ビニロン

ビニロン(vinylon)とは

ビニロンとは、ポリビニルアルコールアセタール化して作られた合成繊維のことを言います。

ビニロンは日本で初めて開発された合成繊維で、その歴史は70年以上になります。また、世界で初めて開発されたナイロンに続き、世界で2番目に開発された合成繊維でもあります。

ビニロンの特徴

ビニロンの特徴としては、繊維強度が高く摩擦に強いことや吸湿性に優れていることなどが挙げられます。合成繊維の多くは吸湿性が高くないため、この点でビニロンは際立った性質を持っていると言えます。また、耐候性、耐薬品性にも優れ、工業・産業の多方面で使用されています。ビニロンは炭素、水素、酸素で構成されているため、燃焼時にダイオキシンやアンモニアといった有害物質を発生させません。

しかし、耐薬品性に優れる反面、染色しにくいという特徴ももち、衣料用の繊維として使用しづらいという側面があります。綿に似た風合いを持つものの、しなやかさに欠ける(ごわごわする)という特徴は短所でもあります。また、湿った状態で熱に触れると色が変わるなどのデメリットもあるため、熱がかかる場所や見た目が気になる場面での使用には向きません。

ビニロンの使用用途

ビニロンは歴史も長く安定生産しやすいことから様々なシーンで使用されます。

基本的に水に強く耐久性の高い繊維になりますので繰り返し使用されるものに向いており、身近なものでいえばロープや魚網にもよく使用されます。

耐薬品性に優れ、アルカリにも強い耐性をもつため、コンクリート補強用としても利用されています。雨風にも強いため、土木建築や農業用寒冷紗など、耐候性が求められる用途に使われることがあります。

一昔前までは吸湿性が高いこと、綿に似た風合いを持つことから衣服への使用もありましたが、アイロン時の変色などを理由に使用されるシーンは減っていきました。

現在、ビニロンが衣服として使用されているのは、長時間汗をかくような現場で仕事をする際の作業着や、レインコート、一部の学生服などです。

ビニロンの製法

ビニロンは合成繊維になりますので、基本的には化学物質を人工的に重合させることによって作られます。

ポリビニルアルコールとホルムアルデヒドからビニロンの合成

まず、石油と天然ガスから作られたエチレンから酢酸ビニルを合成します。この酢酸ビニルを付加重合させたのち、水酸化ナトリウムによる、けん化のステップを経ることでビニロンの元であるポリビニルアルコールが作成されます。

ポリビニルアルコールは分子中に親水性の高いヒドロキシ基(-OH基)を多く持つために水に溶けやすく、繊維として利用しにくいです。

ここから、ポリビニルアルコールを紡糸原液とし、ホルムアルデヒドを用いてアセタール化をさせることでビニロン繊維が作られていきます。紡糸の方式は、乾式と湿式に分けられます。乾式は、原料を熱で気化する溶剤に溶かした状態で、熱雰囲気中で口金から押し出して溶剤を蒸発させて繊維状にする方法です。湿式は、原料を溶剤に溶かした状態で、凝固浴と呼ばれる溶液中で口金から押し出して化学反応させたのち、溶剤を除去して繊維状にする方法です。

こうしてヒドロキシ基(-OH基)の割合を減らすことで、水に溶けず、適度な吸湿性を持つ合成繊維となります。

その他のビニロン

通常のビニロンは水で分解されることはありませんが、ビニロンの中には水溶性ビニロンと呼ばれる珍しい繊維が存在し、これは水に溶ける特徴を持っています。この繊維は通常のビニロンよりも、ヒドロキシ基(-OH基)が多く残存しています。

この素材は一時期衣類業界で革新的であるとかなり有名になり、レースのような織りにくい生地でも水溶性ビニロン繊維を混ぜ込んで織りこむことで、織り込んだ後で水溶性ビニロンだけを分解し、レースだけを残すというような方法で、他ではできない素材で衣服の作成ができるとこぞって使用するメーカーが増えました。このようなレースを、化学的に作られたレースという意味でケミカルレースと呼ぶことがあります。

参考文献
https://examist.jp/chemistry/synthetic-polymer/biniron/

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