (無水) 、六水和物 (六水塩) 、十二水和物 (十二水塩) です。
リン酸ナトリウム (無水) は、医薬部外品原料規格、食品添加物、1級、工業用などの規格で販売されている物質です。25グラム、500グラム、2.5キログラム、25キログラムなどの容量で販売されています。
リン酸ナトリウム (六水塩) は、主に工業用の規格で販売されている物質です。主に25キログラムの容量で販売されています。
リン酸ナトリウム (十二水塩) は、医薬部外品原料規格、食品添加物、試薬特級、1級、工業用などの規格で販売されています。500グラム、20キログラム、25キログラムなどの容量で販売されています。
リン酸ナトリウムのその他情報
1. リン酸ナトリウムの合成法
リン酸と水酸化ナトリウムの反応
H3PO4 + 3NaOH → Na3PO4 + 3H2O
この方法で生成したリン酸ナトリウムを蒸発濃縮すると、常温で十二水和物が得られます。十二水和物は100℃に加熱すると一水和物になり,さらに200℃まで加熱すると無水和物になります。
塩化水素との反応
Na3PO4 + 3HCl → 3NaCl + H3PO4
過塩素酸との反応
Na3PO4 + 3HClO4 → 3NaClO4 + H3PO4
酸化ナトリウムと十酸化四リンの生成反応
4Na3PO4 → 6Na2O + P4O10
2. リン酸水溶液の中和滴定と緩衝作用
リン酸水溶液を水酸化ナトリウム溶液で中和滴定すると、以下のような3段階の反応がおきます。
- H3PO4 + NaOH → NaH2PO4 + H2O
- NaH2PO4 + NaOH → Na2HPO4 + H2O
- Na2HPO4 + NaOH → Na3PO4 + H2O
第2段階の反応が進むと、pH11以上の液性になっても緩衝作用が持続します。
参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7601-54-9.html