アルドリン

アルドリンとは

アルドリンの構造

図1. アルドリンの構造

アルドリン (英: Aldrin) とは、化学式C12H8Cl6で表される安定な白色固体の有機化合物です。

別名として、1,2,3,4,10,10-ヘキサクロロ-1,4,4a,5,8,8a-ヘキサヒドロ-エキソ-1,4-エンド-5,8-ジメタノナフタレンなどが挙げられます。アルドリンは、農薬および殺虫剤として1970年代まで広く使用されていました。現在は残留性有機汚染物質として知られており、農薬や殺虫剤としての利用は停止されています。

アルドリンは劇物に指定されていて、発がん性、変異原性、催腫瘍性、催奇形成 (繁殖毒性) があります。また、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約によってアルドリンの製造と使用は原則として禁止されている物質です。

昭和48年の法律第117号の化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律によって、使用・輸入および製造における規制がある第1種特定化学物質に指定されています。

アルドリンの使用用途

アルドリンは、1970年代までは農薬や殺虫剤として土壌や種子に大量に使用されていたほか、木材の防腐剤や防虫用塗料などに用いられていました。

しかし、アルドリンは水に溶けにくく非常に安定であるという性質を持つため、環境中に残留し長期間に渡って毒性を発現することが明らかになりました。そのため、現在は農薬や殺虫剤としてのアルドリンの使用は禁止されています。

現在は主に、残留試験用試薬として使用されています。

アルドリンの性質

化学式 C12H8Cl6
日本語名 アルドリン
英語名 Aldrinr
CAS番号 309-00-2
分子量 364.91g/mol
融点/凝固点 104~105℃
沸点または初留点および沸騰範囲 145℃ (2mmHg)

1.アルドリンの溶解性

アルドリンは水にわずかに溶けます。また、エタノール、エーテル、アセトンなどの有機溶剤に可溶です。

2. アルドリンの安定性

ディルドリンの構造

図2.ディルドリンの構造

アルドリンは農薬として環境中に散布されると、土壌や植物表面などで酸化され、ディルドリンと呼ばれるエポキシド骨格を有する構造に変化します。このディルドリンはアルドリンに比べさらに強い農薬および殺虫効果を持ち、環境中に長期間残留し毒性を発現し続けます。

そのため、アルドリンおよびディルドリンの両方が残留性有機汚染物質として規制対象です。

アルドリンのその他情報

1. アルドリンの製造方法

アルドリンの製造方法

図3.アルドリンの製造方法

アルドリンは、ノルボルナジエンとヘキサクロロシクロペンタジエンを原料としたディールズ・アルダー反応によって合成されます。ディールズ・アルダー反応とは汎用性の高い環化付加反応であり、開発者であるオットー・ディールスとクルト・アルダーは1950年にノーベル化学賞を受賞しています。

アルドリンという化合物名は、クルト・アルダーの名前から名付けられました。

2. アルドリンの有害性

アルドリンは、毒物及び劇物取締法によって劇物に指定されている化合物です。安全データシートによるとアルドリンは、経口・経皮・吸引での急性毒性、発がん性、生殖毒性、神経毒性、臓器毒性等を有しています。

アルドリンを経口または経皮、吸引で摂取すると生命の危険があるため、細心の注意を払って取り扱うようにしてください。また、アルドリンは魚など水生生物に対する毒性が非常に高く、水生環境でも急性分解性がなく生物備蓄性があることも分かっています。

3. アルドリンの使用上の注意

アルドリンは経皮および経口、吸引による急性毒性を有するため、アルドリンを扱う際には、呼吸用保護具、保護手袋、保護メガネ、保護衣の使用が推奨されています。万が一、皮膚に付着したり飲み込んでしまった場合は、早急に対処が必要です。アルドリンを使用する前に、安全データシートをよく確認しておくことをおすすめします。

また、アルドリンは加熱によって分解し塩化水素を含む有害で腐食性のガス (フューム) を発生します。火元を近付けたりしないよう、適切な保管場所で保管してください。

4. 廃棄処分方法

アルドリンは周辺環境に影響を及ぼす可能性があるため、環境中に放出してはいけない化合物です。アルドリンおよびその容器を廃棄処分する場合は、都道府県知事の許可を受けた専門の廃棄物処理業者に依頼して適切に廃棄してください。

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