モーターベース

モーターベースとは

モーターベースとは、モーターを取り付けるための台座や構造物です。

工業用途や家庭用途など、さまざまな場所で使われる機械において、モーターを安定して取り付けるための基礎となる部品です。モーターベースは、モーターを安定して取り付けるための台座として機能します。これにより、モーターが適切な位置に固定され、安全に運転することが可能です。

また、振動や衝撃を吸収することで、モーターの寿命を延ばす効果もあります。モーターの取り付けと取り外しも容易に行えるように設計されています。したがって、メンテナンスや修理作業が迅速かつ簡単に行うことが可能です。モーターの交換が必要な場合にも、ベースを再利用して新しいモーターを簡単に取り付けることができます。

一部のモーターベースは、可動式のデザインです。これにより、モーターの位置を微調整したり、ベルトの張りを調整したりすることもできます。機械の動作や設置場所に合わせて、適切な位置にモーターを配置できるようになります。

モーターベースの使用用途

モーターベースは、さまざまな産業や分野で幅広く利用されています。以下はモーターベースの使用用途一例です。

1. 工業機械

製品や物資を移動させるための、コンベアにも電動モーターが組み込まれています。モーターベースは、コンベアのドラムやローラーにモーターを取り付ける部品です。

また、工業用ファンは空気を循環させたり排気したりするために電動モーターを使用します。モーターベースはファンの羽根軸に取り付けられ、ファンが効果的に運転することを支援する部品です。

2. 家電製品

家電製品にも、モーターベースが使用されています。洗濯機やエアコンなど、使用される機器はさまざまです。これらの製品の動力源となる電動モーターを取り付けるために、モーターベースが必要となります。

3. 自動車産業

自動車のドアに取り付けられているウィンドウ昇降機構にも、電動モーターが使用されます。モーターベースはウィンドウ昇降機構のモーターを固定し、ウィンドウのスムーズな昇降を確保するための部品です。

また、自動車のシートの位置を調整するために電動モーターが使用される場合も多いです。シートの前後移動や背もたれの角度調整を行います。モーターベースはこれらのモーターをシートに固定し、快適な調整を実現します。

モーターベースの原理

モーターベースの原理は、モーターを取り付ける際に提供される安定性と支持のための基本的な原則に基づいています。モーターベースは、モーターを安定して取り付けるための台座として機能します。モーターは機械の動力源として働くため、安定して配置されることが重要です。モーターベースはモーターの重量を支え、モーターが振動や動作によって動かないように固定します。

また、モーターを正確な位置に配置することで、機械の動作に影響を与えることなく、正確な動作を実現します。特に精密な機械やロボットなどでは、モーターベースの正確な設置が重要です。

モーターベースは耐久性が高く、長期間にわたって安定した性能を提供するように設計されています。適切な材料と構造を使用することで、機械の安全性と信頼性を確保します。

モーターベースの選び方

モーターベースを選ぶ際には、いくつかの重要な要素を考慮する必要があります。以下はモーターベースの選定要素一例です。

1. 材質

モーターベースの材質は、使用環境やモーターの重量に適している必要があります。最も多いのは鋼鉄製で、高い強度と耐久性を持ち、重いモーターに最適です。腐食環境や特殊環境での使用の場合は、ステンレス鋼が使用されることもあります。

樹脂製やアルミニウム製のモーターベースも販売されています。軽量である点が特徴で、小型のモーター・装置に対して有利です。

2. モーター寸法

取り付けるモーターの寸法に適合している必要があります。モーターの外形寸法や取り付けボルトの配置などを考慮して、適切なモーターベースを選ぶことが重要です。

また、モーターの重量を考慮して、適切な耐荷重を持つモーターベースを選択します。

3. スライド機能

一部のモーターベースは、スライド機能を備えています。これにより、モーターの位置を微調整したり、ベルトの張りを調整したりすることが可能です。スライド機能が必要な場合は、適切なスライドタイプや調整範囲を持つモーターベースを選びます。

フィードスルーコンデンサ

フィードスルーコンデンサとは

フィードスルーコンデンサとは、電子回路を構成するフィルタ素子の一種で、フィードスルー接続を行うコンデンサのことです。

フィードスルー接続とは、ノイズを除去したいラインのパターンをカットし、その間に部品を挿入する方法です。広範囲の周波数へのノイズ対策としてよく用いられます。

フィールドスルーコンデンサは、3端子を持つコンデンサが一般的で、リードタイプやチップタイプがあります。貫通コンデンサやEMIフィルタとも呼ばれます。

フィードスルーコンデンサの使用用途

フィードスルーコンデンサは、ノイズカットフィルタとして、電子機器の電源ラインなどに用いられます。近年、電子機器は省電力化による低電圧化・高周波化が進み、ノイズ対策の重要性も高くなってきています。

フィードスルー接続は、電源ラインに直列に貫通させて接続させることが一般的です。電源ラインに直列に接続させるため、デカップリング用として優れたノイズ除去効果があります。デメリットとしては、チップ内に直接電流が流れるため、素子の定格電流などの制限を受けることです。

フィードスルーコンデンサの原理

一般的に用いられるコンデンサの一つとして、チップ積層セラミックコンデンサなどがあります。このようなコンデンサは2端子のコンデンサです。

薄い誘電体のシートを挟み、内部に電極が積層されている構造です。静電容量を確保する構造ですが、内部にはわずかなインダクタンス成分が残ります。そのため、高周波になっていくと残留インダクタンスが無視できなくなり高周波特性の低下が起こります。

フィードスルーコンデンサなどの3端子コンデンサは、通常のコンデンサに加え、部品の両側にグランド端子を設けています。誘電体を挟んで直接接続する電極と、グランド電極とを交互に積み重ねる構造です。これによりLCのT型フィルタの構成をとる形になり、グランドの電極が短い距離で接続されるため、インダクタンス成分による影響が小さくなります。

そのため、一般的なコンデンサと比べてインダクタンス成分の影響が小さく、高周波領域まで性能が低下せずノイズを除去するのに適した部品構造です。

参考文献
https://article.murata.com/ja-jp/article/basics-of-noise-countermeasures-lesson-5
https://www.maruwa-g.com/products/electronic-parts/emc-cat4.html
https://product.tdk.com/ja/techlibrary/solutionguide/3tf04.html

リニアセンサー

リニアセンサーとは

リニアセンサー (英: linear sensor) とは、直線の変位を測るセンサーです。

別名として、位置センサー変位センサー測長センサーレーザーセンサー、ワイヤーエンコーダ、リニアエンコーダ、リニア測定センサーなどが挙げられます。測定の原理で区別する場合、レーザ変位センサー、測長センサー、渦電流式の変位センサー、接触式の変位センサー、電磁誘導型センサー、カメラ方式センサーなどがあります。

リニアセンサーの使用用途

リニアセンサーは、半導体や液晶、電機、家電、自動車、加工、建設機械、自動倉庫、排水設備、薬品・食品・包装、医療など、使用される分野は多岐に渡ります。

1. 半導体や液晶の製造装置

半導体や液晶の製造装置では、駆動ステージの位置を検出するためにエンコーダやカメラ方式センサーが用いられます。

2. 食品の製造工場

食品の製造工場では、加工食品の数量検査や、成型品の高さを検出したりする際に使用されます。

3. 建設機械や自動倉庫

建設機械や自動倉庫などでは、正確な位置決めにに使用されています。

4. その他

排水設備では開度測定に、医療ではCTや手術台の正確な位置、高さ計測に使われます。変位や位置を測定できることから、有無検出や位置決めする際の検出、検査や計測、監視や制御の分野に有用です。

リニアセンサーの原理

リニアセンサーは様々な種類があり、それに応じ原理が異なります。

1. 非接触式変位測定

非接触式の変位測定には、リニア位置センサー、レーザーセンサー、リニアエンコーダ、カメラ方式センサーなどがあります。

リニア位置センサー
磁歪方式や電磁誘導式が使われます。磁歪方式の場合は磁歪線に電流パルスを流すと円周方向に磁場が作られ、マグネットを非接触で磁歪線上を動かすことによるねじり歪を測定する方法です。ねじり歪は磁歪線を超音波で伝播するので、この超音波の伝播時間を計測して、アナログやデジタル出力にします。

レーザーセンサー
レーザー光を対象物にあて、反射した光を受光部で受けることで位置や距離の測長を行います。発光から受光までの時間や受光した光の角度変化から位置や距離、対象物の変位量の検出が可能です。

リニアエンコーダ
リニアセンサーとして用いられるリニアエンコーダの場合、物差しとなるスケールにスリットが刻まれています。ヘッドから発光し反射する光をパルスで検出する光学式や磁気の変化を用いる磁気式などがあります。

カメラ方式センサー
カメラ方式センサーは、位置、速度および長さを非接触で測定できます。取付けられたバーコードラベルに基づいて現在位置を検出し、基準尺度として使用して測定します。最長10kmの長さを0.15mmの精度で位置決め可能です。

2. 接触式変位測定

接触式変位測定には、リニアポテンショメータ、ワイヤエンコーダなどがあります。リニアポテンショメータは、抵抗体とブラシを使用して、機械式に変位を測定します。出力は電圧です。

また、ワイヤエンコーダはワイヤ機構とエンコーダで構成し、ドラム回転数を測定します。

リニアセンサーの特徴

リニアセンサーは、次のような種類と特徴があります。

1. 非接触式リニア位置センサー

ブラシが無く、非接触タイプの変位センサーです。位置検出は電磁誘導方式と磁歪方式があります。特徴は、機械的な接点が無いので長寿命で、高精度・高速測長が可能です。

2. 接触式リニア位置センサー

ブラシがあり、機械的位置に比例した出力が得られる変位センサーです。ブラシの摩耗で寿命は比較的短いが、コスト面でメリットがあります。

3. レーザーセンサー

レーザー光を対象物に当て、反射光を受光部で受けて、位置や距離を検出する変位センサーです。特徴は、小型・軽量コンパクト、非接触で測定可能なこと、及び高速・高精度測定、微小物体も測定できることです。

欠点は汚れや埃に弱く、透明体や鏡面体は検出しにくいことです。また、蛍光灯の光などの外乱光で誤差が出やすく、チャタリングが発生する場合があります。

4. ワイヤーエンコーダ

ワイヤーエンコーダは、ワイヤーの長さを検出する変位センサーです。耐環境 (水・油・埃など) に強いですが、ワイヤーが摩耗した場合は交換が必要です。

5. リニアエンコーダ

リニアエンコーダは、光学式又は磁気式センサーで、高精度、高速計測が可能です。光学式のセンサーの場合は、汚れなどで誤計測する場合があります。

参考文献
http://novotechnik.jp/liner_sensor_type/
https://www.santest.co.jp/ja/product/use/linear9.php
https://www3.panasonic.biz/ac/j/service/tech_support/fasys/tech_guide/measurement/index.jsp

オーディオアナライザ

オーディオアナライザとは

オーディオアナライザとは、音質性能を定量的に評価するために、音の歪み率や周波数特性、S/N比などの諸々の項目を測定できる機能を持った測定器です。

例えば、音の歪み率を測定するには、低歪み発振器やフィルタ、周波数カウンタなどが必要になります。一般的に、これらの装置を組み合わせれば、周波数特性やS/N比などを含め測定可できます。オーディオアナライザは、これらの音質性能評価に使う装置を1台にまとめたものです。

最近では、パソコンを用いた歪み率を測定できるアプリケーションなどもあります。

オーディオアナライザの使用用途

オーディオアナライザは、オーディオアンプやオーディオシステムなどのオーディオ向け機器の音質特性の評価などに用いられます。具体的には、スピーカーやヘッドフォンのテストや、オーディオアンプ・イコライザなど様々なオーディオ機器の周波数特性評価、ステージの音響測定、各種音響試験などです。

オーディオアンプにおける歪み解析にはオーディオアナライザを用いますが、オーディオアンプにおける歪みには様々な要因が含まれます。具体的には、アンプ自体の非直線性に起因するものや、残留ノイズによって歪が起きてしまうもの、スイッチング歪みによるもの、高調波成分によるものなどです。

そのような音の歪みの発生要因の解析などにも、オーディオアナライザを用います。

オーディオアナライザの原理

オーディオアナライザは、音を正確に測定して定量的な性能指標に焼き直すために、音の周波数帯域特性に応じたノイズフィルタ機能を有しています。また、歪みを正確に測定解析するための発振器と測定した音の信号解析に関する演算機能を用いています。

一般のオーディオアナライザには発振器と歪み率計が備えられており、各帯域に応じてディジタルフィルタを構成して、ノイズを除去した歪みを測定できるものが多いです。オーディオアナライザの多くの製品は、信号処理部にDSPを用いており、アベレージングを用いたノイズ除去機能や、高調波分析フィルタなどの機能を有しています。

オーディオアナライザでは、混変調の歪み測定を行えるものもあります。混変調の歪み測定の手法としては、SMPTE方式とCCIF方式があります。

SMPTE方式は、周波数の離れた2つの混合波を非測定物に加えて、その高調波の両側に発生する歪みを測定するものです。一方で、CCIF方式はSMPTE方式に対して、お互い近接した2つの周波数を同一振幅で用いて、2つの周波数の差の信号で発生する歪みを測定します。

オーディオアナライザのその他情報

1. オーディオアンプの歪み率測定

オーディオアンプを自作すると、重要な特性である歪み率を評価したくなります。実際評価するためには、低歪の発振器と急峻なフィルタが必須となり、ここで活躍するのがオーディオアナライザです。

一般的な歪み率評価の手法としては、低歪の発振器からの信号波形をオーディオアンプに入力し、出力波形についてアッテネータを介して値をそろえてかつ基本波除去のフィルタを通して高調波とノイズ成分を測定する方法が挙げられます。

アンプ特性としてはもちろん低い歪み率が望ましいですが、混在しているノイズ特性や高調波成分を考慮した上で、LPFなどの帯域幅の測定条件を揃えることが重要です。

2. パソコンを用いた歪み率測定

Windows PCとUSBインターフェイスがあれば、以下のソフトの活用で歪み率の評価が可能です。

  • WaveGene (信号発生源)
  • WaveSpectra (測定用ソフト)

これらのソフトは、オーディオ関係者の間では有名なフリーソフトであり、優れたオーディオ解析ソフトです。PCが発生させたサイン波をかなりの低歪み率まで評価可能な特徴を有しています。

特にWaveSpectraは、オーディオ波形の高調波成分を分解解析することが可能です。実際の音楽ソースの周波数スペクトラムを可視化できます。

参考文献
https://www.jemima.or.jp/tech/3-06-03.html

グランドパッキン

グランドパッキンとは

グランドパッキン挿絵

グランドパッキン (英: Gland Packing) とは、回転運動や往復運動を行うシャフト (軸) の外面に巻き付けるように取り付け、機械や設備内外を封止するためのシール部材です。

機械や設備のシャフト貫通部分の軸封に用いられています。グランドパッキンは、JIS B0116パッキン及びガスケット用語において、「断面が角形又は丸形で,スタッフィングボックスに詰め込んで用いるパッキンの総称」と定義されています。

グランドパッキンは、完全な軸封ではなく若干の漏れを伴うため注意が必要です。ただし、ポンプなどにおいては、軸とグランドパッキン間の漏れが、グランドパッキンの潤滑と冷却に必要な場合があります。

グランドパッキンの原理

グランドパッキン原理は、グランドパッキン内面 (シャフト側) がシャフト外面に、またグランドパッキン外面 (ハウジング) 側がスタッフィングボックス内面に密着することで、それぞれの間の隙間を埋め接触する面圧で流体の漏れ防止します。詳細は下記図1を参照してください。

グランドパッキン_図1

図1. グランドパッキンの原理

上記の面圧は、ナットを締め付けることでパッキングランド (パッキン押さえ部品) がグランドパッキンが押されて、グランドパッキンが内外径方向に広がることで発生します。ナットを強く締め付ければ面圧も高くなります。

締め付けが強すぎると密着による摩擦抵抗が高くなり過ぎ、回転軸や往復動軸に大きな負荷がかかります。機器の運転に支障をきたすことがあるため、注意が必要です。しかし、締め付けが弱いと流体が漏洩しやすくなります。

グランドパッキンの漏洩には、下記の3つがあります。漏洩の流れは上記図1を参照してください。

  • 接面漏れ グランドパッキン内径側とシャフト外径側を流れる漏洩
  • 背面漏れ グランドパッキン外径側とスタフィンボックス内径側を流れる漏洩
  • 浸透漏れ グランドパッキン内部で主に編組パッキンの編み込みの隙間を流れる漏洩

グランドパッキンの使用用途

グランドパッキン_図2

図2. グランドパッキンの使用例

グランドパッキンは、回転や往復運動をする機械や設備で、シャフトがハウジングやケーシングなどを貫通して外部へ突出している場合に使用されています。機械や設備内部のオイルの流体やガスなどの気体が、外部に漏れることを防止するための部品です。グランドパッキンの使用例は、上記図2を参照してください。

グランドパッキンを、シャフト貫通部のシャフト外周に巻き付けるように、ハウジングやケーシングのスタフィンボックス (パッキンを収納する箱体) 内に挿入します。グランドパッキン内面をシャフト外面により強く密着させるために、パッキングランド (パッキンを押えて締め付けるための部品) 部のナットを締め付けることで、グランドパッキンを押し込みます。

グランドパッキンの種類

グランドパッキン_表1

図3. グランドパッキンの種類と主な材質

グランドパッキンの特徴は、軸封部としては比較的安価であり、メカニカルシールなどと比較して構造が簡単なことです。それぞれ種類によって特徴があり、使用方法や使用環境も異なるため、製造者のカタログや仕様書、取扱説明書で確認した上で選定することが重要です。

グランドパッキン_図5

図4. グランドパッキンの種類

一般的に市販されているグランドパッキン (積層パッキン以外) は、ひも状でらせん状に巻かれた状態になっています。そのため、シャフトとスタフィンボックスの寸法に合わせ、必要な長さに切断して挿入し使用します。また、ひも状のパッキンを切断し使用する以外に、シャフトとスタフィンボックスの寸法に合わせて、あらかじめリング状に成形したものを製作することもあります。

成形品を使用することで、パッキン挿入の作業性やシール性も向上します。以前はグランドパッキンパッキンの材質としてアスベストパッキン (石綿含有シール材) が多く使用されていました。しかし、飛散したアスベスト (石綿) を吸引して健康被害を及ぼすことから、現在では一部の例外を除いて、労働安全衛生法により、「石綿含有製品の製造等」は全面的に使用が禁止されています。

グランドパッキンのその他情報

1. グランドパッキンの使用本数

通常、グランドパッキンは1本だけで使用せず、何本 (何段) か重ねて使用します。また、上図のようにシールリング (密閉用パッキン) を数本と、ヘッダーリング (はみだし防止用パッキン) を組み合わせて使用することで、より確実な封止が可能になります。

グランドパッキンの本数 (段数) や、パッキンの材質や密閉すべき流体などの圧力などによって異なるため、パッキン製造者の製品仕様書や取扱説明書などを参考に決定します。

2. グランドパッキンと軸の運動方向

グランドパッキンの使用用途は、軸の運動方向によって下記のような使用例があります。

回転運動軸用
グランドパッキン_図3

図5. ポンプの回転運動軸用

主にポンプや送風機などのシャフトの軸封などに使用されています。

往復運動軸用
グランドパッキン_図4

図6. バルブの往復運動軸用

バルブなどのバルブステ (弁棒) の軸封などに使用されています。

上記以外にも、さまざまな回転機械や往復動軸を持つ機械の軸封部に使用されています。液体や気体、粉体などを封止し、機械や設備が正常に運転、運用できるよう役立っています。

3. グランドパッキンの組み合わせ

前述した図5のポンプ用グランドパッキンは、編組パッキンが3リングとランタンリングで構成されています。このランタンリングは、下記の目的で使用されています。

  • シャフトの冷却や潤滑
  • 流体に砂などが混入している場合にグランドパッキン部から排出させ摩耗を防止
  • 流体の圧力が大気圧以下になる場合にグランドパッキンから空気の吸い込み防止

グランドパッキンは若干の漏れが発生するため、更に少ない漏洩で機械や設備、危険物などの封止に使用する場合は、メカニカルシールなどの軸封装置が使用されます。

4. グランドパッキンのメンテナンス

グランドパッキンは、長期的な機器の運転で摩耗し充填剤が減量して、漏洩が発生することがあります。その際は、ナットを増し締めするかグランドパッキンの取り替えが必要です。また、一度軸に沿って漏れの経路ができてしまうと、増し締めしても漏れが解消されにくいため、その場合も取り替えが必要になります。

参考文献
https://www.pillar.jp/know/gland_packings/
http://www.seal.valqua.co.jp/seal/gasket_detail_tech/

スターデルタタイマ

スターデルタタイマとは

スターデルタタイマとは、三相交流モーターをスターデルタ起動する際に使用するタイマです。

スターデルタスタータと呼ばれることもあります。モーターを完全静止状態から起動した際には、定格電流の約6~8倍の始動電流が発生することが多いです。

この始動電流によって瞬時電圧低下や遮断器の誤動作が発生し、装置の故障に繋がります。したがって、産業用機器ではスターデルタ始動によって、突入電流を低減させることも多いです。

スターデルタ始動とは、モーター起動時には最初にスター結線で接続し、一定の時間後にデルタ結線に切り替える方式です。これにより、起動時の電流を低減させることができます。スターデルタタイマーは、この結線切替を補助する装置です。

スターデルタタイマの使用用途

スターデルタタイマは、主に産業用機器の大型機器に使用されます。以下はスターデルタタイマの使用用途一例です。

1. ポンプ・ファン

スターデルタタイマの最も多い使用用途はポンプやファンであり、これらは一般的に大容量のモーターを使用しています。スターデルタタイマーはこれらの機械の起動時の電流ピークを制限し、モーターへの負荷を軽減することが可能です。特にポンプは、水や液体を移動させるために使用されるため、起動時の効率的な制御が重要です。

大型ポンプとは、上水道の供給ポンプやボイラ給水用のポンプなどが一例です。ファンについては、産業用バーナーの送風ファンなどに適用されます。

2. コンプレッサー

コンプレッサーは、空気圧縮機や冷凍機などで使用されます。これらの機械は起動時に高い電流を必要な場合が多いです。スターデルタタイマーは、起動時の電流ピークを制限し、電力供給への負荷を低減します。

スターデルタタイマーはコンプレッサーの効率的な運転を支援し、消費電力を最適化します。

3. 混合機

混合機は、異なる成分や材料を均一に混ぜ合わせるために使用される機械です。混合機には通常、大容量のモーターが使用されます。これらのモーターの起動時には高い電流ピークが発生するため、始動電流を低減するためにスターデルタタイマが使用されます。

スターデルタタイマの原理

スターデルタタイマはスター結線からデルタ結線へ移行する時間を測定し、接点信号を出力する装置です。スターデルタ始動とは、三相交流モーターの結線方法を途中で変更する始動方法です。

始動トルクを若干低下させる代わりに、始動電流を大幅に低減します。スター結線からデルタ結線への切り替えはタイマで制御することが多いです。スター結線からある一定の時間が経過した後にデルタ結線へと切り替える仕組みです。一般的なタイマーの時間として、数秒~十数秒程度スター結線で始動します。

汎用タイマを用いてもスターデルタ始動を制御することは可能ですが、スターデルタタイマには省スペースで低消費電力などのメリットがあります。製品によっては差し込み端子台が採用されており、施工を簡略化することも可能です。

スターデルタタイマの選び方

スターデルタタイマを選ぶ際は、以下のような要素を考慮することが必要です。

1. 電源電圧

スターデルタタイマは、使用する電源電圧に対応している必要があります。一般的には、AC200Vなどの主要な電源電圧に対応したモデルが市場に提供されています。適切な電源電圧のスターデルタタイマを選択することが重要です。

2. 端子タイプ

スターデルタタイマの端子は、ピンタイプや差込端子などの種類があります。ピンタイプには8ピンや11ピンの製品があり、8ピンが主流です。ピンタイプの場合は、合わせて台座を選定する必要があります。

3. 取付方法

取付方法には、表面取付や埋込取付などの種類が存在します。取付場所に応じて選定することが必要です。

一般的に制御盤の内部に適用する場合は表面取付を選定します。DINレール取付の製品がほとんどです。盤面に取り付ける場合は、裏面取付を選定します。

タクティルスイッチ

タクティルスイッチとは

タクティルスイッチとは、操作部分がクリックする感触を有するスイッチのことです。

呼び名は様々で、タクタイルスイッチやタクティールスイッチ、プッシュモーメンタリ―スイッチ等とも呼ばれています。なお、タクティルスイッチのタクティル (Tactile) は、触覚という意味です。

様々な電子機器や家電品の入力操作部として広く用いられているスイッチで、操作部分を押し込むと電気回路を通電させることができます。操作部分を押し込む際に、クリックする感触があり、人が操作したことを感触によりフィードバックすることが特徴です。

また、繰り返し何度も人が操作を行うため、可動接点を兼ねるばねの材料や形状などの工夫により長期にわたって安定的に動作をする耐久性が求められます。

タクティルスイッチの使用用途

タクティルスイッチの使用用途は、電子機器や家電品、産業機器、OA機器などの様々な製品の操作部分です。スイッチのON/OFF機能に付随して操作している人にスイッチを操作していることを認識させるという目的もあります。

例えば、誤動作を防ぐ観点を重要視すべく、車のステアリングやインターフォンに搭載されるプッシュ操作による押し込みの感覚が明確な長ストロークのものがある一方で、スマートフォンやスピーカーに搭載される電源ボタンや音量ボタンなどのストロークが短いものや、マウスやゲームコントローラーに搭載される中ストロークのものなど、使用用途に応じてスイッチの仕様は様々です。

タクティルスイッチの原理

タクティルスイッチは、内部に押ボタン (Push板) と称するボタン状の可動接点を有し、人がこの押しボタンを押すことでこの可動接点が下側の固定接点と接触し、通電するようになっています。タクティルスイッチの構成部品は、主にカバー、押ボタン (Push板) 、フィルム、可動接点、ベースの5つです。

1. カバー

カバーは、ベースとともに内部構造を保護します。金属板のプレス加工により作られることが多いです。

2. 押ボタン (Push板)

押ボタン (Push板) は、人が操作部を押す部分の部品で受けた力を、フィルムを介して可動接点に伝えます。

3. フィルム

フィルムは薄い樹脂製のシートで、接点部分を密閉することで水や異物が入ることを防止します。

4. 可動接点

可動接点はドーム状の形状を有しており、押ボタンが押されフィルムを介して可動接点が押し込まれることで、ベースに配置された固定接点と接触し、電流が流れます。

4. ベース

ベースは接点と端子が搭載されている樹脂製などの部品で、他の部品を取り付ける土台となります。

 

機器に搭載されたタクティルスイッチは、押ボタンを人が押すことでベースに搭載された固定接点と可動接点が接続され導通します。押ボタンから指を離すと、固定接点と可動接点が離れることで開放されます。押ボタンが押されている間だけ通電するモーメンタリ―タイプのスイッチです。

タクティルスイッチのその他情報

1. ハプティクスとの融合

家電品、情報機器、産業機器、車載向けと多岐に渡る用途を有するタクティルスイッチですが、昨今注目されている用途の分野が「ハプティクス」という名称で呼ばれる「触覚技術」の分野です。ハプティクスとは振動を通じて、触覚に相当する人間の感覚を人工的に再現する技術ですが、この技術はVR/ARやゲーム機、ヘルスケアなどの分野で非常に注目されています。

VR技術はメタバースの世界で仮想空間のリアリティを向上させるために触覚に相当する技術の後押しが必要であり、ヘルスケアの世界でも遠隔治療の際に有用な技術としてハプティクスが注目されています。タクティルスイッチで培った技術をベースにクリック感だけでなく、ばね共振構造などの採用により、振動表現力に力を入れて、ハプティクスとの融合に力を注ぐメーカーも登場しています。

2. 圧電素子技術の応用展開

薄型スイッチに振動表現を加える事例としては、その他にもドーム型の可動接点部に圧電素子技術の応用を図っているものがあります。タクティルスイッチのクリック感という人間へのフィードバック技術は、近年新たに振動表現を加えて、より使いやすい魅力ある先進技術へと変化を遂げています。

参考文献
https://ac-blog.panasonic.co.jp/20160701
https://xtech.nikkei.com/dm/article/LECTURE/20120510/217190/