ビニロン

ビニロン(vinylon)とは

ビニロンとは、ポリビニルアルコールアセタール化して作られた合成繊維のことを言います。

ビニロンは日本で初めて開発された合成繊維で、その歴史は70年以上になります。また、世界で初めて開発されたナイロンに続き、世界で2番目に開発された合成繊維でもあります。

ビニロンの特徴

ビニロンの特徴としては、繊維強度が高く摩擦に強いことや吸湿性に優れていることなどが挙げられます。合成繊維の多くは吸湿性が高くないため、この点でビニロンは際立った性質を持っていると言えます。また、耐候性、耐薬品性にも優れ、工業・産業の多方面で使用されています。ビニロンは炭素、水素、酸素で構成されているため、燃焼時にダイオキシンやアンモニアといった有害物質を発生させません。

しかし、耐薬品性に優れる反面、染色しにくいという特徴ももち、衣料用の繊維として使用しづらいという側面があります。綿に似た風合いを持つものの、しなやかさに欠ける(ごわごわする)という特徴は短所でもあります。また、湿った状態で熱に触れると色が変わるなどのデメリットもあるため、熱がかかる場所や見た目が気になる場面での使用には向きません。

ビニロンの使用用途

ビニロンは歴史も長く安定生産しやすいことから様々なシーンで使用されます。

基本的に水に強く耐久性の高い繊維になりますので繰り返し使用されるものに向いており、身近なものでいえばロープや魚網にもよく使用されます。

耐薬品性に優れ、アルカリにも強い耐性をもつため、コンクリート補強用としても利用されています。雨風にも強いため、土木建築や農業用寒冷紗など、耐候性が求められる用途に使われることがあります。

一昔前までは吸湿性が高いこと、綿に似た風合いを持つことから衣服への使用もありましたが、アイロン時の変色などを理由に使用されるシーンは減っていきました。

現在、ビニロンが衣服として使用されているのは、長時間汗をかくような現場で仕事をする際の作業着や、レインコート、一部の学生服などです。

ビニロンの製法

ビニロンは合成繊維になりますので、基本的には化学物質を人工的に重合させることによって作られます。

ポリビニルアルコールとホルムアルデヒドからビニロンの合成

まず、石油と天然ガスから作られたエチレンから酢酸ビニルを合成します。この酢酸ビニルを付加重合させたのち、水酸化ナトリウムによる、けん化のステップを経ることでビニロンの元であるポリビニルアルコールが作成されます。

ポリビニルアルコールは分子中に親水性の高いヒドロキシ基(-OH基)を多く持つために水に溶けやすく、繊維として利用しにくいです。

ここから、ポリビニルアルコールを紡糸原液とし、ホルムアルデヒドを用いてアセタール化をさせることでビニロン繊維が作られていきます。紡糸の方式は、乾式と湿式に分けられます。乾式は、原料を熱で気化する溶剤に溶かした状態で、熱雰囲気中で口金から押し出して溶剤を蒸発させて繊維状にする方法です。湿式は、原料を溶剤に溶かした状態で、凝固浴と呼ばれる溶液中で口金から押し出して化学反応させたのち、溶剤を除去して繊維状にする方法です。

こうしてヒドロキシ基(-OH基)の割合を減らすことで、水に溶けず、適度な吸湿性を持つ合成繊維となります。

その他のビニロン

通常のビニロンは水で分解されることはありませんが、ビニロンの中には水溶性ビニロンと呼ばれる珍しい繊維が存在し、これは水に溶ける特徴を持っています。この繊維は通常のビニロンよりも、ヒドロキシ基(-OH基)が多く残存しています。

この素材は一時期衣類業界で革新的であるとかなり有名になり、レースのような織りにくい生地でも水溶性ビニロン繊維を混ぜ込んで織りこむことで、織り込んだ後で水溶性ビニロンだけを分解し、レースだけを残すというような方法で、他ではできない素材で衣服の作成ができるとこぞって使用するメーカーが増えました。このようなレースを、化学的に作られたレースという意味でケミカルレースと呼ぶことがあります。

参考文献
https://examist.jp/chemistry/synthetic-polymer/biniron/

ブチルゴム

ブチルゴムとは

ブチルゴム

ブチルゴムとはイソブチレンにイソプレンを共重合して調製された合成ゴムの1種であり、我々の身の回りの製品に使用されています。その構造は図1の通りであり、1937年にアメリカのスタンダード・オイル社で石油を原料として初めて開発され、その後日本でも生産が開始されました。添加剤の付与などによってブチルゴムにはさまざまな種類があり、使用する製品特性に合わせて最適なブチルゴムが生産されています。

ブチルゴムの構造

図1. ブチルゴムの構造

ブチルゴムの使用用途

ブチルゴムの使用用途は多岐に渡ります。メインは自動車分野で、タイヤチューブ、ホース、ベルトなどの原料として使用されています。その他の工業製品としては、電線の被覆材、窓枠のゴム、スポーツで使用されるサッカーボールやバスケットボールなどに使用されています。製品の傾向を見ると、引っ張られたり、衝撃が強く、摩耗が激しい箇所などに使用されており、特に一定以上の強度が必要である製品に応用されています。

ブチルゴムの特徴

ブチルゴムの合成方法はイソブチレンにイソプレンを添加し、共重合により作られます。このゴムに特に有用な性質の一つが耐空気透過性であり、その割合は天然ゴムやスチレンゴム、ブタジエンゴムと比較すると約10分の1程度となります。この空気を透過させない性質により、ゴム内部に空気を貯め、外部へ透過による流出を抑えておきたいタイヤやボールなどに最適な原料となります。他にも、ブチルゴムは、耐熱性、耐老化性、耐薬品性、耐酸・アルカリ性、電気絶縁性に非常に優れており、以下のように多用な用途で用いられています。

  1.  耐熱性を期待した用途
    コンデンサーのパッキン、スチームホースの素材
  2. 耐候性、耐老化性を期待した用途
    建築用の防水素材、廃棄物処理池用のシート、接着剤
  3. 耐薬品性、耐酸・アルカリ性を期待した用途
    医薬品用のゴム栓、ゴム手袋、ゴムホース、工業用品
  4. 電気絶縁性を期待した用途
    電線被覆、絶縁テープ
  5. 耐空気透過性を期待した用途
    タイヤ、スポーツ用のボール

ブチルゴムのその他情報

1. ブチルゴムの欠点と対策

ブチルゴムは、弾性や加工性、耐油性の点では天然ゴムに劣り、他の合成ゴムとの相溶性が悪いため混合して新たな機能を有するゴム素材を開発することも難しいです。 このようなデメリットを解消するため、合成時のイソプレン量をコントロールすることで不飽和度を変更したり、粘度調整や老化防止剤の添加によってさまざまな種類のブチルゴムが合成されています。

2. ハロゲン化ブチルゴムについて

ハロゲン化ブチルゴムの構造

図2. ハロゲン化ブチルゴムの構造

ブチルゴムは加硫速度が遅く、他の高度不飽和ゴムと共加硫がしにくく、また、他のゴムや金属との接着性が悪いという特徴があります。この欠点を克服するために、ブチルゴム分子に塩素原子、臭素原子を導入したハロゲン化ブチルゴムが開発されました(図2)。これらのハロゲン化ブチルゴムは、分子内に反応性の高いハロゲン分子および二重結合を含むことから、一般的なブチルゴムよりも加硫速度が速く、その加硫度も大きい事が報告されています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu1944/28/10/28_10_616/_pdf/-char/ja
https://www.j-butyl.co.jp/product/product.html
https://www.sk-co-ltd.com/menu/silicone/silicone12_iir.html

フラットケーブル

フラットケーブルとは

フラットケーブル

フラットケーブルは、機器間配線用ケーブルの一種で、複数の心線を並列に束ねて平面状にしたケーブルです。

1本の心線は樹脂製の絶縁体で被覆された細い導線でできていて、ケーブルの数は10本程度から100本程度まで多種あります。幅が比較的狭いフラットケーブルはリボンケーブルと呼ばれることもあります。

フラットケーブルは複数の信号を一度に送ることができるため、パラレル・インタフェース機能を持つ機器を接続するために使われます。

フラットケーブルの使用用途

フラットケーブルは、複数の信号を同時に送るパラレル・インタフェース向きのケーブルで、コンピュータやその周辺機器、通信機器、事務機器など、パラレル・インタフェース機能を持つ機器同士の配線ケーブルとして使用されます。

フラットケーブルは平面状で柔らかく、折り曲げて配線することもできる反面、強度が弱くノイズが混ざりやすいという欠点があります。そのため、外部機器との配線ではなく、パソコン内部のハードディスク、ドライバ、ボードの配線など、電子機器の内部配線に使われます。 

フラットケーブルの特徴

フラットケーブルには、ブリッジ形、スダレ形、ツイストペア形など、さまざまなタイプがあります。

ブリッジ形フラットケーブルは、各心線が完全に融着された構造をしており、最も一般的なタイプのフラットケーブルです。

スダレ形フラットケーブルは、各心線が融着されている部分と融着されていない部分とが一定間隔で交互に存在する構造をしています。通常、非融着部の方が長く、ブリッジ形に比べて柔軟性のある配線ができるため、複雑な形状の筐体内での配線に適しています。

ツイストペア形フラットケーブルは、スダレ形の非融着部分を2心線ずつペアにして捻り合わせたツイストペア構造にしたフラットケーブルです。ブリッジ形やスダレ形に比べ、隣接心線からのクロストークやノイズに強いという特長があります。

また、スダレ形フラットケーブルを丸めてシールドを被せたタイプのケーブルもあり、丸型ケーブルと呼ばれます。丸型ケーブルは、フラットケーブルに比べ強度やノイズに強いため、電子機器内の配線だけでなく、外部機器間の配線にも使用できます。 

参考文献
https://jp.rs-online.com/web/c/cables-wires/ribbon-flat-cable/
https://www.okidensen.co.jp/jp/prod/cable/equip/
https://jp.misumi-ec.com/vona2/el_wire/E1405000000/E1405040000/

ベークライト

ベークライトとはベークライト

ベークライトとは、最も生産されている熱硬化性樹脂で、人工的に作られた最初の合成樹脂です。

別名として、フェノール樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂などがあります。ベークライトは、1872年ドイツのバイエルがフェノールホルムアルデヒドとの反応で発見したのが始まりです。

その後、1907年にベークランドにより工業化され、世界中に広まりました。

ベークライトの使用用途

ベークライトは熱、酸、油などへの耐性が高く、様々な用途に使用されています。具体的な使用用途は、以下の通りです。

1. 成形材料

成形材料は電気機器部品が最も多く、日用雑貨、自動車部品、通信機器部品が主です。

2. 積層品

積層品は、家電や電子機器に使用されているプリント回路用が用途の大部分を占めます。

3. シェルモールド

シェルモールドとは金属鋳造工法の一つで、自動車部品の鋳造で主に活用されています。この工法で用いる鋳型の原料がレジンサンドと呼ばれる珪砂とベークライトの混合物です。

4. 木材加工接着剤

木材加工接着剤合板、ハードボード、パーティクルボードの製造に使用される場合が多いです。その他、砥石、研磨具、ブレーキライニング、絶縁ワニス、塗料などにも使用されています。

ベークライトを使用した塗料は、耐薬品性やさび止め効果を持つ塗料となるため、厳しい環境での使用に耐えることが可能です。また、3Dプリンターの砂型の結合剤として使用する場合、強固な砂型とすることでより精密な寸法でプリントすることができます。

ベークライトの特徴

プラスチックは、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に分けられ、ベークライトは後者に該当します。熱硬化性樹脂は液状の原料が加熱により反応硬化して形作るものです。

一度成形したものは再加熱しても液状には戻らず、耐熱性の高い成形物を作ることができます。ベークライト2000年代後半以降、熱硬化性樹脂の中で国内生産数量が常に第1位となっています。

ベークライトのメリットは、電気絶縁性、耐熱性、難燃性、接着性、耐薬品性、耐酸性、断熱性などです。特に高い耐熱性は最大の特徴なので、この性能を応用した製品が数多く製造されています。

一方で、デメリットとして、アルカリに弱いことと、耐衝撃性が低いことが挙げられます。そのため、耐衝撃性については強化剤を添加し、改善する場合もあります。

ベークライトのその他情報

ベークライトの製造方法

ベークライトは、フェノールホルムアルデヒドを重合することで製造します。使う触媒によってノボラック、レゾールという2種類のベークライト前駆体が合成されます。

これらの前駆体から、架橋剤を追加して反応をさらに進行させることで、ベークライトができます。

1. ノボラック
酸触媒として塩酸しゅう酸などを用いて、フェノール、ホルムアルデヒドの混合物を沸点以上で1.5~3時間反応させます。これにより、付加反応及び縮合反応が繰り返され、フェノールがCH2基でジョイントされた直鎖状のポリマーができます。

反応後、生成した水や未反応フェノールを除去、反応槽から取出し冷却固化後、粉砕することでノボラックが得られます。これに硬化剤のヘキサメチレンテトラミンを反応させることで、ノボラックの分子間が架橋され、熱硬化性の不溶不融のベークライトになります。

2. レゾール
アルカリ触媒を使用し、ホルムアルデヒドがフェノールよりも過剰にいる状態で、80~100℃で1.5~3時間反応させます。これによりモノメチロールフェノール、ジメチロールフェノール、トリメチロールフェノールの混合物が生成し、これらが縮合したレゾールができます。

加熱加圧によりさらに反応を進めるとジメチロールフェノール、トリメチロールフェノール部分で架橋し、熱硬化性の不溶不融のベークライトになります。レゾールはアルカリ触媒とフェノール、ホルムアルデヒドのレゾールの反応は一般的にはベークライト成形製品加工の工程で行われます。

参考文献
https://shibayama.issp.u-tokyo.ac.jp/one_point/files/bakelite.html
https://i-maker.jp/blog/bakelite-8670.html#i-11

ホールカッター

ホールカッターとは

ホールカッター

ホールカッターとは、金属や木材、プラスチックなどの板状の材料から穴を切り抜く工具です。

円形の刃を持つものが一般的で、手動式や電動式、機械式などの種類があります。

手動式は、ドリルビットを使う場合に比べて穴あけの作業が容易です。電動式は、手動式に比べて切削力が強く大型の穴あけや硬い材料の加工に適しています。機械式は自動的に材料を送り込み高速で穴あけでき、またカッターの刃を交換して異なる直径の穴を切り抜けるため多様な加工に対応できます。

ホールカッターの使用用途

1. 木材加工

天井裏に配線を通すための穴あけ、キッチンやトイレの換気扇の取り付け用の穴あけなどが挙げられます。

2. 金属加工

自動車や航空機のパネルにボルトを通すための穴あけ、水道管やガス管の配管工事のための穴あけなどが挙げられます。

3. 建築・内装工事

配線や配管のための穴あけ、インテリア家具の取り付け用の穴あけなどが挙げられます。

4. 土木工事

柵や看板を固定するための穴あけ、道路標識の取り付け用の穴あけなどが挙げられます。

5. 医療機器

プラスチックや金属の器具への穴あけ加工などが挙げられます。

6. 製紙・紙加工

紙の穴あけ加工などが挙げられます。

ホールカッターの種類

ホールカッターには以下のようなものがあります。

1. 手動式

円形の刃を持ち、加工対象の素材を手動で切削するための工具です。手動式のため加工精度は機械式や電動式に比べてやや劣りますが、低価格で手軽に使用できます。

2. 電動式

電動式のホールカッターは、手動式に比べて切削力が強く大型の穴あけや硬い材料の加工に適しています。

3. 機械式

機械式のホールカッターは自動的に材料を送り込み高速で穴あけできます。生産現場での大量生産や、精密加工などに向いています。

4. コアドリル

コアドリルは、大径の穴を切り抜くためのホールカッターです。中心に取りつけたドリルビットで穴の中心を決め、周りを刃で切り抜く方式です。

5. 面取り用

面取り用ホールカッターは、穴あけ後の端面の処理に使用されます。刃先が角ばっており、切りくずを排出しながら端面を面取りするため加工面がきれいになります。

6. ステップドリル

ステップドリルは、段階的に穴を広げることができるホールカッターの一種です。通常のホールカッターが一度に一定の直径の穴を切り抜くのに対し、ステップドリルは直径が異なる複数のステップを持つドリルビットで、穴を段階的に広げられます。

ホールカッターの原理

一般的にホールカッターは、回転速度や進行速度などを調整することによって正確かつ効率的に穴あけできます。加工対象の素材の硬さや厚さに合わせて、適切な刃先や加工条件を選択することが重要です。

  1. 穴の位置決め
    穴の位置を決定し、加工対象の材料にホールカッターを接触させます。
  2. 回転
    ホールカッターの刃先を回転させます。
  3. 切削
    刃先が材料に切り込んで材料が切削され、切削された材料がホールカッターの内部に取り込まれ穴が形成されます。穴を必要な深さまで開けるため、必要に応じて深さ制限リングを使用します。
  4. 切りくずの除去
    穴が完全に開けられるまで刃先を進行させて穴開けが完了します。切りくずを除去し、ホールカッターを材料から取り外します。

ホールカッターの特徴

長所

刃先が回転するので高速な穴あけ作業が可能です。また刃先が円形であり正確に位置決めできるため、高精度な穴あけができます。

ホールカッターは切削刃に硬質素材を使用しているため、鉄やステンレス鋼などの硬い素材にも対応できます。一度に大きな穴を切り抜けられるため、従来のドリルビットよりも大口径の穴あけが可能です。また切削後の穴の端面は切削面に対して垂直であり、美しい仕上がりになります。

ホールカッターは深さ制限リングを使用することで一定の深さまでの穴あけが可能です (ストッパー機能) 。さらに刃先が取り外し可能なものが多く交換が容易であり、刃先が硬質な素材でできているため耐久性にも優れています。

短所

ホールカッターの強度には限界があるため、非常に大きな穴を切り抜けない場合や、ホールカッターの生じる振動が原因で一定以上の深さの穴を切削できない場合があります。

またホールカッターは一度に大きな穴を切り抜けますが、その際に穴の周囲にバリが発生することがあります。その場合はバリの除去が必要です。

ホールカッターのその他情報

下穴について

ホールカッターで穴をあける際に、下穴が必要な場合があります。下穴とは、刃先が入りやすくするためにあける小さい穴のことです。

下穴をあけることで切削時の振動を減らし、刃先の折損を防止でき、またホールカッターの刃先が材料にスムーズに入るため穴あけの精度と速度が向上します。ドリルビットやセンターポンチなどで下穴をあけます。

ポリノジック

ポリノジックとは

ポリノジックとは、レーヨンと同じ再生セルロース繊維なる素材です。

レーヨンを改良した繊維であるため、別名改質レーヨンとも呼ばれます。レーヨン自体は1884年に硝酸セルロースによる人口絹糸が開発されました。その後1905年には工業生産が始まり、現在でも多く使用されています。

ポリノジックは1962年ごろにレーヨンの機能を高めるため、開発が行われたとされています。

ポリノジックの使用用途

ポリノジックの使用用途は、基本的にレーヨンと同じです。

中でも夏物衣料に利用されることが多く、スーツや背広の裏地、夏用ウェア、ワンピース、下着類、ストールなどに使用されます。またポリエステルと混紡することによって風合いが良くなり、より夏らしさを表現できます。天然繊維と比較すると低価格であるため、様々な場面で使用されています。

ポリノジックの性質

ポリノジックの繊維構造は断面に特徴があります。通常繊維の断面は中空がありますが、ポリノジックは円形で詰まっており、レーヨンよりも強度が高くしわになりにくいです。

そのため、レーヨンの吸湿性、染色性、光沢性などの特徴を兼ね備えるだけでなく、以下のようなメリットも持っています。

  1. 寸法安定性
    伸びたり、縮んだりしにくいため、洗濯しても服が縮むことがありません。
  2. 強度が高い
    細い繊維径でも強度があるため、より繊細な生地を作ることが可能です。濡れた時の強度もレーヨンより高くなります。
  3. 汚れが落としやすい
    光沢はレーヨンと同等ですが、仮に油汚れが付着しても洗うことですぐに落とせます。

マイクロドリル

マイクロドリルとは

マイクロドリル

マイクロドリルとは、非常に細いドリルビットのことです。

主に電子部品や医療機器、宝石などの細かい加工に使用される部品で、非常に高い精度が要求されるため超硬合金などの硬度が高く耐摩耗性に優れた素材で作られています。

またマイクロドリルは、刃先が非常に細く尖っているため切削力が弱く、刃先が折れたり欠けたりしないように、非常に慎重な取り扱いが必要です。使用する材料によって適切な加工条件やクーラントの使用方法を選択する必要があります。

マイクロドリルの使用用途

1. 半導体製造

リードフレームの穴あけ加工、非晶質シリコンの穴あけ加工、キャパシターの穴あけ加工、チップ抵抗器の穴あけ加工、電解コンデンサーの穴あけ加工などが挙げられます。リードフレームとは、半導体パッケージにおいて、半導体チップを固定して外部の回路と接続するための金属フレームのことです。

2. メカトロニクス

小型歯車の穴あけ加工、歯車の歯形加工、マイクロミラーの穴あけ加工、モーターシャフトの穴あけ加工などが挙げられます。マイクロミラーとは、非常に小さな鏡のことで、微小な鏡面反射を利用して光信号を検出したり反射角度を制御したりできます。

3. 医療機器製造

関節部の穴あけ加工、ニードルの穴あけ加工、カテーテルの穴あけ加工などが挙げられます。

4. 自動車・航空機部品製造

シリンダーブロックの穴あけ加工、タービンの翼の穴あけ加工、ロータリーエンコーダの穴あけ加工などが挙げられます。シリンダーブロックとは、内部にピストンが動くシリンダーを収め、燃焼室やバルブ機構などの重要な部品が設置されるエンジンの主要な部品の1つです。

5. 宝飾品製造

宝石の穴あけ加工、時計の歯車の製造、アクセサリーの加工などが挙げられます。

6. 光電子工学

LEDの製造、光ファイバーの製造、光学レンズの製造などが挙げられます。

7. エレクトロニクス部品製造

基板の穴あけ加工、リードフレームの加工、コネクターの加工などが挙げられます。

マイクロドリルの種類

マイクロドリルを分類する場合,直径による分類、刃先形状による分類 (センターカット、2枚刃、3枚刃など) 、刃数による分類、材質による分類などの分類方法があります。マイクロドリルを材質で分類した場合,以下のような種類があります。

1. 超硬合金

超硬合金は、タングステンカーバイドなどの主成分を持つ合金であり、非常に高い硬度や耐摩耗性を持ちます。マイクロドリルの刃先には一般的に超硬合金が使用されます。超硬合金のマイクロドリルは非常に精度が高く、高い切削力を持っている部品です。

2. 高速度鋼

高速度鋼は、鉄とモリブデンクロム、バナジウムなどの合金元素からなる材料で、耐熱性や耐摩耗性に優れた材料です。HSSのマイクロドリルは、超硬合金よりも加工精度が低くなりますが、比較的安価であるため量産に向いています。

3. その他の材質

マイクロドリルの刃先には、他にもセラミックス、ポリクリスタルダイヤモンド (PCD) 、多結晶ダイヤモンド (PCBN) などの材質が使用されることもあります。これらの材質は、非常に高い硬度や耐熱性を持っており、超硬合金やHSSと比較しても優れた加工性能を発揮できます。

HSS(高速度鋼) とは、High Speed Steelの略称であり、一般的に金属加工用の工具や切削工具に使用される鋼材の一種です。

マイクロドリルの原理

マイクロドリルは以下のような過程で穴をあけます。

1. 切りくずの発生

マイクロドリルが材料に接触すると、刃先が回転しながら材料を削り取ります。この際、削り取った材料が切りくずとして発生します。

2. 切りくずの排出

切りくずはマイクロドリルのスパイラル (螺旋) 状の溝によって排出されます。このスパイラル状の溝は、切りくずを収集するためのスペースを確保する役割を担っています。

3. 穴の形成

マイクロドリルが回転しながら材料を削り取り、切りくずが排出されることで徐々に穴が形成されていきます。切削速度や送り速度を調整することで穴の形状や加工精度を調整できます。

マイクロドリルのその他情報

1. 加工精度

マイクロドリルは、超硬合金やダイヤモンドなどの非常に硬い材質を使用することで非常に高い加工精度を実現できます。鉄やステンレス鋼などの金属から、セラミックスやガラスなどの非金属材料まで、様々な材料を加工できます。

マイクロドリルに使用される超硬合金やダイヤモンドは、非常に硬くて摩耗や変形が起こりにくいため、長時間にわたって高い加工精度を維持でき、また刃先が鋭利であるため非常に小さな穴を正確にあけられます。

超硬合金やダイヤモンドは熱伝導率が非常に高い材料です。よって刃先部分の熱が効率よく放熱されるため加工時の熱影響が少なく、被削材の変質や劣化を防げます。また、耐腐食性が高いため、化学的な攻撃や錆びなどの影響を受けにくく加工品の品質を維持できます。

2. 剛性

マイクロドリルの刃は非常に細いため、剛性が低い場合は刃先が曲がったり震動が発生したりして加工精度が低下する可能性があります。しかし、マイクロドリルには超硬合金やセラミックスなどの高硬度材料を使用することで、刃の剛性を向上できます。

3. 対応材質

マイクロドリルは、超硬合金、高速度鋼、セラミックス、PCD、PCBNなど、複数の材質に対応できます。

4. 切削液の使用

マイクロドリルは非常に細い刃を持っているため、切削時に発生する熱が刃先に集中して刃先の摩耗や変形を引き起こす可能性がありますが、切削液を使用することで熱の発生を抑制して刃先の寿命を延ばせます。切削液には冷却効果や潤滑効果があり、切削粉の除去や表面の清浄化などにも効果的です。

ラックギア

ラックギアとは

ラックギア

ピニオンギアと組合わせて使用され、入力軸に取り付けたピニオンギアと噛み合わせることで回転運動を直動運動に変えることができます。歯の形状はピニオンギアの歯の形状と同一形状になり、平歯だけでなく、はすば歯車の形状をしたヘリカルラックもあります。

同じような機構としてはボールねじがありますが、応答性や位置決め精度を考慮して設計・使用することで、低コストでオーバースペックにならない運用をすることができます。

ラックギアの使用用途

ラックギアは、回転運動を直動運動に変えるためにピニオンギアとの組合せで使用されます。

回転運動を直動運動に変えることができるため、モータなどの回転を直動運動に変えて送り装置などに用いられます。

また、逆にラックギアの直動運動をピニオンギアの回転運動に変えることもできるため、自動車の前後輪の駆動を伝えるために、シャフトの両端にラックギアを取り付けて、離れた位置にある軸に動力を伝えるために用いることもできます。

ラックギアの原理

ラックギアは、歯車の歯を直線状に歯が並べたものですので無限大の大きさの直径を持つ歯車ともいうことができます。そのため、減速比という概念が無く、基本的に減速比は1です。また、理論的には歯の数に制限がなく、ラックの長さやモジュールなどによって決められます。しかし、長さが長くなるほど曲がりや変形を小さくすることが困難になります。曲がりの大きさは精度等級で定められてます。

使用するラックギアが長くなればなるほど、1本での運用は困難になります。その際は、何本かのラックギアをつなぎ合わせて使用することになりますが、つなぎ目でのピニオンギアとの嚙み合わせがスムーズに行われるかを注意する必要があります。また、固定時にはボルトの穴などをラックギアに追加工することになりますが、追加工する位置はラックギアの端になることが多く、つなぎ合わせる箇所の近くを加工することになるため、加工時の応力によるラックギアの変形にも注意が必要です。

参考文献
https://www.khkgears.co.jp/gear_technology/pdf/gearabc_c.pdf
https://www.khkgears.co.jp/catalogs/pdf/racks.pdf

リヨセル

リヨセルとは

リヨセル

リヨセルとは、木材の1種であるユーカリを主な原料として作られる繊維です。

ナイロンポリエステルのような石油を原料として作られた合成繊維と異なり、再生繊維と呼ばれる繊維の1種になります。原料が天然由来原料であることや、繊維を作る際に使用している溶剤を99%回収、リサイクル可能なことから、地球環境にやさしい繊維としても知られています。

天然原料であるにも関わらず繊維の断面が円形で、繊維にかかる力が均等になるため、強度が強く耐久性が高いのが特徴です。

リヨセルの使用用途

ソフトな風合いと光沢感を持つことに加え、洗濯しても縮みにくいことから、シャツやワンピースなどの衣類、ストール、寝具カバーなどに利用されています。

工業用途では、合成皮革と組み合わせてシートやフィルター、電気絶縁紙などが代表的です。

リヨセルの性質

リヨセルは化学式で表すと、セルロース (C6H10O5) nです。セルロースを主成分とする繊維には、リヨセルの他に、綿、レーヨン、キュプラなどがあります。化学構造は同じですが、綿の重合度は2,000〜3,000、レーヨンは約300、キュプラは約500、リヨセルは約650であることから、セルロースの重合度が異なります。

重合度は高い方が機械強度が強く、耐熱温度が高いです。また、主成分がセルロースであるため、自然界の微生物により分解される生分解性という性質を持ちます。レーヨンやキュプラのような他の再生繊維と比較して、機械強度が強く、湿潤時の強度は、セルロース繊維の中で最も強いことが特徴です。

強度が高いことから洗濯後の収縮が少なく、寸法安定性が高いです。繊維の断面は円形で、独特の風合い、反発性、弾性力を持ちます。また、表面は平滑で光沢感があり、風合いも良く、シルクに例えられることもあります。

リヨセルの特徴

リヨセルは強度や耐久性に優れているだけでなく、繊維が柔らかいため風合いがソフトで光沢感があるという特徴があります。コットンと構造が似ているころから、速乾性、吸湿性にも優れており、静電気が発生しにくいです。

一方で、濡れると風合いが硬くなったり、洗濯時の摩擦によって、毛羽立つ可能性があります。

リヨセルのその他情報

1. 分類

リヨセルは、テンセルと呼ばれることがありますが、テンセルはオーストラリアのレンチング社の登録商標であることから、繊維の種類としてはリヨセルに統一されます。また繊維表示名は再生繊維 (リヨセル)となります。

2. 製造方法

リヨセルは、有機溶剤にユーカリの木材を溶解し、液中で紡糸する湿式紡糸という方法で製造されます。ユーカリの木材をパルプ状に分解し、これをN-メチルモルフォルリン-N-オキサイド (NMMO) に溶解し、液体状になったものを、有機溶剤中で繊維状に再生します。

最後に使用した溶剤を洗い流すことで、リヨセル繊維を製造可能です。パルプを溶解させるために使用した溶剤は、洗浄工程で回収され、その後のリヨセル繊維の製造へとリサイクルされます。これによりできるだけ廃液の出ない環境に優しい繊維製造が可能になります。

3. 洗濯方法

水に濡れると固くなる性質に加え、濡れた状態で摩擦を受けると毛羽立つことから、手洗いや押し洗いが推奨されています。また、脱色しやすいため、洗濯ネットや中性洗剤を用いることで、品質を維持できます。

耐熱温度は75℃付近なので、アイロンを使用する際は75℃以下の中温が望ましいです。乾燥機は温度が高くなり、摩擦が発生するため、使用はおすすめできません。

4. 今後の需要

ファッション業界では、天然原料の利用に加え、高い性能を持つこと、環境負荷の少ない製造方法への転換などが推進されています。リヨセルは天然由来原料であり、製造工程で利用する有機溶剤をほぼ100%再利用できることから、今後も需要が高まると予想されています。

また、原料に利用されるユーカリは、成長が早く、化学肥料、殺虫剤などを使用せずに生育可能なため、環境負荷の少ない木材としても注目されています。

ローラコンベヤ

ローラコンベヤとは

ローラコンベヤ

ローラコンベヤ (英: roller conveyor) とは、筒状のローラを進行方向に直角に並べ、搬送物をその上を転がして運ぶ搬送機器です。

通常ものを運ぶ際は、まず荷物を持ち上げるためにかなりの力が必要です。ローラコンベヤを使用すれば、ローラを転がすだけで荷物を移動できるため、荷物の数が多いほど運ぶ時間を短縮できるメリットがあります。

ローラコンベヤの使用用途

ローラコンベヤの使用用途として多いのは、工場など一度に大量生産される場合や物流関係などです。荷物を一定のスピードで運ぶことができることは、運搬作業においてかなりの工数削減になります。

ダンボール箱等硬い製品の搬送に向き、柔らかい物の搬送は困難です。柔らかい物は、ローラとローラの乗り継ぎがうまくいかずローラの下に入り込む可能性があります。

ローラの回転力で荷物を推進させるため、ローラを使わない場合に比べ、作用する摩擦を10%程度に削減できます。さらに、人や機械で運搬するよりも安全に運搬できるため、工場の安全を確保するためにも必要な機器です。

ローラコンベヤの原理

ローラコンベヤの構成要素は、ローラ、軸、軸受、シール装置、フレームなどです。ローラは軸の周りを軽く回転できるように、ボールベアリングなどで支持されます。軸受部にシールを設けることで、使用環境に対応できるようになります。

ローラには、ストレートローラ、溝加工付きローラ、テーパーローラなどがあります。搬送物はローラ2本以上で支持するように、ローラのピッチを選定します。電動駆動のコンベアの駆動方法は、ローラにモーターを内蔵する方式、チェンやベルトでローラを駆動する方式などです。

ローラコンベヤの特徴

1. 電力が不要

フリーコンベアは、駆動用の電力が不要で、低コストのコンベアです。水平設置して手押しで搬送したり、傾斜設置で自重搬送したりします。

2. 材質の種類が多い

ローラの材質は、スチール、アルミニウム、樹脂などがあり、ローラ径・幅・ピッチ・軸受などが選択可能です。軽荷重用から重荷重用まで、形状も直線、曲線があり、駆動は手押し、傾斜自走、電動駆動など用途に応じて自由な設計ができます。

3. 無公害

塗装、表面処理、材質などは、EUの特別有害物質を含まないタイプもあります。環境に配慮したコンベアです。例えば、ローラの表面処理はノンクロム、ベアリングは3価クロメート、フレームは粉体塗装、ボルト・ナットは3価クロメート処理としています。

ローラコンベヤの種類

ローラコンベヤには、フリーコンベヤと駆動コンベヤの2種類があります。大きな違いは、荷物を運ぶための動力をモーターに頼っているか否かです。

ローラコンベヤに使用されるローラは、鉄製、アルミ製、樹脂製など様々な素材できたローラが使用され、運搬する荷物の重さなどによって使い分けられます。

1. フリーコンベヤ

フリーコンベヤは、グラビティコンベヤとも呼ばれます。ローラ滑り台のように重力によってローラを回転させて、荷物を搬送するものです。電力を使用しないため安価で、メンテナンスコストも有利なコンベアです。軽量の搬送物であれば、水平に設置して手押しで運搬することもできます。

コンベアを傾斜させて自走させる場合は、傾斜の角度設定が重要です。搬送物の種類や重量によって傾斜を変えます。例えば、プラスチック箱1~3kgの場合は5cm/m程度、10~30kgの場合は2.5cm/m程度の傾斜にします。また、鉄板で重量が300kgの場合は1.5cm/mの傾斜が適しています。

2. 駆動コンベア

一方、駆動コンベヤは、モーターによってローラを回転させることで荷物を搬送します。どちらのローラコンベヤも安定的に荷物を移動させることができますが、筒状のものを一定の距離に配置してその上をすべることで移動させるため、ローラの隙間に落ちてしまうような細かなものの搬送には不向きです。

コンベアの駆動方法は、チェン駆動、モータ内蔵ローラ、アキュームローラ、Vベルト駆動などです。チェン駆動は、ローラにスプロケットを付け、モータからチェンを使用して駆動する方式で、大きな力を必要とする場合に適します。

モーター内蔵ローラは、ローラ自体が回転するもので、比較的小さい駆動力です。また、アキュームローラは、チェン駆動コンベアの場合、ローラとスプロケットが滑る構造にして、搬送物の渋滞を解消させる方式です。

参考文献
https://www.raku-logi.com/2016/01/561